恋、ときどき晴れ

主に『吉祥寺恋色デイズ』の茶倉譲二の妄想小説

話数が多くなった小説は順次、インデックスにまとめてます。

小説を検索しやすくするためインデックスを作りました

インデックス 茶倉譲二ルート…茶倉譲二の小説の検索用インデックス。

インデックス ハルルートの譲二…ハルくんルートの茶倉譲二の小説の検索のためのインデックス。

手書きイラスト インデックス…自分で描いた乙女ゲームキャラのイラスト記事


他にも順次インデックスを作ってます。インデックスで探してみてね。



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ひとつ屋根の下・秋桜

2014-10-22 09:12:02 | ひとつ屋根の下

番外編『ひとつ屋根の下ストーリー』で思いついた譲二さんの危ないストーリー。

>>お母さんが10何歳下の男性と再婚して、その義父が譲二さんとか。

これを『ひとつ屋根の下・母の夫』『ひとつ屋根の下・妻の娘』として妄想したんですが、その続きのストーリーも思いついたので、よろしければお付き合いを…。


☆☆☆☆☆

私:森田友梨花
母:茶倉宏子
その夫:茶倉譲二…私より10歳上、母より16歳下


あれから10年の歳月が流れた…。


☆☆☆☆☆
ひとつ屋根の下・秋桜~その1

譲二「友梨花、準備はできた?」

 譲二さんが玄関先から声をかける。

友梨花「はい。ちょっと待ってくださいね。もう出れますから」


 2人で車に乗り込む。今日は一週間ぶりにお母さんに会いに行く日だ。


譲二「もうすっかり秋らしくなって来たね」

友梨花「そうですね。朝晩の空気が違いますね」

譲二「来週辺り…天気がよければ公園にでも行こうか? お弁当でも持って」

友梨花「ほんとう? 嬉しい」

 譲二さんが運転しながら片手で私の手を握ってくれた。

譲二「最近、友梨花ちゃんをどこにも連れて行ってあげてないからね…」

友梨花「私は譲二さんと一緒にいられるだけで嬉しいから」

譲二「また、そういう可愛いことを言う…」

友梨花「もう、可愛い年じゃないですよ。30過ぎたおばさんなんだから…」

譲二「友梨花ちゃんがおばさんになることなんてないさ…」

 信号待ちの間に私たちは見つめ合った。



☆☆☆☆☆


 譲二さんに好きだと告白してから、10年の歳月が流れた。

 譲二さんは茶堂院グループの会社を一社まかされて経営しているし、私は市役所に勤めている。




 そして、お母さんは…。




 数年前、お母さんは若年性のアルツハイマーと診断された。

 その前から家族の中では色々なことがあったが、やっと診断が出て治療を受けられるようになった。

 といっても、家族だけで看ることは難しくなったので、若年性でも受け入れてくれる介護施設にお母さんは入居している。

 その費用は全部譲二さんが払ってくれている。

 私とお母さんだけだったら、あんな手厚い介護が受けられる施設に入居することは出来なかったろう。


 まだ、家族で看ていた頃は、どうしても行き届かないことが多くて、お母さんの表情はいつも険しかった。

 そして、怒りっぽくなって暴れると私では対処できなくなることもよくあった。

 そんな時、譲二さんは暴れるお母さんを抱きしめ、優しい言葉をかけ続けてくれた。


譲二『……ロコ…ロコ……大丈夫だよ…大丈夫。…俺はここにいるよ……』

宏子『ジョージ…私、怖い…自分が自分でなくなるみたいで…』

譲二『…大丈夫…。俺がずっと側にいるから…』


 譲二さんに抱きしめられることで、お母さんはだんだん落ち着きを取り戻した。


 今は専門のスタッフのお陰で、症状はとても安定している。

 眉間の皺は消え、いつも穏やかな少女のようなあどけない表情をしている。


☆☆☆☆☆
ひとつ屋根の下・秋桜~その2

 施設に着き、受付でお母さんを呼んでもらう。

スタッフ「宏子さん、ご主人と娘さんが会いに来てくれましたよ」

 施設の人がデイルームにお母さんを連れて来てくれる。

宏子「徹さん!」

 お母さんが譲二さんに抱きついた。

宏子「会いたかったよ」

譲二「俺も会いたかったよ…。ロコ、元気にしてた?」

宏子「うん…。徹さんは?」

 初恋をしている少女のような瞳でお母さんが譲二さんを見上げる。

譲二「ああ、俺はいつも元気だよ」



☆☆☆☆☆

 お母さんはあんなに大好きだった譲二さんのことを忘れてしまった…。


 そして、譲二さんのことを死んだ父だと思い込んで、父の名前で呼ぶ。

 もう、父よりも譲二さんと過ごした年月の方が長いというのに…。

 忘れられて…しかも死んだ父の名前で呼ばれて…譲二さんはとても辛いと思う。

 私には何も言わないけれど…。


 ふと、昔、譲二さんが言った言葉を思い出した。




『天国に行った人と競い合っても、生きてる人間は絶対に勝てっこない』


☆☆☆☆☆


譲二「ロコ、庭を散歩しに行こうか?」

宏子「うん。お花を見よう? あれが咲いているんだよ」

譲二「あれ?」

スタッフ「コスモスですよ。宏子さんはコスモスが大好きなんですよね?
 いつもご主人に見せてあげたいと話してらっしゃいます」

宏子「徹さん、見に行こう」

 譲二さんは私をちらっとみた。

譲二「友梨花ちゃんは?」

友梨花「私はここで待ってるよ」

譲二「ごめんね…。それじゃあ行こうか」


 お母さんは譲二さんにしがみつくように手を握って、園庭に歩いて行った。


スタッフ「いつも仲がよろしいですね」

友梨花「ええ。母は譲二さんのことが大好きなんです」

 スタッフさんがはっとした顔をした。

スタッフ「…そうでしたね。
徹さんというのは前のご主人の名前でしたっけ?」

友梨花「ええ。私の父です」

スタッフ「お父様とも仲がよろしかったみたいですね…。
いつものろけ話を聞かせてくれます」

友梨花「そうですか…。
母は父のことも譲二さんのことも大好きでしたから…」


 窓から2人が一つ一つコスモスの花に触れながら散歩しているのが見えた。



 お母さんは、私が娘の友梨花だということは理解していなかった。

 お母さんにとって友梨花は小さな女の子で、学校があるからここには来られないのだろうぐらいに思っていたようだ。


☆☆☆☆☆


宏子「友梨花にお勉強、頑張るように言ってね」

譲二「ああ…、そう伝えるよ…」

宏子「徹さん、また来てね」

譲二「うん…。ロコも元気でね」

宏子「バイバイ」

譲二「さようなら」

友梨花「さようなら」

 お母さんは私に丁寧なおじぎをした。

 やはり、私が誰かは気づいていないみたいだ。


 施設の玄関を出て、車に乗り、門から出て行く…。


 その間、お母さんは窓から両手を振って、ずっと私たちを見送ってくれた。




 帰りは二人とも言葉少なだった…。

 譲二さんはかなり疲れているようだった。


 譲二さんのことを、死んだ父だと思い込んでいるお母さんと話を合わすのはそうとう疲れることだろう。

その3へつづく


☆☆☆☆☆

本文中に「譲二さんのことを忘れてしまった」とありますが、認知症の人は記憶は無くしても、ものや人に対しての感情はよく覚えてたりします。

だから、「この人は私にとって大切な人で、とても大好きな人」という気持ちはしっかり残っていたりするんですね。

 たとえ、譲二さんのことや譲二さんとの思い出はすべて忘れてしまっていたとしても。


☆☆☆☆☆
ひとつ屋根の下・秋桜~その3

 車が帰り道とは違う方向に走り出した。

友梨花「どうしたの?」

譲二「ちょっと寄り道したくなってね…」

 譲二さんが連れて来てくれたのは、何万本ものコスモスで有名な公園だった。

 二人でコスモスの間の遊歩道を歩く。

 譲二さんとしっかり手をつないで歩いて行く。時々賑やかな家族連れに追い越された。


 公園の小高い丘のベンチに二人で腰掛けた。眼下に広がるコスモスが見事だ。

友梨花「譲二さん…ありがとう」

譲二「…俺が友梨花ちゃんを連れてきたかっただけだから…」

友梨花「そうじゃなくてお母さんのこと…。大切にしてくれて…。妄想にも付き合ってくれて…」

 譲二さんは悲しそうに笑った。

譲二「それは…。ロコは俺の妻だからね。当たり前のことをしてるだけだよ」



☆☆☆☆☆

 私たちは夫婦同然に暮らしている。

 昔からの夢が叶って幸せだけど…後ろめたい。

 私は時々自分がハゲタカのような気がすることがある。

 お母さんが死ねば譲二さんの全てを手に入れることができる。

 …上空で旋回しながら、それをひたすら待ち続けるハゲタカ。




 今、私たちは三人で住んでいた家を売り払って、譲二さんのマンションに住んでいる。

 仕事場に近くて便利だから…表向きはそういう理由だが、本当は私たちが義理の親子だということを知らない人たちの中で暮らしたかったからだ…。

 「茶倉」と「森田」、表札は二つ出ているが、知らない人からすれば、別姓の夫婦か同棲している恋人くらいにみてもらえるだろう。

 私たちはとてもずるい。


☆☆☆☆☆


譲二「俺とロコが結婚して間がない頃、こんなコスモス園に三人で来たことがあったね」

友梨花「うん。ここよりももっと見渡す限りコスモスだったね」

譲二「ロコは君のお父さんと新婚間もない頃、旅行先でこんなコスモス畑を見たんだそうだ。
そして、『こんなどこまでも続くコスモス畑のようにいつまでも君を愛してる』と言ってもらったそうだ…」

友梨花「だから、お母さんはコスモスが好きなんだね…」

譲二「その時は君のお父さんに嫉妬したものだけど…」

 そう言うと、とても愛しい目で私を見つめてくれた。

譲二「この頃、ロコはもう君のお父さんに返してるようなものだなと思ってる。
あの施設でロコが一緒に暮らしているのは君のお父さんの幻とだし。
俺と面会しても俺は君のお父さんの身代わりにしか過ぎない」

 私は切なくなって譲二さんの手をぎゅっと握りしめた。

譲二「だから俺は友梨花ちゃんとこうしていることに罪悪感は感じてないよ…。
友梨花ちゃんは俺がやっと見つけた一番大切な女(ひと)だから…。
君のお父さんにとってロコがそうだったようにね」

 私は譲二さんを見つめた。

 涙が溢れてこぼれる。

譲二「ちょっ…、友梨花ちゃん、泣かないで…」

 譲二さんは私の涙を指で拭ってくれた。

譲二「だから、友梨花ちゃんが罪悪感を感じることはないんだよ」

友梨花「譲二さんには何でもお見通しだね」

 私は微笑んだ。

譲二「友梨花ちゃんのことは大好きだから、いつもみているからね。
だから、俺の前では微笑んでいて…今みたいに」

 譲二さんはそっと唇にキスしてくれた。

友梨花「こんなところで…」

譲二「大丈夫。誰も見てないさ…。」

友梨花「少し寒くなって来たね」

譲二「大丈夫?」

友梨花「譲二さんがこうして抱きしめてくれてるから…。温かいよ」

譲二「それならよかった。…でも、そろそろ帰ろうか?」


 私たちはまたしっかりと手を繋いで…無数のコスモスが揺れる中、もと来た道を辿って行った。


 お母さんも…幻の中で、お父さんとこうしてコスモス畑の道を一緒に歩いているのだろうか?



