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地球の裏からまじめな話~頑張れ日本

地球の裏から日本頑張れ!の応援BLOGです。
証券関係の話題について、証券マンとしての意見を述べていきます

MPT(3734)のMPOに関しての考察

2005-08-18 06:20:18 | CB教室
ここ数日ヒット数が減ってきてしまった。どうか読者諸氏におかれてましては拙BLOGの宣伝に励んでいただければと思う(笑)。
いや、ほんとは毎回の記事の最後に「ここをポチッと押してね♪」みたいにランキングとかのリンクの用意でもしておけば良いのだろうが、どうもそれは私の美学に反するのでそれは出来ない。
私はこのBLOGにて、例えば某掲示板でのいらない心配をされている方々や、あるいは聞きかじりの知識にて株式投資をされている方々へ少しでも役立てれば良い、などと偽善者ぶった考えを持っているのであるが、ゆえに皆様の宣伝にて少しでも多くの人が正しい知識を持っていただけるようになれば、と切に願っているだけであるが、何か(笑)。

と、前置きが長くなってしまった。
本日はコメント欄に頂いた、ESCAPEさまのご質問に答えてみようと思う。
ちなみに明日は、最近ちょろっと出てきた『新株予約権』に付いて書くので、お見逃し無く。直近、松竹、そして本日菱和ライフクリエイトがその発行をアナウンスしているが、それに対する誤解を解くための既に識者によるご意見の裏付けは取ってあるのでヨロシク。

さて、ESCAPEさまの質問とは、
『(MPOに関しては)一般的に引き受け後どの程度の期間で転換を完了するのでしょうか。
MPTの場合2回に分けて発行されますが、これは素直に株価下落圧力の緩和のためと解釈できますか?またもし下限価格を割ってしまった場合は引受会社が損を被るのでしょうか?』
と言うものである。
ちなみに彼(もしくは彼女?)は、MPT(エム・ピー・テクノロジーズ)(3734-Mothers)に絡めてこのご質問を書いて下さった。

大変お恥ずかしながら、私はこの銘柄に関する知識はほとんど無く、かつこの会社がMPOを発行していたこと自体をきれいに見逃していた。
ゆえに、調べた(一応仕事もしております、まあ合間に調べた、とここでは申しておきましょう~笑)。

その前にこの質問の1番目に対する答えである。
前に述べたようにこのMPOはもはや主幹事証券会社にとって「引受け」ではなく「投資、純投資」である、と述べた。
投資に対する最も重要なことは、リスクの回避、である。
つまりMPOを司った証券会社はいち早くこのリスクから逃れつつ利益を確定しようと言う投資行動に出るのは当然の事である。
よって、MPOに関してはその転換のスピードは様々であるが、一刻も早く転換して利益を確定するはずだ、と言うのがその答えである。
正直具体的なデータは取っていないが、通常のCBがモノによっては満期まで(大体4年)全く転換されずに終わるケースがある中で、このMPOにとっての唯一のリスクから開放される手段は転換であるわけで、個人的には半年程度、かなぁ、と言う印象がある。

そして次なる質問の、MPTのCBについてである。
このMPOは2本立て(我々はこちらでは、2 Trancheと呼んでいる)で発行されている。
40億x2であるが、第2回の方には「発行後4ヶ月間はある一定の株価以上じゃないと転換出来ません」と言う条項がついている。
1回の方は素直なMPOで、(CBの)行使請求があった場合、その日を含まない直近3営業日の株価平均の90%に転換価格を修正いたします、と言うモノだ。
これはまさにESCAPEさんが考えられているように、株価の下落圧力を多少なりとも軽減させるべくの措置だと考えてよいだろう。
その根拠は、6月14日に会社がアナウンスしている「転換状況のお知らせ」からも読み取れるかと思う。
第1回の方は、40億に対して31億がこの時点で転換されているが、第2回の方は、転換制限価格である764’280円をどの時点でも株価が上回っていないため、転換はゼロとなっている。
第2回の方は9月9日まではこの制限価格を連続した3営業日の平均株価が上回らない限り、転換(行使)は出来ない。
つまり、第1回がかなりの転換率を誇るのに対して第2回は足枷をはめられているがゆえにこのような転換状況になっているわけで、よってESCAPEさんの推測は正しいと結論できよう。

さて、ESCAPEさんはMPTの株価があまりにも上がらないため、それはMPOも一因ではないかと考えられてここへたどり着かれたそうだ。
この転換状況資料をもう一度つぶさに見てみると、これには表が載っていて、
行使日、行使額面総額、交付株数、未行使株数、がそれぞれ載っている。

5月10日、6億円行使、939.40株交付、残り34億
5月11日、1億円行使、154.10株交付、残り33億
5月12日、1億円行使、153.11株交付、残り32億
5月16日、6億円行使、914.07株交付、残り26億
6月14日、17億行使、3670.12株 、残り 9億
合計   、31億行使、5830.80株 、残り 9億

となっている。
さて、この第1回の転換価格修正に関する記述は以下の通りとなっている。
「本新株予約権の各講師請求の効力発生日まで(同日を含まない)の3連続取引日の東証における終値の平均値の90%に相当する額が、当該修正日の直前に有効な転換価格を1円以上上回るもしくは下回る場合には、転換価格は、当該修正日以降、当該修正日価格に修正される」
とある。
正直私もあまり読みなれていないので、なんじゃこりゃ?って感じなのであるが、要はこの場合主幹事のメリルから行使請求を(MPTが)受け取った日を含まない直近3営業日の平均値の90%に転換価格を修正します、と言うことだ。
それじゃあ上の表を見て、例えば5月16日に行使されているがその行使価格は、16日を含まない直近3営業日の平均値を計算すれば出ることになる。
が、もちろんそんなことをする必要は無いことに既に皆様お気づきだろう。
(CBの額面)/(転換価格)=行使株数
と言う公式がある。ゆえに上記の表から転換価格は簡単に求められるのだね。
5月10日~638’705.55
5月11日~648’929.27
5月12日~653’125.204
5月16日~656’404.87
6月14日~463’200.11
平均   ~531’659.46
となる。
ちなみに行使請求期間は5月10日から、となっていることからも、如何に主幹事が鼻から飛ばして行使しているかが良く分かると思う。
これもまさしく上記質問1の答えの裏づけになると思われるが、如何でしょうか。

また仮に転換価格が下限転換価格を下回った場合は主幹事は損するのでしょうか?と言うご質問であるが、それは全くその通りである。
第1回の下限転換価格は、347’400円であるが、全く持って仮に株価がこの半値になった場合、当然CBの理論価格も50円となる訳である。
よって損をします。
但しこの辺は非常に上手く出来ていて、ちゃんと「本社債権者の選択による繰り上げ償還」と言う項目があって、転換価格が下限価格を下回った場合、所定の事務手続きを踏めば、100円で償還できますよ、となっている。
つまりこれが無ければ主幹事はもちろん損をするが、これが契約に盛り込まれているため、実際はそういうケースが仮に起きても主幹事はきちんと逃げられるようになっているのである。
なんだかなぁって気がしません(笑)?
至れり尽くせりの条件の元での投資であるわけであるね。

最後に、何故この会社の株価は上がらないのか?
チャートを見るまでも無く、この行使価格の推移を見てもお分かりになるように、確かに株価は基本ダウントレンドにある。
果たしてこのMPOが悪役なのか?
そこで調べると、この銘柄に対して唯一みずほ証券のアナリストがコメントを出しており、彼は「買い推奨」としている。
実際6月14日に彼は「強い買い推奨」を発表、その日の株価はストップ高となった。
また直近では8月12日に「業績予想変更」と題するメモ書き程度のレポートを発行して、投資判断1(買い)、目標株価を84万円としている。
実際コネを使ってそのメモ書きレポートは入手済みであるので、欲しい方はご一報下さい。

しかしながら私がどうも解せないのは、彼は「買い推奨」をしながらも常にそのレポートの締めにおいて「同社株式への投資に対しては、上場廃止リスクに留意する必要がある」と結んでいる。
これも調べてみると、さる業界系情報端末のニュースに、
「MPTは事業規模が同社を上回る『ゲスト・テク』を買収したため、東証の上場廃止基準に抵触し、2008年7月31日までに新規上場に準じた審査を通過する必要がある」
とある。
一応東証のHPにて確認するとあった。ここの、2005年1月18日の箇所に「合併等による実質的存続性の喪失に係る猶予期間入り(上場廃止基準)」とあるのだね。

