黒砂台鍼灸あん摩治療院

鍼灸院の日常日記

専門書の購入

2010-09-11 11:55:29 | 治療院日記
日々多くの書籍が出版されています。
専門書も例外ではなく多くの物が出版されあっという間に廃版になっていきます。
限られたお金でやりくりしながら本を買うわけです、このため何を買うべきかという点で一番迷います。

無尽蔵に購入できるお金があれば全部買いますが・・・そうは行きません。
自分なりに興味を持ったり必要性を感じたものを少しずつ買うわけです。
とは言っても近所に専門書の豊富な書店は有りませんから通販での購入です。
一般書ならアマゾンや近所の書店なんかで購入しますが、専門書はやっぱり専門のところで購入しています。

最近は「医道の日本社」と「亜東書店」での購入が多いです。

同業の方なら御存知の通り「医道の日本社」は東洋医学や代替療法等の本を数多く出している出版社です。
以前紹介した「鍼のエビデンス」をはじめ良書をおおく出しています。
自分は月刊「医道の日本」の出版案内を参考に専門書を選ぶことが多いです。
そして「亜東書店」は中国書籍や韓国・台湾の書籍を輸入販売をしている書店です。
もちろん輸入書籍だけではなく日本国内の専門書で入手性の悪いものの取り扱いも多く有ります。
そんなに頻繁に購入はしていませんが書籍案内を頻繁に送ってくれるのでこれを参考に購入書籍を決めてます。

送料もかかるし、アマゾンより配送も遅いのですが、どちらも潰れたら困るのでできるだけこの2店から買うようにしています。
(注 アマゾンはプレミアム会員なので下手すると当日に着きます)

ネットでの情報入手もたやすい昨今ですが、できるだけ本を購入するようにしています。
情報にはきちんと対価としてお金をはらうため、なにより専門書の出版社や頼れる専門店がなくなってしまっては困るからです。


以前、出版社の方とお話したときに聞いたのですが、プロが専門書を買わなくなってきているそうです。
鍼灸師の数自体は、新設校の増加などでものすごく増えています。なのにプロ向けの専門書の売れ行きは落ちる一方だそうです。
一方で素人向けの簡単な本は売れるそうです。
ヤバイです。
情報に投資をしないプロが多くなればレベルは下がる一方です。

貧乏鍼灸あん摩院ですが、できるだけキチンと情報に投資をしていきたいものです。

ISSからの風景

2010-09-10 17:41:03 | 院長のひとり言
ISS(国際宇宙ステーション)を見よう!
なんて記事を数回書いています。記事はコチラ

こっちから見えるってことは、あっちからも見えるわけです。
ISSから見た地球の風景をTwitterで配信してくれている宇宙飛行士さんがいます。
ちょっと怪しい某ニュースサイト(ロケットニュース24)で発見しました。


(クリックでNASAの宇宙飛行士Douglas H. Wheelockさんのtwitpicに飛びます)

巨大なハリケーンや地球の外から見たオーロラなどなど。ISS内での活動の様子も。
こんな風景を見えるなんてなんとも羨ましい。
ちょっと妬ましく思います。
本家の画像のオリジナルは大きいのでPCで見ると結構キマスよ。

ちなみに東京近郊でISSが次に観測可能なのは9月12日19時30分頃。
詳しくはコチラの「ISSをみよう」を参照してください。
ひよっとしたらWheelockさんも日本を覗いていたりして。

秋に向けた準備 塩灸

2010-09-10 09:48:10 | 治療院日記
台風というか、熱帯低気圧の通過と強烈な降雨によって一昨日から急に気温が下がり始めています。
こういう時期は体調の変化も激しくなりやすく注意が必要です。

大雑把ですが、東洋医学の考え方では、温度が下がると「気」そのものの持つ運動性も低くなると考えます。
急激な温度変化では「気」を巡らす力が不足したり、気を生成する能力が追いつかなかったりするなどで、急にダルさを感じ体調が悪くなるようなケースが有ります。
この時期は気温の変化に注意してください

少し前まで頑張っていた院内の冷房も昨日はほとんど出番なし
日差しが強い時だけ動いているような状況です

そんなわけで院内も秋に向けた準備を始めました

エアコン以外の暖房機の検討もしているのですが、これはガス暖房機の導入が決定済み。
大事なのはお灸の条件変更。
特に塩灸、寒くなると塩の温度自体が下がり、着火から患者さんに使用できるまでの時間も大きく違ってきます。
塩の温度をある程度保つ工夫やもぐさの量の調整など少しずつやっています。



