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新・からっぽ禅蔵

上座部仏教僧としてタイで修行の後、日本の禅僧となった、水辺を愛するサーファー僧侶のブログ。

スナメリ

2020-06-28 06:51:34 | 日記
僕は、サーフィン中に頻繁にスナメリ(イルカの一種)と遭遇するが、その事は、なるべくブログには書かないようにしてきた。
しかし今回は、自分のためのメモ書きとして少々記しておく。

僕は、18歳~38歳の20年間サーフィンをしていた。
そして現在、18年ぶりにサーフィンを再開してまだ3年も経たない。
で、前の20年間にサーフィン中に野生のスナメリと遭遇した回数は4回。
一方で、現在サーフィンを再開してから僅か3年弱で、スナメリと遭遇した回数は、なんと40回を越えている。
この回数の差は一体どういう事か。
野生のスナメリの個体数は減っているという話しを耳にする事はあるが、増えているとは聞いた事がない。
にもかかわらず、これほど頻繁に遭遇するのは何故か?
もしかしたら、若い頃の20年間にも、本当はもっと頻繁にスナメリと遭遇していたのかも知れない。ただその事に僕が気づいていなかっただけ。一方で今は、たまたまスナメリの存在に気づきやすい、という可能性も無くはないだろう。
しかし、視力で考えてみると、僕は若い頃には1.5の視力があった。一方で現在は眼鏡をかけても0.8程度。海の中では裸眼なので、多分0.3位しかない。つまり、視力で考えると若い頃より現在のほうがスナメリの発見確率は低いはずだ。
但し、長年の勘で、今は海面の僅かなザワツキ程度でスナメリの存在を察知する事がある。この感覚は、若い頃には無かったかも知れないし、そもそも若い頃は、波に対してどん欲にガツガツとサーフィンをしていたので、波以外ものが目に入っていなかったのかも知れない。

さて、それでは、スナメリとはどういう生物なのか。

スナメリは、クジラとイルカかからなる鯨類(クジラ目)の1種である。
クジラとイルカは、別物と思われがちだが、両者は分類学的に同じ仲間であり、体長が3~4mよりも小さいハクジラを、便宜的に「イルカ」と呼んでいるにすぎない。
海に暮らす哺乳類の大半がこの鯨類に属している。
この鯨類は、現在およそ80種~90種に分類されている。彼らは、地球の70%を占める海洋と一部の河川に住んでいる。
クジラは、口内に歯が生えているハクジラと、歯ではなくヒゲが生えているヒゲクジラの2グループに分けられる。ハクジラは、10科、34属、現生76種からなる。一方のヒゲクジラは、4科、6属、現生14種だという。
尚、彼らは我々人類と同じ哺乳類なので、当然呼吸が必要である。彼らの呼吸のための噴気孔は頭頂部にあり、ハクジラは1個、ヒゲクジラは2個の噴気孔がある。
さて、言うまでもなく、地球上の全ての生命の源は海であり、海で誕生した生物の幾つかの種は上陸し、海から離れて陸上生活を始めたわけだが、鯨類は、この陸上の哺乳類から更に進化した生き物である。つまり、海から陸に上がった後、再び海へ戻って行った種族だ。今からおよそ5400万年前には、陸上から水中へ戻っていったらしい。
尚、鯨類の大きさは驚くほど多様で、ヒゲクジラに属すシロナガスクジラは巨大で、体長33m、体重150tにも達する。これは、地球上で最大の動物でもある。
一方で、同じ鯨類に属すネズミイルカの体長は、大人でも1.3m~2.3mにとどまる。
スナメリも、このネズミイルカ科に属していて、スナメリの体長は成体でも1.6m~1.9mほど。新生児は60㎝~80㎝と小さい。
因みに、鯨類を大型・中型・小型で分類すると、体長が10m以上のクジラは大型、これは11種類現存する。中型は3~10mで31種。小型は3m以下で47種だそうだ。
尚、日本近海には、37種の鯨類が分布していて、スナメリもこの内の1種である。
また、イルカ、即ち鯨類の中で比較的小型の個体を飼育している水族館は、日本には30館ほどあるそうだ。但し、僕の知る限り、関東圏にはスナメリを飼育している水族館は無い。その理由は、僕は知らない。