またこの株の日々の出来高を見ると、5月中は大体200-300株の出来高、
但し、
5月12日 938株
5月13日 721株
5月24日 698株
6月01日1310株
6月15日3313株
となっているので、その辺でつなぎ売っている可能性はある。6月15日は14日のみずほのレポートにてストップ高した翌日であるからある程度の出来高は予想されただろうし、ある意味絶好の転換売りの機会であったと考えられる。
(一応ここ半年の出来高平均は、398株である)

今の段階では第2回の制限株価を上回る可能性は低い(本日444’000に対して制限価格764’280)と思われるので、この行使開始は今のままで行けば9月以降となろう。
第1回の行使の影響はどうも限定的に見えるし、これは第2回も同様ではなかろうか。主幹事のこのMPO処理班もバカではないので、当然の事ながら場を見ながら場を崩さないように転換売りを行っているのは何度も言っている通り。

結論としては、この会社の株価の低迷原因は単にMPOのみが原因では無く、むしろ私は「上場廃止のリスク」によるものの方が大きいと思うのだが如何だろう。
個人的にかのアナリスト氏には何の恨みも無いけれど、買い推奨をしながらの上場廃止リスクを考慮せよ、と言う論調は少々乱暴に思える。
冒頭で述べたように投資家が常にすべきはリスクの軽減であるのだから、この会社そのものにダイレクトに関わってくる上場廃止リスクに対してもう少し突っ込んだ調査をすべきだろうと思うが、ESCAPEさん、如何でしょうか??

MPO、昨日のBLOGでの公約

2005-08-16 06:52:42 | CB教室
昨日のBLOGにて公約した、ECMの人間の意見である。
公約通り(笑)、信頼のおける大手総合証券のECMの人間に、昨日のお題である、
「転換価格の上下限の持つ意味」を聞いた。
ECMの人間にとって、ある企業が発行するCBなりの起債を引き受けるに際しては、当然の事ながら守るべき様々な法律がある。
このCBにおいての最大の法的焦点と言うのは、「有利発行か否か」と言うことである。
つまりその起債が一部にのみ(あるいは当該企業に)有利な発行であってはならない、と言うことだ。
私のそのブレーン(もちろん他社の人間ではあるが)は、今までの通常のCBに関して、またその後のMPOに関して、弁護士先生やら商法学者さんたちに対して、一つ一つグレーな部分を潰して行った経験を持つ。
つまり彼はいまやCBなりMPOなりは全て合法な起債である、と胸を張って居る訳だ。
その彼(もしくは彼のチームを含めて)からの意見である。

まず通常のCBについて述べる。
過去に書いたように、通常のCBには一般的に2年後3年後に1回ずつ位、転換価格の下方修正条項が付くことが多い。ちなみにその場合のフロアーは70%なり80%なりが一般的だ。
これがまさに、このスキームのCBは有利発行ではない、という事を弁護士や学者先生たちに納得してもらうための条件だったと言う。
(投資家にとっても、きちんとした保険があります、と言う意味だろう)
そしてMPOであるが、これもこのスキーム自体は上述したように認知はされているが、しかしながら一部の弁護士先生たちのいわゆる心のハードルがまだまだ高いそうで、ゆえに、上下限を付ければ、これは有利発行では無いですね、と言うことになっているそうだ。

また、私自身そんな基本的なことを昨日は見逃していて本当に皆さんすまん!という事がある。
それは各企業の定める「定款」だ。
その企業が発行できる株式数と言うのは定款にきちんと定められており、例えば下限を決めずに最悪1円の転換価格なんてのが存在してしまったら、それは定款に触れるケースも出てくるでしょう、と言うことであった。

しかしながら事の持つ意味はともかく、私自身のディーラーなりトレーダーとしての意見は間違っていないことを彼と確認したので、念のため。
つまり、引き受けたCBはどっさりディーラーなりトレーダーのブックに入ってきて、彼らがその処理を任されるわけだが、その際には一切上限下限なんてのは意識しないし、ましてや昨日力点を置いたように、相場操縦に触れるような行為、例えば上限まで株を上げる、下限まで株を下げる、と言った行為は一切出来ないことに間違いは無い。
ゆえに昨日も結んだように、貴殿が投資している会社が仮にMPOなりの発行を決議し、そしてそのMPOには転換価格の上下限が付いていたとしても、それは上記のような理由により付けられたもので、その値段を少なくともCB処理班はあまり意識しない、と言うことは考慮の対象に入れておいたほうが良さそうだ。

株と言うのはある程度の売り物が出てきて始めてボリュームが増えて、そうして上がって行く場合も多々ある、と言うことも経験則としてあるのだ。

さて、次にYOZANのケースで述べた「引受審査」に関して今日得た新たな知識をここで披露しておく。

引受審査に関しては、MPOの場合は引受ではなくて、主幹事が割り当てを発行体から受けている、と言う考え方がある。これは証券会社のヘッジファンド化を裏付ける考え方だ。
つまりこれは引受行為では無い、と言う見解から、日証協の要請に基づく引受審査(公正慣習規則第14条)をする必要が無い、との事だそうだ。
但し、日証協の要請に基づく審査は不要ではあるが、「投資」なので、社内的な「投資判断」は必要になる。
結局その投資判断自体を、引受審査に準じて行うところもあれば、デイトレ的な考え方の判断をするところもあるそうだ(何処が何処とは言わないがね)。

最後にもうひとつ。これは実は結構重要である。
「貸し株は行わないことになっております、云々カンヌン」と言う記述を最近出す起債が多い。これにより我々が漠然と持つ、空売りは起こりにくい、と考えられ、ゆえに多少の安心感を呼ぶ記述である。
しかしながら、いわゆる転換社債のつなぎ売り、に関しての貸し株借株はその制限を受けないそうだ。
ここで大いなる誤解をひとつ解くと、MPO発行→主幹事の空売りによる株価の下落、そして安くなったところで転換して株を現渡し、みたいなやり方が一般的なように思われているが、何度も言うように少なくとも一流を自負する証券会社は空売りによって株価を下げたり、自己の介入によって株を上げたりしないことはしつこいくらいに述べた。
しかしながら単純なつなぎ売りは別よ、と言うことだ。
転換のスキームをよく勉強されないと良く分からないかも知れないが、仮に、
あるCBがある。株が順調に上がってきて、パリティーが130、さらにプレミアムもマイナス状態、マーケット価格は128で、さらに売り物が1億あるとしよう。
今例えばこの株を1億分(パリティー130の時点での株価で)売って同時にCBの売り物を128で買って転換すれば、2円のさやが抜ける。
しかしCBを転換するとその株がデリバー(自分なり会社の口座に株が配達されること)されるまでに2週間程度掛かる。しかしながら売却した株式は私が買い方にやはりデリバーしなければならない。この期日はご存知T+3日(4日目決済)である。放っておくとこれは未決済になって大問題になって、どこかの時点で株を買い戻さなければなくなる。
それを避けるために、業界で言ういわゆる「ちょい借り」、つまりこの2週間の間だけでいいから株を私に貸してください、と言う行為を行う。
まずは借りた株を4日目の決済に充てて、借りた株は2週間後に転換によってやってくる株で返す、と言うことだ。
これを転換社債のつなぎ売り、と言うのだが、このための貸し株借株は、規定の範囲外ですよ、と言うのがその意味であるね。

ちなみにMPOの場合はとにかく転換価格がVWAPの90%になる訳だから、あまりモノを考えずに単純なる転換で十分にさやが抜ける。一度転換をすると後はそれが株を産んでくれるわけで、よってちょい借りを何度かすればたいていの場合あとはその産まれる株を決済に充てつつ、継続的な転換が出来る。

MPOにおいては確実に転換売りが起こる。よってダイリューションは間違いなく起こる。それはきちんと理論株価を考える上での考慮の対象となるべき事実である、と言える。
しかしながら、相場操縦的な空売りと言うのはかなりの妄想である、と結論付けられるかもしれない。(もっともこれも引受け手、あるいは買い手によるが)

尚、どうぞご質問なりご意見はじゃんじゃんメールなりコメント欄にお願いします。答えられる範囲でお答えしますし、私に分からないことは多少時間を掛けてもその道のプロに尋ねて回答しますので!!

