海軍大将コルシンカの航海日誌

ロシアの作曲家リムスキー=コルサコフについてあれこれ

《アンタール》の「版」に関するメモ3

2008年02月07日 | 《アンタール》
【3】それぞれの「版」の特徴

楽譜を見ただけでその曲がわかり、かつそれを語る...なんて能力はもちろんありませんから、その辺はご容赦を。
《アンタール》の「版」の特徴についてですが、自分の手元にあるのは「第2稿」と「第3稿」ですので、両者の比較ということになります。

その前に「初稿」「第4稿」について。

「初稿」ですが、まず、他の3つとは楽器編成が異なります。《アンタール》はいわゆる2管編成(ただしフルートは3本)の作品ですが、「初稿」のみ、ファゴットとトランペットが3本ずつとなっているやや変則的な編成です。

曲そのものについては、私は以前ロジェストベンスキーが読売日響を指揮した「初稿」の演奏を聴いたことがありますが、さすがに今となっては詳細がどのようであったかを思い出すことはできません(ただしこの時の「初稿」も少々アヤシイ点があることはとりあえず指摘しておきます)。

「初稿」のスコアを見ると、第1楽章でアンタールが夢の世界に入る時にフルート3本で奏される下降音がヴァイオリン・ソロ3本で奏されています。
この他にもいろいろとあるのでしょうけれど、これはまた上野で確認することにします。

「第4稿」については、楽譜そのものの特定が今のところできませんので、どのようなものであるかは不明。「第4稿」は「第3稿」の出版を拒否された作曲者が、「妥協の産物」として「第2稿」に最小限の改訂を加えたものである、という経緯をそのまま信じるのなら、「第2稿」とはそれほど変わっていないはずです。いずれにしろ「第4稿」については当分ペンディングです。


さて、「第2稿」と「第3稿」の違いですが、細かいところを含めるとかなりのものになりますが、分かりやすい箇所(というか、私にとって説明しやすい箇所)に絞っていえば、次のとおりです。ポイントは「打楽器」です。

■第1楽章 アンタールの槍が巨鳥に一撃を与える描写の部分(シンバルのバチ打ちの前後)
「第2稿」pで奏される大太鼓にティンパニの強打がいきなり入る
「第3稿」ティンパニはなく、大太鼓のクレシェンド/デクレシェンドのみ

■第2楽章 冒頭の「復讐の主題」が2回繰り返された後の部分
「第2稿」(嬰ハ短調)アンタールの主題が始まると、それに呼応するように2拍遅れでティンパニで「ダッダダン」と奏される
「第3稿」(ニ短調)アンタールの主題が始まって少し遅れて(2小節と2拍)ティンパニで「ダンダン」と奏される

■第3楽章 冒頭の主題の後の部分
「第2稿」冒頭の主題の後、大太鼓のみmfの一打が奏される
「第3稿」同じ部分にティンパニの装飾音付きの「ダダダン」がfで加えられて奏される


いかがでしょうか。
もっともその道の方ならもっと重要な点をご指摘されるでしょうけれど、私が文章で説明できるのはこの程度が関の山です。

さて、一応これが「第2稿」と「第3稿」の違いの分かりやすい部分であるとして(私の参照した楽譜が正しいとしての仮定ですが)、それでCDの演奏を聴き、あるいはブックレットに書いてあることを読んだりすると、あれれ?というようなことになってしまうのです。

(つづく)