
1997年の3月末、 小学校を卒業した12歳の長男はシドニーへ留学するため日本を経ちました。
彼のシドニーでの留学期間は、UTS(シドニー工科大学)を卒業するまで11年に及びました。
かれこれ25年前の話です。
涙のお別れ・・君は強いから
2
出発の日は朝が早く、ホームスティ先の夫婦には、別れがつらいから、眠っている間に、家を出たほうがいいと言われていたが、彼は、早くに目を覚まし、日本へ帰るわたしを、家から泣きながら見送った。
今でもそのときの息子の顔を、私は決して忘れないだろう。
目を真っ赤に腫らした、12才の幼い息子の顔を。
「着いたら、すぐ電話するから!」
「たくさん食べて、病気しないように」
「手紙を書くように。」
「また来るから、すぐに来るから!」
「今度は、パパが様子見に来るから!!!」
そういって、わたしはタクシーに乗り込む。
タクシーの中で、わたしは声を上げて泣いた。
哀しくてつらくて、胸が張り裂けそうだった。
こうして書いていても、胸がしめつけられて涙がこぼれる。
12歳の息子を、こんな遠い国においていかなくてはならないなんて!
息子もいっしょに、このまま連れて日本に帰りたい。
飛行機の中でも、わたしはずっと泣いていた。
飛行機が離陸して、日本に着陸する間ずっと泣いていた。
息子が留学して、何年か経って夫に聞いてみたことがある。
「長男の留学で泣いたことあるか」と。
夫は息子の留学で、一度も家族の前で涙を見せたことがない。
夫はこう答えた。
「空港で、長男に見送られることほど辛いものはないね。
私は飛行機の中でビールを飲みながら、ずっと泣いていたよ」
あの日イヤホンから流れてきた、岡本真夜「ALONE」の曲が私は今でも忘れられない。
息子はその後、私以外の人前では涙を見せる事がほとんどなかったらしい。(シドニーにいる友人談)
ホストファミリーの前でも1度も泣かなかったのだと。
特に夫の前では、「弱音」を吐かなかった。
父親の期待に応えたいという、彼なりの意地だろう。
離れた母子の関係は、
どこか、切ない遠距離恋愛にも似ているのかもしれない、とシドニーに住む友人が言った。

「君は強いから大丈夫だよ」なんて
そんなこと言われたら、弱さみせられない」
「ALONE」の歌詞の、こんな一節が
今の息子の気持ちを歌っているようだった。
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