きりのみやこ

ソプラノ歌手「みやこ」の音楽する日々

楽器

2008年10月02日 | 音楽のこと
その昔になってしまったが、ピアノを専攻している頃。
一番の悩みは常に「楽器」だった。

まず、ロンドンで家を探すにしても、常に音とスペースの問題がついて回る。
大家さんが楽器をいれることを許可してくれても、実際に生活しはじめてから近所から苦情が来てしまうと、もうどうしようもない。

そしてグランドピアノとアップライトピアノの差。
構造上の違いのために、ある程度のレベルになったら、グランドピアノで練習できなければ練習の意味はほとんどない。

更に演奏するときは、99%自分の楽器を使えない。
これは実に大きな事だ。
なぜならピアノは一つ一つ、余りに色々違う。
大きさ、鍵盤の重さ、響き具合、音質、ペダルの深さ、効き具合などなどなどなど。挙げたらきりがない。’10人十色’ならぬ’10ピアノ十色’だ。

もちろん、それらをすべて乗り越えて、どんなピアノでもすばらしい演奏が出来るのが「プロ」なのだろうけれども。。。(ここではとりあえずそれは置いておく)

そんなピアノを小さい時から習ってきたせいなのだろう。
他の楽器への憧れは、実は結構強い。
そういえば、日本でもピアノ科の学生は副科で他の楽器をさわりたがる人が異様に多いと聞いた事もある。

最近、フルートをよく吹いている。
楽器がない生活は自分の中では考えられないが、ここフィリピンではピアノを持つことを断念した。(どうせ弾く暇もない生活が待っているし、マンションで苦情が出てしまえば終わりだからだ。)
その代わりに、高校生の時に親に買ってもらったフルートを持ってきた。

ロンドンに住んでいるときに、10ヶ月ほど実は習っていた。
声楽は、声が消耗品で限界があり、長時間の練習はできないため、幸いフルートなら楽器を持っているし、呼吸の訓練にも良いと思ってはじめた。

当然、そんなに吹けるわけでもないし、大していい楽器でもなんでもないが、「自分の楽器」を奏でるというのは楽しい。練習を終えて、ぴかぴかに磨き上げるのもうれしい。

素朴な、学生の時の「夢」が、今叶っていると思うと、ちょっと滑稽で笑ってしまう今日この頃の京である。