キヨシは、最近悩んでいた。花屋の店員に恋をしているからだ。彼女はエプロン姿で長い黒髪を後ろで一つに結んでいた。街を通る人に愛想よく挨拶する姿に好意を抱いてしまった。
母が入院していたのでお見舞いの花を買いに行く時に必ずその店員さんに包んでもらっていた。
名前はカオリだった。エプロンについているネームプレートを見て確かめた。花屋にぴったりの名前で印象深かった。
今日もカオリから花を包んでもらっていた。ピンクや白や紫の色とりどりの花をいっぱいつけてもらった。
「今日もお見舞いですか?」いつものように新聞紙でクルクルと花を巻いてラッピングしながらカオリが聞いた。
「そうです。なかなか退院が長引いてね。」キヨシの母が腰が痛いと訴えて一ヶ月くらい入院をしていた。花を買いに来たのは、今日で十回目だった。
「お母さん想いなのですね。」
「そんな事ないですよ。花は母が大好きなので買っているだけですよ。」カオリと目が合ってしまった。吸い込まれそうな大きな瞳でみていて顔が熱くなった。カオリが素早い動きでラッピングをして花束を渡された。カオリから渡されると卒業式の花束贈呈のように華やかに見えた。
「お母さん早くよくなるといいですね。」ニコッと微笑んでくれた。口元のエクボが可愛らしかった。
花とお金を交換するとありがとうございますとカオリが言った。キヨシは恥ずかしくてありがとうございましたと間違えて返事したらカオリがクスクスと笑っていた。照れながら花屋を後にして母が入院している病院へ向かった。
病室に入ると母親は安静に横になっていた。今買って来た花を母親に渡した。
「また花を持ってきてくれたのかい。お前いつから花が好きになったんだい。」キヨシが花の名前すら分からないのに買って来るので母はビックリしていた。好きな人がいるからとは口が裂けても言えなかった。
「それよりも腰は大丈夫?」話しをごまかした。
「大丈夫。大丈夫。それよりも花ありがとう。」母は何よりも花が好きな人で食べ物よりも花なのだ。
ふと花瓶に目をやるとこの前買って来た花が枯れていた。花の命はなんと短い事なのだろう。花の一番綺麗な時と人間の一番綺麗な時はいつだろうかと考えた。
母はよいしょと大きな体を起こすと花瓶に水を入れに行った。
「俺がやるから寝てなよ」というと「いいから。これでも飲んでろ」と母が言ってオロナミンCを小さな冷蔵庫から出した。
仕方なくベッドに座って飲んでいた。窓の外の景色を見るとどんよりとした曇り空で茶色い葉っぱが飛んでいた。
「もう秋だな」と呟きながら花屋のカオリの笑顔を思い出していた。
「キヨシ。何をそんなにニヤニヤしてるんだい。良いことでもあったのかい。」花を花瓶に入れて戻って来た母がキヨシの顔を覗き込んで言った。キヨシは焦って何でもないよと苦笑いを浮かべた。今度はいつ花を買いに行こう。カオリにまた逢えるかと思うと胸の奥の方がワクワクとしていた。
一週間後、またカオリに逢いに花を買いに行った。花屋の前につくと知らない男がカオリと親し気に話しをしていた。
誰だろうと思うと同時に嫌な予感がした。
カオリがキヨシの顔を見るとぎこちない笑顔になり、「いらっしゃいませ」と言った。
お客だと感づくと男はそれじゃと言って帰ろうとしていた。愛想が悪い男だなと思っているとカオリがその男に小声で「結婚式の事ちゃんと話したいから明日また来てよ」と言っていた。男は分かったというと静かに帰って行った。
驚いたキヨシは「結婚するんですか?」と聞いた。眉毛がピクピクと動いているのが自分でも分かった。
「えぇ。だから花屋辞めますけどまた来てくださいね。」カオリが素っ気無く答えた。カオリがいない店なんて来たくなかった。胸の奥の方で何かが壊れる音がした。体全体にやる気という気力が抜けていった。
「そうですか。おめでとうございます。幸せになってください。」目がシュパシュパとした。涙が出そうになっていたが何とかこらえた。
「今日もお見舞いですか?」カオリがいつものセリフを口に出すとキヨシはそういう気になれず「彼女に贈り物をしようかなと思って」と嘘をついて誤魔化した。
母に持って行こうと思ったがきっと母の前で泣いてしまうだろうと思い今日は行くのを止めた。
「彼女の贈り物ですか。それだとこの花が良いですね。」何事もなくカオリが真っ赤なバラを後ろから取り出した。
