地球の裏からまじめな話~頑張れ日本

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ご質問への回答~再び

2005-09-10 07:19:58 | CB教室
今日はちょいと記事の予定を変更する。
それは、コメント欄に非常に素晴らしいご質問を頂いたので、それに答えておきたい、と言うことである。
これはアマポーラさまからのご質問で、

『一部の海外発行の新株予約権つき社債等で、発行後海外市場に上場すると記述がある物がありますが、外国の方にとっては知名度も低く、おまけにゼロクポーンだったりする会社の社債が上場して商いはつくのだろうか?とかねてから訝ってました。その種の社債は、本当に取引する人がいらっしゃるのでしょうか??』

非常に良くご覧になっていらっしゃいます。
きちんと会社から出された資料なりを読めば、確かにこの「上場」に関する記述が見つかるものがあるのです。

何度も申し上げている通り、海外、それも特にヨーロッパで起債される日系企業のCBには大きく分けて2つあって、一つはユーロ円CBと呼ばれる、ロンドンで起債されるもの、そしてもう一つはアルパイン円CBと呼ばれるスイスにて起債されるものである。(ここではMPO系は除く、ごく一般的なCBに関しての話であるので、ご注意)

引受各社は大体どこも内規なり社内の取り決めで、大体起債総額を100億円で区切って、100億未満の起債はスイスで、100億以上はユーロで、と決めている。
日本の上場事業会社にもかなりのプライドがあって、特にオオドコロの一部上場企業に至っては「スイスで起債?」ってなところも多々ある。これは「わが社クラスがCBを出すならそりゃあユーロ市場に決まってるじゃない」と言うことなのだ。
つまり、大手企業で100億以上の起債も問題無いところは大抵ユーロで、それ以外の小型系の企業はスイスで、と言う暗黙の了解があって、引受担当者も相手の規模によって起債活動を住み分けているわけだ。

ではこの両者の違いは何か?
一般的にスイスにおける起債の方が遥かに起債に関する手続きが簡単で、費用もかなり抑えられる。対してユーロ、つまり英国法に乗っ取った起債の場合はかなりその手続きが煩雑でその分の費用も余計に掛かる。
さらにスイスでの起債は一般に「私募形式」すなわちそのCBをどこかに上場させる必要が無い。
反対に英国の場合は「公募形式」を取る事が多く、この形態であると当該CBは必ずどこかの市場に上場させなければならない、と言う決まりがある。
(もちろんスイス市場にての公募形式、ユーロ市場においての私募形式と言うのもあるにはあるが、一般的ではない)

そこでご質問の答えである。
海外市場に上場されるCBと言うのは、ゆえに公募形式で発行されたCBである。
海外市場、ロンドン市場や、税金の関係からルクセンブルグ上場などがあるが、実際にそのCBが発行され、そういう取引所に上場されてもまず一般には取引はされない。しかしながら取引所は気配値くらいは出す。
特にユーロで発行されるような大型銘柄のCBの買い手は、かなり有名なファンドなり投資家が名を連ねる。
そして特にその手のファンドは、買った銘柄に対して毎日きちんと公表された値段にての「値洗い」をしなければならない。そのソースがこの取引所が出す気配値、と言うわけだ。
逆に、投資家によっては「(そのCBが)どこかに上場しないと買えない」と言ってくるケースも多々ある。その場合はそれまで私募を予定していたCBが公募に変わる事だってありえる訳だ。

つまり当該CBが上場すると言うことは、そこでの取引を目的としていると言うよりも、規則によってそうなっているから上場させるのであり、また上場することによってきちんとオーソライズされた取引所が値段を公表するので、その値段に乗っ取って、法的に問題の無い気配値にて、そのポジションホルダーは毎日値洗いが出来るから、と言うことになる。
ただ大部分の投資家なりヘッジファンドなりは、各ブローカーの出す値段や、あるいは各社各様のモデルによって算出された値段にて値洗いをしている。
取引所が出す値段でそれをやっているのは、伝統的なファンドや年金系がほとんどであると思われる。

ちなみにこれらのCBのマーケットの流通値段と言うのは、現在ヨーロッパでは、
野村インターナショナル
大和SMBCヨーロッパ
三菱インターナショナル
KBC証券ロンドン
クレディスイス・ロンドン
の5社が気配値を主に提示している。もちろんみずほやメリルやMSやドイチェ、シティーなんかも出すには出しているが、一般にこれらのCBのマーケットメイカーと呼ばれ、市場に強制流動性を保たせているのはこの5社であることを付記しておこう。
各社ブルーンバーグにて気配値を日々公表している。

アマポーラさま、こんなんで宜しいでしょうか??