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電話って面白い

最初はちょっと取っ付きが悪かったのですが、途中からぐんぐん進みました。
「雑誌連載の毎回の締め切りに間に合わせるのが精一杯で、議論を精緻化できなかった」
とはあとがきでの著者の弁ですが、そのためか?変にややこしくならないで面白い話が山盛り紹介されています。
もちろん著者も断っているように、既出の文献からいろいろひっぱて来ている部分も多いのですが、
これを個々の文献にあたろうとしたら非常に大変だし、
著者の視点から整理してのピックアップですから、考える材料として参考になるし、なにより面白い。

その中でも面白かったのは、初期(19世紀末)のアメリカの電話事情で、
もともと電信より効率的なビジネス上の情報伝達手段として宣伝されていた電話が、
実際はローカルな電話会社も多く、技術もまだまだ発展途上だったため、回線はパーティライン状態、
もちろん交換手が取り次ぐわけですが、電話番号すらない状態で、かけ手とほとんどお友達状態、
結果、井戸端会議的な情報ネットワークが交換手をキーパーソンに成立していた、という話。
技術の進歩とAT&Tによる全国ネットワークへの統合によりこの長閑な時代は終わりを告げる訳ですが、
1920年代後半に「女性のおしゃべり」の道具、つまり大衆の消費財としての電話、
というコンセプトがAT&Tによって再発見され、独占的な通信網をもつ正当性のある会社、というPRから
「優雅な生活を演出する魅力的なアクセサリーの販売業者」に作戦が変更されることになったのだとか。
ひゃあ、「女性の長電話」もジャズエイジに生まれたのね。

この他にも「ラジオ」の話・・・創世期には双方向メディアだった、とか、
日本での電話やラジオの歴史・・・国家により強力に導入されたために、イマイチ不自由、とか、
楽譜や録音機とコンサートというメディアの話など、イロイロ山盛りです。


あと、あとがきで「著者の興味を電話に向けたのは妻」と書いてあったのも、○です。

4062580489「声」の資本主義―電話・ラジオ・蓄音機の社会史

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