黒砂台鍼灸あん摩治療院

鍼灸院の日常日記

日本学術会議談話に対して、ホメオパシー国際評議会(ICH)が見解発表!ってあるけど、どうよ

2010-09-16 12:43:07 | 院長のひとり言
少し前の9月9日日本ホメオパシー医学協会から「日本学術会議談話に対して、ホメオパシー国際評議会(ICH)が見解発表!」という題でプレスリリースが発表されています。
(リンクは日本ホメオパシー医学協会の発表ページへ)

ちょうどLancetの「Are the clinical effects of homoeopathy placebo effects? Comparative study of placebo-controlled trials of homoeopathy and allopathy」も入手できましたし、「ホメオパシーに関する英国議会下院の勧告」もざっと確認できたのでこの件について少しだけ。

この発表で気になった点について取り上げていきます。
(以下に日本ホメオパシー医学協会発表より一部転載)

1)金澤氏の表明からは、SCJは、ホメオパシーの性質または薬理学におけるホメオパシー医療の原理を真に理解していない事は明らかです。 たとえば、レメディー(治療上の薬)を「ただの水」が含まれたと言及することは、ホメオパシーのレメディーがどのように作られるかについての研究や理解に全く取り組んでいないことの現れです。
ホメオパシーレメディーは、ホメオパシーが存在してこのかた200年以上をかけ発展し改善された調剤法に従いとても特別な方法で作られています。ホメオパシーの商品は、急速に国際的健康商品市場の重要な一部となっており、欧州連合の条例、欧州連合、アメリカの食品医薬品局、WHOによって認められています。(1)



「有効性について科学的に根拠がない」とした日本学術会議会長談話に対して「ホメオパシー医療の原理を理解していない」とするツッコミ所はおいておきまして、気になったのは「欧州連合の条例、欧州連合、アメリカの食品医薬品局、WHOによって認められています(1)」という一文。

最後に(1)とあるようにWHOの論文を引用しています。
でも、この論文はホメオパシーの効果を認めている訳では有りません

Safety issues in the preparation of homeopathic medicines」と題された論文で述べられているのはあくまでもホメオパシー療法で用いられる薬剤の安全性の問題や製造上品質管理等についての話です。

世界的に見て商品の市場規模は大きいし、毒となるようなものや生体組織を使っているわけですから“大丈夫なの”という観点で書かれたものです。
(読んでいけば判りますが、実際に植物アルカロイドの分析結果なんかも載ってます)
決してその「特別な方法で作られた薬剤」を推奨するものでは有りません。
ですからより正確に述べるとするならば、
「ホメオパシー療法に用いられる薬剤は、欧州連合の条例、欧州連合、アメリカの食品医薬品局、WHOによって薬剤摂取の安全性が認められています」
としたほうが親切でしょうね。(「安全性のみが」としたいところですが・・・)
正しく何についてWHOが述べたのかをきちんと伝えるべきではないでしょうか?
でないと論文を読まない現場の人が「FDAやWHOに有効性が認められている」なんて言い出しかねませんから。

こういった文言は、ホメオパシーに限らず、サプリメントや健康食品の販売の現場では誤解を誘うべく用いられるケースが多いです。
「FDA認可のサプリメント」なんて、意図的に言葉を排することによって。
何が認められているのかを正確に表現すべきでしょう。少なくとも協会という立場であるならなおさらです。

続いて気になったのは

3)「過去には「ホメオパシーに治療効果がある」と主張する論文が出されたことがあります。しかし、その後の検証によりこれらの論文は誤りで、その効果はプラセボ(偽薬)と同じ、すなわち心理的な効果であり、治療としての有効性がないことが科学的に証明されている。」とShang et alの論文を引用し言及しています(20)。
しかし、この論文は、ホメオパシーに対し懐疑的な部分が多く、実際ホメオパシーに対して懐疑的であった著者により偏った方法がとられ 、大いに欠陥のある研究である事が示されています(21-22)。



