恋、ときどき晴れ

主に『吉祥寺恋色デイズ』の茶倉譲二の妄想小説

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ひとつ屋根の下・秋桜

2014-10-22 09:12:02 | ひとつ屋根の下

番外編『ひとつ屋根の下ストーリー』で思いついた譲二さんの危ないストーリー。

>>お母さんが10何歳下の男性と再婚して、その義父が譲二さんとか。

これを『ひとつ屋根の下・母の夫』『ひとつ屋根の下・妻の娘』として妄想したんですが、その続きのストーリーも思いついたので、よろしければお付き合いを…。


☆☆☆☆☆

私:森田友梨花
母:茶倉宏子
その夫:茶倉譲二…私より10歳上、母より16歳下


あれから10年の歳月が流れた…。


☆☆☆☆☆
ひとつ屋根の下・秋桜~その1

譲二「友梨花、準備はできた?」

 譲二さんが玄関先から声をかける。

友梨花「はい。ちょっと待ってくださいね。もう出れますから」


 2人で車に乗り込む。今日は一週間ぶりにお母さんに会いに行く日だ。


譲二「もうすっかり秋らしくなって来たね」

友梨花「そうですね。朝晩の空気が違いますね」

譲二「来週辺り…天気がよければ公園にでも行こうか? お弁当でも持って」

友梨花「ほんとう? 嬉しい」

 譲二さんが運転しながら片手で私の手を握ってくれた。

譲二「最近、友梨花ちゃんをどこにも連れて行ってあげてないからね…」

友梨花「私は譲二さんと一緒にいられるだけで嬉しいから」

譲二「また、そういう可愛いことを言う…」

友梨花「もう、可愛い年じゃないですよ。30過ぎたおばさんなんだから…」

譲二「友梨花ちゃんがおばさんになることなんてないさ…」

 信号待ちの間に私たちは見つめ合った。



☆☆☆☆☆


 譲二さんに好きだと告白してから、10年の歳月が流れた。

 譲二さんは茶堂院グループの会社を一社まかされて経営しているし、私は市役所に勤めている。




 そして、お母さんは…。




 数年前、お母さんは若年性のアルツハイマーと診断された。

 その前から家族の中では色々なことがあったが、やっと診断が出て治療を受けられるようになった。

 といっても、家族だけで看ることは難しくなったので、若年性でも受け入れてくれる介護施設にお母さんは入居している。

 その費用は全部譲二さんが払ってくれている。

 私とお母さんだけだったら、あんな手厚い介護が受けられる施設に入居することは出来なかったろう。


 まだ、家族で看ていた頃は、どうしても行き届かないことが多くて、お母さんの表情はいつも険しかった。

 そして、怒りっぽくなって暴れると私では対処できなくなることもよくあった。

 そんな時、譲二さんは暴れるお母さんを抱きしめ、優しい言葉をかけ続けてくれた。


譲二『……ロコ…ロコ……大丈夫だよ…大丈夫。…俺はここにいるよ……』

宏子『ジョージ…私、怖い…自分が自分でなくなるみたいで…』

譲二『…大丈夫…。俺がずっと側にいるから…』


 譲二さんに抱きしめられることで、お母さんはだんだん落ち着きを取り戻した。


 今は専門のスタッフのお陰で、症状はとても安定している。

 眉間の皺は消え、いつも穏やかな少女のようなあどけない表情をしている。


☆☆☆☆☆
ひとつ屋根の下・秋桜~その2

 施設に着き、受付でお母さんを呼んでもらう。

スタッフ「宏子さん、ご主人と娘さんが会いに来てくれましたよ」

 施設の人がデイルームにお母さんを連れて来てくれる。

宏子「徹さん!」

 お母さんが譲二さんに抱きついた。

宏子「会いたかったよ」

譲二「俺も会いたかったよ…。ロコ、元気にしてた?」

宏子「うん…。徹さんは?」