臨床治験の基本情報について1

2010-09-09 12:04:48 | 西洋医学について
先だってのホメオパシー問題では日本学術会議会長談話で
「ホメオパシーの治療効果は科学的に明確に否定されています」
と書かれています
つまりホメオパシーに「科学的なエビデンスはない」と言っているわけです
(文言のクリックで会長談話のPDFに飛びます)

東洋医学の治療家としては「対岸の火事ではない」というのもあってでは「科学的なエビデンス」とはどういう事なのかをもう一度勉強しなおしています

どうしても問題になるのは臨床治験の取り方です
ホメオパシーについては治験そのものはかなりの数があります
そうでありながらここまで明確に否定するような発言が出てくるということは、その治験内容が「科学的なエビデンス」を満たしていないということなのでしょう

そこで治験について少しずつ勉強している内容をメモがわりに残しておこう

自分なりの勉強で項目や治験評価法の参考としたのは先日紹介した「鍼のエビデンス」
「治験のデザイン」「セッティング」「対象となる患者」「介入」「主なアウトカム評価事項」といった項目で共通して治験の抄録が掲載されています
(上記項目分けは「鍼のエビデンス」中のFACT誌で用いられている項目)
そこで今回は「治験のデザイン」についてまとめてみました

●治験のデザイン
実際にどのように治験を実施したかが書かれています
ブラインド(実施者、被験者、評価者等)、パラレル試験、クロスオーバー試験、ランダム化比較、プラセボ使用の有無など
門外漢からすると非常に煩雑に感じます
自分なりに分けて以下に記載

○ブラインド試験の種類
1 ダブルブラインド(二重盲検法)
被験者、治験実施者のどちらも割りつけられた治療内容を知らない治験
2 シングルブラインド(単盲検法)
治験実施者は割りつけられた治療内容を知っているが、被験者が知らない治験
3 オープンスタディ(非盲検法)
被験者、治験実施者とも割りつけられた治療内容を知っている治験

ブラインドが施されないほど「バイアス」により治験結果が歪められると考えられます
このため1>2>3と「科学的なエビデンス」に対して信頼性が高い治験に  

○パラレル試験とクロスオーバー試験
1クロスオーバー試験
クロスオーバー試験では,すべての被験者はすべての治療法を受ける治験
A,Bという2つの治療法を比較するのであれば最初にAを実施し、その後にBを実施するというように行われます
また、最初にBを実施た被験者であれば、次いでAを行うという形になります
ブラインド試験と組み合わせて実施されることも多いです

この治験は同一被験者で治療法の効果の確認ができることやで個人差を排除できることが第一のメリットです
またプラセボを用いる治験ではプラセボ→治療法、治療法→プラセボと切り替わることでの変化の有無をは観ることができるため有用な方法です
一方で治療期間が長い治療の治験には向かない点や前治療の持続効果の影響を排除しにくいこと、治験期間が長くなりがちで脱落者が増えやすい等の欠点も有ります
ブランド試験と組み合わせて行われる治験が多いです

2パラレル試験
パラレル試験は並行群間比較試験とも呼ばれるように治療法を並行的に比較する治験
ひとりの被験者に行われる治療法は1つ
A,Bの治療法の比較ではAを実施する群、Bを実施する群に分けられ行われます

一般的に行われる形ともあって表記が無いケースも有ります
例えば「二重盲検法」とのみ記載されている場合でも、クロスオーバー試験の表記がなければ「二重盲検法によるパラレル試験」と解釈することができます

○評価者のブラインド
治験内容を知らされていいない医師等が治験の評価を行う場合、評価者のブラインドがなされているとなります
評価における「バイアス」の排除に有用です
特にスコア評価や相対的な評価を実施する場合にはこの点を重視する必要がありますが、生化学検査など機械的に数値を導き出す場合でも評価者のブラインド化は重要とされています
一方、ダブルブラインドが実施されているような場合では評価者のブランドがなされていなくても「科学的なエビデンス」の低下が少なくなるのでは?とも言われますが、評価を第三者が行った治験の方が「科学的なエビデンス」は高いと言えます

○ランダム化比較
ランダム化比較とは被験対象者の各治験内容への割付をランダムに実施するものです
機械的に無作為に被験者を治験対象となる各治療法に振り分けます
これにより、「効きそうな対象を治験薬に割付し、効かなそうな対象をコントロールに割りつける」というような「バイアス」の排除ができると考えられます
ランダム化比較は被験者の分け方なので、各ブランドテストやクロスオーバー試験、パラレル試験などと組み合わせて実施されます
このような点から「ランダム比較化」を実施した治験の方が「科学的なエビデンス」が高いと考えられます

