恐怖日和 ~ホラー小説書いてます~

見よう見まねでホラー小説書いてます。
たまにグロ等閲覧注意あり

スイートホーム 最終話

2019-05-19 11:01:32 | スイートホーム



           ** 

 あれからひと月――
 エイジは目覚めないまま原因不明の意識障害でまだ入院していた。
 一人息子に何が起こったのかわからない両親は憔悴していたがダンダ、チャメ、ババクンの三人は何も語ろうとはしなかった。
 いじめや喧嘩によるものだと周囲は疑っていたが、エイジの母親は四人の仲がよかったのを知っているので、ダンダたちを責めることはなかった。
 だが、彼らが一様に口を閉ざしていることには困り果てていた。

 その後――
 チャメは一変して暗い性格になり、常に何かに怯えていた。
 心配する母親と口もきかず学校を休みがちになり、やがて完全に部屋に引きこもった。
 登校拒否になって三日目、異変に気付いた父親が施錠されたドアを蹴破って突入、ロフトベッドの柵に紐をかけ縊死している息子を発見した。遺書はなく、なぜ自死したのか理由は誰にもわからない。
 ババクンは両親や他の誰とも口をきくことはなかったが、それ以外は学校を休むこともなく普段通りの生活を送っていた。
 だが、チャメが自殺した二日後、悲鳴を上げながら何かから逃げるように路上に飛び出し、トラックに撥ねられ死亡した。
 ダンダも以前のような活発さが消え、あの日から学校を休んだまま日々ぼんやりとしているだけだった。
 真相を知りたくてエイジの両親が何度も訪れたが問いかけても返事はなく、チャメの自殺やババクンの事故死を知らせても何の反応もしなかった。
 彼の父親は息子に無関心のまま毎日飲んだくれていたが、ある日包丁で腹をえぐられ死亡しているのが見つかった。その日からダンダの行方はわからない。
 警察が重要参考人として捜索している中、隣県の海面で漂うダンダの衣服を発見、押収したが、ただそれだけで生死はいまだ不明である。
 彼らの身に一体何があったのか誰も知る術はなく、この先も永遠にわからないまま――のはずだった――

            **

 ダンダが行方不明になってから数カ月後、唯一生き残ったエイジが突然意識を回復し、泣き叫び暴れ狂った。
 彼の両親が病院に駆けつけた時はすでに鎮静剤を投与され興奮状態は収まっていた。
 二人は担当医と看護師長に立ち会ってもらい、ダンダたちの末路を内緒にしたままで、一体何が起きたのか訊き出そうとした。
 固く口を閉ざすエイジだったが、両親の説得でやがてぽつぽつと話し始めた。
 その告白は両親にも担当医たちにも信じられないものだった。
 夢か妄想か。
 何かドラッグでも使用したのだろう。きっとダンダが勧めたに違いない。
 母親は勝手に決めつけ憤慨し、チャメやババクンに申しわけないと思いつつもエイジが生き残ったことを喜んだ。
 だが翌日、ダンダの件で事情聴取に来る刑事の到着を待たず、頭が割れるように痛いと訴え、エイジはそのまま絶命した。
 両親の落胆は大きく、担当医に原因の追究を頼んだが、説明のつけられない事象が増えただけだった。
 エイジの頭部は外傷もないのに頭蓋骨が陥没し、脳の一部が破壊されていたのである。
 救急搬送された際やもちろん入院中にも何度も検査が行われ、意識障害以外の異常はなかった。
 にもかかわらず、硬いもので殴打されたような損傷が内部にあるのだ。
 医師たちは両親の了承を得てこの理解不能な死因を伏せ、エイジの死を病死とした。
 真相を知る一握りの関係者は幽霊屋敷の累を恐れて決して口を開くことはなかった。
 だが、どこからどう漏れ出たのか、エイジたちの件はウワサになり広まった。
 そして年月が流れ――