MPOに関してのさらなる考察~転換価格の上下限

2005-08-15 06:14:09 | CB教室
先週の金曜日にかなり気合を入れて記事を書いたのに、志半ばにして突然消えてしまった・・・さすがにその後はやる気にならず今になってしまって申し訳ないが、気分新たにまた書いてみよう。

ある企業がMPOを発行すると、その後の掲示板にて良く見られるご意見がある。
「このCBの転換価格の上限価格まで株を上げてくるのではないか」
「このCBの転換価格の下限価格まで株を下げてくるのではないか」

この上下限価格について実際の現場に居る人間として考察を入れてみたい。
全くの私見だし、しかし現場におけるこれらCBの処理を実際に見たりやったりしている人間としての結論は極めて単純である。
上下限価格ってのは少なくともトレーダーベースでは意識に上らない。
これは、下限価格と言うのは企業側にとって、せいぜいこの程度までで頑張ってや、と言うフロアーであり、上限価格はと言うのは引受側にとって、これ以上上がったらあとはこちらでやりたいようにやらせてよ、的な意味合いくらいしか無いと考える。
(一応時間がある時に、実際にこの引受に携わっている人間に確認はするが、個人的にはこの域を出ないと思う)

ごく通常のCBを考えてみる。
通常のCBの発行が決議されると、前に書いたように主幹事はそれを投資家に販売することによってリスクを回避し、手数料収入が主幹事のメイン収益となる。
反対にMPOの場合は、一切を販売せず、リスクを全面的に主幹事が負う代わりに、この月1回とか週1回、しかもVWAPの90%へ修正するような修正条項を付けて、そのCB自体から上がる収益をメインとする。
これが、私がかつてこのMPOとは「証券会社のヘッジファンド化」であると言った所以である。今までヘッジファンドを中心とする投資家に販売していたものを、主幹事たる証券会社が丸取りしよう、と言う発想から生まれていると思われるからだ。
通常のモノにはたいてい下方修正条項が大体満期中に2回ほど付いており、その下限は当初転換価格の70%ないし80%と言うのが一般的である。つまりこれは投資家にとっての保険の意味合いが強い。
逆に企業側にとっては、120%ないし130%CALL条項と言うのが付く。
パリティーがそれ以上に到達し、それが20営業日連続して続いたら、しかるべきNOTICEの後、全額を100で償還します、と言うものだ。
これは企業側はこれくらいのパリティーが続いたらCBは転換されるもの、との前提に立つもので、その状態が20日も続けば普通みなさん転換する機会は十分にありますね、と言うものだ。
これは特に転換促進をしたい企業が付けることが多いのだが、まあ企業としてはその後パリティーが150だ200だ300だってなってからポロポロ転換されたくない、と言うことだろう。

通常のCBの下方修正条項と言うのは大体、2年後3年後にやってくる。その当該日の何日か前からその計算期間が始まるわけであるが、もしかしたら一部投資家が意図的に株価を下げて、転換価格を下げるような行為をするかもしれない。しかしながら主幹事たる証券会社は一切タッチは出来ないし、しない。なぜなら下がろうが何しようがそこにはなんらインセンティブが無いからである。あくまでもCBのホルダーは投資家で、主幹事ではない。
また130%CALLも同様かも知れない。これも「20営業日連続」と言うのがポイントで、19日目にパリティーがそれを下回ったら、また1からスタートになるので、そこでも投資家サイドになんらかの意図が働くかもしれないが、主幹事は一切関わる必要が無い。

もっと言えば、当然これらの行為は一種の「相場操縦」に該当しないとも限らないので、普通の証券会社は少なくとも自己勘定ではこのような事はしない。たまたまお客さんから該当銘柄の売りなり買い注文が入ってしまったら、それはエージェントとして執行せざるを得ないが。

さて、CBを引き受けた証券会社は、全額を当該企業から買取り、そしてその玉はエクイティー部とかCB部とかに回ってきて、そのトレーダー達がそのCBの処理を開始する。
実はMPOの場合はトレーダーとしてはあまりやることは無いと思われる。
つまりヘッジの必要が無い、と言うことだ。常にVWAPの10%下の株コストの株が手に入るわけだから、後は相場を見ながら適宜転換して、その株を場で売るなり、あるいはセールス部隊に渡して、彼らが顧客に多少のディスカウントでそれを販売する、と言った程度だ。
CBトレーダーとしては極力リスクを回避しながらその収益の拡大を図るのが至上命題ではあるが、恐らくCDSだ何だまでは手を回さないはずだ。なんたってリスクヘッジがコストとして乗っかって来てしまうわけだから。
ダイリューションが40%だ50%だ、と言った場合は、例のライブドアの時のリーマンの行動を振り返れば良いと思う。結局あのケースでは下限転換価格に引っ掛かることなくリーマンが全額転換して終わった。
株ってのは不思議なもので、とかくMPOなんかが出ると一方的に株価が動きそうなものだが実はそうでもないことは、この間ご紹介させて頂いた、ダントツ投資研究所の夕凪所長さまのMPOに対するその後の株価の考察を見ても分かる通りであろう。
ちなみに6月に日本へ出張した際、私のブレーンであるある証券会社のECM担当は、「MPOの転換価格ベースでの下落率ってのは、ライブドアの場合は約30%程度で、その他の平均は大体12~15%なんです」と言っていた。
これは当初転換価格と、全額転換された時の転換価格を比べた場合、と言う意味である。

ちなみに証券会社の売買部門と言うのは皆さんが思われる以上に色々な観察やら調査やらがかなり入る。これは金融庁のみならず、東証からも証券取引等監視委員会からもである。
つまり現在の証券会社においては、少なくとも相場操縦的な行為は一発で調査の対象になる。これは最終的にそれを執行したトレーダーに関わってくるので、彼らベースで上下限価格を意識した株の売買はまず出来ないと考えてよい。また上述したように、少なくともMPOにおいてはそういうことを意識する以前に、目先のリスク回避行動を取るのが一般的なトレーダーであろう。
だっていきなり50億だのポジションがどさっと来るわけで、それがある限り、いくらそれが儲かるかもしれないとは言え、場合によってはそれまでのポジションをクローズしなければならないケースもあるだろうし、もっと言えば前にも述べたとおり、10%は儲かって当たり前だと誰もが思っている商品なんだから、10%儲けたって何も評価もされない訳だから、それだったらとっとと処理して自分の思うような、他のポジションを組んだ方がトレーダー妙味に尽きるではないか。

ちなみに通常のCBの場合、買った側の投資家なり、あるいはある程度のポジションを自己で持つ証券会社のそのリスク回避、つまりヘッジ方法は多岐にわたる。
ローンチから即借株市場の当該銘柄がタイトになるのも、それがあればCBアービトラージが出来るからに他ならない。つまりCB買いの株売り、と言うポジションを作って、そのボラティリティーによって株の持ち高を調整し、収益の拡大を図る手法である。また場合によってはCDS(Credit Default Swap)なぞをも使い、そのボンド部分のヘッジに使ったりもする。(CBと言うのは、理論的に分解してみると実はボンド部分が大半のバリューを占め、残りの部分がエクイティー部分となる)

なんだか長くなってしまったが、MPOが出た場合、あくまで転換価格の上下限価格と言うのは単なる目安に過ぎず、意図的に株価をそこまで持っていこうと言うインセンティブは働かない事を考慮の対象に入れても良いかも知れない。

(但しあくまでも投資は自己責任でお願いします。つまりこの記事を信じるか信じないかは貴殿の自由で、仮に信じて取った投資行動が裏目に出ても、当方は一切関知しませんので、念のため)



MPOで見逃してはいけないこと

2005-08-12 04:44:25 | CB教室
YOZANのMPOに気をとられすぎていたようで、昨日のサンシティのMPOを見逃してしまっていた(汗)。

ざっくりとした条件は、総額45億円(当該銘柄の時価総額は約218億円であるので、そのダイリューションは約20%弱になろうか)で、主幹事は野村である。
毎月転換価格が修正される、いわゆるMSCBである。
YOZANと大きく違う点は、この会社の業績は(四季報等を見る限りは)極めてまともであり、これなら野村の引受審査もGOサインを出すであろうね。
またこの不動産系の会社と言うのはどうしても目先のお金が居る。
かつて別の日系銀行系証券に居たときに、多少業態は違うけれど不動産系の会社が普通のCBを出したのだが、そのマンデートが降りた際に私も出張の合間に訪問したことがある。
その会社は割りと新進気鋭ではあったが、社長、専務ともに一級建築士の資格を持った、別の不動産会社からの脱サラ組であり、そのお2人で作った会社であった。
その訪問した時には、社長、専務ともが同席してくださり、色々とお話を伺ったのだが、ご両人曰く「とにかくお金は少しでも多く欲しい。今出回っている(数年前の銀行等が積極的に処分したマンション等)物件を買い捲れば、これは間違いなく物凄い収益をもたらすんです」と。
実際彼らはそれでさらなる成功を収め、市場も2部から1部へ鞍替えし、今も堅実なご商売を続けられている。

