黒砂台鍼灸あん摩治療院

鍼灸院の日常日記

東洋医学のお勉強 便利な年表

2010-10-29 11:02:20 | 東洋医学について
東洋医学の勉強をしていく上で非常に便利な年表があります。



東洋学術出版社刊『中国医学の歴史』(主編・傅維康)の巻末に載せられている年表です。こんな感じの年表で歴史的な推移から文献の成年、実際の刊行年などが非常に細かくわかります。古典を勉強するのであればこういった年表は必須です。類似書籍の刊行年度を比較したり影響を考えたり色々便利に使っています。

学生時代に国試勉強が嫌で図書室で本を漁っているときに見つけてコピーして以降便利に使わせていただいています。
最近やっと気づいたのですが、東洋学術出版社ではこの年表はPDFで公開なさっています。太っ腹です。古典を勉強しようという者のために良く考えてくれています。本当にありがとうございます。
(上記年表の画像をクリックすると東洋学術出版社さまのHPに飛びます)



自分でコピーしたものはだいぶボロボロ。ラインを引いたり書き込んだり。早速PDFから新しく印刷をしなおします。

こういった年表を見るとよく判りますが、<「黄帝内経」成る>とされた年代と実際に私たちが勉強できる「現在に残っている古典」とでかなりの年代を経ているのが判ります。
自分がよく読む「難経」においては、紀元25年~210年に成ったとされていますが、実際に手元にある「難経」の底本は1366年滑寿による「難経本義」であることが多いですし、解釈本の元祖とも言える「難経集注」に至っては1505年頃とされています。
実際に「難経集注」の勉強用に使用している日本内経医学会さまの「難経」は「王翰林集注黄帝八十一難経」で日本で慶安5年(1652年)に刊行されたものです。
(内経医学会さまの「素問」「霊枢」もしっかりとした底本を写したものなので古典を勉強されるならもっておいて損はないです。しかも安いし)

古典の勉強も年表を傍らに置きながら行うとなかなか楽しいです。



























台座灸(温筒灸、円筒灸)のテスト秋編

2010-10-28 09:37:02 | 施術の説明 お灸
だいぶ寒くなってきました。季節の変わってきたのを実感できる季節です。
治療院で治療をしていても患者さんの脈や愁訴から秋というか冬の到来が感じられます。

鍼灸の施術では季節ごとに刺激量の目安も変わってきます。
鍼では「夏は浅く、冬は深く鍼を留める」なんて言い方をしますがお灸でも同じです。やっぱり寒くなってくると夏と同様の刺激では期待した効果が出にくくなってきます。

よく使う台座灸や円筒灸でも同じ。実際に夏と比べてどれくらいの刺激量があるのかテストしてみました。
今回は新規に導入したお灸を中心に行っています。



写真のようにこの5種類です。
新顔は右側の三種類。特に真ん中とその右の2つは「熱い」と感じる刺激感が少なく気持ちのいいお灸となるので、複数壮据える際の主力として使い始めています。

実施は単壮で条件はほぼ一緒。で、点火していきます。



後は続きで





これが終了直後、ヤニのみ拭きとった直後の状態です。

見ての通り左側の3つはなかなか良い感じに発赤しています。左側2つはどちらも熱感が弱のタイプなので発赤も弱めです。特に右はじの円筒灸はちょっと弱いですね。同じような円筒灸でも左はじのカマヤミニに比べると感覚的にも弱いです。これは複数回据えないとちょっと治療効果は期待できないかな?



これは施灸後一日(約20時間)の様子。基本的に円筒灸はしっかり発赤が残っていますが、台座灸はほとんど確認できません。ちなみに右はじの円筒灸はかろうじて発赤が肉眼で確認できます。
ただし、夏場や気温の高い時期に比べると明らかにどのお灸も発赤は少なめ。やはり刺激量を少し高める必要を感じます。
季節の変化が直接治療方法や刺激量に関わる東洋医学。毎週とはいきませんが定期的にチェックをしていっています。

棒灸や塩灸でもこの傾向は全く一緒で、塩灸の艾の量は夏場に比べやや増量。棒灸はこの時期から患者さん一回あたりの使用量がかなり増えています。
結果的に治療院に煙るお灸の煙の量も増え、空気清浄機はかなりブンブン頑張っています。




塩灸の道具 脇役編1

2010-10-27 17:24:06 | 施術の説明 お灸
塩灸の条件出しも終わりまして、やっと晩秋の条件が出ました。同時に冬用の条件出しの下準備も終了。

塩灸で問題になるのが着火なんですね。マッチを使うのか、ライターか、チャッカマンか。まあ一番楽なのがチャッカマンです。
ところがこのチャッカマン、ガス充填式のものが売っていないんです。
塩灸をやった事のある人ならわかると思いますが塩灸で使用する艾は荒もぐさ。ちょっと火が回りにくいんですね。このため塩灸の着荷時には周り全体に点火すべく結構長時間炙り続けるわけです。
そうするとガスの消耗は激しく、下手すると一本のライターが2,3日で終わってしまいます。もったいないですよね。
で充填式のものを探していたのですがチャッカマンの本家である東海さんには無いんです。(今調べたら仏事用の新ともしびという製品が唯一有りました。仏具屋なら売っているのかしら?)他社でも少なく、最終的に行き当たったのが100円ショップのチャッカマン。でもダイソーとかには売っていないんですよね。
見つけたのは近所の独立系の100円ショップ。以来10回近く充填していますがなかなか良いです。

もうひとつ塩灸にかかせないのがキッチンタイマー。これもなかなか気にいるのが見つからず最終的にはチャッカマンを購入した店で見つけたものに落ち着きました。
表示が大きく、形もなかなかカッコ良い!ということで5個も買っちゃいました。

