徒然刀剣日記

刀剣修復工房の作品・修復実績と刀剣文化活動のご紹介

うぶだし刀剣の修復

2014-03-23 00:17:52 | 拵工作
研ぎ出し鞘が特徴的な脇差しの修復が完了しました!



なんと数ヶ月間、集中工作を続けてきたお刀なのです。

当初、工房に持ち込まれた時は、完全な初出し状態でした。
鞘の研ぎ出し部は、ボロボロと粒が剥がれ落ちて下地が露出、くり型と瓦は消失。
漆が収縮して各所に亀裂が生じて、鯉口は外れてブッカブカ・・・。
鍔も無く、ハバキと切羽は着せ(銅に鍍金)が剥離。
柄前は、ほつれた柄糸と、触るとボロボロとこぼれ落ちる鮫皮。
刀身にいたっては、錆身の中の錆身といった感のある王道のような再起不能脇差しでした。
実際、他の工房へご依頼者様が持ち込まれたところ、あっけなくお断りを喰らったという職人泣かせな一品です。

当然、腰をすえて取り組まなければなりませんので、ご依頼をお受けするには覚悟が必要です。



修復の詳細は、以下の通りです。

・柄前の修理内容

柄前を分解する→下地の状態を確認する→下地の修復→剥がした鮫皮を再度着せ直して剥離部を補修する→若干古い同系の柄糸にて柄巻き(諸摘み巻き)→完成

(柄前修復時の記事はこちら!→・「柄前の修復」(2013/08/20)

・鞘の修理内容

鞘下地の破損部を漆で塗り固める→剥離した粒と同種の梅花皮を加工して一粒一粒埋め込む→鯉口部の修復→くり型・瓦の作成→漆で粒と粒の間を厚めに埋める→漆塗りと研ぎ出しを繰り返す→完成

(研ぎ出し鞘の修復は、古い漆層と新しい漆層では収縮率に違いがあるため、どうしても一部に歪みが生じる欠点があるようです。)

・刀装具の修理内容

拵え全体と相性のよい鍔を合わせる→攻め金を施してガタツキを抑える→ハバキ・切羽の銅の着せを剥がし、鍍金をかける→現代のくり型シトドメをはめる→完成

(ハバキ・切羽の修復では、技法的には再度金着せを施すことも可能ですが、この度はご予算の都合もあり、金鍍金を施しました。)

・刀身の修理内容

痩せないように必要最低限の整形に留めて、下地研ぎを施す→差し込み研ぎで仕上げる→完成

(刀身研磨時の記事はこちら!→・「差し込み研ぎ」(2014/03/12)

以上、最後に下げ緒を付属し、お祓いを済ませて納品です。

修復終了後のお祓いの工程で、北枕に刀剣を供えます。
この意味がいまいち分からないので、先日仲良くしていただいている職人仲間と会ったおりに、北枕の意味について恥を忍んで聞いてみました。結果、意外にも理由を知っている職人はいませんでした。伝統というだけで続けていますが、全く意味がわかりません。
ご存知の方がいらっしゃっいましたら、ぜひともご教示ください!