Not doing,but being ~在宅緩和ケアの普及を目指して~

より良い在宅訪問診療、在宅緩和ケアを目指す医師のブログ

スピリチュアリティについて

2011-02-17 11:11:32 | 日記
緩和ケアの領域において、スピリチュアルペインとかケアの重要性が問われて
いますが、「言葉の意味が分かりにくい」という声をよく聞きます。

スピリチュアルペインとは、これまでの価値観や自分の存在の意味を
失い、I am not OKになってしまった状態だと思います。

自己啓発に関する本を数多く著したデール・カーネギーは、
自分自身の存在価値を見出せること、自分が重要だと気付くことが
最も幸せなことだと言ったそうです。
良い意味の自己愛という事ですね。
スピリチュアルペインとは、これと逆の状態を言っているのでは
ないかと思うのです。

服部洋一先生は、スピリチュアリティを考える時に、
「目に見えない箱」を思い浮かべると良いと言いました。
この箱には患者さんの大切なものが入っています。
家族、友達、仕事、趣味、信念、誇り、哲学、宗教…。
スピリチュアルケアは、この箱と中身を大切に扱うこと。
時には中身を見せてもらい一緒に楽しむこと。

緩和ケア病棟に入院した患者様が、「元気になったらまた治療が受けたい」
と話しているのを聞いて、
この患者さんは「否認」しているので「受容」出来るように援助するべき、
等と考える人は、時に“受け入れないあなたは not OK”というメッセージになって
いないか注意するべきではないでしょうか。

時間・関係・自律(村田理論)などの言葉がしっくり来る方はそれでも
良いと思いますが、
スピリチュアルケアとは目の前の患者さんを大切に想うこと。
家族のように接すること。これ以上でも以下でもないと私は思います。