黒砂台鍼灸あん摩治療院

鍼灸院の日常日記

天然ビタミン・サプリメントのウソ・ホント 7

2010-09-03 16:38:37 | 健康食品 ウソ・ホント
微量ミネラルを配合している天然サプリメントはウソ・ホント?

一言で片付ければ ウソ


順を追って書いていきます

まず微量ミネラルとはなんなんでしょうか?

そもそもミネラルとは無機質とも言われ生体に欠かせない栄養素の1つです
糖質・タンパク質・脂質・ビタミン・ミネラルをあわせて5大栄養素とも言われています

昭和44年の栄養所要量の策定以来、栄養学(栄養所要量)の世界において長らくミネラルとはカルシウム、鉄のみをさしてきました
世界の栄養学の潮流ではすでに20年以上前の段階でカルシウム、鉄以外の多くのミネラルを栄養素として扱うようになっていました
しかし日本で世界標準に準拠した形でのミネラルの栄養所要量が策定されたのは平成11年、今から11年ほど前の話です
また2005年版日本人の食事摂取基準ではミネラルをミネラルと微量元素と電解質に分けた記載が始まりました
(2010年版では電解質をミネラルに含める形で2つの分類に簡略化されました)

この2010年版日本人の食事摂取基準で定義されている微量元素が
鉄、亜鉛、銅、マンガン、ヨウ素、セレン、クロム、モリブデン
微量ミネラルもこれらとほぼ同じと考えてください


ではなぜウソと言い切るのかについて代表的な微量ミネラルを例にあげて書いていきます

○鉄
鉄は初期の栄養所要量の制定時にも取り上げられている歴史の古い微量ミネラルです

添加物として認可されているものも多く有ります
塩化第二鉄、クエン酸鉄類、グルコン酸第一鉄、鉄クロロフィリンナトリウム、ピロリン酸第二鉄、硫酸第一鉄などがあります
このうちサプリメントによく使用されるのが、塩化第二鉄やピロリン酸第二鉄です
これらの鉄素材には吸収率が低い事やタンニン等で吸収が阻害されやすいなどの問題も有りますが、育児用ミルクやベビーフードなどにも用いられ安全性の問題は少ないとも考えられています

別の素材としてはヘム鉄があります
これは動物の血液を原料に酵素処理等で精製された鉄素材で、吸収率が高く過剰摂取の弊害が少ない等のメリットも有ります
ただし血液由来のためコンタミネーション等の問題から品質管理の行き届いた原料を使用することが望ましいです
豚由来、牛由来の物がかつては有りましたが、現在は豚由来のものが多くなっています
ただし鉄の含有量としては1~2%と低く、サプリメントにするには配合量上の制約から難しいこともあります
また価格も高価で食味も悪い(血の味)という問題も有りますが良い素材です
精製の工程から天然とは言い難い部分も有ります

その他に鉄含有酵母などという素材も有りますがいくつかの問題が有ります
ミネラル含有酵母についてはまとめて最後に書いていきます

○亜鉛
かつては男性の性機能の向上などをうたってセックスミネラルと称されることもあったミネラルです
欠乏で味覚異常が引き起こされたり、肌のトラブル等も起こるといわれています

通常の食品中で多く含まれるのは牡蠣、レバー、うなぎ等がいわれています
食品添加物ではグルコン酸亜鉛が有ります
かつてはグルコン酸亜鉛は育児用ミルクにしか使用が許されていませんでした
しかし近年、栄養摂取基準に亜鉛が記載されるようになったこと等もあり保健機能食品(特定保健用食品、栄養機能食品)への使用が可能にかわりました

牡蠣のエキスやレバーのエキスであれば天然なんじゃないの?と思われるかも知れません
残念ながらサプリメントに使用する亜鉛素材としては不向きです
まず第一にエキス剤の亜鉛の含量が低すぎることが有ります
摂取基準を満たそうとすると錠剤で数十粒のサプリメントになってしまいます
きちんとした牡蠣エキスサプリメントであればあるほど亜鉛の摂取目的には向きません
中には牡蠣エキスに別の亜鉛素材を添加している商品もあります
(まあこれはこれで良心的ではありますが)

