恋愛ブログ

世にも不思議な物語。
出会いの数だけドラマがある。
一日一話愛の短編物語。
〜ショートストーリー〜

11.白い杖

2008年02月06日 | ベストストーリー
 部屋の窓から外を見ると、天気がよくて、猫が欠伸をして暖かそうだった。
 おばぁさんは朝の買い物に行く準備をしていた。
 その姿を見ていたら無性に外に出かけたくなった。
 「私も一緒にいく。」と言うとおばぁさんは子供の様にはしゃいだ。
 化粧をしてふさふさの帽子をかぶり、玄関で「はい、これ。」とか細い声で白い杖を渡された。
 これがないと歩くのも億劫になった。
 脳梗塞で倒れ、体の左側だけどうしても動かない。目もだんだん見えなくなってしまった。
 右手は杖をつき、左手はおばぁさんが握ってくれた。
 私は幸せものだ。
 こんなに親身になって世話してくれる女の人が他にいただろうか。
 おばぁさんは、寝る時に泣きながら動かない半分をさすってくれる。
 近所の桜の木はまだ咲いてはいない。
 お互い大分歳を取った。一人息子も家を出ていった。
 「おばぁさんこれからも二人仲良くしていこうな。ありがとう。」
 「はいはい。分かってますよ。」どうしても動かない手を動かそうとしているとおばぁさんがぎゅうっと握り返した。
 その温もりでほんの少しだけ動いた気がした。
 
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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
泣けます (ぽゆ子)
2008-02-08 10:25:50
キーボーさん天才だね!
またなけて泣けて仕方ないです。
たくさんの人に読んでもらいたいです。
本当に・・・!
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ありがとうございます。 (キーボー。)
2008-02-08 11:31:39
 泣かせるつもりはなかったんですけど。

 実はいうと目の前に住んでいるおばぁさんの話しで、針灸マッサージをしている目が見えない旦那さんと散歩しているのを見てホノボノとした気持ちを書いてみました。
 小さくて可愛らしいおばぁさんです。
 旦那さんと会話している時、もう子供みたいにウキウキしていました。
 あれほど好きな人と結婚できていいなと思ったりもしました。

 読んでくれた人にも伝わるといいと思います。
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