私は、野村が本当にたいしたものだなぁ、と思うのはそのフットワークの軽さである。
何度もここで書いているように、野村はとにかく稼げると踏んだものには徹底的に勝負を賭ける。間違いなく野村自身もこのMPOに関しては何らかの規制がかかると読んでいると思うにも関わらず、行けるときには徹底的に行く。この姿勢こそが現在の特に都市銀行系証券にはとても真似できない技であろう。

野村證券はそれでもこのMPOを何とか世間に認知させようと、色々な説明を行っているようだが、その辺はどうも浅いと感じる。
どんなにこのMPOを正当化しようとも、絶対的事実は変わらないのである。
つまり、ダイリューション(希薄化)である。
もちろん、仮にダイリューション50%の起債に対して、EPSが5割増しになるような事でもあれば、その株式価値は変わらないと、理論的に考えることが出来るが、実際そのようなケースにお目にかかったことは無い。

いくら借株を制限しようとも、CBディーラーとして言わせてもらえば、やり方はナンボでもある。
昨日書いたような通常のCBであれば、ディーラーはある程度のポジションを持って、その後のセカンダリー運営をしていくことになるが、これがことMPOとなれば、ディーラーはセカンダリーマーケットの事を一切気にせず、ひたすら与えられたCBからの利益を出すことに専念すればいい。
もっと言えば昨今のMPOは転換価格がVWAPの数日間の平均値の90%に月一回は下方修正されるわけだから、当初のコストは100(パー)でも、普通に転換価格が90%に修正されればそのCBの理論値は約10%上の110近辺になる訳だから、単純に転換してやればそれで10%の利益は確定利付きのようなものである。

実際、このMPOの処理に携わったディーラーに聞くところによると、
「いや、小鬼さん、10%取れるのは当たり前じゃないですか。むしろそっからどの程度上乗せするかが問題なんですよ」との事だった。

つまりどんなに美辞麗句を重ねようが根本的な部分は何の変化も無いことは、当該銘柄の投資家の皆さんは基本肝に銘じておくべきだと思う。
もちろん過去のイシューの統計を分析してみれば多少違った結果が得られるかも知れないが、特有の事実にだけは常に注意をしておくことに越したことは無い。

つい先日、某掲示板で紹介されていた、ダントツ投資研究所の所長さんとお知り合いになった。
彼は非常にこのMPOをつぶさに研究されており、その緻密さには正直舌を巻いたのだが、このHPのMPOに関する項目は、株式投資をされる方されている方は必読であろうと思う。

何度も言うように、MPOは決して諸悪の根源ではない。やはりたとえそういった形であってもある企業に資金注入がされることによって、その企業の業績がドラスティックに伸びる可能性があるケースも多々ある。
また通常の小型銘柄の場合、いくら時代が直接金融の時代とは言っても、まだまだ資本市場から資金を調達するのは容易ではないケースがある。そのような時にこのMPOは本来の威力を発揮するのだろうと思う。
かつてこれが「Lesser CB」と呼ばれた、倒産寸前の会社を喰いものにしよう、と言う意図とは明白に決別していることは認識する必要がある。
しかしながら、あのYOZANのCBや、遡ればこれはCBでは無かったが、あのニッポン放送がやろうとしたポイズンピルの新株予約権の巨大なダイリューションを伴うファイナンスは、せっかくのまともな努力を踏みにじるものである、と言って置こう。

CBが世の中に産声をあげるまで

2005-08-11 03:56:14 | CB教室
簡単に、ある事業会社からCBなりMPOを引き受けるときのプロシージャー(まあ流れみたいな感じ)を書いておこう。

各総合証券会社には、事業法人部とか企業部とか呼ばれる部署があって、そこの面々(我々はRM=Risk Managerと呼んでいる)が、各事業会社を担当しており、証券会社によっては大阪やら福岡、名古屋、札幌などにもその部署を置いている所もある。
このRMの連中がある日、ある会社(仮にA社とする)が資金調達を検討しているとの情報をGETすると、その情報は引受部(我々はECM=Equity Capital Marketsと呼んでいる)に回される。
ECMではそのA社のニーズに一番合致した提案書を作成して、後日それをRMの人間がA社に持って行き、ディスカッションが開始される。
当然企業によっては何社かの証券会社から提案書を提出させて、この場合はA社にとってもっとも有利な条件を提出してきたところを選ぶこともある(我々はこれを美人コンテストになぞらえて、ビューティーコンテストと言っている)。
ただ、基本は普段A社が世話になっている株式主幹事証券が一歩リードする傾向にあるようだ。
全く関係ない証券会社が飛びぬけた条件を提示してきても、一応A社は主幹事にも「こんな条件も出てきたよ」程度の打診はするだろうが故である。

さて、結局A社は株式主幹事(株幹と言っている)に今回のCBの発行を頼むことにした。
これを証券側では「マンデートを取った」と言う。主幹事に指名された、って事だ。
こうしてマンデートが出ると、ECMが主体となってその条件を詰めていく。
発行総額はどれくらい行けるのか?期間は?PUTは?下方修正条項は??
が徐々に徐々に詰められていく。
ちなみにこの段階では、営業サイドならびにトレーディングサイドには一切この情報は漏れない。いわゆる「チャイニーズウォール」と言うのが存在する。
実際に壁がある訳ではないけれど、仮にこれが漏れてさらにその主幹事証券からA社株に対しておかしな注文等が出たりすれば、それは完全にインサイダーとなるので、ECMの人間は結構な精神的なプレッシャーを抱えることになる。

さて全てが完璧に整うと、後はA社の取締役会でその発行を決議してもらう。
その発行決議が終わるとプレスレリースとなり、この情報は公開される。
ちなみに営業サイドもトレーディングサイドもこの時初めてA社がCBを出すことを知ることになるので、そういった意味では投資家サイドとスタートラインは一緒である。

さて以降はスイス市場で、私の所属する会社が主幹事となった場合の流れを説明する。
たいていのCBの発行決議は日本時間午後3時を目処に行われる(つまりその日の取引所の取引が終了した時点で行われる)。
このレリースが出回った段階を我々は「ローンチ」と呼ぶ。
但しこの段階では最終条件が決定されていないことが多い。最終条件とは、当初転換価格であり、2年後3年後のPUT価格であり、下方修正条項に伴う下限価格である。
しかしこれらもこれから始まるセールス活動によって、その需要の強さ弱さをフロントサイドが見極め、それをECMに進言して、数時間後には決定される。

このローンチがなされると、一斉にグレーマーケットと呼ばれるものが立つ。
これはそれに興味ある投資家が「いくらなら買いたい」と言う値段を、ブローカーズブローカーと呼ばれる業者間を渡り歩く業者に提示し、それが基本となって、この値段なら売りたい買いたいのレンジが決まってくる。

しかし、仮にこのA社CBが我々主幹事証券の単独主幹事、つまり発行総額全てをここが引き受ける場合は、この段階ではまだ実際の玉は市場に出ない。
つまりグレーマーケットと言ってもそれは単にインディケーションに過ぎないわけだ。
但し、グレーのインディケーションはほぼ全て私の所に集まる。
つまりこのローンチの段階から私の仕事が始まる。
この引き受けたCBの玉は、各部署(RMやらECMやら)にそれぞれの手数料を少しずつ落としながら、最終的にまずはスイスの引受担当のところに届き、そこでさらなる手数料を引かれて(笑)、最後に私のところに来る。この段階で私のこのCBのコストが正式に決まるわけだ。

さて次に行うのが、販売である。
一斉にセールス部隊が、担当顧客にセールスを開始する。その際の顧客への販売値段であるが、これはもうケースバイケースであると言っておこう。
こうして大半の玉をセールス部隊に販売してもらい、同時に私はグレーマーケットに対峙するわけである。
良い値段があれば軽くヒット(売る)してみたり、あるいはグレーのインディケーションが安すぎてセールスが販売しにくい場面があったりすれば、リフト(買う)してみたりしながら、マーケットを調整するわけだ。
あまり価格が上昇しすぎると、これはこれで条件が甘すぎた、との批判を受けるし、逆に価格が弱すぎると、無理な引受をした、とマーケットに足元を見られるので、需給関係やセールスからの引き合いの強弱を見極めて、適当な居心地の良いプライスレンジに誘導することが求められるので、結構神経をすり減らす(笑)。

