『サンデーモーニング』(TBS系)の『週刊御意見番スポーツ』に登場するハリーこと張本勲氏が最近絶好調ですね。ダルビッシュから暗にチクリと言われたり、カズに引退勧告してサッカーファンからブーイングを浴びるわ、錦織圭が試合中にマッサージされたら「またか!」と言ったりする。
それでいて、女子アスリート、高齢者、子供のスポーツについては何があろうとも「あっぱれ!」を入れるこの「ワシの喝・あっぱれ基準はワシの個人的好みだけじゃ」を貫き通すハリーのこの清々しさには「あっぱれ!」をあげたいと思います。
ハリーはMLBのレベルが超絶的に低いと叩き、「こんな凡ミスは日本の選手はやらないよ! 喝だ! 大喝だ!」みたいな話をするのですね。そして、日本野球のレベルの高さをホメて「いいから早く帰ってきなさいよ」と日本人メジャーリーガーに呼びかけ、最終的には自分達がいたころのプロ野球のレベルがいかに高かったかを力説する。
私達視聴者と、その他『サンデーモーニング』のコメンテーター陣は、ジイさんの居酒屋武勇伝をひたすら聞いては苦笑いを浮かべて暖かく見守っているワケですが、ハリーがここまで「日本の野球のレベルは高い」「ワシらの時のレベルは高い」と言える理由について考えてみましょうか。
ハリーの場合は、自分達の時代を全面的にホメてるのではなく、「ワシと他数名がすごかった」と言いたいのではないでしょうか。一応番組で共演する「助っ人」の元選手(立浪とか金本のことね)のことは「すごかった」と言うものの、多分、自分と他数名(王・長嶋・野村・金田など)こそ別格と考えている節があります。同様の傾向が見られるのは金田正一氏ですね。川上哲治氏が亡くなった直後に『サンデーモーニング』に出たら川上さんの追悼よりも「ワシがいかにすごかった」という話をしますし、週刊ポストの取材に対しては「ワシの球は180キロ出ていた」「ワシがMLBに行ったら年俸30億円」なんて言ってるのに近いところがあります。
もちろん、ハリーも金田正一氏も、王貞治氏も、長嶋茂雄氏も、野村克也氏も小山正明氏も、米田哲也氏もスゴい選手だったのは間違いありません。しかし、今の選手と比べてどうか? という話になるとよく分からないんですよね。
オレが最近思い始めたのが、ハリーの時代のプロ野球選手って、2015年のレベルの野球だったらレギュラー取れる選手はあまりいないんじゃねぇか? と思うんですよ。それこそ、巨人・南海・阪急・西鉄ばかりが優勝し、年間30勝しちゃったり、防御率が毎年1点台だったりする投手がいたり、もう無茶苦茶です。日本プロ野球の通算最高記録もその時代に出ている。
本塁打:王貞治 868
安打:張本勲 3085
打点:王貞治 2170
盗塁:福本豊 1065
勝利数:金田正一 400
奪三振:金田正一 4490
このサイト、見てください。まぁ、1950年~1970年代の選手が上位を軒並み独占ですわ。ということは、当時の野球については「レベル自体は低かったが、一部のすごい選手が打ちまくり、投げまくっていた」という事実があり、その結果、「過去補正」がかかり、選手達がOBになった時に絶大なる権力を獲得し今でもエラソーにしている、というものがあるのかもしれません。チームにも2~3人すごい選手がいて、他の選手は平凡な記録を残す、という例がかなり多いんですよ。
つーか、単純に言うと、「もし筒香が1960年代のプロ野球選手だったら年間70本ホームラン打ってるんじゃね?」「もしイチローが1960年代のプロ野球選手だったら600打数300安打の打率5割とかだったんじゃね?」ということです。
私が敬愛してやまない「打順萌えbot」というツイッターIDの紹介する打順と成績を見てみましょうか。
1956年 読売ジャイアンツ
8与那嶺要 .338 13
6広岡達朗 .233 9
9宮本敏雄 .263 19
3川上哲治 .327 5
5岩本堯 .254 8
7加倉井実 .220 9
2藤尾茂 .276 14
4内藤博文 225 5
1-
四番打者の本塁打数が5本です。
1964年 阪神タイガース
6吉田義男 .318 8
4本屋敷錦吾 .221 4
9藤井栄治 .266 9
7山内一弘 .257 31
3遠井吾郎 .282 12
8並木輝男 .230 11
5朝井茂治 .243 11
2辻佳紀 .181 4
1-
「世紀の大トレード」でやってきた山内と歴代最高ショートとも言われる吉田以外、パッとしません。
1970年 東映フライヤーズ
