私は地球で楽しく遊ぶために生きている

心はいつも鳥のように大空を飛び 空に吹く風のようにどこまでも自由に

女達の恋愛事情 キリカの場合~4~

2015-11-26 02:02:01 | オムニバス恋愛小説
能面無表情真世は注文したアールグレーティーを
ゆっくり飲み込んだ。どうやら紅茶がお好みのようだ。
「キリカさんは純文学では誰が好き?」
能面無表情真世が質問する。キリカは絶句した。
そもそも純文学と大衆文学の違いさえわからないのに。
唯一読んだタイトルを口にする。
「夏目漱石の我輩は猫であるかな」
何のことはない。これも中学か高校の授業で一度読んだだけだ。
「夏目漱石もいいねえ」2人で頷いている。
キリカはいたたまれなくなっていた。
サークルに入会したことを後悔した。
この先深く探求していくであろう文学の世界にギブアップ寸前だ。
慶が席を立ちトイレへ行くとキリカは真世に聞いた。
「慶とすごく気があっているのね」
「うん、感性が似てるから話していて楽しいわ」
キリカの心は急に萎えていった。
本当は本を読むことが好きではないのだ。
これ以上偽りの自分でいることに疲れていた。
「あの、今日図書館行けなくなっちゃった。
今自宅から急用のメールがはいって」
もちろんでまかせだ。
「そう、残念だわ」真世は寂しそうに言った。
真世の視線を背中に感じながらキリカは喫茶店のドアを開けた。
少し肌寒い風が体に吹いた。
何かから解放された気分になっていた。
美花にラインを送る。
【今何している?会えないかな?】

続く…