            *

 誰も住んでいない荒れ果てた一軒の小さな空き家。
 この家は幽霊屋敷と呼ばれ、様々なウワサが流れていた。
 夜な夜な老人が窓を叩いている――
 血に濡れた灰皿を持った女が仁王立ちしている――
 家に入り込んだ少年たちが全員不審死を遂げた――
 酒を持ち込んでどんちゃん騒ぎをした若者が互いを殺し合った――
 眠る場所を求めたホームレスが灰皿を振り回して町の人々を襲った――
 新しいウワサが生まれるとしばらくは誰も近寄らない。
 だが、恐怖が風化するとまたここに誰か来ては新しいウワサが一つ生まれ、幽霊屋敷は大きく育っていく。

スイートホーム 第十話

2019-05-18 10:35:04 | スイートホーム

 拳をいったん止め「お前らは誰だ? わしの家から出ていけっ」と叫び出し、さっきよりも強い力で窓を叩き始める。
「やべっ」
 ダンダは慌てて懐中電灯を消したが、男の視線は四人から外れることはなかった。
「どうする?」
 エイジは皆の顔を見渡した。
「あのおじさん、なぜかここに入れないみたいだからさ、このままずっとここにいる?」
 チャメが怖いことを言い出す。
「やだよ。幽霊にずっと睨まれてるなんて」
 ババクンがすぐさま却下した。
 エイジもうなずく。
「一気に窓から飛び出て全速力で逃げようぜ」
 ダンダが一人ひとりの顔を見て提案した。
「一気には無理だよ。特に最後は危ない。捕まったらどうする?」
 エイジが首を振った。
「俺が最後になる。あんな幽霊怖くねえし、捕まったら蹴り入れるさ」
 ダンダが頼もしい笑顔を皆に向けた。幽霊に蹴りを入れられるかどうかわからなかったが、笑顔につられエイジたちはうなずいた。
「わかった。オレが窓を開けて先に飛び出す。せーので行くぞ」
 エイジが素早く窓に駆け寄り「せーのっ」とサッシを引いた。だが、びくとも動かない。後ろに続いていた三人がぶつかり重なって、「何やってんだっ」とダンダが声を荒げた。
「あ、開かないんだっ」
 確かに錠はかかっていないのに一ミリの隙間も開かない。
 男がエイジの目の前に立つ。ガラスを隔てているとはいえ割れた頭と血まみれの顔がまともに見えて脚が震えた。
「わしの家から出ていけぇぇ」
 血の泡を飛ばし叫びながら窓枠に手をかけるが男にも開けられず、再び叫んでガラスを叩く。
 男の目がダンダの割ったガラスの穴に気付いた。
 タコのように柔らかく頭を変形させ、少しずつ中に入ってくる。
 穴の縁に削られこぼれ落ちる脳が筋を引きながらガラスを伝い、引っかかった眼球はずるずる神経を伸ばしぶら下がる。それでも男は入ろうともがいている。
 エイジは呆然として目を離せないでいた。
「おいっ」
 ダンダの声で我に返る。
 同じように放心状態だったチャメもババクンも正気に戻ったようだ。
「こうなったら玄関から逃げようぜ」
 そう言いながらダンダが急いでリビングのドアに向かい、エイジたちも後に続いた。
 だが、ダンダが開けたドアの向こうには真っ黒に腐敗した死体が立っていた。
 顔や手足がぱんぱんに膨らみ、強烈な腐臭を発散させている。さっきから漂っていた臭いだった。
 染みだらけのスカートを穿いたその死体は黒い体液を滴らせよろよろとリビングに入ってきた。
「まだ生きてたんかっ」
 握りしめた分厚いガラスの灰皿をぶんっと振り下ろす。
 先頭にいたダンダがとっさにそれをかわし、真後ろにいたエイジの脳天に凶器が落とされた。
 陥没した頭から血を噴き出し、エイジは悲鳴を上げる間もなく仰向けに倒れた。
「死ねっ出ていけぇぇ」
 叫んで灰皿を振り回す女を左右に交わしながらダンダが女の注意を引く。その隙にチャメとババクンは倒れたエイジを引きずってリビングから廊下に出た。
 声を上げて泣くチャメと蒼白になったババクンはそれでも手を緩めず、玄関に向かう廊下を血の線を描きながらエイジを引きずって進んだ。
 ダンダは廊下に飛び出ると同時にドアを閉め、女が出てこないよう全身で押さえた。
 がんがんと灰皿を打ち付ける激しい音が中から響く。
 玄関に到達した二人は扉を開錠し、エイジを外に引きずり出した。
 それを見届け、ダンダがいっきに走り出てくる。
 扉を閉める瞬間、灰皿を振り上げた女がリビングから出て来るのが見えた。
 衝撃がくるのを覚悟しながら扉を押さえていたが、何分経っても静かなままで、ダンダはそっとその身を離した。
「外まで、追い、かけて、こない、ね」
 意識がないままのエイジに寄り添うチャメがダンダを見上げる。
「ああ、きっと家の中だけの問題だったんだろ」
 吐き捨てるようにそう言うと、ダンダは大きなため息をついてエイジを見下ろした。
「おい見ろ」
 エイジの頭部には何の異常もなかった。陥没もしていなければ出血もない。
「あれ? 大丈夫だ」
 チャメが涙をぬぐって笑顔を浮かべた。
「ただの心霊現象だったんか?」
 ババクンもほっとする。
 だが、名を呼び軽く頬を打ったり肩を揺すったりしてもエイジはまったく目覚めない。
 チャメがまた泣き始めた。
「とりあえずここから離れようぜ」
 ダンダとババクンがエイジを肩に担いで門を出た。
 近隣の家々は来た時と同じでひっそりと静かなままだ。
「触らぬ神に祟りなしか――」
 最初からこの家のウワサは真実だと示されていたのだ。
 ダンダはそう思った。

