ボーという音と共に船が旋回して走り出した。私は三月の休みを使い、船に一人で乗って旅をしていた。鞄一つ持って気楽な旅だった。周りを見渡すと乗客はまばらで所々にいた。私は、海を見るために客室から出た。
波の音が心地よくて静かな海が広がっている。私の住んでいる町がだんだん遠く離れて行って、小さくて模型みたいに見えた。古里というものは、一度出るとありがたい気持が湧いてくる。
船の近くをカモメの群れが餌を取りに来ていた。私が餌を持っていないと分かると、海の表面で波に揺れて浮かんでいた。さっきまで飛んでいた生き物とは思えず、売店で売ってある置き物のようだった。
カモメの姿をこんなに間近で見た事は生まれて初めてかもしれない。
カモメを見ていると、一人で哀しそうに海を見ている女性が端っこの所に立っていた。大きな白い帽子に白いカーデガンを羽織っていた。
私がその姿を見ていると、帽子が突風に飛ばされて、海の向こう側に飛んで行ってしまった。私が走って帽子を掴もうとしたが遅かった。
「大丈夫ですか?帽子が飛んでいきましたね。」私が聞くと、彼女は少し笑った。
「別にいいんです。帽子なんてあってもなくても同じですから。」彼女が髪をかきわけながら涙ぐんで言っていた。長いまつ毛が下を向くと私も落ち込んでしまった。
「何かあったんですか?」私は気になって聞いた。
「実は、父が危篤で今家に帰っている所なんです。」彼女が振り返ると私の顔をまじまじと見て答えた。私は、吸い込まれそうな目に照れてしまった。
「そうですか。」私は何かしてあげたい気持ちになった。だけど、私に出来る事など何もないと思うと自分の不甲斐なさに嫌になってしまった。
「話を聞いてくれてありがとう。」彼女がまた海の方向を向くと涙を流していた。今度は涙が北風に一滴飛ばされていった。宝石のように輝いて海の雫と共に消えていった。
私は、ポケットからハンカチを取り出して彼女に渡した。彼女は、ありがとうと言うと、押し込んでいたモノが出たみたいに大声で泣き出した。
「大丈夫ですか。私が何でも聞きますよ。だから泣かないで下さい。」
「ごめんなさい。思い出してしまって。父が本当に心配で、家を出てから5年間仕事が忙しくて帰ってなかったものですから。」
「そうですか。色々あったんですね。」私が頷くと、彼女はハンカチで涙を拭いていた。泣いている彼女を近くの椅子に座らせて私も隣に座った。カモメが相変わらず無表情で目の前を飛んでいた。
「所であなたのお名前はなんて言うんですか?」落ち着くと彼女が聞いてきた。
「私は、キヨシです。全然清らかではないんですけどね。」私が答えると彼女が笑った。彼女の笑った顔を見て、私の心が清らかになっていくような気がした。
「あなたのお名前も聞いてなかったですね。」私が聞いた。彼女は白い服がとてもよく似合っていた。
「そうでしたね。私は、ミキっていいます。美しい樹と書きます。全然美しくないんですけどね。」同じように私も笑ってしまった。
「いやいや。十分美しいと思いますよ。」
「またまた。冗談がうまいんだから。」
「本当ですよ。」いつの間にか二人で大声を出して笑っていた。彼女が笑顔になってくれて本当に良かった。
それから、室内で珈琲を飲んで、永遠の出会いについて語っていた。彼女といると時間があっという間に過ぎていった。
アナウンスの声が間もなく到着しますと流れていた。私達はアナウンスの声に耳を澄ますと、やるせない思いが募り、黙ったまま目で合図をしていた。
船が止まると、私は更にせつない気持ちで押しつぶされそうになっていた。彼女も同じ気持ちだろうか。彼女が荷物をまとめて、かかえると聞いてきた。
「また会えますよね。」
「生きてればきっと会えますよ。神様が決めた出会いなら。」戸惑いながら私は答えた。
「そうですね。せっかく出会えたのにもうお別れなんて寂しいですね。」
「私も寂しいです。お父さん元気になるといいですね。」
「ありがとう。父に伝えます。いつかまた逢える事を願って。」私達は船を降りると手を一度振り、それぞれの方向で振り向かず歩いていた。振り向いたら彼女の事を好きになってしまうと思ったからだ。
この出会いは永遠のものになるだろうか。いつか思い出す日が来るのだろうか。
何も言わずカモメの群れが気持ち良さそうに快晴の空を飛んでいた。カモメのとぼけた顔が悲しい表情に見えた。