 そっと譲二さんの顔を見上げる。

 十年以上前から愛して来た大切な人…。

 これからもずっとこの人と一緒に人生を歩んでいきたい。


『ひとつ屋根の下・秋桜』おわり

☆☆☆☆☆

期せずして、

ヒロインと譲二さん
お母さんと譲二さん
お父さんとお母さん

三重の恋の話になりました。

私が最初から意図したわけではないけど、筆に任せて(指に任せて)書いているとこういう予期せぬ展開になったりして、本当に面白いなと思う。

これだから妄想はやめられない。
(^◇^;)



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ひとつ屋根の下・蟻地獄

2014-10-21 09:25:42 | ひとつ屋根の下

番外編『ひとつ屋根の下ストーリー』で思いついた譲二さんの危ないストーリー。

>>お母さんが10何歳下の男性と再婚して、その義父が譲二さんとか。

これを『ひとつ屋根の下・母の夫』『ひとつ屋根の下・妻の娘』として妄想したんですが、その続きのストーリーも思いついたので、よろしければお付き合いを…。

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俺:
茶倉譲二
妻:茶倉宏子…16歳年上
その娘:森田友梨花…10歳下


☆☆☆☆☆
ひとつ屋根の下・蟻地獄

〈譲二〉
 仕事の合間のお昼の休憩時間に、ロコをランチに誘った。

 前々から目をつけていた店で、個室も取れた。

宏子「珍しいね。ジョージがウィークデイにランチに誘ってくれるなんて」

譲二「たまにはこういうのもいいだろう?」

宏子「うん。嬉しい」

 ロコの無邪気な笑顔を見て心が痛んだ。

 俺は…彼女に離婚を切り出すつもりだったから。

宏子「結婚前はなかなか会えなかったから、こんな風に時間を作ってランチしたよね?」

譲二「ああ、夜も友梨花ちゃんが小さい時はあまり会えなかったしね」

 なぜだか、恋人時代の話で盛り上がった。

 あの頃はロコのことしか頭に無くて、別れるなんて考えたこともなかった。

 楽しそうに思い出話をするロコを前にして、どう話を切り出そうかと悩んだ。

譲二「…ロコ、ちょっと話があるんだ」

宏子「何?急にあらたまって?」

譲二「俺と…その…友梨花ちゃんのことなんだけど…」

 ロコの顔が強張る。

宏子「その話、聞きたくない」

譲二「ロコ…」

宏子「私のいないところで、あなたたちが何をしようと勝手だけど、私の前ではいい夫と娘でいてちょうだい」

譲二「ロコ…、話だけでも聞いて欲しい…」

宏子「聞かなくても分かってる。あなたたちのことなんて、全てお見通しよ!」

譲二「ロコ、それならお願いだ。俺と…」

 俺の言葉を遮るように言った。

宏子「ジョージ!私のこと、一生守ってくれるんじゃなかったの?」

 その言葉で、俺は何も言えなくなった。

宏子「男が…一度口に出した言葉はちゃんと守ってちょうだい」

譲二「…」

宏子「ごめんなさい…。そろそろ仕事に戻らないと。
ごちそうさま」


 俺は一人残された。

 そうか…、やっぱりロコには気づかれていたのか…。

 そうだよな…。友梨花ちゃんが俺を見る目、あれは義理の父親を見る目じゃない。




☆☆☆☆☆

 その後もロコの俺に対する態度はいつもと変わらなかった。

 ただ、このことを切り出そうとすると必ず拒否された。

 そして夜は…。

 俺は友梨花ちゃんと深い関係になってからはロコを抱くのをなるべく避けようとした。

 しかし、ロコは毎晩のように誘ってくる。

 俺は疲れた振りをしてなるべく相手にしないようにしていたが、三、四回に一回はロコを抱く羽目になった。

 一度など、眠っている時に俺のものを弄ばれたこともあった。

 ちょっと腹を立てた俺はロコを乱暴に抱いたが、かえって盛り上がってしまった。


 セックスに関しては、全てロコが教えてくれたことだったから、どうしても彼女に主導権を握られている。

 そして、ロコを抱いた翌朝は何故だか友梨花ちゃんにはばれているようだった。

 部屋は防音されているから女の感という奴だろう。

 しかしそのことについて、友梨花ちゃんと話したことはない。

 代わりに、友梨花ちゃんと二人だけで過ごせる夜には彼女を優しく抱いた。

 初めの頃は苦しそうにしていた友梨花ちゃんだが、俺の愛撫に悶える姿は可愛らしく、一つに繋がった時にもだんだん愛らしい声をあげるようになった。

 初めての女性を少しずつ開発していく経験は面白くて、俺は彼女にますます夢中になった。


 このままじゃいけない…焦るばかりだった。

 まるで蟻地獄に陥っているように、俺はどうすることも出来ないでいた。


ひとつ屋根の下・金木犀

2014-10-19 09:09:47 | ひとつ屋根の下

番外編『ひとつ屋根の下ストーリー』で思いついた譲二さんの危ないストーリー。

>>お母さんが10何歳下の男性と再婚して、その義父が譲二さんとか。

これを『ひとつ屋根の下・母の夫』『ひとつ屋根の下・妻の娘』として妄想したんですが、その続きのストーリーも思いついたので、よろしければお付き合いを…。

☆☆☆☆☆

俺:
茶倉譲二
妻:茶倉宏子…16歳年上
その娘:森田友梨花…10歳下


☆☆☆☆☆
ひとつ屋根の下・金木犀~その1

〈譲二〉
 二人だけの夜には友梨花ちゃんと添い寝するようになって…。

 だんだんキスだけでは満足できなくなって来た。

 これ以上はだめだという理性の囁きともっと彼女にふれたいという心の叫び。

 そのせめぎ合いに俺は苦しんでいた。



☆☆☆☆☆

 秋めいた陽気が続き、窓を開けると心地よい風が吹いてくる。

 キンモクセイの甘い香りがその風にのって漂っている。


 今日、ロコは職場の研修旅行で出かけている。

 ロコを送り出してから、二人きりでのんびり過ごしている。

 どこかに出かけてデートしてもいいのだが、誰かに目撃されてそれがロコの耳に入ったら…と思うと、どこにも出かけられずにいる。

 まあ、俺は友梨花ちゃんと二人で過ごせるだけで嬉しいけど。


 友梨花ちゃんが庭で切ったキンモクセイの花を花瓶に飾っている。

 部屋の中が甘い香りで満たされた。


 俺の視線に気づいたのだろう。友梨花ちゃんがこっちを見て微笑んでくれた。

友梨花「譲二さん、どうしたの?」

譲二「ん? 可愛いなって思って…」

 友梨花ちゃんが頬を染める。

友梨花「…そんなに見つめられたら、恥ずかしいです」

 そんな彼女がいじらしくて、俺は彼女を抱き寄せた。

 キンモクセイの香りの中での甘い甘い口づけ。

…それはその後に起こったことの記憶と結びついて、キンモクセイの香りを嗅ぐ度にこの日の事を思い出すようになった。



☆☆☆☆☆

譲二「そろそろお昼だね。
パンは朝で食べちゃったし、ご飯も炊かないといけないけど、何か食べたいものはある?」

友梨花「うーん。それなら久しぶりにパスタが食べたいかも」

譲二「パスタかあ…。今あるもので作れそうなのはっと…。
この間、友梨花ちゃんに教えてもらったカルボナーラにしようか?」

友梨花「いいけど、教えてあげたというほどのものじゃないですよ。
お母さんが帰ってくるのがいつも遅かったから、冷蔵庫の中のもので工夫して作っただけだから…」

譲二「そうだったね」

 前の夫を無くしたロコは必死で働いていたから、友梨花ちゃんは一人でなんでもする癖がついていたんだよな。

 もっとも、お母さんが帰るのが遅い原因の何割かは俺のせいだったわけだけど。



☆☆☆☆☆

 二人で作ったカルボナーラを昼食に食べた。

譲二「レシピもそうだけど、友梨花ちゃんは料理の手際もいいね。
いいお嫁さんになれそうだな」

 何気無く言った言葉だった。

友梨花「それは…誰のお嫁さんになるの?」

 真剣に俺を見つめる目に俺は動揺した。

 まさか『俺の嫁さん』…なんてことは間違っても言えないしな。

譲二「え?そこ、こだわるとこ?」

 なんとかかわそうとしたが、許してくれそうにない。

 俺は視線を反らせた。

譲二「いつか…友梨花ちゃんのことが誰よりも大好きで…大切だって男が現れて、

友梨花ちゃんもそいつのことが好きになったら…、

きっとその男のお嫁さんになりたくなるよ」


 友梨花ちゃんの目から涙が溢れている。



譲二「ちょっ、友梨花ちゃん。泣かないで…」

友梨花「どうして…、そんなこというの?
 私の気持ち、分かってるくせに」

 彼女を慰めたくて抱きしめた。

譲二「ごめん…。
俺には友梨花ちゃんを幸せにする資格はないから」

友梨花「譲二さんは結婚してくれなくても、ずっと側にいてくれるだけで私は幸せなのに」

譲二「ありがとう…。そんな風に言ってくれて…」

 俺は大きくため息をついた。

譲二「でも、それももう限界だ」

友梨花「どういうこと?」

譲二「もう、これ以上友梨花ちゃんに手を出さずに一緒にいることはできそうにない。
このままだと友梨花ちゃんを傷つけてしまうことになりそうだ」

 『だから、しばらく離れて冷却期間を持とう』と言いかけて、友梨花ちゃんの真剣な目に捉えられた。

友梨花「そんなことで私は傷つかないよ」

譲二「え?」

友梨花「譲二さんが我慢出来ないのなら…、私はかまわないよ」

譲二「そんなこと言っても、女の子は…」

友梨花「私はもう22歳の大人の女だよ。
自分の好きな人とは最後までいっても後悔しない」

 彼女を抱きしめる手に力がこもる。

譲二「本当にいいの?」

友梨花「うん」



☆☆☆☆☆
ひとつ屋根の下・金木犀~その2

〈譲二〉
 キンモクセイの甘い香りの中、友梨花ちゃんと裸で抱き合っている。

譲二「怖い?」

友梨花「ううん。譲二さんとなら怖くない」

譲二「でも…胸がこんなにドキドキしてる…」

友梨花「譲二さんだって、ドキドキしてるよ」

 俺は苦笑した。

譲二「そうだね。俺さ…。
ロコ以外の女性とするのは初めてなんだ」

友梨花「そうなんだ」

譲二「だから、…その…、バージンの子とするのも初めてだから、優しくできなくて、友梨花ちゃんを苦しくさせてしまうかもしれない。
だから、少し緊張してる」

友梨花「いいよ、苦しくても…。譲二さんが相手なら」

 なんでこんなに可愛いことを言ってくれるんだろう、この子は…。

 彼女の白い乳房にそっとキスをした。



☆☆☆☆☆

〈友梨花〉
 譲二さんは何度も何度も「愛してる」とつぶやいてくれた。

 譲二さんの汗が滴り落ちて、私の身体を濡らした。

 譲二さんが唇にそっとキスをしてくれる。

 私は彼を抱きしめた。

友梨花「嬉しい…」

譲二「俺も…嬉しい…。だけど…、ごめんね。
友梨花ちゃんのバージン奪っちゃった…」

友梨花「ううん…。私は初めては譲二さんと…って、ずっと思ってたから…」

譲二「またそんな可愛いこと言う。…もう、絶対他の男には渡さない」

 譲二さんは私に頬ずりしてくれた。

譲二「あ…そうだった」

 譲二さんは私から離れるとティッシュにくるんだ何かを捨てた。

譲二「友梨花ちゃんを妊娠させるわけにはいかないから…」

友梨花「私たち、子供は持てないよね…」

譲二「今はね」

友梨花「今は?」

譲二「ああ。こうなった以上、きちんとケジメをつけるようにする」

友梨花「でも…それだとお母さんが…」

譲二「ロコには済まないと思ってる…。
だけど、もう自分の気持ちを誤魔化すことはできない。
俺には友梨花ちゃんが必要だから」

 譲二さんは私をしっかり抱きしめてくれた。

譲二「少しタイミングを見て、ロコと話し合うようにするよ…。
だから、今は我慢してね…」

友梨花「…うん」

譲二「さあ、一緒にシャワーを浴びて来よう」



☆☆☆☆☆

 譲二さんと一緒にシャワーを浴びる。

 少し恥ずかしかったけど我慢した。

 だって譲二さんとは少しでも一緒にいたい。

 私たちは一緒にシャワーを浴びながら、唇が近づくたびにキスをした。




『金木犀』おわり



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ひとつ屋根の下・妻の娘

2014-10-03 09:10:35 | ひとつ屋根の下

番外編『ひとつ屋根の下ストーリー』で思いついた譲二さんの危ないストーリー。

>>お母さんが10何歳下の男性と再婚して、その義父が譲二さんとか。

これを『ひとつ屋根の下・母の夫』として妄想したんですが、その譲二さん目線のお話も書いちゃったので、よろしければお付き合いを…。

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俺:茶倉譲二…大学二年生
メル友:森田宏子…16歳年上


☆☆☆☆☆
ひとつ屋根の下・妻の娘~その1

 ご主人を事故でなくし、荒れているメル友の宏子さん。

 今まで、何かと相談を受けてもらったり、力づけてもらって来た俺は彼女の力になりたいと思って、一生懸命慰めようとした。

 そして、宏子さんに「それなら私を抱いてごらんなさい。あの人の代わりに一人の男として抱いてよ」と、言われた。

 そんな風に挑発されると俺も男だから彼女を抱いている。

 と、言っても、俺は初めてなので彼女にリードしてもらいながらなんだけど…。

 ちょっと、情けねー。


☆☆☆☆☆

宏子「譲二くん…ごめんね…。こんなことに付き合わせて…」

 宏子さんはうっすらと目に涙を浮かべている。そんな彼女が愛しい。

 今まで温かくて頼りになる女性だとは思って来たけど…、こんな気持ちは初めてだ。

 俺は彼女にそっとキスをした。
 
 裸で抱き合っているとまたムラムラしてくる…。


譲二「ねぇ、宏子さん…。もう一回やってもいい?」

宏子「…いいけど…。宏子じゃなくて、ロコって呼んで」

譲二「ロコ、もう一回やりたい…」

宏子「いいよ…」


☆☆☆☆☆

宏子「譲二くん…。今日はありがとう。私に付き合ってくれて」

 俺の胸に頭をもたらせながら宏子さんが言う。

譲二「そんな…俺の方がこんなにいっぱい気持ちよくさせてもらって…。それに宏子さんと結ばれて嬉しかった…」

 俺は顔を赤くしながら言った。

宏子「ほんとう? こんなおばちゃんが初めての相手で嫌じゃない?」

譲二「嫌じゃないですよ。それに…抱いてみてわかったけど…、宏子さんはおばさんなんかじゃないし…。とっても奇麗です…」

 最後の言葉は照れくさくて尻すぼみになってしまった。

宏子「ありがとう。お世辞でも嬉しいわ」

譲二「お世辞じゃないですよ! 俺、宏子さんとこうなれて本当に嬉しいです」

 宏子さんは抱きしめて唇にキスしてくれた。

宏子「譲二くんは本当に可愛いね…。でも、私のことなんて呼ぶんだったっけ?」

譲二「あっ、すみません。ロコ…」

宏子「謝らなくてもいいよ。…ちょっとからかってみただけなんだから」

 そんな風に言う宏子さん、じゃない…ロコが可愛くて俺からも抱きしめてキスした。

譲二「ねえ、ひ…いや、ロコ。どうしてロコって呼んで欲しいんですか?」

宏子「どうしてだと思う?」

譲二「ロコって、あだ名ですよね? 俺ともっと親しくなりたいから…とか?」

宏子「…それもあるけど…。あのね、怒らないで聞いてね。
ロコという呼び名は、死んだ主人が恋人時代に呼んでくれていた名前なの…。
譲二くんの声は主人の声に似てて…。
目をつぶっていると死んだ主人に言ってもらえてるような気になるの」