 閉店間際のスーパーでは見慣れぬ少年たちが無断で置いた自転車が問題になっていた。
 そこへ戻って来た少年たちを店長が注意しようとした。
 だが、一人が意識不明の重体だと知り、すぐ警察に通報し救急搬送の要請をした。

スイートホーム 第九話

2019-05-17 12:29:07 | スイートホーム



            *** 

 気付くと、男は裸足で庭に立っていた。
 なぜこんなところにいるのか全く覚えがない。
 部屋に入ろうとしても窓には鍵が掛かっている。
 ガラス越しに妻を探したがどこにもおらず、玄関のほうへ回ろうとしたが、なぜか庭から出ることができない。
「おーい」
 ガラス越しに妻を呼んでみる。だが、来る気配はない。
「おーい。開けてくれ」
「おーい。おーい」
 男は何度も呼びながら、どんどんと窓ガラスを打つ。
 ずっと呼び続けても妻は来ず、いつまでたっても男は家に入れなかった――

            **

「こんな染み見たからそんな気がするだけだ」
 ダンダが笑った。
「ねえ、あれ」
 チャメが吐き出し窓を指さす。
 誰も閉めていないのにサッシが閉まっていた。だが、チャメの指しているのはそこではない。
 窓のそばに男が立っていた。 
 ダンダが素早く懐中電灯を消しが、もう不法侵入はばれているだろう。
 緊迫した空気がエイジの胸を締め付けた。心臓がどくどくと音を立て耳に届く。
 だが。
「あのおじさん、なんか変じゃな――」
 チャメが言い終わらないうちに男がガラスに張り付いて中を覗き込む。
 エイジは咄嗟に悲鳴を押さえた。
 チャメもババクンも口を押えている。
 男の頭が割れていた。砕けた脳が血にまみれ糸を引きながらこぼれ落ち、半開きの口からは泡状のよだれがとめどなく垂れている。
 飛び出た眼球がぐりぐりと部屋の隅々を見回すが、まるで焦点が合っておらず、エイジたちの姿は見えていないようだ。
 男はガラスを拳で叩き始めた。
「おーい、開けてくれ。おーい、おーい」
 サッシは閉まっているが錠は掛かっていない。
 もし男がそれに気付いて入ってきたらと思うと気が気ではなかった。
 呼びかけが「開けてくれ」から「開けろ」に変わる。
 目玉だけが上下左右に動いて視線が定まらない。
「おい、あのじじい、誰に開けろってんだ」
 ダンダが誰にともなく問う。
「おれたち、じゃないよな」
 ババクンが答える。
「これ――心霊現象か?」
「そうだろうな」
 エイジの質問にダンダが笑った。
 部屋に入ってくることもなく、窓を叩く以外なにもしない男への恐怖はだんだん薄れて来たが、近隣の住人に聞かれるとまずい。
「黙らせないとヤベェな」」
 そう言うダンダにエイジがうなずく。
 心霊現象も怖いが補導されるのはもっと怖い。
 だが、数分経っても近所の住人に気付かれた気配も通報された様子もない。
「ここだけの現象か?」
 誰にともなく問うエイジに「そうかもな」とダンダがうなずく。
 チャメもほっと息を吐き「カメラ持ってくればよかった、ちぇっ」と心底残念そうに舌を鳴らした。
「俺たちマジで心霊現象見てんだな」
 ダンダは不敵な笑みを浮かべながら懐中電灯を点け男の顔を照らした。光は雑草だらけの庭に丸い形を映したが、その中に男の影はない。
