のぞき
深夜までテレビを観ていて風呂に入るのが遅くなってしまった。
ああ、眠い。
窓に映る枝の影を見ながら湯に浸かってうつらうつら。
何となく違和感があったが、寝ぼけた頭ではそれが何かわからない。
かたん。
外の物音で目が覚める。
のぞきが出没するからと今は亡き父が窓の下にバケツを置いていたのを思い出す。もうずいぶん経つがバケツはお守りのように置いたままだ。
窓は施錠しているので開けられる心配はないが気味悪いことに変わりはない。
窓ガラスの向こうにゆっくりとごつい男の顔が張り付いた。ぎょろぎょろと目の動きがガラス越しでもわかる。
枝の影が男の後ろで揺れた。
あっ。
さっきの違和感がわかった。窓のそばに木なんてない。
のぞき男の目と口に黒くて長いものが巻き付き、どこかに連れて行かれるようにすっと消えた。
バケツだけでなく、父も守ってくれているんだと思った。