かつての関東地方の私鉄では、乗客に注意を促す為、客用ドアのガラスにステッカーが貼り付けられていました。大体は10〜15センチ程度の円形であることが多く、手を挟まれているイラストや子供・動物のキャラクターがドアの開く方向を指差すものなど非常に多くのデザインが見られ、事業者の個性が表れる部分でしたが、2000年代に入るとデザインの変更(汎用イラストや広告シールなどへ)が相次ぎ、昔ながらの円形ステッカーは大幅に数を減らしています。今回は車両のついでに撮影したドアステッカーを記事にしたいと思います。
現在は新京成電鉄でのみ見られる、大振りな半透明の円形で上半分がリアルな手のイラストが描かれた注意喚起、下半分が広告媒体になっている昔ながらの関東型ドアステッカー。車両の塗装が変わっても新形式が導入されても、このステッカーは頑なに維持されており、個人的には同社のトレードマーク的存在になりつつある気がします。手のイラストや注意喚起の文字は、かつて関東私鉄共通フォーマットとなっており同様のデザインが親会社の京成電鉄を始め京王電鉄、東急電鉄、東武鉄道などでも見られました。
なお、各事業者で円の枠の色やイラストの大きさなどが異なり、新京成では広告部分が大き目に取られているようです。よく見ると上の写真のものとはエクスクラメーションマークの太さが違っていますね。貴重になりつつある関東型ドアステッカーなだけに、どうかこのデザインは変えないまま貫いて欲しいですね。(一新する時が来たら小田急のように円形と手のイラストは踏襲して欲しいです)
注意喚起文は上と同じながら手のひらのイラストが特徴の京浜急行のステッカー。片開きドアの車両が多かった為と思いますが、左右どちらにも使用可能にしています。1998年登場の2100形から廃止され、以降の新型車のドアには汎用広告ステッカーのみの状態が続き、現在では新規に長方形の注意表示と羽田空港のターミナル案内が貼られるようになりました。600形と1500形でしか見られなくなり、1500形も本格的な置き換えが近付いている為、見納めになってしまいそうです。
京急の注意表示といえば、これを思い出す方も多いのではないでしょうか?主に片開きドアの戸袋側(小型化したものが1500形初期車でも見られました)に貼られていた血が点々と落ちているインパクトのあるステッカーです。円形ステッカーは京急電鉄の表記に改められましたが、こちらは懐かしい京浜急行電鉄のまま残存していました。2019年の800形全廃で消滅しています。
今はシンプルなピクトグラムや鉄道会社のマスコットキャラを描いたものが目立つようになって来ましたが、昭和期からの主流だったデザインが姿を消して行くのは一抹の寂しさを覚えます。車両のみならず、こうした小物類も記録しておきたいですね。