☆ 世界の自動車を水と騒音から守る
マセラティ、ジャガー、アストンマーティン、ランドローバー、世界の名車がこぞって使うメイドインジャパンの自動車部品がある。
広島市西区にある「西川ゴム工業(株)」は、1934年創業以来スポンジゴムの製法において、その泡にこだわってきた。
スポンジのように軟らかく、ゴムのように腰がある両方の性質を併せ持つスポンジゴムは、自動車のドアの防水防音用パッキンや、建築材の水止め用、液状塗り薬の塗布部分、化粧用パフなど身近なものに使われている。
「西川ゴム工業(株)」の自動車用スポンジゴムは、月産80万本(車20万台分)を生産、シェアトップとなっている。
ゴムをスポンジ状にするために発泡剤を混ぜるが、同社では、その混ぜ具合で発泡の度合いを微妙にコントロールしている。
泡が大きければ軟らかく、小さければ硬くなるという性質を利用し、内側は軟らかく外側は硬い製品をつくる。
それによって丈夫で開け閉めのしやすい自動車用スポンジゴムが生まれる。
さらに防水、防音効果を高めているのがその製法だ。
硬さの違うスポンジゴムを組み合わせ一度に押し出し成形し、成型後は230℃で過熱する。
過熱によってスポンジゴムに弾力性を持たせ、内部の気泡を発泡させる。
出来上がったスポンジゴムの断面を見ると、空間を作ることでドアを閉めたときの密着度があがり防水効果が増しす。
また、内部の空気の層を二つに分けることによって防音効果が高まる形になっている。
その形を作るのが、押し出し成形機の口金の形状で、車種によってすべて形状が異なる。
ドアやボディの形に合わせ一つ一つ口金はつくられる。修理に必要なこともあるので、古いものもすべて保存されている。
こうしてつくられた自動車用スポンジゴムは、世界中のクルマを水や騒音から守っている。
同社の発泡を制御する技術は世界一、ニッチを追求すれば、それなりに大きな市場はあるという。
ニッチを極めて、世界一の座を獲得するところに日本の物作りの神髄をみるようだ。