「うわっ、やっぱ幽霊だ」
 たいして怖がってるふうでもなくババクンがつぶやいた。
 その時、宙を見る男の目が光をたどり、エイジたちに焦点を合わせた。

スイートホーム 第八話

2019-05-16 11:09:42 | スイートホーム



            *** 

  真冬という時期も災いした。
 その年の冬は例年にない厳しい寒波で雪の降る日が多く、積雪記録を何度も更新していた。
 庭の死体は冷蔵庫内で保存されているように腐敗が抑制される一方、屋内ではエアコンの暖房によって妻の腐敗が進行した。
 だが、近隣の住民に届いていたのはいつものドブ川の臭いで、別の異臭に気付いたのは冬も終わりに近づき、暖かい日が続いた頃。
 不審に思った隣人が垣根の隙間から男の死体を発見、警察が駆けつけ妻の死体も発見に至り、町内は大騒ぎになった。
  
           **

 天板全体に積もった埃の上を手形が無数に付いていた。
「手の跡じゃねえか」
 ダンダがつまらなさそうにそっぽを向く。
「うん。それがなんで付いてんのかなと思ってさ」
 奇妙に感じているババクンの口ぶりに、
「そりゃ、管理人とか不動産屋とか、いろいろ出入りするからだろ」
 ダンダはすでに興味を失い、物色を再開した。
「そうだよ。これがネズミの足跡とか蛇の這った後だったら、ちょっと怖いけどね」
 チャメがふふふと笑う。
「キモイこというなよ」
 エイジはチャメを肘で突いた。
「でも、ここに入った時、長い間人の出入りがないなって感じなかったか?
 なのにこの指の跡くっきりしてるんだよね。上に埃も積もってないし」
 ババクンは目線を上げたり下げたりして、手形を何度も確かめている。
「あっ、ほんとだ」
「もう、キモイこと言うなって。怖いだろ」
「やっぱ、エイジは怖がり屋さんだ」
「ち、違うよっ」
 小突き合いしている二人にダンダがライトを当てた。
「お前ら、いつまでごちゃごちゃやってんだ」
「ダンダはどう思う?」
「ふん。ふたりともババクンに騙されてんだよ」
「ちょっ、おれ、ここ全然触ってないよ」
 ババクンが慌てて否定したが、ダンダはにやりと顔を歪め、エイジもチャメも疑いの眼差しを向ける。
「ほんとだって。信じてよ。そんないたずらなんてしない――ぷっ」
 我慢できなくなったババクンが「ったく、ダンダは騙せないよ。この二人なら完璧だったのにさ」と吹き出した。
「ひっどお」
 チャメが頬を膨らませる。
「おいっ、これ見ろ」
 次にダンダが声を上げた。
「もういいよ」
 エイジとチャメが同時にツッコみ、ババクンが笑った。
「見ろって」
 ライトがソファ横のカーペットを照らす。浮かび上がるのは人型のどす黒い染みだった。乾いて褪せてはいたが気味の悪さは十分だ。
「うわぁ、キモっ」
 チャメがエイジの後ろに隠れた。
「ここが幽霊屋敷っだっつーのわかる気がするな。まあ、これも誰かのいたずらかもしんねえけど」
 ダンダがしゃがみ込み、染みを興味深げに眺めている。
「なあ、なんか腐ってるような臭いがしないか?」
 エイジがかすかに漂うカビや埃以外の臭いにやっと気付いた。

