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黒砂台鍼灸あん摩治療院

鍼灸院の日常日記

寒さと冷えと顔面神経麻痺のはなし

2010-11-30 09:32:23 | 東洋医学について
今日の朝は良い天気ですね。放射冷却のため、日差しはあるものの冷え込みは一段ときつく感じます。
こういう時には過去に患った「顔面神経麻痺」が悪さをするような感じです。

自分の場合はラムゼイハント症候群、つまりは水痘ウィルスによる顔面神経麻痺でした。これはベル麻痺という顔面神経麻痺に比べても予後が悪くなりやすいのが特徴の麻痺です。
罹患して最も酷い時には中度麻痺のやや高度よりか高度麻痺のやや中度側という状態でしたが、現在は日常生活ではほぼ問題の無いレベルにまで回復しています。(共同運動など一部の症状は残っていますが一般の方であればわからないレベルです)

顔面神経を引き起こした水痘ウィルスは抗ウィルス剤等を使用しても完全には除けないといわれています。実際に疲れが貯まったりすると顔面部への違和感や目の疲れ、表情筋のひきつりや痙攣等が起きることからも、自分の中でも何らかの影響は残っているようです。
疲れだけではなくその他の要因でも違和感は簡単に出てきます。

一番は冷えです。

特に冷気を顔や首筋に長時間浴びると良くないですね。
そういう時にはまずは鍼をします。
硬結部分を探して細めの鍼を丁寧に打っていきます。硬結に当たるところまで入れて響かせてもいいのですが、浅く刺して置鍼するだけで十分に効果が出ます。
それでも違和感が残る場合はお灸をします。
患者さんに行う時は知熱灸を行います。大分大きめにひねったもぐさ(1cm弱)を乗せて熱さを感じる少し手前で取り去る。これを数回繰り返します。
ただしこれは自分では行えないので、自分には台座灸を使用します。
1壮ずつ火をつけては硬結に置き熱を通していきます。
迎香、頬車、大迎、太陽、攅竹などの顔面部のツボに置いていくわけですが、正確なツボの位地よりは硬結を優先して取穴します。

ちなみに全部いっぺんにするとこんな感じ。

まあ野郎の顔なんで小さめのサムネイルです(クリックで大きくなります)

写真のためとは言え、いっぺんに施灸するとダメですね。煙が酷くて目に滲みます。患者さんの治療でもそうですが、通常は1穴ずつ数壮繰り返して行います。
不思議な物でお灸をするとあれだけ感じていた違和感も一発で飛んでしまいます。
また眼瞼の痙攣が出ているときにも比較的有効な例が多いです。
顔面のお灸は怖く感じる人もいるかもしれませんが、やってみるととても気持ちよく、眠ってしまう患者さんも多い施術です。

寒さや冷えで顔に違和感が出るようなら試してみるのもいかがでしょうか?


東洋医学のお勉強 教科書の話

2010-11-01 09:17:35 | 東洋医学について
東洋医学の治療や古典を勉強する際に、学校で使っていた教科書を横において行うことが多いです。
教科書と言っても学校協会の教科書ではなく、自分の出身校の独自の物。中医学の授業用に先生自身が書かれたものです。

「東洋医学概論 古典鍼灸書購読」と銘打たれた教科書ですが本当に便利に使わせていただいています。
何がすごいのかというと出典が細かく記載されている点です。

ちょっと一部だけお見しましょうか。



見ていただくと判りますが脾(臓腑)の生理・病理についてのページです。
上の部分に生理・病理について簡潔にまとめられ、下の部分ではその根拠となる古典の出典が記載されています。勉強する際にどの古典のどの部分を見てみればいいのかが一目瞭然です。
中医学では古典にはない新しい言葉で臓腑の説明が行われる場合が有ります。もちろんこれも古典をベースにしているのですが詳しく勉強しようとすると戸惑う原因にもなったりします。こういった文言のチェックにも非常に便利に今でも愛用しています。

東洋医学でも西洋医学でも同じなんですが、学生時代よりも今の方が参考書や教科書を一生懸命ひらいているような気がします。
学生時代に思い切って購入した解剖関係の本や東洋医学関係の古典等、今になってやっと使い始めているような状況です。