ちなみに最近は、例えばスイス時間午前8時(=東京時間午後3時)にローンチがなされ、その後の条件決定は、スイス時間午後4時ごろ(=東京時間午後11時ごろ)になされることが多い。
この間の投資家への販売は、例えば当初転換価格がxx円ならいくら、○○円ならいくら、と言うような販売方法になる。
最終条件が全て決定されて、正式な販売がDONEされる。

この間、MPOは別として、通常のCBであれば一斉に貸し株探しが始まる。
貸し株市場の当該銘柄は急速にモノ不足となり、一気にレートが上昇する。
前に書いたように、この辺は大手機関投資家にアクセスがある所、または早々に手当てする所が勝利を収める。

翌日以降は、全ての条件が決定しているため、基本株価に基づいて理論価格やら何やらがきちんと算定されるので、基本大きなことがなければしばらくは理論通りにCBの値段は動く。
ローンチ当日の投資家需要は、当然のことながら当該銘柄のボラティリティー、借株の難易度、既存株式へのダイリューション、その他もろもろが各投資家の持つモデルなりにより厳密に計算された結果であるので、翌日の株価がそのダイリューションを嫌気されて下がっても、その辺はあまりCB値段にダイレクトに響いてくることは無い。
こうして一般的なCBは世の中に産声をあげるわけだ。

このような流れを知ることはあまり意味が無いかも知れないが、知らないより知っていた方が今後の興味の度合いも違ってくるだろうと思ったので、とりあえず書いたので、何かご質問があればどうか遠慮されずにコメント欄なりメールなりを頂きたいと思う。

MPOリーグテーブル

2005-07-15 06:53:30 | CB教室
在東京のいつも色々な情報を下さるさる業界系記者の方より、MPOの05年度第1Qのリーグテーブルを頂いた。
平たく言うと、今年4-6月までの間に発行されたMPO(MSCB)のブローカー別の引き受け実績って事であるね。
2005年と言うとまだまだ2月に始まったライブドアVSフジテレビのMPOによる攻防戦が強烈なインパクトを残しているが、「2005年度」ってのは今年の4月から始まっているので、頭を切り替えねばならない。私はこの「年度」制度ってのはどうもいまだになじめないのだなぁ。
前置きはさておき、この3ヶ月で国内外あわせて一体どれくらいのMPOが発行されていると思われますか?

実に国内外の発行をあわせて『3023億円』!だそうである。

日々CB市場(但しヨーロッパのユーロ及びアルパイン市場が主であるが)に身を置く人間としては、実はこの数字、正直ピンと来なかった。
すでに書いているようにCB市場自体は非常に苦しい展開を余儀なくされており、それは取りも直さず原株のボラティリティー(変動率)の極端な低下が原因なのだが、ゆえにまっとうなCB、つまりせいぜい満期中に2回程度の下方修正条項が付いているようなCBの発行と言うのはほとんどない。
ほとんど無いからこの普段のCB市場(我々はセカンダリー市場と呼んでいるが)に新しい血が入って来ない、もともと存在するCBは動かない、ってな「動かない連鎖」状態になっているのである。
しかしながらそんな市場を横目に見ながらこのMPOのなんたる活況なことよ!

ちなみにトップ3は、
1.野村証券~~~1370億円
2.UBS証券~~~ 565億円
3.みずほ証券~~405億円
と、トップ3で全体のシェアの約80%強を押さえている。

この3社を見て何かピ~ンと来るつながりを発見できる人は相当にこの業界に詳しい人だ。
野村からCBのこのMPO組成、引き受けが出来る人間がUBSに移籍して話題になった。移籍後に松井証券と組んで「夜市」を作ったあの流れだ(現在は夜市はやってないの?)。
そしてみずほ証券のエクイティー関係部署は現在はほぼ元野村軍団が牛耳っている。
つまり、一種の野村ファミリーがこのMPO業界でも完全にガリバーのポジションをゲットしているわけだ。
もちろんファミリーとは言えお互いに違う会社だから、連携とかはあり得ないだろうが、それなりの情報交換はしているだろう。ただ情報交換とは言っても「引き受け」に関する部分、すなわち企業のファイナンスに関わる部分は非常にデリケートで一歩間違えばすぐにインサイダー疑惑を招きかねないので、そういう意味での情報交換では無いので、念のため。

さて、以下は私の想像ではあるが、決して外れては居ないと思うが・・

もともと野村証券がこの「MPOプログラム」を創設し、そこから強烈な刈り取りを始めた。最初は各証券会社は野村のやり方を静観していた感じがある。何故ならこのMPO、完全にOK牧場商品となったのが割と最近であるからだ。
当然野村はその辺は綿密に調べ上げ、そして潔癖である、との確信を得てスタートしたのだろうが。
次に各社が考えたと思われるのは、「仮想敵国」の創設である。
私も何度も書いている通り、まさしくこの「MPOの引き受け=証券会社のヘッジファンド化」に他ならないので、ここで各社仮想敵国を「ヘッジファンド」にした。
それまでも証券市場に関わってくる一般企業の財務担当者には「ヘッジファンド罪悪論」が跋扈しており、そこを上手く突いた。
MPOを引き受けるに当たって、やってることはヘッジファンドとなんら変わりは無いものの、一般企業に対しては、
「このスキームならば訳の分からないヘッジファンドにCBを買い集められちゃう心配は一切ございません。我々がきちんと全額転換するまでCB全額を管理出来ますよ。」
ってな感じなはずだ。

確かに一般のCBは、時間とともに保有状況はかなり偏在化する。
いつのまにかCB総額の1/3をたった1社のヘッジファンドが保有していた、なんて事は実はざらにある。
ヘッジファンドはこの間書いたようなCBアービトラージを運用の基本のひとつに置いているので、とにかく種(たね)となるCBが無ければ話にならない。また資金もある。株が安くなったときに同時に安くなったCBを地道に拾っていくのである。
私も何度も経験があるが、株が下がるとそのCBってのは必ず主幹事に売り物がどさっと来る。私としてはそれを保有してますます含み損が膨らむのがいやだから、多少コストより安くともポジションを軽くしようとする、そうするとそこをきっちりピンポイントで買ってくるのがヘッジファンドである。こうやってだんだんと保有状況の偏在化が進むのである。

それはそのCBを出した企業にとって何を意味するのか?
実は世間やマスコミはいまだに「はげたかファンド」だの何だのと言っているが、ヘッジファンドの少なくともCB運用に関しては、彼らは乗っ取りだのといった事は考えていない。それは証券会社の人間なら良く分かっている。
しかしながら偏在化して来ると場合によっては5%ルール報告に突然見も知らぬハゲタカチックな名前が出ることがある。そうするとその企業の財務担当は真っ青になるわけだ。
財務担当は急いで主幹事証券に連絡を取り「一体こいつは何者なるかぁ?」と言うことになる。

そんなひやひやするような思いをするのなら、満期中ずーっと主幹事証券がCBをコントロールしてくれる方がありがたい、夜もぐっすり眠れる、じゃあ我々もMPOで行きましょうか、となる。
つまり証券会社は一般企業のもっとも嫌がるところを巧みにヘッジファンドを仮想敵国に仕上げることで突いていると言える。

な~んてそのどこまでがほんとか分からないけれど、資本市場ってのは元来食うか食われるかの世界であるので、とにかく取れるものは取る、出来ることはやる、儲けるところではしっかり儲ける、って事を常にやっていかないと必ずや取り残されるのである。

ただ私自身のこれは持論であるが、このMPO、どこかで今のスキームは何らかの問題を抱えてくると思う。
現にこれによって既存株主が受ける影響は甚大である訳で、それを回避する手段は今のところ無い。もちろん当局も弁護士も「OK牧場」って言っている以上、例えば既存株主が「有利発行である」と言ったところで勝てないだろう。もちろんあのニッポン放送の馬鹿げた新株予約権とは訳が違うので、そこは念のため。
その希薄化に対する何らかの手立てを打たないと、結局再度個人投資家離れを引き起こしかねない、と私は思う。
特に大手を中心とした国内系は、バブルの頃の強引な個人の取り込み営業が尾を引いて、気付いてみれば個人はほとんどネット系証券に流れてしまっていると言う苦しい立場に居るわけで、そこに目をつぶってこのMPOを強引に推進することはいかなる結果を引き起こすか、やはり誰よりも良く分かって居るはずだ。
野村証券が「巧み」なのは、私が思うに彼らはそれを見越した上で、業界に先駆けてリスクを取ってそれを上手く収益に結びつけ、そして今はまさに全力疾走でMPOで稼いでいるって事だ。
のんびりと静観していた他社も参入してきているが、やがてそれが大きなうねりになる頃は、多分野村はもう別なことに活路を見出している、そんな気がするのである。

