住んでいる都会から車で一時間行った所に海が見える田舎町がある。そこを抜けると大きな墓地がある。戦争で死んだ人が埋まっていると聞いた事があった。
墓地の上の方に段差があり、小さな墓石がある。側の海が見える展望台があり、静かな波の音が聞こえてくる。
薔薇の花束を持って墓の前にいる綾小路寿久。茶色のジャケットが海の風に揺れていた。
「久しぶりだな。ここに来るのは何年振りだろう。だけど、君を片時も忘れた事はなかった。」綾小路は薔薇の花束を墓の前に置いた。
「俺がなぜ薔薇が好きになったか分かるかい。君が花屋の前で交通事故に遭って、君が最後に握りしめていたのが薔薇の花だったね。死ぬ間際で握りしめていたのが不思議なくらいだった。俺に何か当てつけのメッセージだと思っているよ。今色んな人と色んな所で、出会っているけど、君の事をずっと探しているのかもしれない。街の中で駅のホームで、君が薔薇の花を持ってそこにいるような気がするんだ。君にただ逢いたいからやっているのさ。」
「あなた本当身勝手ね。」綾小路の声に答えるかのように、風で揺れている木々が囁いた。
「そう言ってくれるのも君だけさ。君がいない日々を淡々と毎日過ごしているなんてまっぴらだ。」綾小路から一筋の涙が墓に零れた。
「そんな目で見ないで。私はずっと見守ってるから。私の分まで生きて。」海鳥たちが夕焼け空へ飛んで行っている。もうそろそろ日が暮れる。
「また逢いたくなったら来ていいかい。」それから、君は何も答えてくれなかった。最近よく思うんだ。生きる事って哀しい事を乗り越える事なんじゃないかなって。人間は弱い生き物だから、時々、酒や女やギャンブルか何かで紛らわそうとするけど、そんな事はどうでもいい。ただ君にもう一度逢いたいだけなのさ。
暗闇が静寂と共にゆっくりと落ちてきた。
今夜は特に寂しくなりそうだ。吸っていた煙草を捨て、車に乗り込んで街に戻った。
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墓地の上の方に段差があり、小さな墓石がある。側の海が見える展望台があり、静かな波の音が聞こえてくる。
薔薇の花束を持って墓の前にいる綾小路寿久。茶色のジャケットが海の風に揺れていた。
「久しぶりだな。ここに来るのは何年振りだろう。だけど、君を片時も忘れた事はなかった。」綾小路は薔薇の花束を墓の前に置いた。
「俺がなぜ薔薇が好きになったか分かるかい。君が花屋の前で交通事故に遭って、君が最後に握りしめていたのが薔薇の花だったね。死ぬ間際で握りしめていたのが不思議なくらいだった。俺に何か当てつけのメッセージだと思っているよ。今色んな人と色んな所で、出会っているけど、君の事をずっと探しているのかもしれない。街の中で駅のホームで、君が薔薇の花を持ってそこにいるような気がするんだ。君にただ逢いたいからやっているのさ。」
「あなた本当身勝手ね。」綾小路の声に答えるかのように、風で揺れている木々が囁いた。
「そう言ってくれるのも君だけさ。君がいない日々を淡々と毎日過ごしているなんてまっぴらだ。」綾小路から一筋の涙が墓に零れた。
「そんな目で見ないで。私はずっと見守ってるから。私の分まで生きて。」海鳥たちが夕焼け空へ飛んで行っている。もうそろそろ日が暮れる。
「また逢いたくなったら来ていいかい。」それから、君は何も答えてくれなかった。最近よく思うんだ。生きる事って哀しい事を乗り越える事なんじゃないかなって。人間は弱い生き物だから、時々、酒や女やギャンブルか何かで紛らわそうとするけど、そんな事はどうでもいい。ただ君にもう一度逢いたいだけなのさ。
暗闇が静寂と共にゆっくりと落ちてきた。
今夜は特に寂しくなりそうだ。吸っていた煙草を捨て、車に乗り込んで街に戻った。
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