NEST OF BLUESMANIA

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音曲日誌「一日一曲」#413 アルバート・コリンズ、ロバート・クレイ、ジョニー・コープランド「Bring Your Fine Self Home」(Alligator)

2024-05-23 07:26:00 | Weblog
2024年5月23日(木)

#413 アルバート・コリンズ、ロバート・クレイ、ジョニー・コープランド「Bring Your Fine Self Home」(Alligator)



アルバート・コリンズ、ロバート・クレイ、ジョニー・コープランドの共演アルバム「Showdown!」からの一曲。コープランドの作品。ブルース・イグラウアー、ディック・シャーマンによるプロデュース。

1985年、アルバート・コリンズ、ロバート・クレイ、ジョニー・コープランドが一堂に会して、それぞれのオリジナルや他のアーティストのナンバーを共演したアルバムを制作した。これが約40年が経った現在まで、多くのリスナーに聴き継がれている。

本日はその3人のブルースマンの中でも、ジョニー・コープランドにスポットを当ててみたいと思う。

ジョニー・コープランドことジョン・クライド・コープランドは1937年、ルイジアナ州ヘインズヴィル生まれ。ブルース、とりわけT・ボーン・ウォーカーを愛聴して育ち、ギターを始める。

移住したテキサス州ヒューストンでバンド、デュークス・オブ・リズムを結成、1956年、10代のうちにレコード・デビュー。ヒット曲にはあまり恵まれなかったが、ローカルな人気は獲得して、地道にライブ活動を続けた。

彼はブルースだけでなく、ソウル、ロックンロール系の曲も数多く歌っており、ギタリストというよりは、どちらかといえばシンガーとしてフィーチャーされていた。

テキサスでの約20年の活動を終えて、76年にニューヨーク市に移る。プロデューサー、ダン・ドイルと出会い、彼の伝手でラウンダーレーベルと契約。81年以降91年に至るまで、同レーベルで5枚のアルバムをリリースして、ブルースマンとしての評価が高まる。

その時期に、テキサス時代から長い付き合いのある先輩、アルバート・コリンズ(1932年テキサス州レオナ生まれ)からの誘いで、レコーディング・セッションに参加することになる。彼らよりずっと歳若いロバート・クレイ(1953年ジョージア州コロンバス生まれ)もそこに加わって、3人のアルバムとして制作されたのがこの「Showdown,」というわけだ。

時にコリンズ53歳、コープランド48歳、クレイ32歳であった。

他のレコーディング・メンバーは、ベースのジョニー・B・ゲイデン、ドラムスのケイシー・ジョーンズ、オルガンのアレン・バッツ。

本日取り上げた一曲「Bring Your Fine Self Home」はコープランドが作り、リードボーカルを取ったスロー・ブルース・ナンバー。

冒頭に収められているコープランドとコリンズの会話を聴くと分かるが、本曲ではコリンズがギターではなく、ハーモニカ(ハープ)を携えている。

少し意外だがコリンズはハープやキーボードもこなしており、稀にレコードでも披露していたのである。

このコリンズのいなたいハープ・ブローが、本曲のダウンホームな味わいを見事に深めている。

かたやコープランドの歌は、ひたすら野太くワイルドである。荒々しいシャウトは、まさにコープランド・スタイルだ。

「Play Blues!」というコープランドの掛け声に合わせて始まる、中間の短いギターソロは、クレイだろうか。でも手癖がコリンズっぽくもある。通なかた、どちらなのか教えて欲しい。このソロもまた、テンションMAXでイカしている。

3人は歌声はそれぞれに個性的ではあるが、ギターについては、エッジを効かせた音でゴリゴリに弾く、いわゆるギター・スリンガーであるという点では共通していると思う。実は似た資質、方向性を持っているからこそ、この3人の共演はうまく成功したのだ。

最後までハイ・テンションな歌声を聴かせるコープランド。そして、コリンズやクレイたちの手だれのバッキングにより、いい感じにまとまったナンバー。

コープランドはその後、90年代はヴァーヴに移籍して何枚かのアルバムを残し、97年に60歳で亡くなった。その20年後、ブルースへの功績を認められて、ブルースの殿堂入りを果たしている。また、娘のシェメキアもブルース・シンガーとして活躍中だ。

代表的なヒット曲があるかといえば特になく、あまり商業的に成功したとはいえないコープランドだが、筆者個人としては、なかなかいい味を持ったミュージシャンだったと思う。

その精力的な歌声、アグレッシブなギター・プレイ。顔だちや表情も含めて、そのひとつひとつが「ブルース」なのだ。

彼こそは「存在そのものがブルース」ともいえるオーラを纏った、ブルースマン。

有名無名、成功不成功に関係なく、こういうミュージシャンに、筆者は心惹かれるのである。

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