譲二「それって…」

宏子「そう。ごめんね…。譲二くんを主人の身代わりにして」

 俺は初めて、宏子さんの死んだご主人に嫉妬を感じた。

譲二「ロコ…。また、こんな風に会ってくれる?」

宏子「え?」

譲二「俺…、まだ学生でこんな若造だけど…、宏子さん…じゃなくてロコにふさわしい男になるから…。だから、俺の恋人になって欲しい」

宏子「恋人って…、私、譲二くんより16歳も年上なんだよ…」

譲二「年なんか関係ない。俺、こんなにロコのことが好きなのに…」

 俺は宏子さんに覆いかぶさるとキスをした。そして、また彼女を抱いてしまった…。



 今から思うと初めてのセックスの快感に舞い上がってしまって、そんなことを口走ってしまったのかもしれない…。

 でも、その時の俺は大真面目だった。そして、彼女を一生守ろうと決心した。


 それから、俺はメールではなく寝物語に彼女の悩みの相談を受けるようになった。



 ご主人と死別したばかりの頃、娘の友梨花ちゃんは実家に預けられていた。

 そして、ロコは娘を引き取れるよう、独り立ちしようとあがいていた。

 娘の世話をしなくていい分、俺と会う時間は取れていて、2人で会ってはベッドを共にした。


その2へつづく


☆☆☆☆☆

俺:茶倉譲二
恋人:森田宏子
その娘:森田友梨花


☆☆☆☆☆
ひとつ屋根の下・妻の娘~その2

 大学卒業後、俺は実家の茶堂院グループに入社し、幹部候補生として仕事を始めた。

 それまで、実家の企業に入ることを嫌がっていた俺だが、ロコにふさわしい大人の男になるためにはそれが近道だと考えたからだった。

 仕事上で年より若く見られがちだった俺はヒゲを伸ばすようになった。

 これはロコと2人で並んだ時に彼女との年の差を分かりにくくするためでもあった。

 2人でデートする時、ロコは俺より老けてみられるのをひどく気にしていたからだ。



☆☆☆☆☆


 一人の女性の人生を引き受けるなど、生半可な覚悟じゃできないと思い知らされたのは、25歳の時だった。

 その頃、会社ではかなり重要なポストをまかされるようになっていて、なかなかロコと会う時間が取れなくなっていた。

 ロコからメールが入った。

『ジョージ、すぐに私のアパートに来て

             ロコ』

 ロコとはこの一月ほど、週一くらいでランチを食べに行くくらいしか会えていなかった。

 メールのやり取りは頻繁にしていたから、ロコの神経がそんなに追いつめられているとは思いもよらなかった。

 しかし、メールの文面に胸騒ぎを覚えた俺は、仕事の合間に電話してみた。

譲二「ロコ、どうしたの?」

宏子「ジョージ…、すぐに会いたい。…会いに来て」

 彼女はろれつがまわっていない。

譲二「お酒を飲んでるの?」

宏子「うん…飲んでる。…だって…、寂しいんだもん…。ジョージに会いたい」

譲二「アパートにって言っても、友梨花ちゃんはどうしたの?」

宏子「友梨花はね…、夏休みだからしばらくおばあちゃん家でお泊りしてる。だから、私一人なんだ…。だから…泊まっていけるよ…」

譲二「でも、今日はまずいよ…。まだ仕事が入ってるし、今から人と会わないといけないんだ」

宏子「私と仕事とどっちが大事なの? 私がおばあちゃんだから、もう嫌になったんでしょ?」

譲二「そんなことないよ。ロコのことは…愛してる…」

宏子「うそ!」

譲二「うそじゃないよ…」



 彼女との電話は埒があかなかった。

 何とかなだめて電話を切ったが、ひどく気にかかって、仕事の打ち合わせは平身低頭して、別の日時に変えてもらった。


☆☆☆☆☆


 急いで彼女の部屋に向かう。

 部屋には鍵がかかっていて、インターホンを押しても返事がない。

 胸騒ぎがした。



 友梨花ちゃんがいるので、その部屋で会ったことはあまりないが、合鍵は持っていたので開けて中に入った。

 ロコの名を呼びながら探す。


 ベッドの上で倒れているロコを見つけた。

 側には中身が半分くらい入った酒瓶と空の睡眠薬の瓶がある。

 俺が驚いて、名前を呼びながらロコを揺さぶると「うーん」と言って薄目を開けた。

宏子「ジョージ…、来てくれたんだ…」

譲二「何してるんだよ!」

宏子「ジョージが…来てくれなかったら…死んじゃおうと…思って」

譲二「何バカなこと考えてるんだ! 薬、どれ位飲んだの?」

宏子「あるだけ…。20粒…くらい?」

譲二「ばか!」

 俺は大きなコップに水を汲んで来て彼女に飲ませた。そして、洗面所に連れて行くと指を入れて吐き出させた。

 何度かそれを繰り返し、夜間診療の病院に連れて行った。

 俺の処置で薬はほとんど吐き出していたが、念のために胃の洗浄もしてもらった。


☆☆☆☆☆

 部屋に連れ帰る頃にはロコも正気に戻っていて、泣きながら謝った。

宏子「…ごめんなさい。ジョージ、ごめんなさい。もう、私のこと嫌になった?」

 俺に会えない当てつけに、自殺未遂のようなことをしたことへの嫌悪感を言い当てられた気がして、俺は言葉に詰まった。

 ロコは真剣な目で俺を見つめている。

譲二「俺が今、一人前になりたくて必死で仕事してるのはロコのためじゃないか…。それなのに、なんでこんなことするの?」

宏子「そんなこと…よくわかってるよ…。
でも、一人でいると…ジョージには私みたいな女、ふさわしくないような気がして…辛くてたまらなくなるの。
いつかあなたに捨てられるんじゃないかって。
それなら今死んでしまった方がましだって…」

譲二「俺のこと…もっと信じてよ。俺がロコのこと捨てるわけないじゃない。」

☆☆☆☆☆


 ロコを抱いた。

 一ヶ月ぶりだったが、驚いたことに彼女は随分痩せて小さくなっていた。

 不安そうに俺に縋り付く、小さな生き物…。

 俺は…、一人の大人の男として彼女を一生守ろうと心に誓った。

 二十歳のときの決心は舞い上がってフワフワしたものだった。

 だけど、このとき俺は本当の覚悟を決めた。


その3へつづく


☆☆☆☆☆

俺:茶倉譲二
妻:茶倉宏子…俺より16歳上
その娘:森田友梨花
…俺より10歳下

☆☆☆☆☆
ひとつ屋根の下・妻の娘~その3


 28歳の時、ロコにプロポーズされた。

 俺は驚いた。

 友梨花ちゃんもいることだし、俺たちの関係は恋人のままだろうと思っていたから…。

宏子「友梨花がね。『お母さん、好きな人ができたら結婚してもいいよ』って言ってくれたの」

 頬を染めたロコはとても愛らしい。

譲二「俺で…いいの?」

宏子「ジョージ以外にいないじゃない。この八年間私を支えてくれたのはジョージなんだから」


☆☆☆☆☆

 行きつけのレストランで友梨花ちゃんに紹介されることになった。

 事前の話し合いで、友梨花ちゃんが俺のことを覚えていないようなら、俺が昔なじみのじーじだということは敢えて言い出さないことになっていた。


 高校3年生になった友梨花ちゃんを一目見て…、俺のハートは打ち抜かれた。

 これが…あのちっさくて泣き虫の友梨花ちゃん…。

 ロコに写真は見せられていたし、遠目なら何度か見たことはあった。

 しかし、すぐそばで見た彼女はあまりに愛らしくて、俺の心臓は鷲掴みにされた。


 俺は…お母さんの若い恋人…。

 でも、嫌悪感も見せず、キラキラした瞳で俺のことを見つめてくれる。

 彼女と色々おしゃべりしながら、俺は舞い上がっていた。

宏子「ジョージ、もしかして緊張してる?」

譲二「かもね。仕事柄、こんな若い女の子としゃべる機会なんかないからね」

宏子「わぁ、ジョージは私なんかより若い子の方がいいんだ」

 心の中を見透かされた気がして慌てて言う。

譲二「そんなこと言ってないだろ?」

 友梨花ちゃんはニコニコしている。

友梨花「二人とも、仲がいいんですね。譲二さん。お母さんのことよろしくお願いします」

譲二「こちらこそ。俺が友梨花ちゃんのお父さんになるのはおこがましいから、親戚のお兄さんが一人増えたとでも思ってくれるといいよ」

友梨花「はい。そう思うことにします」


 その場で俺たちの式の日取り…、教会での簡単な式と3人での食事会の日時が決まった。


☆☆☆☆☆

 2人と別れて帰る道すがら、ぼんやりと考える。

(俺、間違ったことはしてないよな…。友梨花ちゃんのことが好きになったからと言って、今さら「結婚は考え直してくれ」なんてロコに言えないよな…。)


