マックいのまたのMalt Whisky Distillery

モルト好きで株式公開/上場(IPO)の経営戦略,マーケティング,M&Aを支援する経営コンサルタントのプライベートブログ

CLYNELISH 35yo

2014-09-29 17:01:02 | グルメ
ハイランドのモルト好きにとって、クライヌリーシュは最も誇らしく
最も秘密にしておきたい蒸溜所のひとつだろう。麦芽が活きており、
水は清らか、樽熟成感も信頼でき、若干のオリーブオイルと塩も感じ
ることができる。

モルトウィスキー好きも好事家になってくると、経験を誇りたいのか
どうか、ボトラーズのシングルカスクが美味しくて、オフィシャルの
シングルモルトは・・・という御仁が多いものだが、ウィスキーは
ウィスキーだし、造られた蒸溜所が特定なら麦芽も水も樽も同じだ。

そういう通好みの蒸溜所になってくると、反対に好事家御用達のボト
ラー・シングルカスクに出会うご縁の方が少なくなってくるという
もので、このクライヌリーシュもそのひとつだろう。だからこそ、
密かに誇っていいプライドのような蒸溜所だ。

そのクライヌリーシュの35年物があるというので、もしかしたら
一生に一度のご縁かと思って出掛けて行ったら、まさに後生ではもう
出会えないかもしれないような極上のなかの極上で感極まってしまっ
た一本がこれ。

cynelish35yo.jpg

ズワイガニ、タラ、ホタテのような豊かな海産物の香りが漂い、花の
ブーケ、果実味、石焼きいもの甘さ、メロウな熟成感、干し草のサス
ティーンが銀幕一杯に広がる映画のようだ。

ピートで殴るのではなく、シェリーで口説くのではなく、アルコール
で襲うのではなく、果実で笑わせるのではなく、オイルで怒らせる
のでもない。そうした「特徴」と呼ばれるものをすべて内包しつつも
超越した熟成感が35年間ゆっくり時間をかけて達成したものを奥
ゆかしく見せてくれる。熟成の前には、味付けやブレンドや能書き
など全てが無言にならざるを得ない神聖さがある。それこそがこの
ウィスキーだ。

周知のとおり、クライヌリーシュはディアジオ系列の蒸溜所だから、
この先このような複雑でかつ圧倒的な大仏殿か大聖堂のようなウィ
スキーが作られる可能性は低いだろう。20世紀に生まれた幸運を
噛み締める人生の機微を感じる一杯だ。

記録としてラベルの記載を転記しておきたい。

「1972年12月13日蒸溜、2008年4月22日瓶詰め。
ホッグズヘッド樽、樽番号12631、273本のボトリング。
アルコール度53.7度」

決して大げさではなく、生きていてよかったと思う。
 

感謝!
 
 


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