因みにチャッカマンとキッチンタイマーの写真はこんな感じ。



チャッカマンについては、まあ見たままです。なんといってもキッチンタイマーが秀逸!。ipodみたいな薄手でカッチョいい外観にデカイ表示!(文字の縦サイズが2.5cm)老眼になっても安心です。



まだ幸いにして老眼は出ていませんが、自分の年齢から考えれば近い将来なりそうです。そうなってもこの表示なら大丈夫でしょう。

問題はこの2つの商品、購入先の100円ショップでも人気のようでちょくちょくチェックしても品切れのことが多いこと。幸い先日大量入手をしたので当面は問題有りません。

ちなみに、海外では100円ライターでも充填式が当たり前。というか充填式でないと売れないようです。
イスタンブールでは露天のタバコ屋の兄ちゃんがガスやジッポオイルの充填の営業も行っていました。



テーピングについて 西洋医学的?東洋医学的?

2010-10-27 09:40:19 | 治療院日記
治療院では鍼や灸だけでなくテーピングも使うことがあります。というか結構使います。

ただしスポーツ選手のように患部や関節を固定する目的で使うのでは有りません。このためスポーツでよく用いられるホワイトテープはほとんど使いません。
今日はテーピングについて少しだけ。

代表的なテーピングの種類
1.ホワイトテープ
 伸縮性がなく関節の固定などに用いる粘着力の強いテープ
2.伸縮性テープ
 固定力はやや劣るが伸縮性があり、ある程度動かすことが可能
3.キネシオテープ
 固定目的ではなく筋肉の動きを補う目的で使用 


治療院に来られる患者さんでテーピングの対象となる方にはほとんど酷い外傷性の方はいらっしゃいません。スポーツのような激しい運動で関節や筋肉を障害したわけではなく、ほとんどの方は日常生活の範囲内で運動器に影響が出た方が多いです。
こういった患者さんにあまり強く関節の固定をしてしまうとかえって別の部分に問題が出てしまいます。
例えば足首が痛いという患者さんがいるとして、強く足首を固定してしまうと膝や腰にかえって不具合が出てくることが有ります。足首で吸収するはずだった負荷が他の部分に行ってしまうためです。
スポーツをするような人や若い方の場合は筋力や関節に余裕があるので固定しても問題はないのでしょうが、お年をめしたり筋力や関節に余裕がなくなった患者さんでは他の部分が固定により発生する負荷を受け切れないことが有ります。

このため当院ではホワイトテープの出番はほとんど有りません。一番使うのがキネシオテープで次いで伸縮性テープです。キネシオテープも通常のものより弱めの粘着力のものを使用しています。
お年をめしてくると肌が乾燥したり薄くなっている方が多くなるためです。また、同じ理由で伸縮テープも通常の粘着性を持ったものではなく自着性テープというものを使用することが多いです。
自着性テープはテープ同士はくっつきますが、糊は使用していないため肌にはくっつきません。このため肌への刺激は少なく、巻き直し等も出来ます。やや粘着力が弱いのとテープ自体が少し荒い感触なのは欠点ですが重宝しています。

テーピングを行う際には治療の最後に行う治療の総仕上げと考え行っています。鍼したり灸したりあん摩したり、これで得た全身情報で貼り方(張り方)を工夫します。足首が痛くても足には貼らずに背中に貼ったり膝に貼ったり、場合によっては肩にしたり。結局、テーピングを使っても基本的な考え方は経絡治療などの東洋医学に基づいた形になってしまいます。


多剤耐性菌対策に古い抗生物質?

2010-10-26 16:14:35 | 西洋医学について
Yahoo!ニュースを見ていたらこんな記事がありました。

60年前発見の抗生物質復活、多剤耐性菌に効く

 主要な抗生物質が効かない多剤耐性菌の増加を受け、厚生労働省の薬事・食品衛生審議会は25日、60年前に日本で発見され、その後使われなくなっていた抗生物質コリスチンを、多剤耐性菌への使用に限って復活させる方針を決めた。
 すでに英グラクソ・スミスクライン社が臨床試験を始めているといい、優先的に承認審査を進める。
 コリスチンは1950年、福島県内で採取された土壌細菌から発見された抗生物質。大腸菌や緑膿(りょくのう)菌などに効果があるが、過剰投与すると神経障害や腎臓障害などの副作用がある。70年代まで盛んに使われたが、その後は使われなくなり、90年代に国内での製造が終了。承認も取り消された。
 だが、今年に入って、多剤耐性菌のアシネトバクターのほか、ほとんどの抗生物質を分解するNDM1酵素を持った大腸菌などが国内にも出現。多剤耐性緑膿菌も数年前から確認されていることから、これらに効くコリスチンを独自輸入する医療機関が増え、日本感染症学会などが早期承認を求めていた。

読売新聞 10月26日(火)1時48分配信

こういったことはこれから少しづつ増えてくるのではないでしょうか。
特にこの“コリスチン”はβラクタム系の抗生物質とは異なり、細胞膜を直接障害するタイプなので効果は期待できそうです。また耐性の獲得にも時間がかかるのではないでしょうか。
問題は記事中にもあるとおり、副作用ということでしょう。神経毒性や腎毒性が高いというのは使う際に慎重に見極めながら行う必要性がありますし、なにより多剤耐性菌のリスクが高い高齢者などはすでに腎機能が低下している場合も多いので。
安全性の問題もありますし、“多剤耐性菌に限り”の復活承認なので乱用等は無いでしょう。何よりも多剤耐性菌の対抗手段をもってもっておけるというのは大事だと思います。

しかしこういったものをすでに独自輸入に動いている医療機関があるとのはなし、恐れ入るばかりです。