録画人間の末路 -

人は記録をしながらじゃないと生きていけない

SARVH訴訟、東芝勝訴ながらも消費者敗北と、SARVHの影響力

2010-12-28 15:31:48 | B-CAS&規制撤廃運動
昨日のSARVHの「デジタル専用録画機も補償金の対象だ」として「デジタルは規制のために録画保存に制限があるので、補償金の必要はない」として支払いを拒否してきた東芝を訴えた裁判は、一応各サイト、新聞とも「東芝勝訴」として取り上げていますが、実質的には残念ながら貴報通り、「あくまで補償金支払いは法的強制力を伴わない抽象的な義務に過ぎない」という判断を下し、支払い請求を退けたのみで、肝心の"デジタル放送は録画を規制され、コピーが出来ないので補償金の対象ではない"とする部分は逆にSARVHの主張「当然デジタル放送も補償金の対象である」が認められ、わたしら消費者にとって重要な部分に置いては完全敗訴、と言うしかない結論に終わっています。当たり前のようにSARVHは控訴していますのでこの判断も一度破棄されるでしょうが、今後争点としなければ判例として残る形になり、デジタル放送での補償金、それもレコーダー本体に対する補償金は司法のお墨付きを得た形になります。

確かに、補償金のそもそもの前提である「デジタル化された動画や音声はそれ以上は劣化させないまま無制限のコピーが可能になるから、補償金は必要だ」という考えとは明らかに矛盾しています。ですが、法律においてはその前提や思考まで文に入らないため、規制があっても補償金を取る、という行為に関しては合法なのです。ただ、此度の裁判官が本当にこの問題に関して詳しいのか、は甚だ疑問なものがあります。例えば、レコーダーの補償金がどうあれそれを保存するメディアにもちゃんと補償金がかかっていてその支払いを否定する者も拒否する者も存在しないこと、結果一つの番組を保存するのに消費者は二重の補償金を支払っていることという現実を。正直こういう裁判の裁判員なら喜んで参加したいですが、"だからこそ"日本の裁判員制度はマスコミに取り上げられやすい重い刑罰を科せられる可能性のある刑事事件に限られているんですよねぇ。「諸外国でも一般市民の裁判参加は当たり前」とモデルにされてきた国の陪審員制度は民事訴訟にも参加させられるのが普通なのに。

いくつかコメントを頂き、それに返事をしているうちに一つ考えが浮かんできました。思考ってのは書きながら、というのが一番働く者なんですね、キーボードによる筆記であっても。
それはSARVHが補償金の無限の拡大を要求し続けながら、かつ無料で公共性の高いテレビ放送に人類史上初めてとなる規制を掛ける行為の矛盾です。多分SARVHから見ればこの併用は矛盾でもなんでも無いのでしょう。なぜならば、恩恵を受ける人間が違うからです。
録画の規制、これは番組の販売やストリーミング配信と言った再利用による無限連鎖収入の役に立ちます。ですが、これだけでは現役の懐しか満たされません。よく「DVD販売などで作品に対する還元はなされているのに、補償金で誰に行くのか分からない金を取られるのは納得いかない」という意見がありますが、まさにそれが補償金の目的なのでしょう、つまり、作品から還元を得られない、大御所世代の人たちの懐を満たすための仕組み、それが補償金なのです。
現在のテレビ界が深刻な予算削減を言い渡されているのはご存じの通り。と、なれば必然的に使われるのも安い料金で使える若手が主流となり、ベテラン勢は使われなくなります。その番組を再販したDVDからの利益も若手にしか受けられません。なので、ベテラン勢はそうした著作権に基づかない収益として著作権を利用した補償金制度の拡大と死守に全力を傾けているのではないでしょうか。
そう考えれば、数々の矛盾に説明が出来ます。DRMは現役のため、補償金は大御所のため。だから連中にとってみれば二重構造のいいとこ取りではなく、バランスのとれた併用に過ぎないのでしょう。だから、「CDやDVDには補償金は含まれていません」という主張が(彼らの頭の中では)成り立つんです。おそらくは配分も功労金的な年功序列型配分がなされていると考えるべきです。もちろん、絶対に配分方法は公表されないでしょう。

今まで録画規制は「長時間番組を一般人に保有させず、情報をテレビ側が独占的に所有するため」が大きな理由とわたしは以前から考えていたのですが、その割に先日パナソニックから発売されたレコーダーBWT3100に書き戻し機能が、それも他機種で録画したBDのソースまで書き戻せることに矛盾を感じていたのですが、これも説明できます。ようするに、テレビ側に主導は一切なく、ただSARVH側の意向が反映するのみであったということがほぼはっきりしてきました。ようするに、書き戻しても録画補償金付きメディアにしか書き込むことが出来ないという形が欲しかったのでしょう。だからEPN方式も、補償金のないメディアにも書き込めるため気軽な無制限複製が出来る以外の理由でも反対だったわけなんです。