4大下剛史 .301 8
5岩下光一 .254 3
7張本勲 .383 34
3大杉勝男 .339 44
8白仁天 .276 18
9毒島章一 .232 5
2種茂雅之 .205 4
6大橋穣 .183 7
1-
ハリーと大杉が別格過ぎますね……。
1963年 国鉄スワローズ
8丸山完二 .246 3
7高林恒夫 .222 3
5徳武定之 .300 14
6豊田泰光 .292 20
9宮本敏雄 .252 11
3星山晋徳 .228 12
4土屋正孝 .260 9
2根来広光 .229 5
1-
これもなんとも……。
1973年 読売ジャイアンツ
8柴田勲 .277 6
7高田繁 .251 14
3王貞治 .355 51
5長嶋茂雄 .269 20
9末次民夫 .262 13
6黒江透修 .246 8
4土井正三 .262 5
2森昌彦 .220 3
1-
V9最後の年の巨人のオーダーです。王が別格ですね。長嶋はこの次の年で引退。
これが1980年代以降になるとこうなってきている。投手がヘボになったとかそういったツッコミも来そうですが、まぁ、そんなことはないんじゃないの? かつての「絶対的力を持つ三本柱」の時代から「6人で回す表と裏のローテーション」に野球が変わったということだけじゃないでしょうか。あとは外国人選手も増えてきてレベルが上がったのかもしれません。
1983年 西武ライオンズ
4山崎裕之 .287 18
8立花義家 .309 8
5スティーブ .321 17
D田淵幸一 .293 30
7大田卓司 .297 20
9テリー .278 38
3片平晋作 .278 19
2大石友好 .210 4
6石毛宏典 .303 16
2000年 横浜ベイスターズ
6石井琢朗 .302 10
5金城龍彦 .346 3
7鈴木尚典 .297 20
4ローズ .332 21
9中根仁 .325 11
3佐伯貴弘 .259 6
8多村仁 .257 7
2谷繁元信 .251 9
1-
結局何が言いたいのかと言うと、ハリーが醸し出す「ワシらの時代の野球はすごかった」というのは「全体のレベルが低い中、無駄にチームが多かったため突出した選手の成績が無茶苦茶スゴくなった」ということにも感じられる、ということです。一体なんでオレはこんな「僕のなつやすみのれぽーとだよ」みたいなことを書いているんだ、喝だ! もう一つ、大喝だ!
それでいて、女子アスリート、高齢者、子供のスポーツについては何があろうとも「あっぱれ!」を入れるこの「ワシの喝・あっぱれ基準はワシの個人的好みだけじゃ」を貫き通すハリーのこの清々しさには「あっぱれ!」をあげたいと思います。
ハリーはMLBのレベルが超絶的に低いと叩き、「こんな凡ミスは日本の選手はやらないよ! 喝だ! 大喝だ!」みたいな話をするのですね。そして、日本野球のレベルの高さをホメて「いいから早く帰ってきなさいよ」と日本人メジャーリーガーに呼びかけ、最終的には自分達がいたころのプロ野球のレベルがいかに高かったかを力説する。
私達視聴者と、その他『サンデーモーニング』のコメンテーター陣は、ジイさんの居酒屋武勇伝をひたすら聞いては苦笑いを浮かべて暖かく見守っているワケですが、ハリーがここまで「日本の野球のレベルは高い」「ワシらの時のレベルは高い」と言える理由について考えてみましょうか。
ハリーの場合は、自分達の時代を全面的にホメてるのではなく、「ワシと他数名がすごかった」と言いたいのではないでしょうか。一応番組で共演する「助っ人」の元選手(立浪とか金本のことね)のことは「すごかった」と言うものの、多分、自分と他数名(王・長嶋・野村・金田など)こそ別格と考えている節があります。同様の傾向が見られるのは金田正一氏ですね。川上哲治氏が亡くなった直後に『サンデーモーニング』に出たら川上さんの追悼よりも「ワシがいかにすごかった」という話をしますし、週刊ポストの取材に対しては「ワシの球は180キロ出ていた」「ワシがMLBに行ったら年俸30億円」なんて言ってるのに近いところがあります。
もちろん、ハリーも金田正一氏も、王貞治氏も、長嶋茂雄氏も、野村克也氏も小山正明氏も、米田哲也氏もスゴい選手だったのは間違いありません。しかし、今の選手と比べてどうか? という話になるとよく分からないんですよね。
