Not doing,but being ~在宅緩和ケアの普及を目指して~

より良い在宅訪問診療、在宅緩和ケアを目指す医師のブログ

早期からの緩和ケア開始が余命を延長

2011-02-01 13:07:13 | 日記
私がブログをお休みしている間に、ニューイングランドジャーナルという雑誌に、
早期から緩和ケアを実施することでQOLだけでなく、なんと余命も延長する可能性
がある、という論文が掲載されました。有名な内容なので皆さんご存知かも
しれませんが、一応紹介させて頂きます。

この調査は米国で新たに転移性非小細胞癌と診断された151例を対象に行なった、
ランダム化比較試験(RCT)で、肺癌の標準治療のみを行うグループと、標準治療
に加え、緩和ケアチームが介入し疼痛管理など緩和治療を行うグループに分け、
12週間後のQOLを比較したというものです。当然ながらQOLは有意差を持って
緩和ケア併用群で高かったのですが、緩和ケア群が終末期に積極的治療を受けた
患者が少なかったにも関わらず、生存期間の中央値は早期緩和ケア群のほうが
長かった(11.6か月 対 8.9か月,P=0.02,)とされています。
早くからモルヒネを使ったり睡眠導入剤を使用する事に抵抗を覚える方も
おられますが、決して余命を減らすことはなかった、と言えると思います。

オリジナルを読みたい方は、以下よりPDFがダウンロード出来ます。
http://www.nejm.org/doi/pdf/10.1056/NEJMoa1000678

早期からの緩和ケア介入が生存期間を延ばす可能性については以前より
示唆されていました(Bakitas M, et al. JAMA. 2009; 302(7): 741-9)。
今回も、生存期間については後ろ向きに解析されたものですので結論めいた
ことは言えませんが、皆さんが躊躇せずに緩和医療を受けられることに
役立てばと思い、紹介あさせて頂きました。