 初恋をしている少女のような瞳でお母さんが譲二さんを見上げる。

譲二「ああ、俺はいつも元気だよ」



☆☆☆☆☆

 お母さんはあんなに大好きだった譲二さんのことを忘れてしまった…。


 そして、譲二さんのことを死んだ父だと思い込んで、父の名前で呼ぶ。

 もう、父よりも譲二さんと過ごした年月の方が長いというのに…。

 忘れられて…しかも死んだ父の名前で呼ばれて…譲二さんはとても辛いと思う。

 私には何も言わないけれど…。


 ふと、昔、譲二さんが言った言葉を思い出した。




『天国に行った人と競い合っても、生きてる人間は絶対に勝てっこない』


☆☆☆☆☆


譲二「ロコ、庭を散歩しに行こうか?」

宏子「うん。お花を見よう? あれが咲いているんだよ」

譲二「あれ?」

スタッフ「コスモスですよ。宏子さんはコスモスが大好きなんですよね?
 いつもご主人に見せてあげたいと話してらっしゃいます」

宏子「徹さん、見に行こう」

 譲二さんは私をちらっとみた。

譲二「友梨花ちゃんは?」

友梨花「私はここで待ってるよ」

譲二「ごめんね…。それじゃあ行こうか」


 お母さんは譲二さんにしがみつくように手を握って、園庭に歩いて行った。


スタッフ「いつも仲がよろしいですね」

友梨花「ええ。母は譲二さんのことが大好きなんです」

 スタッフさんがはっとした顔をした。

スタッフ「…そうでしたね。
徹さんというのは前のご主人の名前でしたっけ?」

友梨花「ええ。私の父です」

スタッフ「お父様とも仲がよろしかったみたいですね…。
いつものろけ話を聞かせてくれます」

友梨花「そうですか…。
母は父のことも譲二さんのことも大好きでしたから…」


 窓から2人が一つ一つコスモスの花に触れながら散歩しているのが見えた。



 お母さんは、私が娘の友梨花だということは理解していなかった。

 お母さんにとって友梨花は小さな女の子で、学校があるからここには来られないのだろうぐらいに思っていたようだ。


☆☆☆☆☆


宏子「友梨花にお勉強、頑張るように言ってね」

譲二「ああ…、そう伝えるよ…」

宏子「徹さん、また来てね」

譲二「うん…。ロコも元気でね」

宏子「バイバイ」

譲二「さようなら」

友梨花「さようなら」

 お母さんは私に丁寧なおじぎをした。

 やはり、私が誰かは気づいていないみたいだ。


 施設の玄関を出て、車に乗り、門から出て行く…。


 その間、お母さんは窓から両手を振って、ずっと私たちを見送ってくれた。




 帰りは二人とも言葉少なだった…。

 譲二さんはかなり疲れているようだった。


 譲二さんのことを、死んだ父だと思い込んでいるお母さんと話を合わすのはそうとう疲れることだろう。

その3へつづく


☆☆☆☆☆

本文中に「譲二さんのことを忘れてしまった」とありますが、認知症の人は記憶は無くしても、ものや人に対しての感情はよく覚えてたりします。

だから、「この人は私にとって大切な人で、とても大好きな人」という気持ちはしっかり残っていたりするんですね。

 たとえ、譲二さんのことや譲二さんとの思い出はすべて忘れてしまっていたとしても。


☆☆☆☆☆
ひとつ屋根の下・秋桜~その3

 車が帰り道とは違う方向に走り出した。

友梨花「どうしたの?」

譲二「ちょっと寄り道したくなってね…」

 譲二さんが連れて来てくれたのは、何万本ものコスモスで有名な公園だった。

 二人でコスモスの間の遊歩道を歩く。

 譲二さんとしっかり手をつないで歩いて行く。時々賑やかな家族連れに追い越された。


 公園の小高い丘のベンチに二人で腰掛けた。眼下に広がるコスモスが見事だ。

友梨花「譲二さん…ありがとう」

譲二「…俺が友梨花ちゃんを連れてきたかっただけだから…」

