黒猫亭日乗

題名は横溝氏の「黒猫亭事件」と永井荷風氏の「断腸亭日乗」から拝借しました。尚掲示板が本宅にあります。コメント等はそちらへ

天才 勝新太郎

2016年09月05日 | 本のページ
題名:天才 勝新太郎

著者:春日太一

評価 ☆☆☆

凡人である私は、「天才」の二つ名にあこがれがある。しかしながら、本書を読んで凡人も悪くないと思うようになった。天才というのは、実は大変であるらしい。人よりも多くの事にきづいていしまうし、その思考を理解できる人が少ない故に、時に突飛に見える行動を理解されない事も多い。何より幸運に恵まれた天才、というのはあまり聞かない。初めは幸運に恵まれていて天才たちの生涯は悲劇に満ちている事の方が多い気がする。
役者、監督、編集、天才ゆえに少しの努力でそれらをこなせてしまう。追随をゆるさぬ高みを目指し、妥協を許さぬモノづくりをする。しかし、採算を度外視した映画もしくはテレビの時代劇作りは少し歯車が狂えば莫大な借財を残す。間の悪さと不運も手伝い、勝新太郎は長き眠りにつく。
しかし、勝新太郎が独立プロダクションを作ってあがいたおかげで、当時最高峰の技術を誇った旧大映の時代劇スタッフの散逸を防ぐ結果となった。豪放磊落に見えて、実は繊細で優しかった勝新太郎。その唯一無二の存在はもう、いないけれど幸いなことに作品は残っている。天才の悲劇をかみしめながら時代劇を見るのも一興かもしれない。
尚、詳細な取材に基づいて書かれた本書には例の降板事件や死亡事故の事にも触れられている。そこらへんにもやもやしてた方はぜひ。

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