手話通訳者のブログ

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失礼です!

2016-12-15 06:43:23 | 手話
前回のブログで、
手話世界とは全く接点を持っていない人から「あなたの言動は手話通訳者として問題がある」という指摘をいただいたら、謙虚に聞く。
と書いた。
現実にあったことを書かせてもらお。

講演会の通訳に行った。
終了後、申請者さん(ろう者のRさん)が、
「講師の先生に質問したい。通訳お願いします」
とおっしゃって、講師控え室に同行することになった。
講師の先生は、快く質問に応じてくれた。

この先生とRさんの会話を通訳していたら、先生が怒って俺を見て、
「あなた、人差し指を人に向けて指さすのは失礼でしょう!」
とおっしゃった。

すみません。気を付けます。ただ、ちょと、説明させてください。

「指さし」という手話通訳技術がある。
これは、会話の中に複数の人物が登場している時など、「誰が」という主語を明確にするために用いる技術である。
目の前の人を指さすのは、たとえそれが手話表現の一つであっても失礼だ、という考え方は手話世界にもあり、手話通訳者同士で議論することもある。
指をさす代わりに用いる表現として、手のひらを上に向けて、指先でその場にいる人を指し示す方法がある。これはソフトな表現で相手に不快感を与えにくい点はよいが、肝心のろう者に伝わりにくい面があり、表現としてろう者に伝えるスピードが遅かったり、別の手話表現に見えてしまう点もある。
などなど・・・

Rさんも援護してくれた。
「ろう者同士で話している時、相手を指さしたり、自分を指さされたりしますが、それで不愉快になったり、喧嘩になったことはありません」

先生は、
「よく解りました。私の方こそ、失礼なことを申しました。すみませんでした」
と謝ってくださった。

手話通訳者は、通訳現場で自分の考えを述べることは、原則としてあってはならない。
しかし、この場合はそれが必要な例外ケースだった、と思っている。


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