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町田営業所業務日報

地元周辺の鉄道・バス車両について気紛れに綴ります。

阪急電鉄初のVVVFインバーター制御車・神宝線8000系

2025年07月29日 | 阪急電鉄

阪急電鉄では1980年から神戸線・宝塚線に向けて界磁チョッパ制御を採用した7000系を導入しており、1988年まで210両が増備され当時の阪急では最大勢力となっていました。一方で1987年には阪急電鉄創立80周年、1990年には営業開始80周年という節目を迎えることからVVVFインバーター制御を採用した後継車の導入が計画され、1989年に登場したのが8000系です。営業運転開始後は広報誌や時刻表の表紙に起用される機会も多く、京都線特急用の6300系に代わり看板車両的存在となっていました。現在は機器更新と車内設備のリニューアルが進行しており、神戸線・宝塚線系統の主力車として活躍が続いています。

額縁スタイルと呼ばれる縁が一段飛び出ている正面に窓を拡大していることで、在来車とは全く異なる顔立ちになった8000系ですが、これはアメリカのワシントン首都圏交通局や大韓民国のソウル特別市地下鉄公社(1980年代当時)の影響があったとされています。製造前の計画では、車体の下半分をホワイトとグレー塗装にする案やステンレス無塗装車体なども検討されていましたが、マルーン塗装へのこだわりから従来のアルミ合金製車体に塗装を施こす仕様になりました。なお塗装は6300系のみに採用されていた屋根周りのアイボリー塗り分けが本系列で採用され、後に他形式にも及ぶことになります。写真の8001Fは2012年8月に試験も兼ねて、それまで搭載していた東芝製GTOサイリスタによるVVVFインバーター制御から4in1 IGBT-VVVFに、主電動機をPMSM(永久磁石同期電動機)に換装しています。これが後の1000系・7000系リニューアル車へのPMSM本格採用へ繋がりました。

98両と全体数は少なめな割にバリエーションが多い8000系ですが、この写真の8020Fは1992年7月に当初6両で製造され、阪神・淡路大震災後の1996年に付随車2両(8620・8790)を新製して8両化されました。1992年9月には社章変更を控えていたため、それまでの編成にあったHマークが省略され他編成も順次撤去されています。

リニューアルを受けていない原型の車内。在来車に比べて木目調化粧板の色合いが濃くなり、マホガニー本来の色調に近付いています。阪急電車の特徴の一つであったアルミ製日除けは本系列で最後の採用になりました。カーテンに比べて重さがある日除けや車内案内表示装置が未設置など、現代では流石に時代遅れな感が否めなくなって来ており、早期のリニューアルが望まれます。

 

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京都線特急用9300系ベースの神宝線向け汎用車・阪急9000系

2025年07月27日 | 阪急電鉄

阪急電鉄では京都線用特急車として転換クロスシート設備を備えた9300系を2003年より運用開始しますが、2006年より同系列をベースに「すべてのお客様に快適な移動空間」をコンセプトとして、「快適な車内空間の提供、優れたサービス機器の導入、交通弱者に対するバリアフリー」を目的に車内設備をロングシート仕様とし、神戸線・宝塚線向け新形式の9000系が導入されることになりました。8両編成の完全な新形式が導入されるのは神戸線では1992年以来14年振り、宝塚線では15年振りの出来事です。2006年〜2013年までの期間に8両編成15本が導入され、後継形式の1000系登場後も主力車両として運用されています。

車体外観は日立製作所製A-trainベースで9300系に酷似していますが神宝線の車体規格に合わせて車体全長が100ミリ長く幅は50ミリ短くなっているのが特徴です。ロングシート通勤車であるため普通から特急まで区別なく運用される汎用車ですが列車無線アンテナや屋根上の冷房装置周りがカバーを設けており、天地寸法が拡大された大型の側面窓と相まって特急車のような優雅な外観を持っています。

電装品はこれまでの神宝線の慣例により、東芝製を採用しており東洋電機製の電装品を搭載する9300系とはVVVFインバーター制御装置の磁歪音が異なっています。その一方で運転台のマスコンハンドルは長らく採用していた東芝に代わり東洋電機の製品を搭載することになりました。

車内設備は中仕切りを備えたゴールデンオリーブの座席に濃い目の木目調化粧板で、間接照明を採用しています。バリアフリー強化対策ということで各車に車椅子スペースが設けられていますが、この形式に限らず阪急車は手すりや吊り手が他社に比べると少なく、室内の開放感に優れる一方で現代基準の安全性の面では今一歩な感があり、対策を望みたいところです。

車内案内表示装置は長らくLEDによる表示でしたが、本形式では15インチLCD画面に改められ千鳥配置(1両当たり3箇所設置)となっており従来の車両に比べて大幅に旅客に提供できる情報量が増えました。

ベースとなった9300系は新形式2300系の登場により、特急車からの格下げ改造(機器更新・ロングシート化)という大きな動きを見せていますが、こちらは登場19年目ながら更新計画もなく安定した活躍が続きそうです。

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伝統を引き継ぎながらコスト適正化を図った新形式車・阪急電鉄1000系

2024年10月19日 | 阪急電鉄

阪急電鉄の神戸本線・宝塚本線は2010年代に入っても消費電力の大きい抵抗制御の5000・6000系が数多く在籍し、主力車両として運用されていました。これら旧来の車両の置き換えを実施すべく開発されたのが1000系で、2013年6月6日に導入計画が発表され、同年11月28日より営業運転を開始し2021年までに神戸線に8両編成11本、宝塚線に9本が導入されています。阪急電鉄による1000番台の車両形式は1954年に導入された本格的な高性能車1000形以来のことで、一部メディアでは識別のため1000系(2代)などとも表記されます。

2006年登場の9000系のコンセプトは引き継ぎながらもコストダウンを図った新しいデザインの車体となり、屋根上機器カバーの廃止や側扉間を3分割、車端部を2分割としドア窓寸法も8000系並みのサイズに戻した為、在来形式に近い雰囲気になりました。写真の1002Fはワーナーブラザース・ディスカバリー グローバル・コンシューマープロダクツとのタイアップ企画で2024年8月23日から「トムとジェリー号」として2025年3月27日まで運用される予定です。

阪急では長らく編成内に制御電動車が設定されていましたが、1000系では両端を付随制御車とし、1975年登場の6300系以来の仕様となりました。正面は定期列車で他車両の増結は行わないので、1960年登場の2000系以来引き継がれて来た銀の幌受けが廃止されています。

車内設備は在来車同様マホガニー木目調の化粧板にゴールデンオリーブの座席を引き継いでいますが、阪急では初めて大型袖仕切りとスタンションポールを新設しており、車内の印象は大きく変化しています。9000系で採用されたパワーウインドウや自動の妻面貫通扉は廃止され再び手動に戻りました。

車内案内表示装置は32インチフルハイビジョン対応の大型液晶画面を設置し、行先や路線図の他、駅間では画面の表示を分割してニュースや天気予報、広告の表示も行います。

登場後は在来車置き換えのため、相当数が増備されると思われましたが、2021年度の1019Fで増備は終了し、今後の神戸線・宝塚線の車両増備は新形式2000系に移行することが発表されました。

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