黒砂台鍼灸あん摩治療院

鍼灸院の日常日記

食品の不適正表示 石井食品のケース

2010-09-13 17:54:03 | 院長のひとり言
ユウキ食品の不適正表示と同様の不適正表示が実は石井食品でも起こっていました。
ただし、だいぶ背景や企業としての対応が異なるように感じます。

新聞やネットの報道ではユウキ食品のケースと同様に扱われています。
以下は健康情報サイト(株式会社データ・マックス)より引用

消費者庁 石井食品の不適正表示に是正指示
12日、消費者庁は石井食品(株)(千葉県船橋市、代表取締役社長:浅井誠一)が食品表示において不適正な表示を行なっていたとしてJAS法に基づき是正指示を出した。
石井食品は同社が販売する加工食品『杏仁豆腐』の原材料について、添加物として「香料」を使用していたにもかかわらず一括表示欄の原材料名にこれを表示しなかった上、2008年5月から2010年5月24日まで31,827個を製造し一般消費者向けに販売したとされている。また、同商品に、「無添加調理 当社での、製造過程においては食品添加物を使用しておりません」と表示し、販売していた。
同社は、8月12日までに改善策を消費者庁長官あてに提出しなければならない。
2010年7月13日 11:08

健康情報サイト記事リンク

これだけ見ると消費者庁が発見したかのように書かれていますが石井食品のIR情報を見ると、自社で保健所並びに消費者庁へ報告を行ったとのこと。
石井食品IR情報リンク

以下石井食品IR情報より発見の経緯並びに経過部分

従来より原材料規格書を仕入先より取得した上で、原材料が当社の指定する規格に合致するかどうかを検証しております。当該原材料(杏仁霜)は台湾から商社を通じて輸入しておりましたが、平成22 年5 月に当該商社より原材料規格書を取得した際に、これまで入手していた原材料規格書に記載されていなかった「香料」の追加を発見し、直ちに事実関係を調査するとともに当該製品の出荷停止および店頭より回収を行いました。
また、この件に関しまして速やかに当社より保健所および消費者庁に報告し、本日、消費者庁の指示を確認いたしました。


輸入原料にはあることです。
結構な頻度で原材料規格書がかわるんですよね。
メーカーの出した規格書と購入した原料パッケージに表示されている内容がチガウなんてことも日常茶飯事だったり。
あまり悪意は感じない事件ということで取り上げなかったのですが、ユウキ食品の件を取り上げたのでコチラについても紹介します。

まあ、悪意は感じませんが甘さは感じます。
杏仁霜自体はメジャーな菓子原料です。また、杏仁霜とは言っても殆どの場合は原料となるのはアーモンド。
杏仁はシアン残存等で食品原料としての輸入が難しく、基準をクリアできたものがわずかに輸入されるのみです。
(結構検査で跳ねられるため、非常に輸入は不安定とのこと)
杏仁とアーモンド、似たようなものですがやはり香りが違うため、販売されているアーモンドを原料にしたほぼ全ての杏仁霜には香料が添加されます。
この事が菓子業界では常識のようなものですからメーカーの原料規格書に香料が無いと言って安易に信用するのはマズイ気もします。

結局、石井食品は5月の発覚以降、商品の製造中止・回収を行い、6月に消費者庁の実地調査、7月に消費者庁の是正指示、8月に改善報告書の提出を行っています。

石井食品は「イシイのおべんとくんミートボール」とう無添加の加工食品を製造販売している会社です。
1997年から食品添加物を使用しない取り組みをはじめた画期的な会社です。
実際に無添加への移行にあたっては、当時売上の10%を占めたコンビニ向け商材から撤退するなど非常に苦労をしています。
商品一点一点の加工日から使用原料にいたるまでのトレーサビリティーを実現した「OPEN ISHII」など、他社にない品質サービスを提供する会社でもあります。

そこまで努力をする企業でも間違いが起こる。
「無添加」というのは本当に難しい。

個人的には石井食品には頑張っていただきたいし、応援もしています。
料理が好きですから加工食品はあまり買いませんが、「OPEN ISHII」を試したくて時折購入しています。
一度試してみてください。初めて試したときは感動しました。
IT技術の進歩はこのようなところへの恩恵が一番大きいと感じたものです。

前の記事の繰り返しになりますが、ここまで品質管理に力を入れる石井食品ですら海外原料のトラブルに巻き込まれるわけです。
製造業者でもないサプリメントの販売業者に「無添加」「天然」ができると思いますか?
サプリメントを「天然・無添加」で行なおうとすれば、加工食品に比べて難易度は数十倍も跳ね上がります。
それに耐えうる会社があるとは、残念ながら思えません。

ユウキ食品 株式会社における加工食品(調味料)の不適正表示に対する措置について

2010-09-13 11:42:49 | 院長のひとり言
「ユウキ食品」は、中華料理の調味料で有名なメーカー。
料理をする人なら誰でも一度は購入経験があるのではないでしょうか?
ガラスープなどの中華調味料で一般に広く知られ、いろいろなスーパーの中華材料の棚には商品を見ることが可能な銘柄です。