さて、スナメリの体長は、上にも書いた通り、新生児で60㎝~80㎝。成体で1.6m~1.9mだそうだが、僕がこれまでに遭遇したスナメリは、小さい個体で1.2m程度。大きな個体だと2mを超えていたように見えた。
また、体重は、出生時で5~10㎏。成体で40~70㎏だそうだから比較的軽量と言えるだろう。確かに、スナメリの身体は他のイルカと比べて胴体が細くてスリムだ。
という事は、脂肪も少ないのではなかろうか。脂肪が少ないとすると、水温が低い時には寒くないのだろうか?と心配になる。
僕がスナメリと遭遇するのは冬場が多いのだが、もしかしたら、冬場は沖合いの水温が低いから、比較的水温が高めの岸辺近くに来ていて、そのために、我々サーファーは冬場にスナメリと遭遇する事が多いのかも知れない。

生息範囲は、中国東海岸・朝鮮半島・日本の沿岸域。また、海だけではなく、中国の揚子江にもいるらしいが、海に生息するスナメリと、淡水域に生息するスナメリは、果たして同種と言って良いのだろうか?
因みに、スナメリの生息領域よりも更に南の海で見られるニシスナメリは、比較的最近になってスナメリとは別種と考えられるようになったという。つまり、少し前まではスナメリとニシスナメリは同種と思われていたのだそうだ。
さて、揚子江の淡水域のスナメリはさて置き、海のスナメリの食性は、小型の魚やイカや甲殻類だという。
歯は、スペード状の形をしていて15~20対ほど生えているそうだが、僕は、野生のスナメリと遭遇しても歯までは見ていない。1度だけ、水族館で飼育されているスナメリの歯を見たが、その時に、もう少ししっかりと観察しておけば良かったと思っている。

また、スナメリは、ハンドウイルカ等とは違って、めったにジャンプなどの空中行動は見せず、とても静かに泳ぐと言われている。
確かに、僕が遭遇するスナメリも大抵の場合は極めて静かに泳いでいる。
さざ波も立てず、音も立てずに丸めた背中を静かに海上に浮上させては、また静かに潜水するので、スナメリを見慣れていない人には、波が起こした一瞬の影ぐらいにしか見えず、スナメリ等の生物だとは気づかない場合もあるかも知れない。尚、スナメリは、ハンドウイルカのような背びれは無い。

ところで、古くから「海坊主」と称する海上に現れる坊主頭の妖怪のお話しがあるが、僕は、個人的には、スナメリ等の鯨類の浮上する姿を、昔の人が妖怪と見間違えたものなのではなかろか?と思っている。
因みに、僕の経験上、スナメリの身体は黒っぽく見える時と、白っぽく見える時がある。おそらく、これは一種のカムフラージュ効果で、太陽光が当たって海面が白っぽく見える時に浮上するスナメリの身体は白っぽく見えて、逆光や曇り空で海面が黒っぽく見える時に浮上するスナメリの身体は黒っぽく見えるようだ。

いずれにせよ、普段は静かに泳ぐスナメリだが、僕は、活発に泳ぐスナメリの姿も見ている。
おそらく、小魚でも追っているのだろう。激しく回転している姿を度々見る。また、ジャンプも1度だけ見た。めったにやらないジャンプをしたのは、もしかしたら、スナメリより大きなサメ等に追われていた可能性も考えられるだろうか。
ただ、「イルカは安全な場所を知っていて、イルカが出現している周辺にはサメは居ない」という説を聞いた事がある。その信憑性は不明だが、僕は、スナメリと遭遇している時には、「今、近くにはサメはいない」と勝手に思っている。

また、スナメリの群れの規模は、1~5頭。時として20頭位の群れを作る事もあるというが、僕が見かけるスナメリは、いつも1頭か2頭。ごく希に3~4頭程度。比較的2頭の事が多い。
基本的には、母子からなる小さな群れを形成するらしい。
そして、4~6歳で性成熟し、寿命は20年程度だそうだ。

