海軍大将コルシンカの航海日誌

ロシアの作曲家リムスキー=コルサコフについてあれこれ

『管絃楽法原理』(その2)

2020年10月02日 | 著作
『管絃楽法原理』(邦訳)は二分冊になっており、「Ⅰ」が本文、「Ⅱ」が実例となっています。
本文にはもちろん管弦楽法に関する技術的な内容が記されていますが、私のような者には、むしろリムスキー=コルサコフの記した序文のほうがおもしろく読めるのです。

ここには彼の管弦楽法に関する哲学がよく表れているからなのですが、内容によっては管弦楽法だけでなくわれわれの日常の生活や仕事にも当てはまることがあるように感じます。

以下いくつか抜き出してみました。
【出典】『管弦楽法原理』(小松清訳/創元社刊)より 。

楽器編成は創造である。そして人は創造することを教えることは出来ない。

人々は極めて単純な事実に対して、あまり厳密に哲学的な、または過度に詩的な意味を与える。古今の偉大な作曲家の名前に尊敬の念を惹き起こされて、時によると凡庸な例を良い例として示し勝ちである。用いられている技巧の不完全さや或はその他のことでたやすく説明できるような疎漏や無知に対して、その人たちは幾頁にもわたる苦しい説明を試みて、欠点のある楽句を弁護したり、時には礼賛さえもするのである。

作曲家の当然為すべき筈の努力は、演奏者に課せられる無益な努力よりも価値がある。

作曲家は自分の意向を意識していなければならない;そして他人の作品を編曲する人は作曲家の意向を洞察しなければならない。

欲するだけでは充分でない:欲するに適しない事物もある。



特に最後の「欲するだけでは...」は、もちろん管弦楽法に関する知識や技術に関する言葉なのでしょうけど、いろいろと拡大できそうです。
つまらない物欲や、どうでもよい対人関係なども、「欲するだけでは...」と今一度振り返っていると案外必要ないことが分かったりしないでしょうか。