「Shang et alの論文を引用し言及しています(20)。しかし、この論文は、ホメオパシーに対し懐疑的な部分が多く、実際ホメオパシーに対して懐疑的であった著者により偏った方法がとられ 、大いに欠陥のある研究である事が示されています(21-22)。」
とあります。
このShang et alの論文こそがLancetの「Are the clinical effects of homoeopathy placebo effects? Comparative study of placebo-controlled trials of homoeopathy and allopathy」です。
(論文題名をクリックするとグーグルの検索に飛び、現時点で結果の上から4つ目でLancetのID無しでも全文のPDFが入手可能です)

「この論文は、ホメオパシーに対し懐疑的な部分が多く、実際ホメオパシーに対して懐疑的であった著者により偏った方法がとられ 、大いに欠陥のある研究である」とされていますが、読んでみれば判りますがそんなことはありません。

論文のBackgroundの部分を引用してみましょう。
「Homoeopathy is widely used, but specific effects of homoeopathic remedies seem implausible. Bias in the conduct and reporting of trials is a possible explanation for positive findings of trials of both homoeopathy and conventional medicine. We analysed trials of homoeopathy and conventional medicine and estimated treatment effects in trials least likely to be affected by bias.」
大雑把に訳すと
「ホメオパシーは広く用いられているが、その効果については懐疑的に見られることもある。西洋近代医学の研究でもホメオパシーの研究でも様々なバイアスが存在している。だからこそそのバイアスをできるだけ排除してこれらの医療の治療効果を評価しよう。」
というものです。

で、実際にホメオパシーの論文を110編集め、西洋医学の同様なものを110編集めて評価したわけです。
実際に詳細に論文を読んでいけば判りますが、「ホメオパシーに対して懐疑的であった著者により偏った方法がとられた」とは考えにくいです。
この根拠となる論文については入手できていないので正確さは欠けますが、Lancetの論文を読む限り、この論文に偏った方法は見受けられません。

結論ではこう述べられています。
「Biases are present in placebo-controlled trials of both homoeopathy and conventional medicine. When account was taken for these biases in the analysis, there was weak evidence for a specific effect of homoeopathic remedies, but strong evidence for specific effects of conventional interventions. This finding is compatible with the notion that the clinical effects of homoeopathy are placebo effects.」

ちょっと途中ですが予約の時間なのでここまでで、また追記します。

季節の移り変わりと体感温度

2010-09-15 09:54:38 | 治療院日記
台風9号以降、少しずつ秋に向かっていることが実感できるようになってきました。
晴れた日の最高気温は相変わらず高めですが、北からの風が多くなり朝晩は少しずつ冷え込んでいっています。

開院前の治療院の室温にも変化が如実に出ています。
8月の夏の盛りには出院してくると室温が32度なんてこともありましたが、ここ数日は30度を下回ってくるようになっています。
今日などは室温が出院時に26度。暖房の試運転を考えました。
今日の千葉方面の最高気温は26度程度。天気の良い時と悪い時、非常に気温差が大きくなるのもこの時期の特徴です。

春先の最高気温26度は暑く感じるのに、この時期の26度は少し冷え込むような感じ。
当たり前といえば当たり前ですが、人間の体感というのは面白いなぁとも。
体感温度と実際の温度は結構違うことが多いです。発熱をした時などでもそうですね。
熱が上昇中は、ちょっと温度が上がっただけでもすごく熱が上がったように感じることがあります。逆に発熱状態で解熱剤等を使用して体温が下がる時も実際の温度変化以上に下がったような気になったり。下がった気がしても実際には平熱を遥かに上回っていることも有りますね。

「数値上の変化」以上の物を体は感じて対応しようしているのでしょう。
だからこそこの時期は特に養生を心がけないと行けないのでしょうね。
思っている以上に変化に敏感になる、それが季節の移り変わりなんでしょう。

東洋医学でも用いられる二十四節気ではとうの昔に「立秋」を過ぎ、「処暑」を越え、現在は「白露」となっています。
あと一週間ほどで「秋分」となるわけですから、これから一気に寒くなるとも言えますね。

