手話通訳者のブログ

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手話通訳の収支

2015-11-28 08:39:25 | 手話
サラリーマンなど、仕事を持っている人で、
「手話通訳の資格をとって、土日などに活動して通訳報酬をもらい、生活費の足しにしよう」
と考えている方、やめた方がいい。
足しにはならず、むしろ赤字になる。

専業主婦の方でも、「手話通訳活動での報酬で生活費の足しにしよう」と考えたら、後で大きな誤算であったことに気づくだろう。

例えば、統一試験に合格して、「さあ、通訳活動するぞ」と思ったら、まず、全国手話通訳問題研究会(以下、全通研)に入らなければならない。表向き、加入は任意だが、実は強制加入である。
なぜなら、派遣者が、非会員には公的通訳をさせないからである。
(厳密に言えば都道府県によって違いはあるが、まあ、強制加入と思って間違いはない)

全通研の年会費、1万円。
全通研に加入すると、自動的に全通研傘下の都道府県別の手話通訳問題研究会(以下、通研)のメンバーとなる。
通研はそれぞれで運営しているから、事務局や会計などの役割が必要となる。
会員はそれぞれ役割を果たすわけだが、例えば会計を数人で担当するなら、最低でも月に1回、メンバーで集まって業務を行うことになる。交通費を始め、ファミレス等で打合せするなら最低でも飲み物は注文しなければならず、それらのコストがかかる。
最低でも月に1回は研修に参加する。研修は終日やるものが多く、昼食は会場で注文して弁当を食べるか、近くの飲食店に行くことになる。それらすべて自腹である。
自発的に書籍やDVDを買って勉強すれば、月に1万円は軽く超える。

晴れて有資格手話通訳者となった段階で、まず、金がかかるのである。
これらを手話通訳報酬でペイするためには数ヶ月を要する。
いや、おそらく、きちんと収支計算したら、いつまでたっても赤字のままだろう。

ここまで読んでいただけばお解りいただけるだろうが、手話通訳は限りなくボランティアに近い。
一応、報酬とか手当という名目で手話通訳者に支払いがされるから完全なるボランティアではないため、「有償ボランティア」という妙な名称で呼ばれることもある。
上記は金銭的なことだけを書いたが、時間コストはさらにすごい。


女性の社会進出が進んできてはいるが、今でも家庭の大黒柱は男である場合が多く、上記の経済的事情から見ても、男性通訳者が少ないのは自明である。


自然な流れとして手話通訳者の大部分は女性となっているが、子供が大きくなってきて高校や大学に進学する頃になると家計は最も苦しい時期を迎える。
残念ながら、経済的事情で手話通訳活動をストップせざるを得なくなるケースが多い。
では、家計が苦しい数年間を乗り切ってから、手話通訳者として現場に戻れるだろうか。
もちろん、戻ってきて活躍されている方々もおられるが、戻れない人の方がずっと多い。
手話は使っていなければ忘れてしまう。


手話通訳者がなかなか増えないのは、当然過ぎるほど当然なのだ。




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