持続する夢

つれづれにふと気づいたことなど書き留めてみようかと
・観劇生活はえきさいてぃんぐに・日常生活はゆるゆると

熱海殺人事件

2005-04-09 16:35:17 | 演劇:いろいろ
『熱海殺人事件』(バージョン特定なし)
作/演出:つかこうへい


<4/7,4/8のつづき>
このところ。気がつけば、つかさんのことを考えているような。自覚する以上に好きだったようで。もうひとつだけ。

岸田國士戯曲賞の受賞が74年。それ以来代表作と呼ばれ。当人以外の様々な演出家によっても、幾度となく再演されてきた。
熱海海岸沿いでおきた殺人事件。容疑者逮捕。物語は取調室から始まる。

事情というものは。容疑者だけでなく、捜査する側にもあるものだ。各自によって綴られる哀しい過去がある。そこに耳を覆うような罵声が浴びせられ。目を覆うような愛が提示される。
初演は古いが、作品は常に現在にある。役者が替わるから。台詞が変わり、設定までもが変わる。変容し続けているが骨格は揺るがない。舞台の上には、人間のもつ喜怒哀楽のすべてが載っている。

「人は人を殺してはいけない」そんな当然なことを、この芝居で記憶する。もちろんそんなことは知っている。どんな媒体からでも得られる情報として。
それでも。初めて知ったくらいの衝撃だった。言葉が、台詞としてでなく直接感情の中にはいってきた。心臓をわしづかみにされて脳みそに埋め込まれたくらいの鮮烈な記憶。板の上で砕け散った赤い薔薇の情景とともに。これは生涯忘れられないと思う。

『つかこうへいの新世界』発刊

2005-04-08 00:44:53 | 演劇:いろいろ
<4/7のつづき>
昨日はいろんな想いでいっぱいいっぱいだったので。今日は少しクールダウンして本の話。

内容は。まずはつか氏のエッセイから。そして風間、平田両氏へのインタビュー。次がチラシコレクション。それから名作劇場と称する公演写真の数々。これが引き込まれる。観たものは鮮明に甦るし、観てはいないものには想像力が活動しはじめる。目玉は20ページにもわたる、つか氏へのインタビュー。これは深い。あと、縁の作家や演者からの寄稿もあり。マキノノゾミ、横内謙介、いのうえひでのりなどそうそうたる人選でこれも読み応えがある。
最後は戯曲館。『熱海殺人事件』より3作。『寝取られ宗介』で全4作。
装丁は硬質極まりないが。中身は熱い。これで1,400円はありえないくらいお得だと思う。

    <読本を見ていて想ったこと>
  • 風間杜夫さんや平田満さん、舞台光景をみたのは初めてで仰天のモリオとミツル
  • ここまでやるかとおののいた石井愃一さんの桂小五郎
  • 一番好きだったのは、なるしー(池田成志)の木村伝兵衛部長刑事
  • 驚きで開いた口がふさがらなかった阿部寛くんの木村伝兵衛(寄稿あり)

つかこうへいの新世界

2005-04-07 00:59:20 | 演劇:いろいろ
B5変形版 『つかこうへいの新世界』
メディアート出版


劇場で販売されていると。噂にきいた本が店に入荷していた。「つかワールド」を愛しているなら、これはバイブルと呼んでいい。

つか氏の芝居では。様式美とは真逆な世界が繰り広げられる。
観届ける為にはある種の体力が必要だ。最大値の読めない感情の波が、どこまでも際限なく膨れ上がってくる。客席にいるのに、まるで激流に襲われているかのようで。
ほんとうはしっかりと受け止めたいのだけれど。せめて流されないようにと、いつもその場に踏みとどまるので精一杯だ。なにも知らずにいた最初の回は。なんの身構えもなく座っていて。気おされて、気がとおくなった。誇張でなく、椅子の背もたれがあんなにありがたかったことはない。

たぶん。このひとは命を削って作っているのじゃないか、と考える。演者もそうなんじゃないか、とも考える。台本が無く、口立てで芝居がつくられていくというのは有名な話で。徹底的に演者のリアリティを探し当て、躰の奥底から発せられるものをセリフにしていくのだと聞いている。だから。本番を迎えるときには本人も知り得なかった人格が、つか氏によって形成されていたりするのだと聞いている。
そんな舞台だから。観る側も、客ではなく当事者になるべきで。気など抜いていられない。疲れるけれど。それを引き換えてありあまるものがあるから、また足を運ぶのだ。

なんだか妙に熱くなってきているので。ちょっと間をあけて続きを書くことにする。