「白露」の解説には、「草に降りた露が白く光り始める」というような表現が有ります。
夏の強い日差しではキラキラ光って透き通るように見え、秋の柔らかな日差しではほのかに光、白く見える為でしょうか?
また、夏に比べ草に降りる露そのものの大きさが小さくなり白く見えるとも考えられますね。
夏には楽しく感じた露草を分け行っての朝の散歩も、この時期には少し露が冷たく感じられます。

秋と言えば「中秋の名月」もあと一週間。
別の呼び方では「芋名月」。元々はお団子ではなく芋の炊いたのを供えていたとのことです。
「仲秋の名月」という言い方もありますがどっちが正解なんでしょうね?
自分は「中秋」と思っていました。
今年の「中秋の名月」は9月22日。実際の月齢は13.7ということで満月の一日手前です。
なので月齢から行けば、本来は「待宵の月」で15夜は23日なんですね。
これは暦の計算方法から来るズレとも言えますが、このあたりの詳しい話は「こよみのページ」でご確認ください。
(自分も二十四節気の確認等でお世話になっているページです)

この時期なかなか晴れることはなく、月見ができないことの方が多いです。
まあ今年は里芋の塩煮でも作って月に供えてみようかとも考えています。

ホメオパシーで東京都立ち入り検査

2010-09-14 11:36:33 | 院長のひとり言
ホメオパシーで東京都の立ち入り検査が行われています。

ホメオパシーで東京都立ち入り検査
東京都は9月8日、代替医療法のホメオパシーで使用する砂糖玉を特定の病気に効果があるように広告したとして、販売会社であるホメオパシージャパン(株)(東京都世田谷区、代表取締役社長:倉元喜嗣)を立ち入り検査していたことが分かった。
ホメオパシー療法は、植物や昆虫、鉱物などの成分を薄めた水にして砂糖玉に染み込ませた「レメディ」を薬剤と同様に服用する民間療法。欧州では約200年の歴史があり、数年前まで医療保険にも適用されていた国もあった。
同社は2003年にも立ち入り検査を受けている。今回は同社が発行した広告チラシについて、アレルギーなどの生活習慣病に対し、あたかも効果があるものと誤解されかねない表現があったとして、都が直接立ち入り、改善を指導した。ホメオパシーについては日本医師会をはじめ日本医学会、日本学術会議などが治療効果そのものを否定している。一方、厚生労働省では今年2月に省内に設置した「統合医療プロジェクトチーム」にて効果を研究・検証するとしている。しかし、正しい療法かも分からないだけでなく、改善指導をたびたび受ける企業については、業務そのものの停止などの処分に出来ないものなのか。
健康情報 2010年9月11日 14:52

記事へのリンク

注意しなくてはいけないのは、ホメオパシーの有効性・無効性を問うというたぐいの検査ではない点です。
この立入検査はあくまで薬事法違反容疑に基づくものです。

勘違いをされているケースがマスコミを含めて多々見られますが、どんなに基礎研究や臨床的な研究が行われていても、健康食品やサプリメント、もちろんホメオパシーのレメディを含めて効果・効能をうたうことはできません。
効果・効能を表示・標榜できるのは、認可を受けた医薬品や特定保健用食品、また基準を満たした栄養機能食品に限られています。
もちろん何でも効果・効能をうたうことはできません。認可をうけた効能表示や配合した栄養素に関した表示しかできません。

では効能・効果を標榜した場合どうなるのでしょうか?
効能効果の標榜はすべて医薬品とみなされます。(詳しくは後述)
このため効能効果を標榜した商品が、医薬品としての認可を受けていない場合は偽医薬品として取締を受けるわけです。

今回の調査では
「同社が発行した広告チラシについて、アレルギーなどの生活習慣病に対し、あたかも効果があるものと誤解されかねない表現があった」
ため立ち入りに及んだわけです。
チラシが効能・効果の標榜をしているとされたわけです。
医薬品として認められていない商品をあたかも医薬品のように販売したということです。