友梨花「そうじゃなくてお母さんのこと…。大切にしてくれて…。妄想にも付き合ってくれて…」

 譲二さんは悲しそうに笑った。

譲二「それは…。ロコは俺の妻だからね。当たり前のことをしてるだけだよ」



☆☆☆☆☆

 私たちは夫婦同然に暮らしている。

 昔からの夢が叶って幸せだけど…後ろめたい。

 私は時々自分がハゲタカのような気がすることがある。

 お母さんが死ねば譲二さんの全てを手に入れることができる。

 …上空で旋回しながら、それをひたすら待ち続けるハゲタカ。




 今、私たちは三人で住んでいた家を売り払って、譲二さんのマンションに住んでいる。

 仕事場に近くて便利だから…表向きはそういう理由だが、本当は私たちが義理の親子だということを知らない人たちの中で暮らしたかったからだ…。

 「茶倉」と「森田」、表札は二つ出ているが、知らない人からすれば、別姓の夫婦か同棲している恋人くらいにみてもらえるだろう。

 私たちはとてもずるい。


☆☆☆☆☆


譲二「俺とロコが結婚して間がない頃、こんなコスモス園に三人で来たことがあったね」

友梨花「うん。ここよりももっと見渡す限りコスモスだったね」

譲二「ロコは君のお父さんと新婚間もない頃、旅行先でこんなコスモス畑を見たんだそうだ。
そして、『こんなどこまでも続くコスモス畑のようにいつまでも君を愛してる』と言ってもらったそうだ…」

友梨花「だから、お母さんはコスモスが好きなんだね…」

譲二「その時は君のお父さんに嫉妬したものだけど…」

 そう言うと、とても愛しい目で私を見つめてくれた。

譲二「この頃、ロコはもう君のお父さんに返してるようなものだなと思ってる。
あの施設でロコが一緒に暮らしているのは君のお父さんの幻とだし。
俺と面会しても俺は君のお父さんの身代わりにしか過ぎない」

 私は切なくなって譲二さんの手をぎゅっと握りしめた。

譲二「だから俺は友梨花ちゃんとこうしていることに罪悪感は感じてないよ…。
友梨花ちゃんは俺がやっと見つけた一番大切な女(ひと)だから…。
君のお父さんにとってロコがそうだったようにね」

 私は譲二さんを見つめた。

 涙が溢れてこぼれる。

譲二「ちょっ…、友梨花ちゃん、泣かないで…」

 譲二さんは私の涙を指で拭ってくれた。

譲二「だから、友梨花ちゃんが罪悪感を感じることはないんだよ」

友梨花「譲二さんには何でもお見通しだね」

 私は微笑んだ。

譲二「友梨花ちゃんのことは大好きだから、いつもみているからね。
だから、俺の前では微笑んでいて…今みたいに」

 譲二さんはそっと唇にキスしてくれた。

友梨花「こんなところで…」

譲二「大丈夫。誰も見てないさ…。」

友梨花「少し寒くなって来たね」

譲二「大丈夫?」

友梨花「譲二さんがこうして抱きしめてくれてるから…。温かいよ」

譲二「それならよかった。…でも、そろそろ帰ろうか?」


 私たちはまたしっかりと手を繋いで…無数のコスモスが揺れる中、もと来た道を辿って行った。


 お母さんも…幻の中で、お父さんとこうしてコスモス畑の道を一緒に歩いているのだろうか?



 そっと譲二さんの顔を見上げる。

 十年以上前から愛して来た大切な人…。

 これからもずっとこの人と一緒に人生を歩んでいきたい。


『ひとつ屋根の下・秋桜』おわり

☆☆☆☆☆

期せずして、

ヒロインと譲二さん
お母さんと譲二さん
お父さんとお母さん

三重の恋の話になりました。

私が最初から意図したわけではないけど、筆に任せて(指に任せて)書いているとこういう予期せぬ展開になったりして、本当に面白いなと思う。

これだから妄想はやめられない。
(^◇^;)



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