CBに関する質問とそれに対する回答

2005-07-09 20:28:53 | CB教室
さる掲示板にて直近に発行されたCBに絡んでいくつかの質問に対する回答を書くように依頼されたのでここにて書いてみる。
極めて一般的かつ今後CBに対する知識をより一層深めていただくには非常に良いチャンスなので逐次回答を載せて行きたいと思う。

<無利子の転換社債とは>
文字通りクーポンゼロのCBのことであり、このCBの投資家はクーポン収入を得ることはあり得ない。
仮にこのCBの購入時に手数料を払うとすれば、満期償還を迎えた場合にはその手数料分だけ投資家は損をすることになる。
また近頃のCBは発行価格100に対して当初の募集価格を102.50程度に設定することが多く、ゆえに当初の募集価格で買えば償還時にさらに2.5ポイントのキャピタルロスが発生する。
しかしながら個人投資家に限って言えば、CBの値動きは常に100以上とは限らず、例えばパー割れ(100割れ)となって、仮にCBが98とかと言う値段の時に買うことが出来れば、それは償還時にキャピタルゲインを得ることが出来る。一種の割引債券的感覚である。

ではそのようなCBを個人投資家が買う意味とは何か?
これはCBの特性である、株式的側面とは違う面の債券的側面に関わると思われる。
通常原株が大きく転換価格を割り込んだ場合、例えば転換価格の半値まで株が下がってしまった場合、この場合CBの理論価格は50となってしまうが、CB自体はそこまで下がることはほとんど無い。これは債券的側面が働くからで、通常であればこの場合せいぜい下がって85~90程度であろうと思われる。つまりこの下方硬直性が損失を限定させるべく保険となるので、堅実な資金運用を望む向きにはCB投資は適していると言えよう。

<満期まで下方修正が2度程度のCBをMSCBと呼ぶか否か>
どういう過程にてこのMSCBと言う用語がどこで使われだしたのかはよく分からない。
もともと90年代の終わりごろにチラチラと出ていた「悪名高きスイスフラン私募CB」。
倒産寸前の会社にこの手のCBを発行させ、資金を入れて、仮に会社がその資金によって復活すればよし、駄目なら仕方が無い、しかしCBの引き受け手はさっさと転換にいそしみその会社がどうなっても関係ない・・・そのようなCBが既にあった。これは今のMSCBの原型とも言うべきもので、転換価格が毎日その日の終値の90%とかまで下方修正される、と言うものであった。
当時はこれは「レッサーCB(Lesser CB)」と呼ばれていた。
このスキームは当たり前だが引き受け手が、その当該会社が倒産しない限り儲かる。
当時大手証券ではこれらの引き受けをためらっていた。当然既存株主を莫大なダイリューションリスクに曝すわけであるので社会的にどうか?と言う議論がまずあったのと、当時はこの手のCB発行が「有利発行」か否か当局の判断も確定していなかった。
と言うことは当然これは株主代表訴訟の対象となってもおかしく無かった訳であり、実際さる起債会社の担当役員は「訴訟を起こすなら起こしてください。いずれにせよこういう形であれなんであれ、わが社に資金が入らなければ倒産は逃れられないのです」
と言っていた、なんて記事があった。

最近ではこのMSCBの名を世間に認知させたのがライブドアであろう。
ただし現在においてはこのMSCB、有利発行にはならない、と言う金融庁の見解が出ており、また各金融専門の弁護士もこれをOKと認めているので、堂々と出せるようになった。

ライブドアCB~毎週末に転換価格を変更、但し転換価格が上昇することもある。
フジテレビCB~毎月第3金曜日に転換価格を変更、これも上昇もあり。
となっている。
この手の頻繁に転換価格が変更される形態のCBに関しては実は「譲渡制限条項」と言うのが付いており(と言うか引き受け会社が付けていると思うが)、このCBは引き受け証券会社は他の投資家に転売や譲渡は出来ないようになっている。
つまりこの手のCBには「流通市場」と言うものが事実上存在しない。
ライブドアの場合はリーマンブラザースが、フジテレビの場合は大和SMBCが、それぞれ全額引き受けて全額保有する、転換可能期間内になるべく多く転換する、と言う行動があるのみで、個人投資家はおろか、世界的に有名なヘッジファンドすらこのCBをリーマンや大和から購入することが出来ない。
そしてこのような形態のCBをプロの世界ではMPO(Multiple Private Offering)と呼んでいる。
一般にはこれらをMSCB(何故ならMSCBと言う言葉にはどうも多少後ろめたい響きがある)と呼ぶのが普通であり、世間一般に出てくる普通のCB(たとえそれに下方修正が償還までに2回程度付いていでも)をMSCBと呼ぶのには、少なくとも上述したような決定的な差が両者にあるので、プロの世界では抵抗があるように感じる。
従って、通常2回程度の下方修正条項付きCBは、我々は「普通のCB」と言っている。
ちなみに英語だとMSCBは「Private CB」と言われており、通常のCBでロンドンで発行されるものは「Euro Yen CB」、スイスは「Alpine Yen CB」、そして日本国内のは「Domestic CB」、と呼んでいる。

<CBアーブ>
これは「CB Arbitrage」(CBアービトラージ)の事である。つまり「裁定取引」の事だ。
一般的な裁定取引とは、割高なものを売ると同時に割安なものを買い、その「さや」を取ることを言う。
例えば「NT倍率」、日経平均とTOPIXの絶対値の倍率が毎日どう変化するのかを詳細に追いかけて、ある日その倍率が通常から離れてきたときに、それがいずれ元に戻ると考えて、例えばそういう状況下、日経平均を売ってTOPIXを買う、みたいな取引を指す。

CBアーブの場合はちょっと違って、CBを買うと同時に原株を売る、と言うポジションを組む。
つまりCBのリスクを株を売ることによってヘッジすることを一般にCBアーブと呼んでいる。
転換価格1000円のCBを1億保有する場合、その潜在株数は、1億/1000=10万株になる。
1億のCBに対して10万株売ったとしたら、それは理論上は完全にニュートラルとなる。
これをデルタニュートラルヘッジと言う。
この『デルタ』をそれぞれの投資家がそれぞれのモデルで計算して、例えばこのCBに付いてはデルタは50%と言う値が計算された場合、CB1億に対して5万株を売る、と言うポジションを組む。
株が上がればCBも上がるので、その際はCBで利益、株の売りで損失、となるが、そういう局面ではいわゆるボラティリティーが大きくなってくるので株の売りを減らす。
株が下がればCBも下がるが、その際はCBで損失、株の売りで利益となり、さらに株が下がる場合は今度はCBの下方硬直性が働きCBは一定以上に下がらなくなり、そこでCBからの損失は限定されてくる、と言う仕組みになっている。
今回のCB発行と同時に貸し株が増えた、と言うのはこのために誰か投資家がさっさと株を借りた、と考えることが出来る。

<スプレッド方式によるCBの発行>
発行価格100に対して募集価格102.50と言うスタイルの発行形態をスプレッド方式発行と呼んでいる。
質問にあったが、この場合は起債会社は引き受け手数料を払わなくて良い。(厳密には今回の60億の発行で起債会社が受け取る金額は、5,940百万円となるが)
この差、2.5ポイントが引き受け手数料として、主幹事に入ってくる。
しかしながら仮に相場が悪く、このCBがちっとも売れない場合、主幹事は例えば100にて何とか投資家に販売、と言うようなケースがあれば、主幹事は引き受け手数料吐き出し、となる。

つまり、それまでは手数料は起債会社が主幹事に払っていたのだが、このスプレッド方式が一般化してきた昨今は、CBの買い手である投資家が手数料を間接的に払って居る形となる。