治療院には比較的大きな本棚を導入していますが、まだまだ空きばかり。数年のうちにはこの空きを埋めて新しい本棚を購入したいものです。

追伸 
同級生の方や同学の方で「東洋医学概論 古典鍼灸書購読」の教科書を余らせている方がいらっしゃいましたら譲ってください。お願いします。

東洋医学のお勉強 便利な年表

2010-10-29 11:02:20 | 東洋医学について
東洋医学の勉強をしていく上で非常に便利な年表があります。



東洋学術出版社刊『中国医学の歴史』(主編・傅維康)の巻末に載せられている年表です。こんな感じの年表で歴史的な推移から文献の成年、実際の刊行年などが非常に細かくわかります。古典を勉強するのであればこういった年表は必須です。類似書籍の刊行年度を比較したり影響を考えたり色々便利に使っています。

学生時代に国試勉強が嫌で図書室で本を漁っているときに見つけてコピーして以降便利に使わせていただいています。
最近やっと気づいたのですが、東洋学術出版社ではこの年表はPDFで公開なさっています。太っ腹です。古典を勉強しようという者のために良く考えてくれています。本当にありがとうございます。
(上記年表の画像をクリックすると東洋学術出版社さまのHPに飛びます)



自分でコピーしたものはだいぶボロボロ。ラインを引いたり書き込んだり。早速PDFから新しく印刷をしなおします。

こういった年表を見るとよく判りますが、<「黄帝内経」成る>とされた年代と実際に私たちが勉強できる「現在に残っている古典」とでかなりの年代を経ているのが判ります。
自分がよく読む「難経」においては、紀元25年~210年に成ったとされていますが、実際に手元にある「難経」の底本は1366年滑寿による「難経本義」であることが多いですし、解釈本の元祖とも言える「難経集注」に至っては1505年頃とされています。
実際に「難経集注」の勉強用に使用している日本内経医学会さまの「難経」は「王翰林集注黄帝八十一難経」で日本で慶安5年(1652年)に刊行されたものです。
(内経医学会さまの「素問」「霊枢」もしっかりとした底本を写したものなので古典を勉強されるならもっておいて損はないです。しかも安いし)

古典の勉強も年表を傍らに置きながら行うとなかなか楽しいです。



























鍼にエビデンスは有るのか?

2010-09-28 11:37:08 | 東洋医学について
医道の日本社刊の「鍼のエビデンス」を見ていただければ解りますが、すべての掲載論文でエビデンスが有るわけではありません。
確固たるエビデンスが取れたものは僅かで、どちらかというとエビデンスが取れていないとされる論文の数も多く、かえって眼につくほどです。
でもこれが非常に大切なんだと思います。
この書籍の元々の企画が全日本鍼灸学会雑誌から起きたという点を知ったときは感謝の念をいだきました。全日本鍼灸学会という組織がこういった批判論文すらも受け入れる度量を持っていたことに対して。そして治療家一人一人の質の向上を目指す組織としての働きに。

こういった批判的な論文に対して、「シャム鍼」の問題や「腕の差」等と批判や否定をするのは簡単ですが、無意味でかえって有害にもなりかねません。エビデンスが無かったという事実をまず受け入れその上で自分の治療や考えをもう一度キチンと見直す。そしてエビデンスを向上すべく努力することが最も大事なんです。
鍼灸師が自分に都合のイイことばかりを信じているようならば、鍼灸は医療ではなく宗教になってしまいます。
これはとても不幸なことです。
だからこそ「エビデンスが無い」「効果が無い」とした論文こそ治療家としての自分にとって大切だと思います。
同じ疾患や症状に対した治験でもエビデンスが有るとされたり無いとされたり、結構様々です。でも良い結果ばかりを取り上げていたら駄目だと思います。批判は批判としてきちんと受け止める、そう有りたいとも思います。

現状で治療院で鍼灸治療をエビデンスの確立されたもののみで行うことは、まず不可能です。
エビデンスの確立された領域はまだまだ僅かですし、治療院では鍼・灸・あん摩を組み合わせて行っていますから。でも自分の行っていることのエビデンスの有無やその内容を知っていることは大事だと思います。
はっきり言えば、効果のないとされる論文に目を通すのは苦痛でもあります。
でも鍼灸の可能性を信じる立場だからこそしっかり向き合いたいと考えています。