この「ユウキ食品」に対し、農林水産省から加工食品(調味料)の不適正表示で是正指示が出されました。
農林水産省の報道発表

何をしたのか?というと、販売している「ガラスープ」や「オイスターソース」などの調味料の原材料の一部(食品添加物を含む)を意図的に表示しなかったということです。

このニュースは新聞、TVなどでも取り上げられたようですが、とんでもない方便で釈明しています。
以下に読売新聞の記事を引用します。

「隠し味は企業秘密」鶏ガラスープ材料表示せず
不正表示で改善指示を受けた「ガラスープ」
調味料の原材料の食品添加物を故意に表示しなかったとして、農林水産省は10日、中華食材メーカー「ユウキ食品」(東京都調布市)に対し、日本農林規格(JAS)法に基づき改善を指示した。
同社は「隠し味の企業秘密なので表示したくなかった」と釈明しているという。
同省によると、昨年4月~今年6月、鶏ガラだしの調味料「ガラスープ」に食品添加物のトレハロースが原材料に含まれているにもかかわらず、表示せずに233万個を販売。「オイスターソース」「甜面醤」などの調味料も同様に食品添加物を表示せず、2008年1月~今年6月、計415万個の調味料を不正な表示で販売した。ユウキ食品はJAS法に違反していることを認識していたという。
同社は「大変ご迷惑をお掛け致しました」とのコメントを出した。
(2010年9月10日23時45分 読売新聞)

読売新聞記事へのリンク

まず第一に、自社でJAS法違反を認識していたのにも関わらず不正な表示を続けていたという点が有ります。意図的に法を犯していたわけです。
加工澱粉やトレハロースは食品添加物です。これを表記していないのですから大問題。食品添加物の使用を意図的に隠していたわけです。

もっと問題なのは記事にもありますが「隠し味の企業秘密なので表示したくなかった」という釈明です。
新聞報道以上に悪質な点がここに隠れています。

農林水産省の報道資料をもとに解説していきます。
「ガラスープに加工でん粉(食品添加物)を使用しているにもかかわらず、これを原材料として表示しなかったこと」
上記の行為については、乳糖の入手困難時のみに行う一時的な代用品として加工でん粉を使用したため、一時的なものと考え、意図的に表示しなかったこと釈明しています。
「ガラスープ」への乳糖の添加は造粒(粉末スープを粒状にする)を目的に行っていたと推測できます。
商品の粒状から押し出し造粒法と呼ばれる方法で製造されていることが考えられます。こういった製造では賦形剤として乳糖や加工澱粉が使用されます。
ただし、不足したからと言って簡単に置き換えできるものなのか?という疑問が有ります。乳糖と加工澱粉は多少性状が異なるので簡単に置き換えできないと思うのですが。
少なくとも前職の健康食品会社の品質管理の責任者は単純な置き換えなんて許しませんでした。原材料の変更時には一から試作に試験を重ねていました。
さらに一時的な原料の変更でも表示はキチンと直していました。実際に訂正シールを貼ったりした思い出もあります。

さらに悪質さを感じるのは以下の2商品。
「オイスターソースの原材料表示について、食酢、たん白加水分解物(アミノ酸混合物)、イーストエキス(うまみ調味料)及びトレハロースを使用しているにもかかわらず、これらを原材料として表示しなかったこと」
「甜麺醤の原材料表示について、酵母エキス(酵母を原料としたグルタミン酸を含んだうまみ調味料)を使用しているにもかかわらず、これを原材料として表示しなかったこと」
これらの行為については、
「隠し味として使用していることから、企業秘密として、意図的に表示しなかった」
と農林水産省に説明しています。

でもこれは方便でしょうね。
是正前後を比べてみると解りやすいです。オイスターソースを例にとってみましょう。

「オイスターソース」
是正前  カキエキス、砂糖、食塩、澱粉(コーンスターチ) 
是正後  カキエキス、砂糖、食塩、食酢、たんぱく加水分解物、イーストエキス、トレハロース、加工澱粉(コーンスターチ)、増粘剤(キサンタン)

個人的に「悪質だなぁ」と思います。
是正前の表示では旨みはすべてカキエキスから来ていることになります。
でも実際には、たんぱく加水分解物やイーストエキスといった旨味成分を別途足している訳です。あたかも牡蠣の旨味だけで構成される商品という誤認識を与えている訳です。
企業秘密なんて言葉でごまかしていますが、他社の原料表記をみれば旨味成分の使用は一般的です。というか、すべての製品に使用されていると言って過言では有りません。
こういった点を考慮すれば企業秘密ではなく、

「消費者にカキエキスのみという優位性を表示して誤認させるため」

に行っていた、と言うべきでしょう。
競合品の李錦記やCookDoの商品ではアミノ酸や調味料の使用が表記されています。

実際にユウキ食品のオイスターソースを扱っている通販会社ではカキエキス100%というような表記を行っている例が非常に多いです。
(アマゾンや楽天市場、ケンコーコムなんかで9月13日現在確認可能です)
今となっては、この表記じゃ詐欺ですわな。
どれぐらいで訂正されるのか観察してみようと思っています。

有力調味料会社ですらこの有様です。サプリメントにいたっては言うまでも無いでしょう。
「無添加」とか「天然」とか「自然」という表現は簡単に使用できますが、製品で実現するのは難しいのです。