<ユーロ、アルパインCBの現況>
この会社のCBのローンチ日の気配は105-106程度、当日のパリティーは92前後だった。
極めて妥当な水準である。
一般的にCBについて来るプレミアムであるが、これはさまざまなファクターによる。
その銘柄の先高感やCBの流動性、相場の全体感、ボラティリティーの大きさ等々。
アルパイン円CBの場合は通常10~20%程度のプレミアムが付いていると考えられて良いと思う。今回の銘柄に関しては、まだ判断は出来ないが、出だしはマーケットの予想通り、と言った感じであると思う。


~~~~~~~~
とりあえずはこんな所であろうか。
CBとはあくまでも一種のデリバティブ商品(派生商品)に過ぎないことを改めてお考え頂きたい。
まずは原株ありき、なのである。
その債券的側面がゆえに、株式投資をしている方にはCB投資と言うのはその値動きを考えても、あまりおもしろくないとも言えよう。
但し世の中にはこの手のCBファンドが山のようにある。これは債券的側面をうまく利用しながら、つまり損失を極力回避しながら、パフォーマンスを上げて行こう、と言うのがその究極の目的であり、そういう安全志向の資金運用を考える人もたくさん居るのである。
普通に株式投資に魅力を感じるのであれば、CBまで投資対象を広げる必要は無いとは思うが、但しこのCBが当該会社のファイナンスである以上、それに対する知識武装は必要であると考える。
ちなみにCB購入対象者は詳しい資金使途説明があるのでは、と言うご意見も拝見したが、そんなのは存在しない。
それは現状の金融界に対する監督状況を考えた場合、まず不可能であろう。
あくまでも現在の金融行政は、個人投資家保護に何よりの重点を置いていることがその証左となると考える。

以上です。




日本電子(JEOL)のアルパイン円CBに関して

2005-07-07 03:09:20 | CB教室
またまた間が空いてしまってすまんすまん。どうもこの頃熱くなるような話題が無いのでつい書きそびれてしまう。
普段の私の様子は拙日記にて(笑)。
あるいはもしこれをお読みになっていらっしゃる方で疑問に思うことなどあれば遠慮なくコメント欄に書き込み頂ければ、私の出来る範囲でそれに関しての考察を述べさせて頂こうと思うので、よろしくお願いします。

さて、本日久々にスイス市場にて新発の転換社債がローンチしたのでそれについて書いてみる。
銘柄は『日本電子(コード6951)』、英名は『JEOL』。
これは三菱証券ロンドンの支店のチューリッヒ支店が形の上で主幹事になっているが、事実上すべてはロンドンにてハンドルされるはずだ。
このように他社幹事の起債があった場合、我々はどのようなことをチェックするのか等をざっくばらんに書く。
ちなみに自分の会社が主幹事の場合は、私の立場ではやはりその当日までこのニュースを知ることが出来ない。引き受け部隊と我々セカンダリー部隊(いわゆる普段の市場に向き合っている人間)の間には厳然とした壁、チャイニーズウォールと呼ばれるものが存在する。
普段マーケットに向き合っている人間が、ある会社のファイナンス情報を事前に知ってしまうとこれはインサイダー規制に抵触する。
転換社債の場合は当然そのダイリューション等の影響が株価に出るので、かなりまずいのである。
事前にそのニュースを知りえれば、例えば空売りを仕掛けられるし、そしてそんなことを本当にやっちゃったら間違いなく後ろに手が回る。

さて、本日のこの日本電子の条件等を見ていこう。

(発行総額)60億円

(満期)2009年7月24日のゼロクーポン

(社債の発行価格)額面金額の100%、額面金額100万円

(払い込み期日及び発行日)2005年7月25日(スイス時間)

(募集価額)額面金額の102.5%

(転換価格の下方修正)06年7月31日及び07年7月30日の2回で最大80%まで

(予約権の行使請求期間)05年8月8日~09年7月10日

(繰上償還)130%CALLオプション、08年7月25日~09年7月23日まで

~~~~~
上記が我々がまず目を通して頭に叩き込むべき情報である。この他に様々なことが書いてあるのだが、最低限まずはこれだけがマーケットに一斉に出回る。
満期からこのCBは4年債と言うことが分かる。
そして混乱しやすいのが、発行価格100%に対して募集価格は102.5%と言うところだが、これは、起債社であるJEOLが受け取る金額が100%x60億円で、102.5%とはこのCBのいわばスタート値段、つまり投資家に販売する時の基準となる値段がこれである、と言うことだ。
つまり簡単に考えればこの差の2・5%は三菱が受け取る手数料となる。
昔は100-100で、この場合は起債社はそこから約2.5を引いた97.5%x総額、を受け取っていた。

さて払い込み及び発行日が7月25日、つまり今日これを買っても明日買っても、その払込日は25日、と言うことである。
発行日と言うものの言い方にはあまり意味は無いと考えてよい。

さて下方修正条項が付いているが、あのライブドアやフジテレビと違って、こちらは4年満期中にチャンスは2回しかない。転換価格をその時点で下回っていれば下方修正されるが、その最大幅は当初転換価格から比べて8掛けまでにしか下がらない。つまり1回目ですでに80%まで修正されてしまったら、もう2回目の下方修正は無効になる。

130%CALL条項。
これは定められた期間中(この場合は08年7月25日~09年7月23日)に、このCBの理論価格(すなわちパリティー)が連続して30営業日130%を超えた場合、このCBを起債社はその後の通知期間を経て、100で償還できる、と言うものである。
つまりパリティーが130を超えてきたらどんどんホルダーは転換していかないと、この条項に引っかかってしまう恐れがある、と言うことだ。
ただし、実際これを発動する時には、ほとんどすべてが転換されてしまっているので(私も何度か経験したが)、この条項を満たしても事実上起債社が100で強制償還すると言う場面に出くわした事は無い。起債社としてもこれですべて転換してもらった方が話は早いのである。

さて本日スイス時間の朝、東京時間の引け後にこの起債がJEOL社内の取締役会で正式に承認されて、そして報道されて我々の耳に届く。
この条件を(特に在ヨーロッパの)投資家が知った時点で、各投資家はその内容やらを検討し、三菱に自分が買いたい金額を提示して申し込みに行く。
三菱側はその需要を積み上げて、日本時間の本日中(夜中の12時まで)にJEOLに投げかけ、そしてそこで大切な条件を決定する。
転換価格である。
本日のJEOLの東証終値は609円。ここにどれほどのプレミアムが乗っかって来るのか(アップ率とかコンバーション・プレミアム、とか呼ばれる。)?
これが決まらないとすべての計算が出来ないので、投資家はある程度の予測をしながら注文を出す。
投資家によっては、プレミアムが10%以内で決まるのならいくら、20%以内だったらいくら、と言う形で注文を出すこともある。

そして本日スイス時間午後、決定した。
転換価格は、655円、アップ率7.55%となった。
と言うことは、本日におけるこのCBの理論価格すなわちパリティーは、
609/655=92.97 と計算されることになる。

ちなみにこのJEOLの時価総額は大体483億円、この60億のCBに伴うダイリューションは、
約12.4%と計算され、これは極めて妥当な水準であると言える。
ちなみにこの会社、前回もスイスでCBを起債している。前回は70億円で、満期が今年の9月30日に来るが、実はこれはほとんど転換されて現在の残存は100万円しか無いようだ。
私が前の会社に居た時、このCBのマーケットメイクをやっており、この銘柄では結構稼がせていただいた記憶がある。

私はこの手の、自分の守備範囲のCBが出るとファイナンス系の掲示板を見に行く。
このJEOLも今日何回も見に行った。
この株に対する、書き込んでいる方々の知識は相当なものがあると思う。特にこの会社、製造しているものが、電子顕微鏡やX線解析・光電子分光装置等、かなり高等な技術を要しそうなものばかりで、この株に投資されてかつ掲示板に書き込まれている方々のそれらに対する知識は半端じゃない。下手なアナリストよりよっぽど詳しいと言ってもよい。
しかしながらいつも思うのは、この投資対象会社のファイナンスについての知識がもうひとつなのである。
その辺に関しては結構な数の憶測めいた書き込みが目立ち、かつそれらはどうも的を得ていない。
投資対象企業のファイナンスはダイレクトに株価に響いてくるものであるので、どうか皆さんも是非正確な知識を身に付けて頂きたい。



CBアーブと現在のCB市場

2005-06-23 04:14:54 | CB教室
どうも更新が飛び飛びで申し訳ない。
さて、基本このBLOGではMPO等をその中心に据えて書いてきたわけだが、ここいらでちょいと転換社債のセカンダリーマーケット(流通市場)における裁定取引のイロハのような事に触れておきたい。
良く世間で聞くであろうセリフ『CBアーブ』とは何ぞや?