波の音が心地よくて静かな海が広がっている。私の住んでいる町がだんだん遠く離れて行って、小さくて模型みたいに見えた。古里というものは、一度出るとありがたい気持が湧いてくる。
船の近くをカモメの群れが餌を取りに来ていた。私が餌を持っていないと分かると、海の表面で波に揺れて浮かんでいた。さっきまで飛んでいた生き物とは思えず、売店で売ってある置き物のようだった。
カモメの姿をこんなに間近で見た事は生まれて初めてかもしれない。
カモメを見ていると、一人で哀しそうに海を見ている女性が端っこの所に立っていた。大きな白い帽子に白いカーデガンを羽織っていた。
私がその姿を見ていると、帽子が突風に飛ばされて、海の向こう側に飛んで行ってしまった。私が走って帽子を掴もうとしたが遅かった。
「大丈夫ですか?帽子が飛んでいきましたね。」私が聞くと、彼女は少し笑った。
「別にいいんです。帽子なんてあってもなくても同じですから。」彼女が髪をかきわけながら涙ぐんで言っていた。長いまつ毛が下を向くと私も落ち込んでしまった。
「何かあったんですか?」私は気になって聞いた。
「実は、父が危篤で今家に帰っている所なんです。」彼女が振り返ると私の顔をまじまじと見て答えた。私は、吸い込まれそうな目に照れてしまった。
「そうですか。」私は何かしてあげたい気持ちになった。だけど、私に出来る事など何もないと思うと自分の不甲斐なさに嫌になってしまった。
「話を聞いてくれてありがとう。」彼女がまた海の方向を向くと涙を流していた。今度は涙が北風に一滴飛ばされていった。宝石のように輝いて海の雫と共に消えていった。
私は、ポケットからハンカチを取り出して彼女に渡した。彼女は、ありがとうと言うと、押し込んでいたモノが出たみたいに大声で泣き出した。
「大丈夫ですか。私が何でも聞きますよ。だから泣かないで下さい。」
「ごめんなさい。思い出してしまって。父が本当に心配で、家を出てから5年間仕事が忙しくて帰ってなかったものですから。」
「そうですか。色々あったんですね。」私が頷くと、彼女はハンカチで涙を拭いていた。泣いている彼女を近くの椅子に座らせて私も隣に座った。カモメが相変わらず無表情で目の前を飛んでいた。
「所であなたのお名前はなんて言うんですか?」落ち着くと彼女が聞いてきた。
「私は、キヨシです。全然清らかではないんですけどね。」私が答えると彼女が笑った。彼女の笑った顔を見て、私の心が清らかになっていくような気がした。
「あなたのお名前も聞いてなかったですね。」私が聞いた。彼女は白い服がとてもよく似合っていた。
「そうでしたね。私は、ミキっていいます。美しい樹と書きます。全然美しくないんですけどね。」同じように私も笑ってしまった。
「いやいや。十分美しいと思いますよ。」
「またまた。冗談がうまいんだから。」
「本当ですよ。」いつの間にか二人で大声を出して笑っていた。彼女が笑顔になってくれて本当に良かった。
それから、室内で珈琲を飲んで、永遠の出会いについて語っていた。彼女といると時間があっという間に過ぎていった。
アナウンスの声が間もなく到着しますと流れていた。私達はアナウンスの声に耳を澄ますと、やるせない思いが募り、黙ったまま目で合図をしていた。
船が止まると、私は更にせつない気持ちで押しつぶされそうになっていた。彼女も同じ気持ちだろうか。彼女が荷物をまとめて、かかえると聞いてきた。
「また会えますよね。」
「生きてればきっと会えますよ。神様が決めた出会いなら。」戸惑いながら私は答えた。
「そうですね。せっかく出会えたのにもうお別れなんて寂しいですね。」
「私も寂しいです。お父さん元気になるといいですね。」
「ありがとう。父に伝えます。いつかまた逢える事を願って。」私達は船を降りると手を一度振り、それぞれの方向で振り向かず歩いていた。振り向いたら彼女の事を好きになってしまうと思ったからだ。
この出会いは永遠のものになるだろうか。いつか思い出す日が来るのだろうか。
何も言わずカモメの群れが気持ち良さそうに快晴の空を飛んでいた。カモメのとぼけた顔が悲しい表情に見えた。
キヨシさんとミキさんがまた必ず会えますように・・・私も願います☆
自分の事の様に読んでくれたらうれしいです。また、来てください。
私に子供が生まれる様な事があったら付けようかな(笑)
相手がいないけど(泣)
私にも未来が見えたらいいんですけどね。 今度また、いい物語が浮かんだら使わせてもらいます。ヨロピクピク(*^_^*)