デジタル放送界は、SARVHを玄関口としておく著作権団体を依怙贔屓するためにあらゆる手段を講じてきました。B-CASの扱いに困っている救済と録画規制を合わせ、補償金制度を導入し、移動壱規制を「こぴぃわんす」と呼ばせて録画はそれ自体コピーという概念を世界で初めて文字として出すことで補償金を存続させ、EPNや規制排除を阻止し、補償金付きメディア販売拡大に繋がるダビ10を代わりに導入し、Friioが姿を現すまではPC用製品を徹底的に排除し・・・あらゆる我が儘を黙認し、事実上その要求全てを実現させてきました。どれだけ強力な影響力を持っていると言うのでしょうがそして、残念ながらネット上のソースはちょっと見つかっていないのですが、朝日新聞の紙面上では

"団体の弁護士は「一切コピーできなくしよう、という議論も出てくる」と警告する。"

とはっきり書いてあります。これは実質的に「録画規制はすべてSARVHの指揮下で行われている」宣言と同じ事ではありませんか。それくらい強い立場でなければ、どんなに議論してもテレビ局界が取り扱うわけはないのですから。会見になると聞かれてもいないのに「我々は録画規制の成立には一切関与していない」と必ず発言していたので強く関与していることが確実視されていましたが、成立だけでなく現在の運用もSARVHの指示の元に行われているようです。「弁護士の発言は協会とは関係ない」という言い訳はもちろん通用しません、代理人としての立場で発言しているのですから。

個人的に最悪の形として懸念しているのは「今までの分の請求は行わないが、今後は必ず徴収と支払いを行う」という条件でSARVHと東芝が和解することです。規制の問題を棚に上げ、デジタル放送専用機は対象であると認められた点で実質的勝利と見なし、補償金対象の拡大のために労力を費やした方が長い目で見れば得である。わたしがSARVHの立場ならそうします。「多くのケースで録画や番組保存に使われている」としてPCやHDD単体品に補償金を掛ける、iPodにも録音補償金を要求する、永遠に著作権団体側の要求通りに範囲を拡大出来るという権利を得ることで補償金問題は完成します。おそらく、それに抵抗出来る勢力はないでしょう。

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13 コメント

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Unknown (krmmk3)
2011-01-19 01:51:51
>秋山さん
一月前にまねきTVの敗訴を予言していた池田氏の視点もさすがですが、それにしてもNHKの配信サービスのアクセス数すくな! このブログのアクセス数よりちょっと多いだけじゃん(^^)
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Unknown (秋山)
2011-01-18 23:17:17
「オンデマンド」に進化するテレビを訴訟で妨害するテレビ局

http://www.newsweekjapan.jp/column/ikeda/2010/12/post-266.php
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Unknown (krmmk3)
2011-01-18 23:08:09
>とおりすがりさん
残念ながら明るい話、全く聞こえてきませんね。裁判所抱き込まれちゃったらもう終わりでしょうし。

>秋山さん
賄賂とまではいかないでしょうけど、在京テレビ局全部ともなれば一人や二人親しい友人がいても全然不思議はないでしょうし、手心は否定できないでしょうね。なんだかんだで司法もほかの権力から独立仕切れないでしょうし。

>emanonさん
その話は、たぶん「衛星放送全家庭受信化で万事解決」にして有耶無耶にしちゃうでしょうね。
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孤軍奮闘 (emanon)
2011-01-18 21:59:13
 地デジ移行差し止めを求め提訴 「工事費の自己負担は違法」
http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/110118/trl11011818460035-n1.htm
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Unknown (秋山)
2011-01-18 21:29:30
まねきTVの件は利権者側が裁判官に賄賂を贈って判決を無理矢理ねじまげたとしか思えません。
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エンコ関係で盛りあがっている流れなど無視してw (とおりすがり)
2011-01-18 20:07:03
景気の悪い話など。
まねきTV負けちゃいましたねえ。
OnTimeTVもサービス停止ちゃったし、こっち方面はもうお先真っ暗なんでしょうか。
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Unknown (krmmk3)
2010-12-31 00:07:27
>容堂さん
一回だけで終わるならば勝ち目もありますしなんとかなるんですけど、最高裁で勝ってもまた改めて向こうから訴えてくることの繰り返し、いわばあっちが勝つまで続く泥仕合となりそうなので、その前にわたしが破産するでしょう。文化庁もこの件では敵ですし・・・。
メインレースだけでも、ファンじゃなくて普通の人に見てもらって興味を持ってもらうだけなら十分なんですよ。一時はそれで競馬のGIレースをを国民的行事にまで持って行った実績はありますからね。地上波がないとその再現は不可能ですから。
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Unknown (容堂)
2010-12-30 02:00:51
>krmmk3さん
裁判するだけならばそれほどお金はいらないんですけどね。
弁護士に払う金がお安くないだけで。

今回の件のような不特定多数の利用者に絡む代表訴訟とかの場合、
訴訟に持ち込む前に署名活動とかして民意を示す必要がありますから、
その過程で我こそはというボランティア精神にあふれた法律関係に
強い方が表れてくれればそれでもいいわけなんですが、いないよなぁ…

フジテレビの競馬中継は地上波は日曜のメインレース前後だけの放送
ですからねぇ。
あれだけの放送ではファンは納得しないんじゃないですか?