この会社は2003年にも立入検査を受けています。
健康食品開発の元プロとして言わせていただくと、立入検査を受けるというのは重大な違反をしているということです。
通常は軽度な違反やミスであるなら電話連絡や呼出で注意を受ける程度です。
立入検査を受けるということ自体、最終通告のようなものです。
少なくとも健康食品の世界にいた頃に、取引先や交流のある販売会社で立入検査をうけたという話は聞いたことが有りません。
販売方法があまりにも悪質とみなされているとも言えます。
また2003年の立ち入りに続いて2度目という点も悪質ですね。

ホメオパシーの有効性・無効性とは本来は関係が無いのですが、悪質な販売業者がいるということは事実です。

健康食品やサプリメント等が医薬品と判定される場合は大雑把に以下の3つが有ります
1.医薬品にしか使用できない原料・成分を含んでいる商品
2.効能・効果の標榜を行った場合(特定保健用食品、栄養機能食品等認可、許可されたものを除く)
3.医薬品にしか使用できない剤形をとった場合(最近はかなり基準が緩くなっています)

1.の場合、最近のケースでは精力剤的な健康食品やサプリメントから、バイアグラの成分が見つかったケースが報告されています。
2.の場合、今回のホメオパシージャパンの問題をはじめ多くの販売会社や販売サイトで違法な表示があります。
3.の場合、10年以上前の話ですが、円形の錠剤は違法でした。このためわざわざ五角形やら三角形の型を作って錠剤にしていました。(現在は緩和されて円形の錠剤でもOK)また今では一般的なハードカプセルも昔は使用不可能でした。適用が緩和されて以降、この事例で薬事法違反になるケースは非常に少なくなっています。

ホメオパシーに科学的な根拠がないから、広告等での効能効果の標榜が許されないのでは有りません。
科学的な根拠があろうが、医薬品以外の標榜は許されていないのです。
(注 特定保健用食品や栄養機能食品等を除く)
そこは注意していただきたいものです。


食品の不適正表示 石井食品のケース

2010-09-13 17:54:03 | 院長のひとり言
ユウキ食品の不適正表示と同様の不適正表示が実は石井食品でも起こっていました。
ただし、だいぶ背景や企業としての対応が異なるように感じます。

新聞やネットの報道ではユウキ食品のケースと同様に扱われています。
以下は健康情報サイト(株式会社データ・マックス)より引用

消費者庁 石井食品の不適正表示に是正指示
12日、消費者庁は石井食品(株)(千葉県船橋市、代表取締役社長:浅井誠一)が食品表示において不適正な表示を行なっていたとしてJAS法に基づき是正指示を出した。
石井食品は同社が販売する加工食品『杏仁豆腐』の原材料について、添加物として「香料」を使用していたにもかかわらず一括表示欄の原材料名にこれを表示しなかった上、2008年5月から2010年5月24日まで31,827個を製造し一般消費者向けに販売したとされている。また、同商品に、「無添加調理 当社での、製造過程においては食品添加物を使用しておりません」と表示し、販売していた。
同社は、8月12日までに改善策を消費者庁長官あてに提出しなければならない。
2010年7月13日 11:08

健康情報サイト記事リンク

これだけ見ると消費者庁が発見したかのように書かれていますが石井食品のIR情報を見ると、自社で保健所並びに消費者庁へ報告を行ったとのこと。
石井食品IR情報リンク

以下石井食品IR情報より発見の経緯並びに経過部分

従来より原材料規格書を仕入先より取得した上で、原材料が当社の指定する規格に合致するかどうかを検証しております。当該原材料(杏仁霜)は台湾から商社を通じて輸入しておりましたが、平成22 年5 月に当該商社より原材料規格書を取得した際に、これまで入手していた原材料規格書に記載されていなかった「香料」の追加を発見し、直ちに事実関係を調査するとともに当該製品の出荷停止および店頭より回収を行いました。
また、この件に関しまして速やかに当社より保健所および消費者庁に報告し、本日、消費者庁の指示を確認いたしました。


輸入原料にはあることです。
結構な頻度で原材料規格書がかわるんですよね。
メーカーの出した規格書と購入した原料パッケージに表示されている内容がチガウなんてことも日常茶飯事だったり。
あまり悪意は感じない事件ということで取り上げなかったのですが、ユウキ食品の件を取り上げたのでコチラについても紹介します。