スイートホーム 第七話

2019-05-15 11:01:39 | スイートホーム



           ***

 なぜ妻が夫の死体を庭に放り出したのか。
 それは夫をマイホームから永遠に追放するという、殺してもなお殺し足りない夫への嫌がらせだった。
 だが、烈しい怒りと殺人、さらに庭までの短い距離とはいえ肥満と高血圧症の身で行った死体の運搬が心臓に負担をかけた。
 部屋に戻りサッシに錠をかけ、ガラス越しに惨めな夫を眺めてほくそ笑んだ直後、急性心筋梗塞を発症した妻は胸を押さえ悶えながらソファの横に倒れ込んだ。
 子供もいない。親類もいない。まだ新聞の購読も開始していないし、近所づきあいも始まっていない。
 故に姿の見かけない夫婦を周囲の誰ひとり気にする者はなく、いつまでたっても中で起こっていることは気付かれなかった。

            **

「お前さ、手慣れてない?」
 躊躇せず作業を行う親友が知らない人間のような気がしてエイジは少しだけ怖くなった。
 ダンダは咥えていた懐中電灯を手に取り「俺もテレビで見たんだよ」と、靴を履いたままさっさと家に上がり込んだ。
 ババクンとチャメが後に続く。
 戸惑いを振り払ってエイジも中に入った。
 見つかったらすぐ逃げられるよう、掃き出し窓は開けたままにしておいた。
 街灯の明かりで仄かに浮かび上がる部屋はリビングだった。ソファセットにキャビネット、テレビがそのまま残っている。
「家具、置きっぱ――」
 何もないただの空き家だと思っていたエイジは驚いた。
 ダンダは黙って懐中電灯を照らしながらあちこち物色している。
 やっぱり手馴れてるとエイジは困惑したが、もう気にしないことにした。
 ソファの前には大きめのテレビ台が据えられていたが載っているテレビは十四インチの小さなものでチャメが笑う。
「これじゃソファに座ったら見えないね」
 チャメの家にあるのは超大型テレビだ。映画を観るのもゲームするのもド迫力だった。
「ふん。おまえは大きいのに慣れ過ぎてんだよ。こんな狭い部屋ならちょうどいいさ」
 ダンダが鼻を鳴らす。
 ババクンがテレビ台の上を指でなぞった。ごっそりと埃が指先に溜まり、慌ててズボンで拭う。
 エイジはソファの上にも埃がたっぷり積もっていると思い「今度、なんか敷くもの持ってこなきゃな。直接座るの気持ち悪いし」とつぶやいた。
「あっ、僕持ってくる」
 チャメが手を上げる。
「じゃ、お前、全アイテム担当な」
 ダンダは笑いながらチャメの顔に光を当てた。
「もう、まぶしいよ」
 チャメが光の輪に目を細めて顔を背ける。
「なあ、これなんだろ」
 ババクンがキャビネットの天板をじっと見つめていた。
 ダンダが懐中電灯を向けて近づく。
「なに、なに」
 チャメも好奇心旺盛に近づいていく。
 エイジは二人の間からキャビネットを覗き込んだ。