鮎の俳句日記

その日の徒然を載せていきます

句鑑賞 お遍路

2012-03-03 13:16:18 | 句鑑賞 Ⅰ(土)




遍路びと太平洋に手を洗ふ

            柴田由乃



この句は「第42回全国俳句大会」の応募句で 特選と入選を得た句である。

技巧の「ぎ」の字も無いような荒削りな表現に心を揺さぶられたかのようだった。

選者からは「太平洋に手を洗ふ」といっても足摺岬かも知れないし
静岡の海岸かも知れない
これだけでは 何所でもよいが"
遍路びとがその場所をきっちりと限定している。

しかも 遍路「びと」が仮名書きにされているのも たとえ 自分のことであっても
情景が客観視され 描写が確かなものになっている。

この句はこのように細かいところに気を配った句で
作者はきっと良い師の指導を受け
また 後進の指導にも細かいところに気を配っているのが分かる
との 講評をいただいた。


この年は3月上旬と下旬の2回 車で区切り打ち遍路に行った
その2回目は 18番阿波の恩山寺から36番土佐の清滝寺であった

この句は途中室戸岬に立ち寄った時の句である
荒々しい海岸に出て太平洋で手を洗ったのである
太平洋に比べてわが身の余りの小ささと無意味を知った

しかしこの句では 己の小ささよりも太平洋で手を洗うことによって
太平洋とつながったかのような遍路びとの大きさがむしろ心にせまってくる。

お遍路は旅の厳しさを大師との同行二人と念じて耐えて歩く
車遍路でも大変なのに 歩き遍路の辛さ 厳しさは想像を絶する

8月の区切り打ちでは初めて歩き遍路の人と宿で話ができた。
若い女性がいたのには おどろいた

人々は自分より大きな何かとの繋がりを求めている
信仰と言うのは必ずしも明確な形をとるとは限らないが
遍路というもの 何か大きなもの 確かなものを求めての旅なのだ

この句はその大きなものとの繋がりを
「太平洋に手を洗ふ」と捉えたとも取れる。

今津大天 俳句の対話術より




春になりました。
お遍路には良い季節になりました。

良い季節でも厳しい 山あり谷ありの道です。
お大師さまとの 遍路みち 
太平洋で禊をされた 
お大師様とのより大きな つながりを感じます。






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