恐怖日和 ~ホラー小説書いてます~

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掌中恐怖 第二十話『中古物件』

2019-04-16 10:55:52 | 掌中恐怖

中古物件

 いわくつきの中古物件を手に入れ、住める程度にリフォームし引っ越した。
 不動産屋の担当者も工務店の大工たちや引っ越し業者も物好きなオレを笑っていたが気にしなかった。
 本物の心霊現象をビデオカメラに収めたいという夢がやっとかなうのだ。
 引っ越し早々、各部屋にカメラを仕掛けた。まだ昼間だからか何も映ってはいない。明るい日の下でも何らかの現象が起きるなら嬉しい限りだが、やはりそうはいかないだろう。
 夜は元凶といわれる部屋に布団を敷いて寝た。
 深夜二時まで胸を躍らせて起きていたが、昼間と同様、何事もなく、その後も「何かの気配に起こされた!」ということもなく朝までぐっすり眠った。
 がっかりしながらも引っ越し疲れで気付かなかっただけかもしれないとビデオをチェックしたが、布団を敷いた部屋はもとより各部屋のどれにも何も映っていなかった。
 ま、初日だからなと気持ちを切り替え、二日目も三日目もあきらめずにビデオカメラを回し続け、徹夜もしてみたが期待したことは何一つ起こらない。
 その後も何もなく、奇異の目で見ていたご近所とも挨拶を交わす仲になり、オレはただの普通の住人になっていた。
 クレームをつけてやろうと不動産屋に電話をかけた。
 呼び出し音が鳴っている最中、心霊現象がないと文句垂れるのは普通おかしいよなと思い直し、本来の価格より安く家を手に入れられたのだからこれはこれでいいじゃないかと、何も起きなかった事だけ報告することに決めた。
 だが電話に出た受付嬢は、オレを担当した社員はじめ大工や引っ越し業者など、この家に入った関係者全員が既に亡くなったことを伝え、オレが生きていることにひどく驚いていた。