著作権はまぁ使えるときは文化庁でも何でも使い倒すのみですよ(笑)
手続きが済んだらこの件についてはまた報告します。


>emanonさん
ファイナルアンサー?
  ・
  ・
  ・
  ・
  ・
  ・
残念!!

詳しいことは来年に。
返信する
Unknown (emanon)
2010-12-29 22:19:12
液晶の視野角か… 漏れるなら塞げば良いこんな感じ?
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Unknown (krmmk3)
2010-12-29 21:30:55
>容堂さん
うーん、残念ながらまずお金がありませんし、それほど敏腕弁護士を雇うアテもありません。相手はわたしからみれば無制限に金を用意できるに等しい存在ですから、仮に勝ってもこっちがあきらめるまで何度でも訴訟を繰り返してくるでしょうしね。
フジテレビが競馬中継をやめるでしょうか。ドル箱だけにそう簡単に手放すとは考えづらいのです。中央競馬も地上波でみてもらってナンボと考え、自分らでお金を出してでも番組を続けそうに思うのですが。
著作権の確保ですか。なんとなくウチとしては微妙な話にも聞こえますが(^^;)うまくいったら、その旨教えてくださいね。
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Unknown (容堂)
2010-12-29 01:09:59
>krmmk3さん

おもいきって消費者代表訴訟でおこしてみますか?
義務のない金を強制徴収したメーカーを相手に訴えたら、メーカーもこの件について嫌でも目を
向けざるを得なくなるでしょうから。

反動でメーカーがSARVHを訴えて「ゴルァ!!」の連鎖が起こればいいのだが。


ところで別件になりますが、地方局の淘汰が来年からいよいよ現実味を帯びてまいりました。
長らく競馬ファンに愛されてまいりました地方局ネット放送の競馬中継が終了し、変わりに
BS11デジタルでの放送となるようです。

2011年スタート!「BSイレブン競馬中継」の番組内容が決定
http://jra.jp/news/201012/120603.html

詳しい事情は存じませんが、聞くところによると長らくスポンサーを務めていた競馬新聞の会社から
スポンサー料を出せないようになったとかなんとか。
不況のあおりで全体的に広告費が減少しているわけですが、こういうところにも影響が。

ただ心配なのは、競馬ファンというのはどちらかというと年齢層の高いファンが多いように思うのですが、
地方局の競馬中継の視聴者ともなるとなおのことその傾向が強いのではないかと思います。

年齢層の高い世代ほどBSなどの受信環境を持っていない傾向がありますので、BS11デジタルに
放送が移行しても視聴者がそのまま着いて来てくれるのかどうかはかなりあやしいところで…

広告費減少→番組打ち切りorBSへの移動→視聴者減少→(ry

ということにならなければいいのですが。

競馬中継の場合、外出中にワンセグで見ていた視聴者もいるでしょうから影響は少なくないようです。


またまた別件ですが、別のコメントにて液晶の視野角改善の方法を思いついたと書いた件、早ければ
正月明けにでも文化庁あたりに著作権の申請だけでもしておこうかと思っています。
著作権の申請だけなら費用はほとんどかからないので。
特許や実用新案は申請にかかる費用が高すぎるし、認可されるまでの間にほかの人に申請されたり
すると面倒なので。

正月に簡単な実証試験をした上での話ですけどね。
返信する
Unknown (krmmk)
2010-12-28 22:59:33
>容堂さん
この手の話になるとどうしても(^^;)必死で訴えないと、話が軽く見られちゃう傾向にあるもので。
今更「徴収義務なし」とか言われてもメーカーも困っちゃいますね。もちろん徴収しても違法行為ではないのでいまさらやめたりはしないでしょうが・・・。いい方に転んでくれればいいのですけど、一般消費者は金だけ取られる蚊帳の外にある状況では見守るくらいしか出来ること無いですし。
返信する
Unknown (容堂)
2010-12-28 20:43:19
熱い…
記事から火が吹き出しそうなくらい熱い。

お怒りはごもっともで、一歩間違えば保証金の無限連鎖に陥りかねない可能性もありますが、
一方で保証金の回収についてメーカーに強制的な義務はなく、かといって代わりに消費者に
直接支払いを命じることもなかった今回の判決だけで言えば、実質的な効力をなんらもたない
カスみたいな法律であることが裁判を通じて露見した格好になっており、今後レコーダーに
限らず「徴収義務がないので上乗せや~めた」と徴収をやめる製品を拡大する可能性もゼロ
ではないわけで。
(今の段階では可能性は低いけれど)

また、今後他のメーカーについても同様の裁判が行われるなどしていく過程で、保証金の
金額はそもそも妥当なのか(ITmediaによると、録画機器1 台当たりの補償金額は
21年度で平均383円 だそうだ。
高くね?)や、
同じ番組について録画機で一度支払って再びメディアに移し変える段階で再度支払う形に
なっている二重徴収は妥当なのかなど、もっと本質の部分でメーカーは争ってもらいたい
ものです。

まぁしかし、徴収義務のない金をいままで散々徴収しつづけたメーカーも大概だとは思うのだが…
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