 それに…、そんなことを言ったらまた3年前のようにロコは自傷行為に走るだろう…。

 何考えてんだ。

 ロコのことを一生守るって誓ったじゃないか…。

 男が一度決めたことは簡単に撤回していいわけはない…。




☆☆☆☆☆

 教会での結婚式。

 俺たちは平服でいいと思っていたが、友梨花ちゃんはどうしてもとロコにウエディングドレスを着るように勧めた。

 それでよかった。

 ウエディングドレス姿のロコはとても奇麗で輝いていた。

 俺はまた彼女のことを惚れ直してしまった。



☆☆☆☆☆

 3人での新生活。

 俺のマンションも彼女の部屋も3人で住むには狭すぎた。

 前々から目をつけていた家を買って3人で住むことになった。中古物件だけど程度がいいので、押さえてあったものだった。

 寝室の壁が防音処理されていたこともこの物件を買う決め手だった。

 年頃の女子高生には俺たちの夜の営みは刺激的すぎるだろうから…。



☆☆☆☆☆

 今まで一緒に暮らせていなかったから、ロコとベッドを共にしても朝まで一緒に過ごすことはまれだった。

 結婚して2人で朝まで一緒に過ごせる。添い寝できるというのは素直にうれしい。

 結婚したばかりの頃こそ、毎晩のようにセックスしていたが、そのうち2人で抱き合って眠るだけでも満足できるようになってきた。

 子猫のように俺にしがみついて眠るロコがとても愛しい。

 そう、ロコへの愛情は変わらない。ロコを大切に思う気持ちも…。


 違うのは、もう一人とても大切で気になる女性ができたこと…。


☆☆☆☆☆

 友梨花ちゃんと一緒に暮らし始めて、彼女と朝晩の挨拶をしたり、おしゃべりしたり、一緒に料理を作ったり、掃除をしたり…その何気ない日常がとても楽しい。
 
 自分の心を押しとどめようとしても、友梨花ちゃんへの思いは溢れて来る。

 必死に…誰にも(とくにロコには)気づかれないよう平静を保った。



その4へつづく


☆☆☆☆☆

俺:茶倉譲二
妻:茶倉宏子…俺より16歳上
その娘:森田友梨花
…俺より10歳下

☆☆☆☆☆
ひとつ屋根の下・妻の娘~その4


 友梨花ちゃんに告白されてしまった…。

 以前から俺に好意は持ってくれてると思ってたけど…。

 あんなに思い詰めていたなんて…。

 なんとかはぐらかそうとしたけど…。結局、俺も彼女が好きだと告白してしまった。

 2年も思い続けていた子にあんな可愛い顔で告白されたら…誰だって「好きだ」と言ってしまうだろう…。

 単なる言い訳にしかならないけど…。

 そして…、彼女を抱きしめてキスまでしてしまった。

 …ロコを裏切ってしまった…。

 浅はかなことをしたと反省している。

 友梨花ちゃんの気持ちに応えてあげることはできないのに…。

 彼女に「お母さんより先に譲二さんに会いたかった。そしたら…お母さんなんかに渡さないのに…」と言われて、とても複雑な気持ちだった。

 友梨花ちゃんにはロコより先に会っているよ、俺はじーじだよと打ち明けようかと迷って…結局打ち明けられなかった。

 たとえそれを打ち明けても、どうにもならないことなのだから…。


☆☆☆☆☆

 あれから一週間。彼女と顔を合わせても何事もなかったかのように振る舞っている。

 彼女はいつも俺に目で訴えてくれるけど…。ごめんね、俺はその気持ちに応えてあげることはできないんだ…。

 ロコと友梨花ちゃんは親子だから、声も仕草もよく似ている。

 ロコを抱きながら…、友梨花ちゃんもこんな色っぽい顔をして、こんな可愛い声で喘ぐんだろうかと考えてしまう。

 ロコに気づかれるとまずいから、急いでそんな考えは頭から追い出すようにはしてるけど…。

 俺は…ロコにも、友梨花ちゃんにもひどいことをしている。


☆☆☆☆☆

朝食の席でロコが突然こんなことを言い出した。

宏子「ジョージ、来月から夜勤を入れようと思うの」


譲二「それは…。ロコが構わないのなら俺はいいけど…。でも、身体にキツいから、夜勤は入れないようにするって言ってたんじゃないのか?」

宏子「そうなんだけど、今度の職場にもだいぶ慣れて来たし、新しく入った子が一人辞めてね。やっぱり私もシフトに入れないと回せそうにないの」

譲二「辞めた子がいるとは聞いてたけど、そんなに大変なのか…」

宏子「それでも、私の夜勤は週一くらいで済むと思うから…。本当にごめんね」

 週に一度、友梨花ちゃんと2人だけで夜を過ごすことになる…。もちろん、寝室は別なのだから、俺が変な気を起こさない限り何かが起きることはない。

 でも、友梨花ちゃんと2人だけで夜を過ごせることに喜んでいる俺がいた。

 2人で夕食をとって、2人でおしゃべりをする。それだけでも、うれしい。

 ごめんね、ロコ。



☆☆☆☆☆

 その最初の夜。

 俺は仕事を早めに切り上げて、友梨花ちゃんの大好きなハンバーグを作り始めた。

 自分でもバカなことをしていると思った。まさか、彼女に手を出す気なんじゃないだろうな、と、心に問いかける。

 もちろん、そんなつもりはないけど…。

 でも、せっかく2人だけで過ごすのだから、彼女の喜ぶ顔がみたい。

 帰ってきた彼女と一緒に夕食のしたくをし、ロウソクと花で飾ったテーブルで食事をしながらひと時をすごす。

 彼女とのおしゃべりは楽しい。ずっと、毎日こんな風に過ごせたら…。



 話がとぎれて、沈黙が訪れた。友梨花ちゃんと見つめ合う…。

 ダメだ。俺は視線をそらせた。

譲二「もう、こんな時間か。友梨花ちゃん、お風呂ができてるから先に入って来るといいよ。ここは俺が片付けるから」

 友梨花ちゃんが俺の手を掴む。

友梨花「この前みたいに…2人だけの時は恋人でいて欲しい…」

 俺は彼女の手を両手で優しく包んだ。

譲二「友梨花ちゃん…。この間はあんなことをしてしまってごめん。無責任なことをしてしまったって反省してる」

友梨花「譲二さんを困らせてしまうのはわかってる…。お母さんと別れられないのも分かってる…。でも、2人だけの時は私の恋人になって欲しい」

 そんな可愛いことを言われたら…俺だって…。

譲二「友梨花…」

 俺は友梨花ちゃんを抱きしめた。そして、優しく…だんだん深く…キスした。

 キスをやめると友梨花ちゃんは大きく息を吐いた。

譲二「もしかして、息を止めてた?」

友梨花「だって、口が塞がれてたもん…」

譲二「そういうときは鼻で息をするんだよ」

友梨花「そうなんだ」

2人で顔を見合わせて笑った。

譲二「そうそう。友梨花ちゃんはそんな風に笑ってるのが一番可愛いよ…」

 笑うとこんなに可愛いのに…。その笑顔を消しているのが俺だと思うと胸が痛んだ。




その5へつづく

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俺:茶倉譲二
妻:茶倉宏子…俺より16歳上
その娘:森田友梨花
…俺より10歳下

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ひとつ屋根の下・妻の娘~その5


 ロコが夜勤で、初めて友梨花ちゃんと2人だけで過ごす夜。

 友梨花ちゃんに問われるまま、ロコとのなれ初めを話した。

 そして、俺がじーじだということも打ち明けた。

譲二「友梨花ちゃんに手を出しておきながら、こんなことを言うのは卑怯なんだけど…。君のお母さんと別れるわけにはいかない」

友梨花「どうして?」

譲二「ロコは一人では生きて行けない女(ひと)なんだ…。彼女を守って支えてくれるパートナー無しには…。
俺はずっと前に彼女を守ると決めた。今さら他に好きな人ができたから別れようとは彼女には言えない。それに、そんなことを言ったら彼女がどんなになってしまうか…」

友梨花「でも…。でも、私は? 私にだって譲二さんは必要だよ」

譲二「ありがとう。でも、友梨花ちゃんはまだ若い。俺なんかよりもっと若くて頼りがいのある男にこの先いくらでも出会えるさ…」

 友梨花ちゃんが俺の胸にしがみついた。

友梨花「譲二さんより若い男の人なんていらない。譲二さんより頼りがいのある人なんていない。私には譲二さんしかいないのに…」

 そんな風に言ってもらえても、俺は彼女の気持ちを受け取ることができない。

譲二「…友梨花ちゃん…。ごめん…。ごめんね…」

 ただ抱きしめながら謝るしかできなかった。

 そして、彼女の柔らかい身体を抱きしめるのをやめることも出来なかった。

 俺たちはしばらくそのまま抱き合っていた。


☆☆☆☆☆

 長い抱擁を解いて、涙で汚れた友梨花ちゃんの顔を見つめた。

譲二「それじゃあ、こうしよう。
今日みたいにロコがいなくて2人だけの時には、お互いの気持ちを素直に出すことにしよう」

友梨花「それって…」

譲二「俺は友梨花ちゃんが好きだっていう気持ちを隠さない。
友梨花ちゃんも俺に甘えてくれて構わない。
でも、ロコにだけは…それを知られないようにする。どう? 協力してくれる?」

友梨花「譲二さんのことを恋人みたいに思ってもいいの?」

譲二「ああ。恋人といっても、大したことはできないと思うけど。こんなことぐらいしか…」

 彼女の可愛い唇にキスを落とした。できることなら、他の男には渡したくない…。



 友梨花ちゃんがうっとりした表情で見上げてくれる。

 彼女を抱きたい…。でも、それだけは許されない。

 いつか…、彼女が好きな男を見つけて俺の前から去るときのために…。彼女の身体は奇麗なままにしておいてあげないと…。


☆☆☆☆☆

 それから、俺たちはこっそりと付き合うようになった。

 決して誰にも悟られてはならない、秘密の恋。


 それは例えようもなく甘いけど…とても苦しい。



☆☆☆☆☆

 翌朝、友梨花ちゃんが出かけるのと入れ違いにロコが帰ってきた。

宏子「ただいま…。あ、朝ご飯作ってくれたんだ。ありがとう…どうしたの?」

戸惑うロコを抱きしめて熱いキスをする。

譲二「…ロコ…」

宏子「…ねえ…どうしたの?」

 自分が止められない。

 昨夜、友梨花ちゃんに手を出さないよう抑えていた欲情が溢れて、ロコを翻弄してしまう。

キスしながらロコの太ももをさすり、スカートの中に手を入れた。

ロコは俺の執拗な愛撫に戸惑いながらも、応えてくれた。

結局、リビングのソファの上でロコを抱いてしまった。それもブラをずらし、ショーツは片方脱がせただけの姿で…。


☆☆☆☆☆

譲二「ごめん…。夜勤明けで疲れているのに…」

宏子「ううん…。私も昨日ジョージに会えなくて寂しかったから…。抱いてもらえて嬉しい」

 ロコがシャツからはだけた俺の胸に顔を埋めて囁いた。

 胸が痛い。

 本当は友梨花の身代わりで、俺は時々友梨花を抱いているつもりになっていたのに。

 後ろめたさを誤魔化すために、ロコに深くキスをした。

譲二「ごめん…お腹も空いてるよね。俺はもう出かけないと…」

宏子「ジョージ、寂しくさせてごめんね」

譲二「ううん。名残惜しいけど、続きはまた今晩ね。それまで、ゆっくりおやすみ」

ロコの額にキスするとロコは頬を染めた。



ロコ、ごめんね。心の中で謝る。

ずっと大切にするから…。俺の人生はロコに捧げるから…。

友梨花ちゃんを思うことだけ、許して…。




その6へつづく


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俺:茶倉譲二
妻:茶倉宏子…俺より16歳上
その娘:森田友梨花
…俺より10歳下

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ひとつ屋根の下・妻の娘~その6


 夜、仕事から帰って来るとロコが台所に立っていた。しかも、友梨花ちゃんと楽しそうに夕食を作っている。

譲二「ただいま…」

宏子「お帰りなさい。夕食、もう少し待ってね」

譲二「今日は作ってもらえるんだ…。楽しみだな」

友梨花「お帰りなさい」

 一瞬、友梨花ちゃんと目を合わせてすぐにそらせた。

 まだ、ロコの前で堂々と友梨花ちゃんと目をあわせられそうにない。


☆☆☆☆☆

 夕食は3人でなごやかにとった。

 3人ともそれぞれの思惑からその場を盛り上げようと努力していたからだろう。

 風呂はロコに先に入れと言われ、一番に入った。

 寝室で待っていると、ガウン姿のロコが部屋に入って来た。

 2人で抱きしめ合う。ロコはガウンの下には何も付けていなかった。


☆☆☆☆☆

 息を整えながら、2人でベッドに横たわっていた。

譲二「せっかくお風呂に入ったのにまた汗かいちゃったね」

宏子「朝もそうだったけど…今日のジョージ、とっても情熱的だよね…」

譲二「そうかな…」

宏子「この頃、抱いてもらうことが少なくなってたから…とてもうれしい」

譲二「最近、仕事が忙しかったからね…。ロコに寂しい思いをさせてたならごめん」

宏子「ううん。そういうわけじゃないの…。
私たちも初めて付き合い出してから10年になるし…少しマンネリ化してるのかなって思ってた。
でも、今日みたいに抱いてもらうと…なんだか新鮮な感じがした」

 俺はロコが愛しくなって、抱き寄せてキスした。

譲二「ロコもとっても可愛かったよ…」

宏子「おばさんなのに…?」

譲二「そんなこと言わない。俺の大切な女(ひと)なんだから…」

宏子「ジョージにそんな風に言ってもらえてうれしい」

 ロコが俺に抱きついて来る。

 彼女を抱きしめながら、隣の部屋で独り寝しているであろう友梨花のことを考えてしまう。

 友梨花には隣の部屋で俺たちが何をしているのか気づかれているんだろうな…。

 もしかして…、一人で涙を流しているんだろうか?