次に、鳴き声であるが、イルカの鳴き声は大きく分けて2つある。
1つは、「ピューイ」や「ピィー」といったホイッスル音。もう1つは、「ギイッ、ギイッ」「ガッ、ガッ」「ギィィィ」等のクリックス音である。
ホイッスル音を発しているイルカと言えば、ハンドウイルカを思い浮かべる人も多いと思う。一方で、種類によってはホイッスル音を発しないものもいるという。
スナメリも、ホイッスル音を発しない種として考えられている。このホイッスル音を発しない種は、基本的に、単独または2~3頭の小さな群れで生活している事が知られている。つまり、大きな群れでなければ、ホイッスル音によるコミュニケーションの必要性が無いのかも知れない。

次に、視覚。鯨類は「スパイホップ」という行動をする事がある。これは、海上に顔を上げて周囲の状況を目でうかがっているのかも知れない。
鯨類の視力はあまり良いとは言えないようだが、水族館では、トレーナー(人間)の手の動きなどのサインに従って動いているようなので、ある程度の視力はあるはずだ。
僕の近くに野生のスナメリが出現した時も、スパイホップのように顔を海上に上げてこちらを気にしていた様子が見てとれた。

最後に、次の件について述べたい。

ハンドウイルカが、溺れた人間を救ったという報告は古来より絶えないそうだ。
いや、ハンドウイルカだけではない。
今から数十年前、伊豆でスキューバダイビングを楽しんでいたダイバーが数日間流されて漂流したとき、クジラの群れが輪を形成してその中心にダイバーを置く陣形をとったそうだ。
これは、マッコウクジラが行うマーガレット陣形(ロゼット陣形)と称し、小さくて弱い子クジラを中心に置いて大人のクジラたちが尾びれを外側に向けて輪を作る陣形である。この陣形で、必要に応じて尾びれを水面に叩きつけて、シャチなどの捕食者を追い払うという。
つまり、このダイバーは、クジラの群れに守られていた可能性がある。

鯨類は、我々人間を救ったり守ったりしてくれる事があるのに、我々人間は捕鯨によって彼らの命を奪う。
これではフェアじゃない。
鯨類以外に食べるものが乏しい国や地域の人達による捕鯨ならまだ許せるが、食べ物が豊富にある日本が行う捕鯨には、僕は断じて反対である。
捕鯨だけではない。
海辺に捨てられたゴミは環境を破壊する。特に、ビニール袋やペットボトル等々、プラスチック系のゴミをクラゲやイカと間違えて、海ガメやイルカが食べてしまい、それによって海ガメやイルカが死に至る可能性がある。
頼むから、海辺にゴミを捨てないでくれ!

僕は、今までも、そしてこれからも、環境保護団体への寄付金の送金と応援を継続する。

鯨類の、安全なる生活環境を祈る。
同時に、今のコロナ禍を期に、経済成長ばかりを追い求めるのではなく、自然との共生の道を歩む人達が増える事を期待する。
人類が、柔軟に、生き方を変える勇気を持つ時期なのかも知れないと思うのだ。

合掌


●フィールドワーク●
①関東圏の某海。
②鳥羽水族館。
●参考書●
①『世界のクジラ・イルカ百科図鑑』河出書房新社
②『イルカ・クジラ学』東海大学出版会

【写真:過去に鳥羽水族館で撮影したスナメリの写真。
尚、スナメリを含む動物たちを、水族館や動物園で飼育する事の是非については、また全く別の問題である。機会があれば、いずれその問題も取り上げよう。】
◆新・からっぽ禅蔵◆

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1 コメント(10/1 コメント投稿終了予定)

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hasunohanaさま (禅蔵)
2020-06-29 01:27:06

いつも、ありがとうございます。
あなたには、いつも励まされています。

ところで、大学での恩師が亡くなられたとの事。
それは大変お辛いですね。
陰ながら、私からも、増田実先生のご冥福をお祈り申し上げます。

禅蔵 合掌
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