その他、食品添加物以外の素材で使用可能な物として亜鉛含有酵母が有ります
これについてもミネラル含有酵母で詳しくのべていきます

○銅
グルコン酸銅、硫酸銅などがありますが硫酸銅は育児用ミルク以外への使用はできません
グルコン酸銅はグルコン酸亜鉛と同様に保健機能食品(特定保険証食品、栄養機能食品)への使用が可能です
その他に銅含有酵母があります

○マンガン ○ヨウ素 ○セレン ○クロム ○モリブデン
については食品添加物として使用可能なものは有りません
天然サプリメント原料として使用可能なものはヨウ素素材としての海藻類ぐらいでしょうか
ただし、これもヨウ素量を安定させるには難しいのが現状です
上記5微量ミネラルにもミネラル酵母原料が存在しています

●ミネラル含有酵母とは
微量ミネラルの供給源としてよく使用されていうるのがミネラル含有酵母です
少なくとも鉄、亜鉛、銅、マンガン、ヨウ素、セレン、クロム、モリブデン含有酵母は供給され様々なサプリメントに利用されています
これを使用して天然サプリメントと称する業者も多いのですが、果たしてこれは天然と言えるのでしょうか?

製造工程を知っている立場から言うと、これを天然と言うのには無理があります
ミネラル含有酵母は培地(酵母の餌を含んだ水溶液)に目的のミネラルを高配合して酵母を育てることで目的のミネラルを多く含む酵母を作り出します
この際に培地に添加されるのは食品添加物や食品添加物外のミネラルです
酵母内に取り入れられたミネラルであれば酵母内のタンパク質や核酸と結びついた形での存在となり、培地に添加した原料の添加物とは異なる形になります

しかしながら酵母にミネラルを高含有させることは難しく、そのミネラルごとに含有能力の高い菌株の探索やミネラル添加条件の検討など高度のノウハウが必要です
サプリメントに使用できる含量のミネラル酵母を作るのは非常に難しいのが現状です

そこで問題となるのが練りこみ製法によるミネラル酵母の作成です
培養中に取り込ませるのが難しい場合、酵母を培養後、遠心分離によって酵母をペースト状にしてこれにミネラル源を添加します
高濃度のミネラルに酵母を集中的に触れさせることでミネラルを酵母中に取り込ませるといううたい文句で行われています
実際にはこの工程の後で十分な洗浄を行わずに酵母を乾燥したり、練りこみ後に洗浄を行わず原料を作ることで添加物がそのまま残っている商品も有ります
いわば酵母にミネラル添加物を混ぜただけでミネラル酵母と称するような粗悪なものも有ります

こういった添加物がそのまま残った原料によって起こる問題はすでに日本の研究でも指摘されています
2008年に発表された研究によりますと市販のミネラル補給サプリメントからピコリン酸クロムがいくつかの商品から検出されています
このピコリン酸クロムは欧米ではサプリメントに使用されていますが日本での使用は許可されていません
またきちんとした製法のクロム含有酵母からも検出はされません

このように、ミネラル含有酵母を天然と言い張るのには無理があります
製造方法から言ってもそうではないでしょうか?(練り込みの問題をのぞいても)
問題ない原料なのかどうかは、消費者からは見分けることは事実上不可能です

こういった点から微量ミネラルを配合している天然サプリメントはウソという結論になるわけです

もう一点
原材料表記での問題もありますが、まあこのへんは続きの項で書いていきます

ミネラル酵母に関連した原材料表記の問題です

日本国内でミネラル酵母の使用する場合、原材料表記は単に酵母だけで済ますことはできません

クロム含有酵母を使用しているなら 「クロム酵母」「クロム含有酵母」「酵母(クロム含有)」等という表記が必要です
セレン含有酵母を使用しているなら 「セレン酵母」「セレン含有酵母」「酵母(セレン含有)」等と表記します
ではマンガン、ヨウ素、セレン、クロム、モリブデンをミネラル含有酵母で配合するとどうなるかというと
「マンガン酵母、ヨウ素酵母、セレン酵母、クロム酵母、モリブデン酵母」という風にすべて表記が必要です
アメリカなどでは単に酵母という表記のみが可能な場合があり米国製の商品を輸入している会社等では単に「酵母」との表記で済ませているケースが見受けられます
こういった商品を販売している会社は製品の製造や法規に熟知していない可能性があります
また、知った上で行っているケースもあるので・・・