まあ、悪意は感じませんが甘さは感じます。
杏仁霜自体はメジャーな菓子原料です。また、杏仁霜とは言っても殆どの場合は原料となるのはアーモンド。
杏仁はシアン残存等で食品原料としての輸入が難しく、基準をクリアできたものがわずかに輸入されるのみです。
(結構検査で跳ねられるため、非常に輸入は不安定とのこと)
杏仁とアーモンド、似たようなものですがやはり香りが違うため、販売されているアーモンドを原料にしたほぼ全ての杏仁霜には香料が添加されます。
この事が菓子業界では常識のようなものですからメーカーの原料規格書に香料が無いと言って安易に信用するのはマズイ気もします。

結局、石井食品は5月の発覚以降、商品の製造中止・回収を行い、6月に消費者庁の実地調査、7月に消費者庁の是正指示、8月に改善報告書の提出を行っています。

石井食品は「イシイのおべんとくんミートボール」とう無添加の加工食品を製造販売している会社です。
1997年から食品添加物を使用しない取り組みをはじめた画期的な会社です。
実際に無添加への移行にあたっては、当時売上の10%を占めたコンビニ向け商材から撤退するなど非常に苦労をしています。
商品一点一点の加工日から使用原料にいたるまでのトレーサビリティーを実現した「OPEN ISHII」など、他社にない品質サービスを提供する会社でもあります。

そこまで努力をする企業でも間違いが起こる。
「無添加」というのは本当に難しい。

個人的には石井食品には頑張っていただきたいし、応援もしています。
料理が好きですから加工食品はあまり買いませんが、「OPEN ISHII」を試したくて時折購入しています。
一度試してみてください。初めて試したときは感動しました。
IT技術の進歩はこのようなところへの恩恵が一番大きいと感じたものです。

前の記事の繰り返しになりますが、ここまで品質管理に力を入れる石井食品ですら海外原料のトラブルに巻き込まれるわけです。
製造業者でもないサプリメントの販売業者に「無添加」「天然」ができると思いますか?
サプリメントを「天然・無添加」で行なおうとすれば、加工食品に比べて難易度は数十倍も跳ね上がります。
それに耐えうる会社があるとは、残念ながら思えません。

ユウキ食品 株式会社における加工食品(調味料)の不適正表示に対する措置について

2010-09-13 11:42:49 | 院長のひとり言
「ユウキ食品」は、中華料理の調味料で有名なメーカー。
料理をする人なら誰でも一度は購入経験があるのではないでしょうか?
ガラスープなどの中華調味料で一般に広く知られ、いろいろなスーパーの中華材料の棚には商品を見ることが可能な銘柄です。

この「ユウキ食品」に対し、農林水産省から加工食品(調味料)の不適正表示で是正指示が出されました。
農林水産省の報道発表

何をしたのか?というと、販売している「ガラスープ」や「オイスターソース」などの調味料の原材料の一部(食品添加物を含む)を意図的に表示しなかったということです。

このニュースは新聞、TVなどでも取り上げられたようですが、とんでもない方便で釈明しています。
以下に読売新聞の記事を引用します。

「隠し味は企業秘密」鶏ガラスープ材料表示せず
不正表示で改善指示を受けた「ガラスープ」
調味料の原材料の食品添加物を故意に表示しなかったとして、農林水産省は10日、中華食材メーカー「ユウキ食品」(東京都調布市)に対し、日本農林規格(JAS)法に基づき改善を指示した。
同社は「隠し味の企業秘密なので表示したくなかった」と釈明しているという。
同省によると、昨年4月~今年6月、鶏ガラだしの調味料「ガラスープ」に食品添加物のトレハロースが原材料に含まれているにもかかわらず、表示せずに233万個を販売。「オイスターソース」「甜面醤」などの調味料も同様に食品添加物を表示せず、2008年1月~今年6月、計415万個の調味料を不正な表示で販売した。ユウキ食品はJAS法に違反していることを認識していたという。
同社は「大変ご迷惑をお掛け致しました」とのコメントを出した。
(2010年9月10日23時45分 読売新聞)

