今日のチャットは楽しかったゼェ
一応、最初のところだけ乗せてみようと思います。これだけ読んで
もうちょっと続きを見てやってもいいかなって思ってくれれば大成功です。
ロシアン・ルーレット (前編)
1
僕は母の入院費を稼がなければいけないんだ。その為には、どうしてもこのゲームで勝ち残らなければいけない。それ以外に僕達親子が助かる道はない。皆はきっと私利私欲の為に命を投げ出しているに違いない。ただ単に金が欲しいからって銃口の前に立つなんて、全くおかしな話だ。こいつらはきっと気を違えているに違いないんだ。そんなキチガイ共の命なんて全く、これっぽっちの価値もない。ありんこを踏み潰すのと一緒だ。むしろ、害虫だ。平然と相手の頭に銃を突きつけるような連中をこの世界に野放しにしておくことは、犯罪者を野さばらしておくことと同じ。僕はそんな犯罪者共を四人も駆除してやったんだ。僕に正当性があって彼らに非があるのは誰の目から見ても明らかだろう? 君もそう思うだろう。え? 君って誰? まあいいやそんなこと。とにかく僕はここに到るまで何匹も駆除してきた。危ない場面は何回もあったけど、僕にはきっと神の加護が付いているに違いない。そうに決まっている。なぜならそれは正当性が僕の方にあるからだ。全てはお母さんのせいなんだ。こんなところに立っているのも全部あいつのせいなんだ。もしも、じゃない。生きて帰ったらあいつの生命維持装置を踏みつぶしてやる。散々僕のことを縛り付けやがって邪魔なんだよ。僕はこの聖戦(ジハード)で得たお金を使って贅沢に遊ぶんだ。今住んでいる家を豚小屋に使ってやるぞ。着ている服(小汚い刺繍がされている)を炉の火にくべて、余生を豪遊するんだ。女も沢山侍らせてやる。僕のことを貧乏って馬鹿にしてたあいつらに靴の底を舐めさせてやる。
――「御手洗 ゼロ発」
――「志乃 七発」
――「釘山 ゼロ発」
……
この女もきっと屈服させてや――。
「え?」
今、なんて言った? なんて言った?
振り向いて、後ろに立つ女を見る。回転式拳銃のシリンダーを熱心に回転させる女は、にんまりと笑って、まるで小型犬と戯れているみたいに楽しげに、鼻歌なんて歌っていた。
「七発? 七?」
七って、リボルバーの穴全部じゃないか。
あれ? おかしいな?
僕は空っぽのリボルバーを見つめる。そして、僕の前に立つ男を見つめる。彼は絶対に死なない。そりゃあ僕の銃に弾は込められていないんだから当然だ。でも、僕は絶対に死ぬ? あれれ? 僕はずれた眼鏡をかけ直し、乱れた前髪を整える。馬鹿な、そんなはずない。だってさっきの話し合いの時、決まったじゃないか。今回は全員の弾を抜いて撃ち合おうって。話し合いが進まなかったから。
「志乃さん? リボルバーの中、見せてもらっていい?」
振り向いて彼女に訊くと、志乃さんは「いいよ」と明るく返事して、まるで良い点を取ったテストを見せるように、誇らし気に穴の中を見せてくる。――いや、穴は無かった。全部埋まっていた(・・・・・・・・)。
「あ、あはは。間違えちゃったんだね。ねぇジャッジ。この勝負はおかしいよ。仕切りなおしだろう?」
僕は輪の中央に立つ一体のテディベアに問いかける。彼(正確に言えば彼に内蔵されているスピーカー)は、僕の問いに対して一切反応しない。やがて、リボルバーを回す音が室内に響き始める。まるで雨でも降っているかのような音。シャーシャーと、いつまでも振り続ける雨。雨。志乃さんも回している。全部弾が入っているのに、まるで救いの道があるかのように。
「み、皆。志乃さんが僕を殺そうとしているよ? いいのかい? 君たちも近々彼女の毒牙にかかるかも知れないんだよ?」
雨は僕の言葉を遮るかのように、降り続ける。誰も、返事一つしない。彼らは能面のような無表情で、自分の前の人間の後頭部に銃口を向けた。
「おい。おい、僕の話を聞いてんのかよ!? お前ら皆騙されてんだよ!」
こんな勝負やってられない。銃を床に叩きつけると、雨の音がピタっと止んだ。それはもう、怖いくらいに息があっていて、僕はその時確信した。僕の知らないところでなんらかのやりとりが行われていて、そのやりとりの結果、僕は要らない人間だと判断されたんだ。
なんで、正当性は僕にあるじゃないか。こいつらは皆狂人だ。金欲しさに平気で人を殺しやがって。皆死ね。皆死ねばいいんだ。ジャッジが「構え」と声をかけると、皆は銃口を前の人間の頭部に押し当てる。僕の頭にも、そんな感覚があった。なぜ、なぜ僕だけこんな目に。助けて、よ。たすけておかあ――
一応、最初のところだけ乗せてみようと思います。これだけ読んで