 考えちゃダメだ…。

 ロコと一緒の時はロコのことに集中しないと…。

宏子「ジョージ、何考えてるの?」

譲二「え? いや、もうすぐ俺たちの結婚記念日だなって」

 口からでまかせに頭にひらめいたことを言う。

 そうだった。あと少しで結婚記念日だ。

宏子「うふふ。ちゃんと覚えていたんだ」

譲二「当たり前だろ…。俺たちの大切な日なんだから」


☆☆☆☆☆

 喉の乾きを覚えて目を覚ました。

 時計の針は5時をさしている。

 俺の腕の中には友梨花ちゃんが眠っている。

 もちろん…2人ともちゃんとパジャマを着ている。

 最近、ロコのいない夜には2人で抱き合って眠るようになってしまった。

 いつもは真夜中には俺が目を覚まして、自分のベッドに戻るようにしているが、今日はよほど疲れていたのだろう、こんな時間まで寝過ごしてしまった。

 可愛い寝顔の友梨花ちゃんをもう一度抱きしめ、唇にそっとキスをした。

 楽しい夢を見ているのか微かに微笑んでいる。

 俺はため息をつくと、身を引きはがすように彼女から離れた。

 急いで部屋に戻らないと…、早ければ7時過ぎにはロコが戻って来る。

 友梨花ちゃんに添い寝するのは、とても嬉しくそして苦しい。

 いつか俺の理性の抑制が効かなくなる時が来るんじゃないかと不安になる。

 でも…、結局やめられないんだよな…。




 そして…。翌朝、夜勤明けで帰ってきたロコを情熱的に抱いてしまう…。



 そんな日々がもう半年も続いている。



『ひとつ屋根の下・妻の娘』おわり


ひとつ屋根の下・母の夫

2014-09-08 09:30:20 | ひとつ屋根の下

『ひとつ屋根の下ストーリー』 ~アブナイ兄弟編・春樹~で思いついた譲二さんの危ないストーリー。

>>お母さんが10何歳下の男性と再婚して、その義父が譲二さんとか。

これをまたまた懲りずに妄想しちゃいました。(*⌒∇⌒*)