読売新聞記事へのリンク

まず第一に、自社でJAS法違反を認識していたのにも関わらず不正な表示を続けていたという点が有ります。意図的に法を犯していたわけです。
加工澱粉やトレハロースは食品添加物です。これを表記していないのですから大問題。食品添加物の使用を意図的に隠していたわけです。

もっと問題なのは記事にもありますが「隠し味の企業秘密なので表示したくなかった」という釈明です。
新聞報道以上に悪質な点がここに隠れています。

農林水産省の報道資料をもとに解説していきます。
「ガラスープに加工でん粉(食品添加物)を使用しているにもかかわらず、これを原材料として表示しなかったこと」
上記の行為については、乳糖の入手困難時のみに行う一時的な代用品として加工でん粉を使用したため、一時的なものと考え、意図的に表示しなかったこと釈明しています。
「ガラスープ」への乳糖の添加は造粒(粉末スープを粒状にする)を目的に行っていたと推測できます。
商品の粒状から押し出し造粒法と呼ばれる方法で製造されていることが考えられます。こういった製造では賦形剤として乳糖や加工澱粉が使用されます。
ただし、不足したからと言って簡単に置き換えできるものなのか?という疑問が有ります。乳糖と加工澱粉は多少性状が異なるので簡単に置き換えできないと思うのですが。
少なくとも前職の健康食品会社の品質管理の責任者は単純な置き換えなんて許しませんでした。原材料の変更時には一から試作に試験を重ねていました。
さらに一時的な原料の変更でも表示はキチンと直していました。実際に訂正シールを貼ったりした思い出もあります。

さらに悪質さを感じるのは以下の2商品。
「オイスターソースの原材料表示について、食酢、たん白加水分解物(アミノ酸混合物)、イーストエキス(うまみ調味料)及びトレハロースを使用しているにもかかわらず、これらを原材料として表示しなかったこと」
「甜麺醤の原材料表示について、酵母エキス(酵母を原料としたグルタミン酸を含んだうまみ調味料)を使用しているにもかかわらず、これを原材料として表示しなかったこと」
これらの行為については、
「隠し味として使用していることから、企業秘密として、意図的に表示しなかった」
と農林水産省に説明しています。

でもこれは方便でしょうね。
是正前後を比べてみると解りやすいです。オイスターソースを例にとってみましょう。

「オイスターソース」
是正前  カキエキス、砂糖、食塩、澱粉(コーンスターチ) 
是正後  カキエキス、砂糖、食塩、食酢、たんぱく加水分解物、イーストエキス、トレハロース、加工澱粉(コーンスターチ)、増粘剤(キサンタン)

個人的に「悪質だなぁ」と思います。
是正前の表示では旨みはすべてカキエキスから来ていることになります。
でも実際には、たんぱく加水分解物やイーストエキスといった旨味成分を別途足している訳です。あたかも牡蠣の旨味だけで構成される商品という誤認識を与えている訳です。
企業秘密なんて言葉でごまかしていますが、他社の原料表記をみれば旨味成分の使用は一般的です。というか、すべての製品に使用されていると言って過言では有りません。
こういった点を考慮すれば企業秘密ではなく、

「消費者にカキエキスのみという優位性を表示して誤認させるため」

に行っていた、と言うべきでしょう。
競合品の李錦記やCookDoの商品ではアミノ酸や調味料の使用が表記されています。

実際にユウキ食品のオイスターソースを扱っている通販会社ではカキエキス100%というような表記を行っている例が非常に多いです。
(アマゾンや楽天市場、ケンコーコムなんかで9月13日現在確認可能です)
今となっては、この表記じゃ詐欺ですわな。
どれぐらいで訂正されるのか観察してみようと思っています。

有力調味料会社ですらこの有様です。サプリメントにいたっては言うまでも無いでしょう。
「無添加」とか「天然」とか「自然」という表現は簡単に使用できますが、製品で実現するのは難しいのです。