クニアキンの日記

日々、興味を持ったことなどを調べたりして書いていきます。
旧日記の復元については7月13日の日記をご覧ください。

遅い月の出

2021-03-04 18:54:51 | 天文
1日の午後6時半頃、東京にいる孫が電話をかけて来て、「月が見えない!」と。
「この前、満月だった。」と言っているので、今日は夕方に月が見えないので驚いたらしい。とりあえず孫には、「もう少しすると出てくると思うよ」と答えて、娘に、「同じ満ち欠けの月は大体同じ時刻に出てくるので、1か月で24時間遅れる。従って1日には 24÷30 時間位遅れるという理屈になるよ。」と注釈しておきました。

電話を終えて改めて東京の月の出を調べたら、3月1日は19時46分。前日2月28日は18時36分だったので、1時間10分も遅くなっている!
私もちょっとびっくり。満月が27日だったので、「いざよい、立待ち、居待ち、寝待ち」の「立待ち」にしては遅すぎるかなとも。

2日以降について調べてみると、数日間は毎日1時間10分程度遅くなりますが、8日あたりからは急速に遅れ時間が小さくなり3月15日(7:00)と16日(7:25)の差はわずか25分!

こんなに変動が大きいとは知らなかった・・・

で当然、その変動の原因を知りたくなります。

web 上を見ていくと、暦Wiki/月の出入りと南中/月の出入りは難しい? - 国立天文台暦計算室 がきちんと(定量的に)考察しているようです。

最初の部分に書いてあることは上で娘に説明したようなことなのでさっと読み飛ばして次の、「月の動きを基準にする」に進みます。
月の南中から南中までを=平均太陰日を基準にしてグラフを描くということで、自分でもやってみようと思ったのですが、月の出入りのデータを打ち込むのは面倒なので、探したところ、暦象年表 令和 3年 2021 から取り出せそう。
で、2021年2月と3月の月の出、南中、入の時刻の表を表計算で作成し、まず2月1日午前0時を起点とした時間単位のデータに直します。
2月1日の南中と入りは出より前の時刻で、即ち前の「平均太陰日」のできごとになりますので、手作業で削除して上に詰めます。「平均太陰日」が「平均太陽日」より長いために起こる抜けも、同様に上に詰めていきます。

そして南中時刻の間隔の平均(=平均太陰日)を出して、それに基づいて平均した南中時刻をちょうど 12:00 になるように実際の南中時刻と出入り時刻の表を作り、それをグラフに描いたのが次の図です。


月の周期運動のデータとして、S 最南、E 赤道通過、N 最北、P 最近、A 最遠、がそれぞれどの日にあたるのか書き込んだ列を作り、横軸に表示しました。
南中時刻が前後するのは、南中と南中の時間間隔が一定でなく「平均太陰日」のまわりにばらつくことによるもので、太陽の場合の「均時差」に相当するものです。でも変動の幅は1時間程度で、これは次に考察する月の出入時刻の変動に比べると小さいです。

月の出入り時刻の変動は4時間近くに及びますが、大雑把に見ると Nと書かれた付近、即ち月が北にあるときは月の出は早く、入りは遅く、逆にS、即ち南にあるときは出は遅く、入りは早く、なっています。これはちょうど、太陽が夏には早く出て遅く沈み、冬には遅く出て早く沈むことに対応しています。
ただ太陽のように完全に周期的になっていないのは、太陽の運動が天球上で(殆ど)動かない黄道に沿っているのに対し、月の動き(白道)は黄道の周辺で絶えずふらついていることによると思われます。

毎日の出入り時刻の変化は隣り合う点の差に相当しますので、月の出について見ると、SからNに向かう途中(太陽の場合の春に相当)ではどんどん早くなり、NからSに向かう途中(太陽の場合の秋に相当)ではどんどん遅くなることが分ります。
ただこれは月の南中時刻を基準にしているので、太陽を基準にした普通の時刻にする必要があります。月の南中は平均太陰日と平均太陽日の差、約50分ずつ毎日遅れます。従って、SからNに向かう途中での毎日の月の出の遅れは50分より小さく、NからSに向かう途中での遅れは50分より大きくなることが分ります。

3月1日はNからSに向かう途中ですので、遅れは50分より大きい、また3月16日はSからNの途中で50分より小さくなる、このようにして最初に見た現象が説明できます。

最後に、これも冒頭で指摘した「いざよい、立待ち、居待ち、寝待ち」との感覚のズレですが、昔の人が特に満月を見たのは中秋の名月、太陽は秋分点付近にあるので、満月は春分点近くにあります。言い換えればSからNの途中でマ毎日の月の出の遅れは50分より小さくなります。
実際、今年の中秋の名月9月21日の月の出は18:07、22日は18:34、23日は19:00と、遅れは30分未満ですので、「いざよい、立待ち、・・・」にぴったりの表現なのでは。
もっとも、現代のせわしない我々にとっては、これでもまだちょっと長いような気もしますが😁 

ちなみに3月1日の8時頃、娘から
大きな月が出ましたー!
とメッセージが来ました。😊 
コメント
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