もうちょっと続きを見てやってもいいかなって思ってくれれば大成功です。
ロシアン・ルーレット (前編)
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僕は母の入院費を稼がなければいけないんだ。その為には、どうしてもこのゲームで勝ち残らなければいけない。それ以外に僕達親子が助かる道はない。皆はきっと私利私欲の為に命を投げ出しているに違いない。ただ単に金が欲しいからって銃口の前に立つなんて、全くおかしな話だ。こいつらはきっと気を違えているに違いないんだ。そんなキチガイ共の命なんて全く、これっぽっちの価値もない。ありんこを踏み潰すのと一緒だ。むしろ、害虫だ。平然と相手の頭に銃を突きつけるような連中をこの世界に野放しにしておくことは、犯罪者を野さばらしておくことと同じ。僕はそんな犯罪者共を四人も駆除してやったんだ。僕に正当性があって彼らに非があるのは誰の目から見ても明らかだろう? 君もそう思うだろう。え? 君って誰? まあいいやそんなこと。とにかく僕はここに到るまで何匹も駆除してきた。危ない場面は何回もあったけど、僕にはきっと神の加護が付いているに違いない。そうに決まっている。なぜならそれは正当性が僕の方にあるからだ。全てはお母さんのせいなんだ。こんなところに立っているのも全部あいつのせいなんだ。もしも、じゃない。生きて帰ったらあいつの生命維持装置を踏みつぶしてやる。散々僕のことを縛り付けやがって邪魔なんだよ。僕はこの聖戦(ジハード)で得たお金を使って贅沢に遊ぶんだ。今住んでいる家を豚小屋に使ってやるぞ。着ている服(小汚い刺繍がされている)を炉の火にくべて、余生を豪遊するんだ。女も沢山侍らせてやる。僕のことを貧乏って馬鹿にしてたあいつらに靴の底を舐めさせてやる。
――「御手洗 ゼロ発」
――「志乃 七発」
――「釘山 ゼロ発」
……
この女もきっと屈服させてや――。
「え?」
今、なんて言った? なんて言った?
振り向いて、後ろに立つ女を見る。回転式拳銃のシリンダーを熱心に回転させる女は、にんまりと笑って、まるで小型犬と戯れているみたいに楽しげに、鼻歌なんて歌っていた。
「七発? 七?」
七って、リボルバーの穴全部じゃないか。
あれ? おかしいな?
僕は空っぽのリボルバーを見つめる。そして、僕の前に立つ男を見つめる。彼は絶対に死なない。そりゃあ僕の銃に弾は込められていないんだから当然だ。でも、僕は絶対に死ぬ? あれれ? 僕はずれた眼鏡をかけ直し、乱れた前髪を整える。馬鹿な、そんなはずない。だってさっきの話し合いの時、決まったじゃないか。今回は全員の弾を抜いて撃ち合おうって。話し合いが進まなかったから。
「志乃さん? リボルバーの中、見せてもらっていい?」
振り向いて彼女に訊くと、志乃さんは「いいよ」と明るく返事して、まるで良い点を取ったテストを見せるように、誇らし気に穴の中を見せてくる。――いや、穴は無かった。全部埋まっていた(・・・・・・・・)。
「あ、あはは。間違えちゃったんだね。ねぇジャッジ。この勝負はおかしいよ。仕切りなおしだろう?」
僕は輪の中央に立つ一体のテディベアに問いかける。彼(正確に言えば彼に内蔵されているスピーカー)は、僕の問いに対して一切反応しない。やがて、リボルバーを回す音が室内に響き始める。まるで雨でも降っているかのような音。シャーシャーと、いつまでも振り続ける雨。雨。志乃さんも回している。全部弾が入っているのに、まるで救いの道があるかのように。
「み、皆。志乃さんが僕を殺そうとしているよ? いいのかい? 君たちも近々彼女の毒牙にかかるかも知れないんだよ?」
雨は僕の言葉を遮るかのように、降り続ける。誰も、返事一つしない。彼らは能面のような無表情で、自分の前の人間の後頭部に銃口を向けた。
「おい。おい、僕の話を聞いてんのかよ!? お前ら皆騙されてんだよ!」
こんな勝負やってられない。銃を床に叩きつけると、雨の音がピタっと止んだ。それはもう、怖いくらいに息があっていて、僕はその時確信した。僕の知らないところでなんらかのやりとりが行われていて、そのやりとりの結果、僕は要らない人間だと判断されたんだ。
なんで、正当性は僕にあるじゃないか。こいつらは皆狂人だ。金欲しさに平気で人を殺しやがって。皆死ね。皆死ねばいいんだ。ジャッジが「構え」と声をかけると、皆は銃口を前の人間の頭部に押し当てる。僕の頭にも、そんな感覚があった。なぜ、なぜ僕だけこんな目に。助けて、よ。たすけておかあ――