「綺麗ですね。彼女喜びますかね。」目の前のカオリにあげたかった花だった。あの無愛想な男が気になって仕方なかった。落ち込んでカオリの目を見れなかった。振られるという事は本当に辛い事だった。顔で笑って心で泣いていた。
「喜びますよ。花言葉は真実の愛だから大丈夫ですよ。」カオリが微笑んだ。薔薇の花束がとてもよく似合っていた。薔薇はカオリみたいな人の為にあるのではないかなと思った。本当に幸せになってほしいと心から願った。
「それ下さい」と言ってバラの花を包んでもらった。
次の日、キヨシは店の人に聞いて、カオリの自宅の住所に昨日のバラの花束を名前をふせて送った。「結婚おめでとうございます。」と一言添えて。
カオリの花嫁衣裳の姿が目に浮かんだ。華やかでステージにマッチしている事だろう。カオリの華やかな姿を想像しただけでも幸せになれた。
「今日は、饅頭を持って来たのかい。」いつもの病室で母が聞いてきた。
「俺が饅頭食べたくなってね。」この前の花が花瓶にささっていた。枯れる一歩手前のような感じもしたが一生懸命咲いていた。花の命は短いからこそ精一杯綺麗に咲いているのかもしれない。
恋の悩みも花と同じく精一杯好きになって綺麗な所で終わっていくものなのかもしれない。そんな事を考えながら饅頭にかぶりついた。たまには饅頭もうまいものだなと思いながら涙のショッパイ味が混ざっていた。
母が入院していたのでお見舞いの花を買いに行く時に必ずその店員さんに包んでもらっていた。
名前はカオリだった。エプロンについているネームプレートを見て確かめた。花屋にぴったりの名前で印象深かった。
今日もカオリから花を包んでもらっていた。ピンクや白や紫の色とりどりの花をいっぱいつけてもらった。
「今日もお見舞いですか?」いつものように新聞紙でクルクルと花を巻いてラッピングしながらカオリが聞いた。
「そうです。なかなか退院が長引いてね。」キヨシの母が腰が痛いと訴えて一ヶ月くらい入院をしていた。花を買いに来たのは、今日で十回目だった。
「お母さん想いなのですね。」
「そんな事ないですよ。花は母が大好きなので買っているだけですよ。」カオリと目が合ってしまった。吸い込まれそうな大きな瞳でみていて顔が熱くなった。カオリが素早い動きでラッピングをして花束を渡された。カオリから渡されると卒業式の花束贈呈のように華やかに見えた。
「お母さん早くよくなるといいですね。」ニコッと微笑んでくれた。口元のエクボが可愛らしかった。
花とお金を交換するとありがとうございますとカオリが言った。キヨシは恥ずかしくてありがとうございましたと間違えて返事したらカオリがクスクスと笑っていた。照れながら花屋を後にして母が入院している病院へ向かった。
病室に入ると母親は安静に横になっていた。今買って来た花を母親に渡した。
「また花を持ってきてくれたのかい。お前いつから花が好きになったんだい。」キヨシが花の名前すら分からないのに買って来るので母はビックリしていた。好きな人がいるからとは口が裂けても言えなかった。
「それよりも腰は大丈夫?」話しをごまかした。
「大丈夫。大丈夫。それよりも花ありがとう。」母は何よりも花が好きな人で食べ物よりも花なのだ。
ふと花瓶に目をやるとこの前買って来た花が枯れていた。花の命はなんと短い事なのだろう。花の一番綺麗な時と人間の一番綺麗な時はいつだろうかと考えた。
母はよいしょと大きな体を起こすと花瓶に水を入れに行った。
「俺がやるから寝てなよ」というと「いいから。これでも飲んでろ」と母が言ってオロナミンCを小さな冷蔵庫から出した。
仕方なくベッドに座って飲んでいた。窓の外の景色を見るとどんよりとした曇り空で茶色い葉っぱが飛んでいた。
「もう秋だな」と呟きながら花屋のカオリの笑顔を思い出していた。
「キヨシ。何をそんなにニヤニヤしてるんだい。良いことでもあったのかい。」花を花瓶に入れて戻って来た母がキヨシの顔を覗き込んで言った。キヨシは焦って何でもないよと苦笑いを浮かべた。今度はいつ花を買いに行こう。カオリにまた逢えるかと思うと胸の奥の方がワクワクとしていた。
一週間後、またカオリに逢いに花を買いに行った。花屋の前につくと知らない男がカオリと親し気に話しをしていた。
誰だろうと思うと同時に嫌な予感がした。
カオリがキヨシの顔を見るとぎこちない笑顔になり、「いらっしゃいませ」と言った。