エビデンスの有無を問うことが治療の全てとは思いませんが、大事なことだとも思っています。
自己批判や再検証を行わない治療には進歩も無いのですから。
これは日々の治療でも同じ。キチンと自分なりの治療を確信を持って組み立てて、結果を冷静に検証する。そして次の治療につなげる事が大事。
西洋近代医学の勉強も、鍼灸古典の勉強も、治験論文や文献によるエビデンスの勉強も全て同じように大事なことです。至らぬ身が「上工」を目指す為にも。

鍼灸のエビデンス確立の難しさ

2010-09-08 17:15:01 | 東洋医学について
「鍼のエビデンス」を読んでいて、鍼灸で高いエビデンスを確立する難しさを感じています

鍼灸だけでなく、あらゆる治療や薬物の効果を検証しエビデンスを得る上でもっとも重要なのはバイアスの排除です
「バイアス」とは直訳すれば「偏り」で治験等においては「ひいき目」「先入観」「偏見」とも考えると分かりやすいかもしれません
人間は非常に繊細で、簡単に騙されるものです
良い薬だと言って飲ませれば砂糖水でも効果が出ることが有ります
一方、効果のない薬だと渡せば効果の高い薬で結果が出ないこともあります
このため正確な効果を図るということは本当に難しいのです
一般的には比較対象を作って効果を比較します
また試験を行う側がバイアスを持ち、それを患者に誘導するようになってしまえばエビデンスを確立することは不可能です
治験を行う際にもっとも重要なのが「バイアスの排除」なんです

医薬品の世界では、治験を行う際に「プラセボ」と呼ばれる偽薬を使用することが多いです
これは乳糖やブドウ糖のように薬理効果の殆ど無いもので作られています
治験に用いる場合は、形状・見た目・味・匂いまで対象物とプラセボをあわせてしまう方が望ましいとも考えられます
見たり飲んだりした時の印象によるバイアスを排除するためです

このプラセボを使用した治験群をコントロールに用いて、対照薬を使用した対照群と比較することで薬効や効果の確認を行ないます
こういったプラセボを用いた比較試験にも様々な方法が有ります
有名なものですは「二重盲検法」「単盲検法」「非盲検法」なんてやり方が有ります
このあたりの治験実施の方法とエビデンスレベルのおはなしは別の機会にお話します
(最近のホメオパシー問題に絡めて書きたいと思います)

鍼灸の治験に話をもどすと、当たり前ですが二重盲検法はできません
また、最も難しいのがコントロールのをどのように作るのかという点です
欧米では一般的にシャム鍼(sham)と呼ばれる偽鍼が用いられますが、問題点も多く指摘されています
これは経穴(ツボ)でない部分に鍼を刺してコントロールとして使用するわけですが、刺すことには変わりはないわけです
治験等によっては刺鍼の深さを浅めに変えていたりしますが、日本の経絡治療は浅刺で治療を行っています
また、経穴(ツボ)を外したり浅刺でも生理学的な変化を引き起こしてしまうということが報告されています

このため、こういったバイアスを排除するために刺さない鍼をコントロールとする方法も取られていますが、患者にそれと解かるため盲検法にならないなどの問題が指摘され、報告のエビデンスレベルを下げてしまうことも有ります
先に少し述べたように、残念ながら鍼灸では二重盲検法は取れません
少なくとも刺鍼側(鍼を刺す側)はそれが治験鍼なのかコントロール鍼(シャム鍼)なのかを知っていますので二重にならないのです
患者側にコントロールかどうかを感知させずに行うことが出来れば単盲検、患者にわかってしまうようなら非盲検試験になってしまうわけです
このため患者にわからない偽鍼の研究も盛んに行われています

こういった事情などから、コントロールを用いた鍼灸の治験は非常に難しくなっています
どうしてもオープンスタディのような報告が増え、エビデンスレベルが高い報告が出にくいのも現状です

だからと言って鍼灸にエビデンスがないわけではありません
コントロール群や比較対照群に標準治療で用いられる医薬品を使用した治験でも有用性が確認された報告も有ります
こういった医薬品をコントロールや比較対象とする治験はある意味で最も難易度の高い治験法とも言えるやり方です

まだまだ鍼灸のエビデンス確立は道半ばです
でも、いくつかの治験で明確なエビデンスが確立されているというのは本当に心強く思うわけです