手話通訳者のブログ

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手話通訳者がかかる「腱鞘炎」

2017-02-09 07:05:33 | 手話
ランクルさんから質問いただいたので。
質問文を読んで、こちらも疑問に思いました。奥さんに聞けば判るのでは? と。
おそらく、奥さんは手話通訳者ではないのでしょうね。


>ただ私も含め手話を常に使っているろう者が腱鞘炎に罹ったというお話は、私の知る限りありませんので。

地元の手話人からも、同じ質問をされたことがあります。

ろう者は問題ないのに、なぜ、通訳者は健康に支障が出るのか。
キーワードは、「通訳」です。

一旦、手話世界から離れて考えてみましょう。
外国人の講演会で、同時通訳がついている場合があります。この場合、通訳者は数人のチームで同時通訳を行います。
通訳について、あまり知らない人は疑問に思うでしょう。
どうして一人でやらないの? と。
これは、時間の経過と共に、通訳の精度が落ちるからです。
なぜ、精度が落ちるか。疲れるからです。

通訳は、集中的に、脳をフルに使う仕事です。

手話通訳者の世界では、「けいわん」と呼ばれています。
正式名称は頸肩腕症候群です。
この正式名称で検索すると、たくさん情報が出てきます。

手話は腕を使うので、筋肉性の疲労だと思われがちですが、神経性(精神性)の疲労なのです。

もちろん、精神と肉体は密接に関係しているので、精神のみが疲れるわけではありません。
(手話通訳は腕を動かし続けるので、筋肉性の疲労も生じます)


ランクルさんの質問に戻りましょう。

>ただ私も含め手話を常に使っているろう者が腱鞘炎に罹ったというお話は、私の知る限りありませんので。

聴覚障害者がけいわんを発症するケースもあります。
私が知っているケースだと、中途失聴者がなるケースです。
中途失聴とは、聴者として長年生きてきた人が病気などで聴力を失うことです。
こういう方が手話を身に着けるのは、なかなか大変なものです。
相手に伝えたいことが日本語として浮かぶ。しかし、これを手話に変換することが大きなストレスになります。
日本語→手話
この変換を繰り返しているうちに、疲労が蓄積し、深刻な状態になることもあります。



1 コメント

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ご回答ありがとうございました。 (ランクル)
2017-02-09 20:59:09
お詫びしたいことが2点あります。

手話通訳者の職業病を「腱鞘炎」だと思ってしまいました。
正しくは「頸肩腕症候群」ですね。私の認識不足でした。

もうひとつは、嫁さんは手話通訳者ではありません。それと両手腕がおもうように動けないという運動障害を持っています。全く違う世界にいて、それまでは存在は知っていたもののろう者と深くかかわったのが私が初めてだったそうです。

ですので、普段の会話は口の動きやジェスチャーで成り立っています。

そういうことで、職業病に関してはたいしさんならお分かりかなと思い、質問させていただいた次第でした。

次から次へと流れてくる話を聞きながら、頭の中では添削やその文章の趣旨を変えずにろう者に解る文脈に瞬時に置換や変換して、そして手は動かし続けて…。
これは大変なことだと思います。私が言うのもなんですが…。
手話通訳者には、そういう精神的なものが蓄積されてしまうんですね。

数年前、あることで通訳者が必要になり、依頼したことがありました。
その時は所要時間が長時間(2時間)になると言ったら、その時は派遣は2人にさせて欲しいとお話がありました。

これも精神的に集中できる時間が限られてしまうから、なんですね。

私もそういう面にも目を向けて、手話通訳者がいて当たり前とは思わず、労りと感謝を心掛けていきたいとも思っています。

ご丁寧なご回答をありがとうございました。

ランクル
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