結構切ないストーリーになりましたけど、upいたします。

☆☆☆☆☆

私:森田友梨花…大学二年生
母:茶倉宏子
母の夫:茶倉譲二


☆☆☆☆☆
ひとつ屋根の下~その1

譲二「ロコ、朝食の支度ができたよ。そろそろ降りておいで」

 私がトーストの耳をかじっていると、譲二さんが二階に呼びかけた。

「はーい、もう少しで降りまーす」というお母さんの声。

譲二「ロコにも困ったもんだね。朝が弱くて…」

 そういいながら、譲二さんは私のマグカップにコーヒーを注いでくれた。

譲二「ミルクと砂糖もいれとこうか?」

友梨花「ううん。自分で入れるからいいよ」

 私は慌てて言う。

 うれしいけど、譲二さんにそこまでしてもらうのは申し訳ない。朝食の支度だって、今日こそは私が作ろうと思ったのに譲二さんに先をこされてしまった。

 階段を駆け下りる音がして、お母さんが現れた。

宏子「ジョージ、ごめんなさい。何もかも全部してもらって…」

譲二「大したことはしてないよ…」

 2人は軽く抱きしめ合って、譲二さんはお母さんの頬に軽いキスを落とした。

 こういう時、私としては身の置き所がない。

 2人が結婚して2年。そろそろ新婚ではないのだし、娘の前くらいもう少し抑えた愛情表現にして欲しいものだ。

譲二「それより、急がないといけないんじゃないか? 今日はいつもより早く出勤しないといけないって言ってたろ?」

宏子「そうだった! もう行かないと…。あ、トーストはいらないわ。コーヒーとスープだけ飲んででかけるから」

譲二「サラダとヨーグルトは?」

宏子「帰ってから食べるから…ラップをかけて冷蔵庫にしまっといて」

 慌ただしくコーヒーとスープを飲み干すとお母さんは「いってきます」と言って出かけて行った。

 あとには譲二さんと私が残された。

譲二「友梨花ちゃんは今日は急がなくていいの?」

友梨花「うん。今日の講義は一限目が休みだから…」

譲二「俺も今日は時間に余裕があるから…、そうだ、久しぶりに車で送ってあげようか?」

友梨花「いいの?」

譲二「ああ、今日は天気もいいし、ドライブしたい気分だから友梨花ちゃんの大学まで送ってくよ」

 譲二さんはニッコリ笑った。

 いつもは大人の男性だなと思うけど、こんな風に笑うとまるで少年みたいに見える。そして、その笑顔はなんだか懐かしい気がして私の胸はキュンとなる。

 譲二さんはお母さんの旦那さんなのに…。こんな気持ちを持っちゃいけないのに…。


☆☆☆☆☆

 譲二さんの車に乗ってしばらく走った時だった。私にメールが入った。

友梨花「今日の二限目の講義も休みだって…。せっかく送ってもらっているのにごめんなさい」

譲二「それじゃあ、午後まで時間が空いたの?」

友梨花「うん。次は一時からかな」

譲二「そっか…。それならこのままデートしようか?」

友梨花「え? デート?」

譲二「いやいや、デートというかドライブしよう。お昼もどこかで一緒に食べて一時までに大学に送るよ」

友梨花「譲二さんはいいの? お仕事があるんじゃ…」

譲二「今日は事務処理ばかりでね。午後からの出勤でも別に構わないんだ…。その分帰りは遅くなると思うけど…」

 譲二さんの実家は茶堂院グループという大企業だ。

 仕事もそのうちの一つの会社の経営をやっている。重役だから、特に出勤時間というのはなく、人と会う仕事がなければ、家で一日仕事をしていることもある。

友梨花「いいの? 後で大変になったりしない?」

譲二「うん。そこら辺はちゃんと調整するから大丈夫だよ」

 うれしい。

 大好きな譲二さんと午前中一杯2人だけで過ごせるなんて…。

 私の気持ちを読み取ったのか、譲二さんが言った。

譲二「よかった」

友梨花「え?」

譲二「この頃、友梨花ちゃんちょっと元気がなかったでしょ?  何かあったのかなって心配してたんだ…」

 ちゃんと私のこと見ていてくれたんだ…。

 車で送ると言ってくれたのも、私を元気づけようとしてのことだったんだ。

 うれしい…。

 もちろん、それは大事な妻の一人娘のことだからなんだろうけど…。

 それでも、大好きな人に思っていてもらえるのは単純にうれしい。


☆☆☆☆☆

 今から10年前、私が10歳の時にお父さんが事故で亡くなった。それからお母さんは私を女手一つで育ててくれた。

 それから8年、私の18歳の誕生日にお母さんに再婚を勧めてみた。

友梨花「今まで私のために頑張ってくれたんだもん。好きな人ができたら結婚してもいいよ」
と。

 それから間もなく、お母さんは譲二さんを私に会わせた。

 知らない間に恋人を作っていたというのにも驚いたけど、譲二さんはお母さんより16歳も年下で、私とは10歳しか違わないというのが一番の驚きだった。


 譲二さんの第一印象は、とても素敵で優しそうな人。

 そして、お父さんというよりお兄さんみたい。

 譲二さんも「親戚のお兄さんくらいに思ってくれたらいいから」と言ってくれた。


 2人が結婚して、一緒に暮らし始めると、私自身が譲二さんのことを好きになるのにそう時間はかからなかった。

 譲二さんは「優しそうな人」ではなく、本当に優しい人だった。

 お母さんをとても大切にしてくれる。

 そして、私のことも…。もちろん、私は愛する人の娘だから大切にしてもらっているのだろうけど…。

 時々、譲二さんは私のことを好きだから大切にしてくれているのだと、錯覚してしまうことがある。

 譲二さんと顔を見合わせて笑ったり、おしゃべりしたり、一緒の家で過ごすのはとても楽しく…そして、胸がドキドキして苦しい。

 今までも恋をしたことはあったけど、こんなに人を好きになったのは初めてだ。

その2へつづく




☆☆☆☆☆
ひとつ屋根の下~その2

 譲二さんと結婚して、お母さんは茶倉宏子になったけど、私は森田友梨花のままだ。

 一度、譲二さんと養子縁組をするか聞かれたが、私は断った。

 譲二さんと同じ姓にはなりたいけど、親子にはなりたくはない。

 養子縁組なんかしたら、もう絶対譲二さんとは結婚できなくなる…。

 もちろん、今だって譲二さんはお母さんの夫で私と結婚できるわけじゃない。でも、もしかしたらという小さな望みを絶ってしまいたくはなかった。

 2人は単に私がお父さんの姓を捨てたくないのだろうと思ってくれたみたいだけど…。


☆☆☆☆☆

 2人が結婚して間もない頃、三者面談にお母さんが仕事で来れないことがあった。

 譲二さんが代わりに出席してくれたけど、若くてかっこいいお父さんが来てるということで、学校中がちょっとした騒ぎになった。

 私は恥ずかしかったけど、ちょっと得意でもあった。譲二さんみたいに素敵なお父さんを持っている子なんて誰もいなかったから。

 でも、本当のことを言うと、先生の前で2人で並んで座りながら、『若くてかっこいいお父さん』ではなくて、『年上の大人の恋人』だったらいいのにと思った。



☆☆☆☆☆

 あれから2年が経ち、私は大学二年生になった。

 私の譲二さんへの思いは日を増すごとに募っていた。

 おやすみなさいを言って、譲二さんとお母さんが自分たちの部屋に引き取った後、私は独り寝の枕を何度濡らしたことだろう。

 毎日顔を合わせ、毎日一緒に暮らしながら、譲二さんには決して手が届かない。

 ううん。手を伸ばして触れてはいけない人なのだ。


☆☆☆☆☆

 譲二さんはお母さんのことを『ロコ』と呼んでいる。

 「ヒロコ」から「ヒ」をとって「ロコ」というわけ。

 呼び名も可愛いけど、その『ロコ』という言葉を譲二さんはとても優しく愛おしそうに発音した。

 私の名前もあんな風に呼んでもらえたらいいのに…。



☆☆☆☆☆

 私たちは海の見える高台の公園のベンチに座っている。

友梨花「とっても気持ちがいいですね」

譲二「そうだね。ここは遠くまで見通せるスポットなんだ。前から友梨花ちゃんを連れて来てあげたいと思っていたんだ」

 私は気になることを尋ねてみる。

友梨花「もちろん、お母さんとは何度も来てるんでしょう?」

譲二「うーん。そう言えば、ロコとは来たことがなかったかな…。連れて来てあげたいと思いながらお互いに忙しくてね」

 お母さんとは来たことがないと聞いて、とても喜んでいる私がいる。

 譲二さんを独り占めしたような気がしてとても嬉しい。

譲二「友梨花ちゃん。さっきも言ったけど…、この頃少し元気がないよね?  何か悩み事でもあるの? 」

 私の悩み…。

 本当のことを言ったら譲二さんはどう思うだろう。

譲二「実の親じゃない俺には言いにくいかも知れないけど…、俺たち、家族ではあるよね? それに、口に出したらちょっとは楽になると思うよ」

友梨花「私…。好きな人がいるの」

 言ってしまった。

譲二「そっか…。友梨花ちゃんももう二十歳だものね。恋に悩むような年頃になっちゃったのか」

 譲二さんは優しく微笑んだ。