○プラセボ
どのように効果のある治療法であっても比較対象となるものがない場合、「科学的なエビデンス」とはなりにくいです
一般的にはプラセボ(偽薬)のような生理作用の無いと考えられるものを使用して治療を行ない、比較します
「プラセボ自体に生理作用がない」というのが最も重要になりますが、鍼灸のプラセボ(偽鍼)などでは生理作用を否定できないものも有り、ざまざまなプラセボ(偽鍼)が提案されるなど現在も検討が行われています

プラセボの使用が難しい場合は、当該疾患に対する一般的な治療や無治療との比較を行う場合もあります
「科学的なエビデンス」の確立された治療法を比較対象とした治験では「科学的なエビデンス」は上がります
一方で無治療との比較はプラセボ効果の排除がしにくいため「科学的なエビデンス」は下がる方向になります


少なくともこの程度の用語を頭においておくと治験や症例報告を読んで勉強する際の参考にはなるのでは?

次は「主なアウトカム評価事項」に対してのメモの予定







鍼灸のエビデンス確立の難しさ

2010-09-08 17:15:01 | 東洋医学について
「鍼のエビデンス」を読んでいて、鍼灸で高いエビデンスを確立する難しさを感じています

鍼灸だけでなく、あらゆる治療や薬物の効果を検証しエビデンスを得る上でもっとも重要なのはバイアスの排除です
「バイアス」とは直訳すれば「偏り」で治験等においては「ひいき目」「先入観」「偏見」とも考えると分かりやすいかもしれません
人間は非常に繊細で、簡単に騙されるものです
良い薬だと言って飲ませれば砂糖水でも効果が出ることが有ります
一方、効果のない薬だと渡せば効果の高い薬で結果が出ないこともあります
このため正確な効果を図るということは本当に難しいのです
一般的には比較対象を作って効果を比較します
また試験を行う側がバイアスを持ち、それを患者に誘導するようになってしまえばエビデンスを確立することは不可能です
治験を行う際にもっとも重要なのが「バイアスの排除」なんです

医薬品の世界では、治験を行う際に「プラセボ」と呼ばれる偽薬を使用することが多いです
これは乳糖やブドウ糖のように薬理効果の殆ど無いもので作られています
治験に用いる場合は、形状・見た目・味・匂いまで対象物とプラセボをあわせてしまう方が望ましいとも考えられます
見たり飲んだりした時の印象によるバイアスを排除するためです

このプラセボを使用した治験群をコントロールに用いて、対照薬を使用した対照群と比較することで薬効や効果の確認を行ないます
こういったプラセボを用いた比較試験にも様々な方法が有ります
有名なものですは「二重盲検法」「単盲検法」「非盲検法」なんてやり方が有ります
このあたりの治験実施の方法とエビデンスレベルのおはなしは別の機会にお話します
(最近のホメオパシー問題に絡めて書きたいと思います)

鍼灸の治験に話をもどすと、当たり前ですが二重盲検法はできません
また、最も難しいのがコントロールのをどのように作るのかという点です
欧米では一般的にシャム鍼(sham)と呼ばれる偽鍼が用いられますが、問題点も多く指摘されています
これは経穴(ツボ)でない部分に鍼を刺してコントロールとして使用するわけですが、刺すことには変わりはないわけです
治験等によっては刺鍼の深さを浅めに変えていたりしますが、日本の経絡治療は浅刺で治療を行っています
また、経穴(ツボ)を外したり浅刺でも生理学的な変化を引き起こしてしまうということが報告されています

このため、こういったバイアスを排除するために刺さない鍼をコントロールとする方法も取られていますが、患者にそれと解かるため盲検法にならないなどの問題が指摘され、報告のエビデンスレベルを下げてしまうことも有ります
先に少し述べたように、残念ながら鍼灸では二重盲検法は取れません
少なくとも刺鍼側(鍼を刺す側)はそれが治験鍼なのかコントロール鍼(シャム鍼)なのかを知っていますので二重にならないのです
患者側にコントロールかどうかを感知させずに行うことが出来れば単盲検、患者にわかってしまうようなら非盲検試験になってしまうわけです
このため患者にわからない偽鍼の研究も盛んに行われています

こういった事情などから、コントロールを用いた鍼灸の治験は非常に難しくなっています
どうしてもオープンスタディのような報告が増え、エビデンスレベルが高い報告が出にくいのも現状です

だからと言って鍼灸にエビデンスがないわけではありません
コントロール群や比較対照群に標準治療で用いられる医薬品を使用した治験でも有用性が確認された報告も有ります
こういった医薬品をコントロールや比較対象とする治験はある意味で最も難易度の高い治験法とも言えるやり方です

まだまだ鍼灸のエビデンス確立は道半ばです
でも、いくつかの治験で明確なエビデンスが確立されているというのは本当に心強く思うわけです