青空のすぐ先には灰色の雲が漂っている。その雲が去っていくものなのか、それとも近づいて来るものなのかはわからないが、この空の下でそれを確かめる時間の余裕を持っていなかった。雲の行方を気にしつつ、いつもとは違う時間の電車に乗り、いつもと同じ道を職場へと向かう。
秋のドラマは、いち押しの『Q10』以外では『フリーター、家を買う』を見ている。井川遥さんが出ているのと、原作を『阪急電車』の有川浩さんが書かれたのとに興味を持ったのだが、けっこうおもしろい。二宮和也さんのドラマは『山田太郎ものがたり』以来だったろうか、ちょっとひねくれた感じの青年を好演している。が、僕には香里奈さんが一番光って見える。かっこよさとかわいらしさとか弱さと、すべてひっくるめて彼女の魅力が伝わってくる。
だが、見終わったあとに『Q10』の優しい言葉が聞きたくなり、第3話のミスコンのシーンからを再生した。ネットでは「中身を詰め込み過ぎ」という意見も多いが、ミスコンの結果を含め、描く必要のない部分はばっさりと切り捨てられていて、それぞれのエピソードを輝かせている。見る人によってはそのことが気になるのだろうが…
Q10の「だ~いじょ~ぶれ~すか~」という言葉が、さらに優しさを増して聞こえた。雲はいつの間にか目立たなくなっていた。それだけ僕が移動してきただけだが、同じ風も同じ雲も次の瞬間にはない。