オレが最近思い始めたのが、ハリーの時代のプロ野球選手って、2015年のレベルの野球だったらレギュラー取れる選手はあまりいないんじゃねぇか? と思うんですよ。それこそ、巨人・南海・阪急・西鉄ばかりが優勝し、年間30勝しちゃったり、防御率が毎年1点台だったりする投手がいたり、もう無茶苦茶です。日本プロ野球の通算最高記録もその時代に出ている。
本塁打:王貞治 868
安打:張本勲 3085
打点:王貞治 2170
盗塁:福本豊 1065
勝利数:金田正一 400
奪三振:金田正一 4490
このサイト、見てください。まぁ、1950年~1970年代の選手が上位を軒並み独占ですわ。ということは、当時の野球については「レベル自体は低かったが、一部のすごい選手が打ちまくり、投げまくっていた」という事実があり、その結果、「過去補正」がかかり、選手達がOBになった時に絶大なる権力を獲得し今でもエラソーにしている、というものがあるのかもしれません。チームにも2~3人すごい選手がいて、他の選手は平凡な記録を残す、という例がかなり多いんですよ。
つーか、単純に言うと、「もし筒香が1960年代のプロ野球選手だったら年間70本ホームラン打ってるんじゃね?」「もしイチローが1960年代のプロ野球選手だったら600打数300安打の打率5割とかだったんじゃね?」ということです。
私が敬愛してやまない「打順萌えbot」というツイッターIDの紹介する打順と成績を見てみましょうか。
1956年 読売ジャイアンツ
8与那嶺要 .338 13
6広岡達朗 .233 9
9宮本敏雄 .263 19
3川上哲治 .327 5
5岩本堯 .254 8
7加倉井実 .220 9
2藤尾茂 .276 14
4内藤博文 225 5
1-
四番打者の本塁打数が5本です。
1964年 阪神タイガース
6吉田義男 .318 8
4本屋敷錦吾 .221 4
9藤井栄治 .266 9
7山内一弘 .257 31
3遠井吾郎 .282 12
8並木輝男 .230 11
5朝井茂治 .243 11
2辻佳紀 .181 4
1-
「世紀の大トレード」でやってきた山内と歴代最高ショートとも言われる吉田以外、パッとしません。
1970年 東映フライヤーズ
4大下剛史 .301 8
5岩下光一 .254 3
7張本勲 .383 34
3大杉勝男 .339 44
8白仁天 .276 18
9毒島章一 .232 5
2種茂雅之 .205 4
6大橋穣 .183 7
1-
ハリーと大杉が別格過ぎますね……。
1963年 国鉄スワローズ
8丸山完二 .246 3
7高林恒夫 .222 3
5徳武定之 .300 14
6豊田泰光 .292 20
9宮本敏雄 .252 11
3星山晋徳 .228 12
4土屋正孝 .260 9
2根来広光 .229 5
1-
これもなんとも……。
1973年 読売ジャイアンツ
8柴田勲 .277 6
7高田繁 .251 14
3王貞治 .355 51
5長嶋茂雄 .269 20
9末次民夫 .262 13
6黒江透修 .246 8
4土井正三 .262 5
2森昌彦 .220 3
1-
V9最後の年の巨人のオーダーです。王が別格ですね。長嶋はこの次の年で引退。
これが1980年代以降になるとこうなってきている。投手がヘボになったとかそういったツッコミも来そうですが、まぁ、そんなことはないんじゃないの? かつての「絶対的力を持つ三本柱」の時代から「6人で回す表と裏のローテーション」に野球が変わったということだけじゃないでしょうか。あとは外国人選手も増えてきてレベルが上がったのかもしれません。
1983年 西武ライオンズ
4山崎裕之 .287 18
8立花義家 .309 8
5スティーブ .321 17
D田淵幸一 .293 30
7大田卓司 .297 20
9テリー .278 38
3片平晋作 .278 19
2大石友好 .210 4
6石毛宏典 .303 16
2000年 横浜ベイスターズ
6石井琢朗 .302 10
5金城龍彦 .346 3
7鈴木尚典 .297 20
4ローズ .332 21
9中根仁 .325 11
3佐伯貴弘 .259 6
8多村仁 .257 7
2谷繁元信 .251 9
1-
結局何が言いたいのかと言うと、ハリーが醸し出す「ワシらの時代の野球はすごかった」というのは「全体のレベルが低い中、無駄にチームが多かったため突出した選手の成績が無茶苦茶スゴくなった」ということにも感じられる、ということです。一体なんでオレはこんな「僕のなつやすみのれぽーとだよ」みたいなことを書いているんだ、喝だ! もう一つ、大喝だ!