 ダメ…。そんな優しい目で見られたら、涙が溢れてしまう。

譲二「ちょっ…。友梨花ちゃん、どうしたの? 泣かないで…」

 譲二さんがトントンと肩を叩いてくれた。

譲二「可愛いい友梨花ちゃんにこんなに思ってもらえるなんて、幸せな男だね」

 そういいながら、譲二さんはハンカチで私の涙を拭いてくれた。

 私が告白したら、譲二さんはどうするだろう。

 私を避けるようになってしまうかな?

 それとも私を女としてみてくれるようになる?

譲二「友梨花ちゃん、どうしたの?そんなに俺のことみつめて、顔に何かついてる?」

友梨花「…きです」

譲二「え?」

友梨花「好きです…。譲二さんのことが好き…」

 譲二さんはにっこり微笑んで言う。

譲二「俺も友梨花ちゃんのことは大好きだよ」

え? うそ!

譲二「友梨花ちゃんは大切な一人娘だものね」

 譲二さんの手が優しく私の髪の毛を撫でる。

 そうじゃない。私の「好き」という意味はそんなんじゃない。

その3へつづく


☆☆☆☆☆
ひとつ屋根の下~その3

 私は涙を飲み込むと呟いた。

友梨花「私は譲二さんのこと、男の人として好きなんです」

譲二「…ありがとう。
でもね、友梨花ちゃんは子供の頃にお父さんを亡くして、身近な大人の男は俺だけだから、そんな風に思ってるだけだと思うよ。
あこがれみたいな…」

友梨花「そんなことない。譲二さんのことは初めて会った時に一目で好きになった。そして、二年間一緒に暮らしてもっともっと大好きになった」

 譲二さんはため息をつくと、私の顔を覗き込んだ。

 とても優しい目。

譲二「うすうすそうじゃないかなとは思ってた」

 また、うっすらと涙が滲んでくる。

友梨花「譲二さんはお母さんの夫だし、好きになっちゃいけないのはわかっているけど。でも、どうしてもこの気持ちは抑えられない…」

え? 譲二さん?

私、今、譲二さんに抱きしめられてる…。

譲二「ありがとう。そんな風に思ってもらえて、嬉しい」

それって、どういうこと?

譲二「…ダメだな、俺。ロコの夫としても、友梨花ちゃんの父親代わりとしても失格だな…」

友梨花「譲二さん?」

譲二「…俺も…。友梨花ちゃんと引き合わされて、大きくなった友梨花ちゃんを見た途端、恋に落ちた…」

友梨花「でも、譲二さんはお母さんの恋人だったんじゃ」

譲二「ああ、ロコのことは好きだよ…。
でも、その時ロコとは本当の恋愛じゃなかったんだなって気づいた。
でなきゃ他の人のことをこんなに好きになったりするはずない」

友梨花「本当に好きな人じゃないのにお母さんと結婚したの?」

譲二「今も言ったけど、ロコのことは好きだよ。ロコと付き合い出したのは君のお父さんが事故で亡くなってロコが苦しんでいた頃なんだ」

友梨花「そんな昔から?」

譲二「ああ、ロコは支えてくれる男性がいないと精神のバランスが取れない女性なんだ。
俺はそれまで、明るくて自信たっぷりな彼女しか知らなかったから、自暴自棄な彼女をみて戸惑った。そして何とか彼女を助けたいと思った。
彼女と男女の仲になって…、彼女のことは一生かけて支えて行こうと決心した。
だから、その人の娘のことを好きになっても自分の気持ちは後回しにしなくちゃいけないって思ったんだ」

友梨花「譲二さん…」

譲二「だけど、苦しかった…。友梨花ちゃんと一緒に暮らすようになって、ますます君のことが好きになった…。これじゃいけないって思えば思うほど…。
 俺、なんでこんなこと話してるんだろうな?この気持ちだけは封印しておこうと思ったのに…」

 譲二さんが私を抱きしめる手に力が入った。

友梨花「譲二さんに好きになってもらえて…嬉しい」

譲二「友梨花、ごめん」

 譲二さんは私の顎を持って上向かせると優しくキスしてくれた。

 何度も何度も。

 嬉しい…まるで夢みたい…。

 私は譲二さんの胸に顔を埋めた。

譲二「友梨花、本当にごめんね。君の気持ちに応えられないのにこんなことをして…」

友梨花「ううん。譲二さんが私を好きだって言ってくれて、キスまでしてもらえて…夢みたい」

譲二「友梨花…なんでそんな可愛いこと言うの?君を離せなくなるじゃないか」

 譲二さんはまた私にキスをする。今度は舌が入ってきて…初めての感覚に私の頭の中は真っ白になった。

友梨花「お母さんより先に譲二さんに会いたかった。そしたら…お母さんなんかに渡さないのに…」

 私の言葉に、譲二さんは何か言いたそうな複雑な表情をした。

 でも、それもほんの少しの間で、にっこりと笑うと言った。

譲二「さあ、そろそろ食事に行こう。でないと午後からの授業に間に合わなくなるよ。何が食べたい?」


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 車に戻る時、前から思っていたことを聞いてみた。

友梨花「ねえ、譲二さん。どうしてお母さんのことを『ロコ』って呼んでるの?」

譲二「それは、宏子だから、その『ヒ』をとって…」

私は苦笑した。

友梨花「それは知ってるよー。そうじゃなくてどうしてそう呼ぶようになったのか?」

譲二「『ロコ』って呼び方はね、君のお父さんが恋人時代にお母さんのことをそう呼んでいたらしい。
俺と付き合い出してすぐにそう呼んで欲しいって言われた。君のお父さんと俺の声は似ているらしくって、目を瞑って聞くとお父さんに言われているように思えるらしい」

友梨花「譲二さんは…それで平気だったの?
自分じゃなく前の夫の身代わりとしてしか付き合えないのに」

譲二「平気なわけないだろ?
でもロコがそれで心穏やかに過ごせるなら、俺はそれでもいいと思った。
天国に行った人と競い合っても、生きてる人間は絶対に勝てっこない」

 寂しそうに笑う譲二さんが愛しくて…、できることなら彼を抱きしめたかった。

 でも…、何も出来ないまま突っ立っている私に譲二さんは言った。

譲二「何してるの? ドアの鍵は開いてるからもう乗れるよ?」


その4へつづく


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ひとつ屋根の下~その4

 譲二さんとお互いの気持ちを告白しあってから一週間が過ぎた。

 あれから、何も変わったりはしていない。

 譲二さんは以前と全く同じように私に接してくれる。

 あんな風に私を抱きしめたり、キスをしてくれたとはとても信じられないくらい…。

 譲二さんと目が合うことがあっても、その瞳の中に何かを見つけることはできなかった。


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 いつものように1階に下りる。

譲二「おはよう、友梨花ちゃん」

友梨花「おはようございます。…あれ、今日はご飯と味噌汁なんだ」

譲二「ロコがね、たまには味噌汁が飲みたいっていうから…」

 相変わらず、譲二さんにとっての最優先はお母さんなんだ…。少し寂しい。


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 3人で朝食を囲んでいる。

宏子「ジョージ、来月から夜勤を入れようと思うの」

 お母さんの突然の言葉に私は驚いて顔を上げた。

譲二「それは…。ロコが構わないのなら俺はいいけど…。でも、身体にキツいから、夜勤は入れないようにするって言ってたんじゃないのか?」

宏子「そうなんだけど、今度の職場にもだいぶ慣れて来たし、新しく入った子が一人辞めてね。やっぱり私もシフトに入れないと回せそうにないの」

譲二「辞めた子がいるとは聞いてたけど、そんなに大変なのか…」

宏子「それでも、私の夜勤は週一くらいで済むと思うから…。本当にごめんね」



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 お母さんが初めての夜勤で2人だけになる夜。

 私が帰宅すると譲二さんは既に帰って来ていた。

譲二「あ、友梨花ちゃんおかえり」

友梨花「いい匂い…。何作っているの?」

譲二「友梨花ちゃんの好きなハンバーグ、特製ソースかけ」

友梨花「うわぁ、すごい。何か手伝うことある?」

譲二「じゃあ、ザルで水切りしてるレタスをちぎって、お皿にもりつけてくれる?」

友梨花「了解。それじゃ、手を洗って来るね」

 譲二さんはテーブルに小さな花を飾ってくれ、以前クリスマスで使ったグラス入りのキャンドルにも火をつけてくれた。

 こんな風に2人で食事していると、まるで恋人同士みたい。

 …お仕事をしてるだろうお母さんにちょっと申し訳ない。

 譲二さんは私の大学や大学での友達のことを尋ねてくれて、私は思いつくまましゃべった。

 譲二さんは仕事上でのちょっと面白い話をしてくれた。



 ふと話がとぎれた…。

 2人でだまって見つめ合う。

 もしかして…また、キスしてもらえる?