お客だと感づくと男はそれじゃと言って帰ろうとしていた。愛想が悪い男だなと思っているとカオリがその男に小声で「結婚式の事ちゃんと話したいから明日また来てよ」と言っていた。男は分かったというと静かに帰って行った。
驚いたキヨシは「結婚するんですか?」と聞いた。眉毛がピクピクと動いているのが自分でも分かった。
「えぇ。だから花屋辞めますけどまた来てくださいね。」カオリが素っ気無く答えた。カオリがいない店なんて来たくなかった。胸の奥の方で何かが壊れる音がした。体全体にやる気という気力が抜けていった。
「そうですか。おめでとうございます。幸せになってください。」目がシュパシュパとした。涙が出そうになっていたが何とかこらえた。
「今日もお見舞いですか?」カオリがいつものセリフを口に出すとキヨシはそういう気になれず「彼女に贈り物をしようかなと思って」と嘘をついて誤魔化した。
母に持って行こうと思ったがきっと母の前で泣いてしまうだろうと思い今日は行くのを止めた。
「彼女の贈り物ですか。それだとこの花が良いですね。」何事もなくカオリが真っ赤なバラを後ろから取り出した。
「綺麗ですね。彼女喜びますかね。」目の前のカオリにあげたかった花だった。あの無愛想な男が気になって仕方なかった。落ち込んでカオリの目を見れなかった。振られるという事は本当に辛い事だった。顔で笑って心で泣いていた。
「喜びますよ。花言葉は真実の愛だから大丈夫ですよ。」カオリが微笑んだ。薔薇の花束がとてもよく似合っていた。薔薇はカオリみたいな人の為にあるのではないかなと思った。本当に幸せになってほしいと心から願った。
「それ下さい」と言ってバラの花を包んでもらった。
次の日、キヨシは店の人に聞いて、カオリの自宅の住所に昨日のバラの花束を名前をふせて送った。「結婚おめでとうございます。」と一言添えて。
カオリの花嫁衣裳の姿が目に浮かんだ。華やかでステージにマッチしている事だろう。カオリの華やかな姿を想像しただけでも幸せになれた。
「今日は、饅頭を持って来たのかい。」いつもの病室で母が聞いてきた。
「俺が饅頭食べたくなってね。」この前の花が花瓶にささっていた。枯れる一歩手前のような感じもしたが一生懸命咲いていた。花の命は短いからこそ精一杯綺麗に咲いているのかもしれない。
恋の悩みも花と同じく精一杯好きになって綺麗な所で終わっていくものなのかもしれない。そんな事を考えながら饅頭にかぶりついた。たまには饅頭もうまいものだなと思いながら涙のショッパイ味が混ざっていた。
わたしはね、キーボーさん、その、「会う」ことからしてできない相手に心を奪われてしまってね・・・・・有り得ない状況の中もがいてるんですよ。
辛いことで人は成長するらしいけど、こんなことなら成長なんかしなくてもいい!って思っちゃうよね。お互い、頑張ろうね!
あ、お話のコメントですが、お母さん思いのキヨシ君がすごくいとおしいです。・・・抱きしめてあげたい恋多きカーサンでした。
会えない辛さはよく分かります。会ったら会ったで嫌な部分がたくさん見えるから会えない方がいいのかもしれませんよ。(プラス思考的な考え方)
お互い本当に頑張って行きましょうね。パプ子さんって恋多き人なんですね。
私と同じ体質かも。違う所は私は常に独り者という事くらいかな(笑)
・・・!!!ほんとに、そうですよね。そうそう、わたし、今までそういう経験いっぱいしてきた。会いたくて会いたくて、やっと会えたら、そんなにヨクなかった=ゲンメツってことが!
それは納得できるのですが、それでも、その人と実は一度も会ってないのよ。電話やメールや、その他にも言葉は一日何度も交わしまくってるんだけど、遠すぎて、時間もなくて。
ま、私の場合、贅沢すぎる悩みですが。でも、恋はどんな状況でも、甘くてせつなくて、・・・胸が心がじんじんするものですよ、・・・ね・・・・・。
キーボーさんを、ほんとに心から応援してます。
出会えてほんとによかったです。心からそう思ってますよ。
ブログを作って読んでくれる人がたくさんいて本当によかったと思います。
最初の方は実際あった女子高生と恋愛していた事から始まって、今ではたくさんの物語が生まれて嬉しく思ってます。
恋愛がこんなにも奥が深いものだとは知りませんでした。書いている本人もビックリです。
後は、いつも物語に出てくる可愛い彼女を見つけるだけかな~なんちゃって(笑)
応援してくれる人がいるだけでも心が救われます。泣きたくなるほど秋の風が寂しいですけどね。