河合隼雄さんが、人間同士の付き合いにおいて、「真実は劇薬、
嘘は常備薬」と言っている。それほどに、真実はよっぽどうまく使わ
ないと、相手を著しく傷つけてしまものであり、嘘は世の中を上手
く渡る上で、なくてはならないもの。
なので、どんどん嘘をつこう!などと声高に叫んでいるんじゃない。
嘘は便利でもやっぱり必ず真実を使わなければならない時があって、
その時はどう真実を使えばいいのかを考えてみたいのだ。
たとえば、電化製品等そこそこ高額な買い物をしたけど、その商品
が不良品やった場合。
ここは店とできるだけもめずに話をつけるために嘘で文句を言うとこ
うなる。
「いやーおたくで買ったこの冷蔵庫ね、デザインもええし、気に入っと
りますねん。店の方の対応もよかったし、さすがおたくの店はちゃいま
すなぁ。せやけどね、こんなことはね、言いたくないでっせ、ホンマ。
私の気のせいやとは思うねんけどね、というか気のせいに決まってま
すねんけどね、そうは言うたもんのね、ちょっとだけ冷えへんような気
もしますねん。イヤ最近の暑さのせいでっしゃろ、そら。そうに決まって
ます。私も気象も異常ですわ。そやけどね、ひょっとして商品が悪い
なんてことも100万分の1くらいの確率で考えられますから、もしよか
ったら一回見てもらえまへんやろか?」
これで店員さんがゴキゲンでクレームを受けてくれたからって、そんな
んこっちが気分悪い。
では、真実で文句を言うと、
「あのね、これ昨日買ったばっかりやのに、全然冷えへんやんか。ど
うなってるワケ?そのせいで冷蔵庫に入れたもんは腐って食えんよう
になるわ、異臭で気分は悪なるわ、おまけにこんなことで又店までこ
なあかん羽目になったがな。俺は土日しか休みないねん。おかげで、
その貴重な休みをこんなことに使うことになってしもたんやで。え?
商品を新品に交換します?そんなことは当たり前じゃい。冷蔵庫の
腐ったもんも弁償すんのが当然とちゃうか!?」
となり、全て当然の正当な理由の主張が受け入れられても、この後
この店に来たときにはこの店員さんと話づらくなる。
でも俺はやっぱり全面的に相手に非があることで、こっちが媚びてうま
くやるような嘘をつくことができないので、後者を選んでしまう。
まぁこれはひとつの例やけど、最近同じ電気屋さんで買った商品に続
けざまに、不良があって、この例のように、"商品の不良を起因とする
無駄な時間の消費"を余儀なくされ、俺はその店で続けざまに文句
を言うことになってしまった。
どっちも商品は同型の新品や上級機種の新品に取り替えてもらった
ものの、こっちは気分が悪くて仕方ないし、きっと店員さんも気分が悪
いやろう。おまけに先に話したように、次に店に顔を出しにくい。たぶん
店では「あの客はクレーム多いから気をつけるように」みたいなお触れ
が出されてるやろうし。
俺としては全く正当な理由でクレームをつけただけやのに、クレーム商
品に当たった方が気分が悪くなるような目に合うのが全く納得できない。
真実という劇薬の副作用やと言われれば、それまでやけど、結果は当
たり前の結果が出てるだけなんやから、なんか副作用が強すぎる気が
する。
もう少しバランスのいい真実の使い方はないもんやろかねぇ。