自分の目標に早く到達しようとが、なかなか思う様に事が進んでいかない。
すると後ろから、先輩や友人や後輩たちが、追いかけてくる。
「うーむ、抜かれてなるものか」と、足を伸ばしスピードを上げても、平気で後ろから着いてくる。
足が疲れた、腰が痛い…と思っても、休む事が出来ない。
抜かれてはいけない、追い越されてはいけないという考えで、心の中がのっぴきならない大きな恐怖で、埋もれてしまう。
不安が日毎に募る。
不安は心の敵だっ…と思って、不安という敵と争っているうちに、どんどん不安のルツボに落ちていく。
こんな不安を消すのは、実は簡単なのだ。
「お先にどうぞ」と、人に道を譲ってやればいい。
自分は後からでいい。
自分はゆっくり落ち着いて、のんびりいこう。
「己れを達せんと欲して人を達す」と孔子はいっている。
速い事がいいといって、速度を競争するから不安が募る。
若い頃に、せっかちで短気な私は、バスに乗るにしても、電車に乗るにしても、まずわれ先に飛び込んでいた。
「われ先」に素早く…。
何処にいてもそう考えて、落ち着きがなく生活をしていた。
年を取るにつれて、まあ座禅でも組んでいたからでもあろうが、「われ先」の心の在りようが、つくづく嫌になった。
嫌になったが、心は治らない。
「どうぞ、お先に」…。
エレベーターに乗る時など、気に掛けてこの言葉を発した。
今も実践している。
おかげで今日では競争心がすっかり無くなった。