CBアーブ、正式にはCBアービトラージ、つまり裁定取引の事である。
CBを中心としたファンドにて通常用いられているスタイルであり、ヘッジファンドなんかが盛んに行っている。

CBの基本的事項を思い起こしていただきたい。
CBには必ず原株との一種の交換条件である、転換価格が設定されている。そしてこの転換価格を元に計算すればそのCBが原株の何株分に相当するか簡単な割り算で計算できる。

仮に総額100億円のCBがあって、その転換価格が2000円と仮定しよう。
この場合、100億円 / 2000円 = 500万株
つまり、この100億円のCBをこの転換価格で転換した場合、500万株が得られる事になる。
今このCBを貴殿は10億円持っている。その場合の転換株数は、50万株になる。

10億円分のこのCBを買うと同時に当該株を50万株売る、この行為がCBアーブの基本なのだね。
但し、10億円CB=50万株、であるから10億に対して50万株売っちゃうと完全にこの取引はニュートラルとなる。
こういう取引が無い事は無いが、こういう状態を『デルタニュートラル』と言う。
つまり当該CBに対して100%分の株を売ってしまうとデルタニュートラルになってしまうので、じゃあ30%分だけ株を売ろう、となるとこの場合は『デルタは30%』って事になる。

このデルタ、当然各社各様その採用しているモデル等が正確に計算してくれる(が、私はこのモデルが無い・・)が、そこに多少の相場観を介入させるのが腕だったりもするわけだ。
但しモデルで計算する時には実際はもっと複雑なファクターをいちいち入れてやる必要がある。
また各取引におけるコストも厳密に計算しないと、正確な予想収益は推測できない。
ちなみに、ご存知かもしれないが、現代のCBって言うのはプロ達は単にCBとして見ていない。
昔のワラント債(今日の拙さるさる日記参照)のように、CB=債券+オプション
のように分離させて考えるのが一般的である。
実際、CBバックのカバードワラントなんてのを作る場合、この債券部分だけはお金ばかり掛かるのでここを切り離して債券投資家なりに販売して、そのオプション部分に転換権だけを付けて、それをバックにワラントを作ったりする訳だ。
話がそれたが、このCBを分離させて考える過程において、様々な入力すべきファクターが現れてくる。
一体この債券部分の価値はどれほどあるのか、つまりクレジットスプレッドは例えばJGB(日本国債)と比べてどれほどの開きがあるのか、から始まって、実際株を売る際の借株コストはどうか、このオプションが持つであろうボラティリティ(変動率)はどれほどのものか、等をきちんと計算してやって、初めてではデルタをどの程度に設定すればもっとも効率が良いのか、と言う事を計算する。

現在特にユーロ円CBやアルパイン円CB市場で起こっているのはどういう事かご存知だろうか。
東京市場の株価の変動幅が近頃非常に狭いレンジで動いている事はご存知だろうと思う。今日は50円上がって、明日は30円下がって・・って動きになっている。つまり専門用語で言うところの、ボラティリティーが極端に下がっている、状態なのだ。
このボラはダイレクトにCBのオプションに跳ね返ってくる。1月ごろから怪しかったのだが、ここへ来てこのボラは歴史的低水準にあり、かつまたどこまで低下するのかみんな戦々恐々としているのだ。
CB自体の商い量が現在は極端に細り、しかもオプション部分の価値の低下が続いている。
CB=債券+オプション、の公式を思い出すと、要はそれだけでまずはCBの値段自体が下がってしまう事はお分かりになろうか。

さらにこれに拍車をかけたのが、例のアメリカでのGMショックである。あのお陰で債券は一時大変な事になった訳だが、こうなると債券、と名の付くものに全て影響してきてしまうのがこの世界だ。
あの出来事により今度はCBの債券部分も怪しくなった。

さて、先日東京へ行って、予想外にCBアーブファンドがクローズされたのを知ったのだが、彼らの基本戦略は、CBロング株ショートである事は上述した。
さてロングであるCBの値段はWパンチをくらって下がる・・ではもう一方のショートの株のほうはどうかといえば、下がる、と言うより張り付いて動かない、と言った動きであるわけだ。動かないからボラすなわち変動率はどんどん下がっている訳だ。つまりロングでやられてショートは動かない・・両方足したらやられてる、って事なのだ。

この状態に耐え切れずにCBアーブのファンドには顧客からの解約が断続的に続いているようで、ゆえにファンドクローズによるCBの解約売りが散見されて、それがマーケットがいまだにしゃっきりしない2次的原因になっている。悪循環であるね。
特に実名が取り沙汰されているさる巨大ヘッジファンド、ここの実弾売りは巨額なようで、もちろん見境の無い売り方はして来ないので暴落、と言うのとは少々違うが、真綿で首を絞められているような状態がダラダラと続いているのが、アップデート版CB市場、なのである。

皆さんも機会があったらじっくり研究されたら良いと思う。
この現状を当然チャンスと捉えている向きもある事を、付記しておこう。

MPO絡み、まだまだ続くぞ

2005-06-21 05:31:29 | CB教室
どうも更新が滞り勝ちですまない。が、とにかく書ける時には書くのでこれからもよろしくお願いします。
いずれここに書いた物を何かにまとめたいなぁ、と思っているので、何かアイデアのある方はご教授くださいませ。私自身は正直NO IDEAなので(汗)。。

さて、MPOに関して東京で仕入れてきた情報の続きである。
さる証券会社の引き受け担当者のご意見。
ライブドアのような極端なMPOでは無くて、ごく一般的なMPOを起債する場合、実は表には出てこない細かな取り決めがあるそうで、これは私も初耳だった。
取り決め=契約、であるがこれは引き受け証券会社と起債会社の両社で取り決めが行われるらしい。

まずはこれは想像が付くが、譲渡制限条項。
つまり起債会社が発行したMPOを全額引き受けた証券会社はそのCBを第3者に転売は一切出来ない、とする条項である。
例えどんな顧客ないしヘッジファンドが頼み込んで拝み倒しても、実はこれがあるために証券会社はCBとしては一切譲渡出来ない。
一見どうでも良さそうであるが、これで納得の行く事がある。
かつて野村が1千億規模のMPOプログラムを創設した際に、事業会社は「これで我が社の発行するCBが訳の分からないヘッジファンド等へ流れる心配が無くなった」と言う声があった。まさにこの事であるね。
少なくともCBとしては引き受け証券会社が1社管理を行う事になるため、発行会社はその手の心配をしなくて済む。これは発行会社にとってメリット(ないしは安心感)が大きいのであろうか。

これに関しては、「公募増資だと自社の株の分布状況がきちんと把握できないが、MPOであれば少なくともそれがきちんと分かるため発行体にとっても良い話であろう」と言うトレーディング担当者の意見もあった。
全部が全部にこの譲渡制限条項が付いているわけではないだろうが、こうする事により発行を迷っている発行予備軍会社の背中を押しているわけであるね。

そして、驚いたのが、起債に伴って、当然発行体も自社株の下落を懸念する訳だが、一応ここにも逃げ道を設けているらしいこと。
つまり、当該株価が一定水準以下まで下がってしまった場合、引き受け証券会社は転換売りをストップさせる・・・的な契約が存在するそうだ。
こうして証券会社側の過度の転換に対してのバッファーを設け、同時に発行会社側の抱く、やはり過度の自社株下落を阻止しています、的なセールストークが成り立つ訳だ。
ちなみに、MPO発行に伴ってそれが全額転換された時点での転換価格と当初の転換価格を比べてみると、実はその平均下落率は12~15%程度で収まっているらしい。
もちろんライブドア型のかなり激しいMPOの場合はその比では無いが、それでもライブの場合も転換価格ベースでの下落率は30%程度に収まったそうだ。

さて、私の単純な疑問。
「そんな契約があるならもっと堂々と個人投資家にそれを示すべきではないのか??」
これに対する答えはやはり明確で、
「その必要はありません」
との事だった。
確かに後で考えてみるに、特にあるレベルまで株価が下がった場合転換を止める云々は、かえって個人投資家への余計な憶測を呼びかねない、と言う事があると思われる。その条項の開示によってかえって株価形成をゆがめる、と判断されてしまっても文句の言えない条項だと思うので、実はこれは堂々と開示は出来ないな、と思った。
これもMPOによってきっと付いていたり付いていなかったりすると思われるので、皆さんもくれぐれも曲解はしないで頂きたい。
この記事によって皆さんの投資結果に影響を受けたと言われても当方では一切責任を取らない事をここに明記させて頂きますので、よろしくお願いします。

このようにしてMPOはMPOなりきに公平なものになろうと努力をしているその跡は伺えるが、私の個人的な見解は、前回の記事となんら変わる事無く、いずれどこかで破綻すると思う、と繰り返し述べておこう。

PS
極めて遅くなったが、さんざん書いてきたニレコの新株予約権が正式に阻止されて、よかった。
司法もなかなかきちんとした判断をしてくれて、私としては非常に嬉しい限りであるね。