能面無表情真世は注文したアールグレーティーを
ゆっくり飲み込んだ。どうやら紅茶がお好みのようだ。
「キリカさんは純文学では誰が好き?」
能面無表情真世が質問する。キリカは絶句した。
そもそも純文学と大衆文学の違いさえわからないのに。
唯一読んだタイトルを口にする。
「夏目漱石の我輩は猫であるかな」
何のことはない。これも中学か高校の授業で一度読んだだけだ。
「夏目漱石もいいねえ」2人で頷いている。
キリカはいたたまれなくなっていた。
サークルに入会したことを後悔した。
この先深く探求していくであろう文学の世界にギブアップ寸前だ。
慶が席を立ちトイレへ行くとキリカは真世に聞いた。
「慶とすごく気があっているのね」
「うん、感性が似てるから話していて楽しいわ」
キリカの心は急に萎えていった。
本当は本を読むことが好きではないのだ。
これ以上偽りの自分でいることに疲れていた。
「あの、今日図書館行けなくなっちゃった。
今自宅から急用のメールがはいって」
もちろんでまかせだ。
「そう、残念だわ」真世は寂しそうに言った。
真世の視線を背中に感じながらキリカは喫茶店のドアを開けた。
少し肌寒い風が体に吹いた。
何かから解放された気分になっていた。
美花にラインを送る。
【今何している?会えないかな?】
続く…
ゆっくり飲み込んだ。どうやら紅茶がお好みのようだ。
「キリカさんは純文学では誰が好き?」
能面無表情真世が質問する。キリカは絶句した。
そもそも純文学と大衆文学の違いさえわからないのに。
唯一読んだタイトルを口にする。
「夏目漱石の我輩は猫であるかな」
何のことはない。これも中学か高校の授業で一度読んだだけだ。
「夏目漱石もいいねえ」2人で頷いている。
キリカはいたたまれなくなっていた。
サークルに入会したことを後悔した。
この先深く探求していくであろう文学の世界にギブアップ寸前だ。
慶が席を立ちトイレへ行くとキリカは真世に聞いた。
「慶とすごく気があっているのね」
「うん、感性が似てるから話していて楽しいわ」
キリカの心は急に萎えていった。
本当は本を読むことが好きではないのだ。
これ以上偽りの自分でいることに疲れていた。
「あの、今日図書館行けなくなっちゃった。
今自宅から急用のメールがはいって」
もちろんでまかせだ。
「そう、残念だわ」真世は寂しそうに言った。
真世の視線を背中に感じながらキリカは喫茶店のドアを開けた。
少し肌寒い風が体に吹いた。
何かから解放された気分になっていた。
美花にラインを送る。
【今何している?会えないかな?】
続く…