 譲二さんはふいに視線をそらすと時計をみた。

譲二「もう、こんな時間か。友梨花ちゃん、お風呂ができてるから先に入って来るといいよ。ここは俺が片付けるから」

 私は譲二さんの手を掴んだ。

友梨花「この前みたいに…2人だけの時は恋人でいて欲しい…」

 譲二さんは私の手を両手で優しく包んでくれた。

譲二「友梨花ちゃん…。この間はあんなことをしてしまってごめん。無責任なことをしてしまったって反省してる」

友梨花「譲二さんを困らせてしまうのはわかってる…。お母さんと別れられないのも分かってる…。でも、2人だけの時は私の恋人になって欲しい」

 自分でもとんでもないことを言っているのはわかってる。

 でも、2年間思い続けた気持ちを譲二さんには受けとめて欲しい。

譲二「友梨花…」

 譲二さんは私を抱きしめた。そして、優しく…だんだん深く…キスしてくれた。

 キスが途切れて、大きく息をつく私を見て、譲二さんは微笑んだ。

譲二「もしかして、息を止めてた?」

友梨花「だって、口が塞がれてたもん…」

譲二「そういうときは鼻で息をするんだよ」

友梨花「そうなんだ」

2人で顔を見合わせて笑った。

譲二「そうそう。友梨花ちゃんはそんな風に笑ってるのが一番可愛いよ…」



その5へつづく

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ひとつ屋根の下~その5

友梨花「譲二さんは…お母さんのことをどうして好きになったの?」

譲二「君のお父さんが事故で亡くなった後、ロコは荒れててね。あんなロコを見たのは初めてだった…。
 今まで俺の悩みを優しく聞いてくれたり、温かいアドバイスをくれていた人があんな風になるなんて、少しショックだった。
 大学生だった俺は、今までの恩返しにロコの役に立ちたいと思った。
 あまりに危なっかかしくて一人にしておけないって思った。
 ロコは俺に『やけ酒に付き合ってよ』と言って連れ回した…。
 そして、なんとか慰めようとする俺に『それなら私を抱いてごらんなさい。あの人の代わりに一人の男として抱いてよ』って言われたんだ…」

 譲二さんはそのまま口をつぐんだ。

 まだ20歳そこそこの若者が16歳も年上の女性を支えようと必死になっていたなんて…。

友梨花「それで…。お母さんを抱いたの?」

譲二「ああ、でも俺は童貞だったから…どうすればいいか分からなかった。
君のお母さんは俺の初めての女(ひと)なんだ…。俺が知ってる男女のことはすべてロコに教えてもらったことだ…」

「こんなことも…」

 そう言って譲二さんは私にキスすると舌を入れて来た。

 甘いキスに私の頭はぼおーっとなった。

譲二「前に友梨花ちゃんは『お母さんより先に俺と会いたかった』って言ってたよね?」

友梨花「うん。だって、お母さんより先に譲二さんに会えていたら…。絶対お母さんになんか渡さないもん」

 譲二さんはちょっと悲しそうに笑った。

譲二「友梨花ちゃんとは…ロコよりも先に出会ってるんだよ…」

友梨花「え? うそ」

譲二「友梨花ちゃんは…俺のお姫様だったんだよ」

 譲二さんは私を抱きしめると頭をポンポンと叩いた。

譲二「ねぇ…思い出さない? 大きなタコの形の滑り台の中でさ…。外は雨が降っていて…、遠くで稲光と雷鳴が鳴ってた…」

 譲二さんの胸に顔を埋めながらその光景を思い浮かべる。

友梨花「!」

 思わず譲二さんの顔を見上げた。

譲二「雷の音も光もダメだからって…俺の体で塞いで抱きしめたよね?」

友梨花「じーじ?」

譲二「やっと…思い出してくれた?」

友梨花「うそ…。譲二さんはあのじーじなの?」

 じーじは私が幼稚園の頃、公園で出会って懐いていた中学生のお兄さんだ。

 持っていたサンドイッチを食べさせてくれたり、私のお話を聞いてくれたり…。

 抱っこをせがめば抱っこしてくれて…。

 でも一番の思い出はタコの滑り台の中で雷が怖いと泣いていた私を抱きしめて慰めてくれたこと。

 温かいじーじの胸の中で「私はこの人のことが大好きだ」って思ったのだった。

 そう、じーじは私の初恋の人だった。そのじーじが譲二さんだったなんて…。

友梨花「どうして…、今まで言ってくれなかったの?」

譲二「友梨花ちゃんは俺のこと覚えてないみたいだったし…。お母さんの若い恋人が昔なじみの『じーじ』だ…なんて、俺の口からはとても言い出せなかった…」

友梨花「だから懐かしかったんだ…。譲二さんと暮らし始めて…譲二さんの笑顔や仕草がとても懐かしくて…。
そう思う度、胸がキュンとしてた」

譲二「俺も友梨花ちゃんの笑顔を見る度に、あの頃のことを思い出して…。大きくなっても変わらないなぁって思ってた」

友梨花「それなら、もっと前にじーじだって教えてくれればよかったのに。」

譲二「そうだね…。」

 譲二さんが口ごもる。

 ごめんなさい。なんだか私、八つ当たりだよね。

友梨花「でも、あのじーじがどうしてお母さんと知り合うようになったの?」

譲二「俺がロコと出会うことになったのは、俺の失恋がきっかけなんだけど…」

 譲二さんは言いにくそうに口ごもる。

その6へつづく

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ひとつ屋根の下~その6

友梨花「失恋?」

譲二「あのことは覚えていないの?」

友梨花「それって、やっぱりじーじが中学生だった頃のこと?」

譲二「そう…俺が失恋して公園で落ち込んでいる時、友梨花ちゃんとロコに会ったんだ」

 頭の中に一つの光景が浮かんで来た。

 降り続く雨の中、公園のベンチでびしょ濡れのままじっと座っていた少年。

友梨花「じーじは雨でびしょ濡れになってたね」

譲二「思い出した? あの時心配したロコに家に連れて行かれて、話を聞いてもらった。それで、メアドを交換してメル友になった」

友梨花「じーじが家に来たのは覚えてるけど…。メアドを交換してたのは知らなかった」

譲二「あれから俺は辛いことや悩みがあるたびにロコにメールで相談してた。その頃は、ロコのことは色々相談に乗ってもらえるおばさんくらいにしか思ってなかった。
 でも、友梨花ちゃんのお父さんが亡くなって、心配した俺にロコは心の中を打ち明けてくれるようになった。
 彼女は守ってくれる男性がいないと一人では立っていられない女性なんだ。
 初めて男女の仲になって…、ロコは俺に男として彼女に接することを求めた。
 俺はなんとか支えてあげたいと一生懸命やってきた。あんなに嫌だった茶堂院グループの仕事をやるようになったのも、早く一人前になってロコを支えられる男になりたかったからだ…」

友梨花「そんなこと全然気づかなかった。お父さんが亡くなって、お母さんは一人でがんばってるとずっと思ってた」

譲二「ロコは友梨花ちゃんを大切に思ってるからね。
 お父さんを亡くしたばかりの母親が若い男と恋愛関係にあることを娘には知られたくなかったんだ。
 友梨花ちゃんがそんなことでグレたりしないかと心配してたからね。
 それで、俺は日陰の身のままだった」

 譲二さんは自嘲気味に笑った。

譲二「だから、二年前、ロコからプロポーズされたときは驚いた。ロコと結婚なんてできないだろうと思っていたから…」

友梨花「私が…、お母さんに言ったの。好きな人がいるなら再婚してもいいよって…。でも、まさかその再婚相手を私が好きになるなんて思ってなかった」

譲二「友梨花ちゃんに手を出しておきながら、こんなことを言うのは卑怯なんだけど…。
君のお母さんと別れるわけにはいかない」

友梨花「どうして?」

譲二「ロコは一人では生きて行けない人なんだ…。彼女を守って支えてくれるパートナー無しには…。
俺はずっと前に彼女を守ると決めた。
今さら他に好きな人ができたから別れようとは彼女には言えない。
それに、そんなことを言ったら彼女がどんなになってしまうか…」

友梨花「でも…。でも、私は? 私にだって譲二さんは必要だよ」

譲二「ありがとう。でも、友梨花ちゃんはまだ若い。
俺なんかよりもっと若くて頼りがいのある男にこの先いくらでも出会えるさ…」

 私は思わず譲二さんの胸にしがみついた。

友梨花「譲二さんより若い男の人なんていらない。
 譲二さんより頼りがいのある人なんていない。
 私には譲二さんしかいないのに…」

譲二「…友梨花ちゃん…。ごめん…。ごめんね…」

 譲二さんが優しく抱きしめてくれる。

 私こそ、ごめんね…。

 こんなことを言っても譲二さんを困らせるだけなのに…。

 私たちは…そのままいつまでも抱き合っていた。


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 こうして、私と譲二さんの甘くて切ない恋は始まった。


 私たちはお母さんのいない2人きりの時だけ、恋人のように過ごす。

 そう、あくまでも恋人のように…。


 譲二さんはキス以上のことは決してしなかった…。

 それが彼のけじめらしかった。


 私は…。

 ううん。私もそれ以上のことは望んだりはしない。

 ずっと、彼の側でいて…彼を見つめて…、そして、彼に触れていたいから…。



 譲二さんを独り占めにすること…。

 それはお母さんを苦しめ、悲しませることだから…。


 私たち…私と譲二さんは、もう一人の大切な人を守るために今のままでいることを選んだのだ。

『ひとつ屋根の下 おわり


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 2人をくっつけるためには、お母さんを死亡させるしかないけど(-"-;A、それはしたくなかったので、こういう結末になりました。

 本編の話のヒロインちゃん、よかったねー。お父さん元気でいてくれて…。と、つくづく思いマスタ。