私は地球で楽しく遊ぶために生きている

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女達の恋愛事情  ~キリカの場合~ 2

2015-11-12 19:32:11 | オムニバス恋愛小説
「キリカ、女は綺麗であることがすべてなのよ。お洒落をして
爪の先から髪までいつも気をつけて生活することが女を幸せにする術なの」
口癖のように聞いた母の言葉はキリカの生活に根付いていた。
父は年齢を重ねてもおんなでいることを意識して生活している母を溺愛していた。
父も「女は男に可愛がられて生きるのが一番だよ」という考えだった。
子供は父母の教育、環境、癖によって形成していくのだとキリカは思う。
そして、その母の女としての生き方を肯定して生きてきた。
母よりも優れている点は聡明な頭脳を持ち合わせたことだ。
しかし、ここにきてキリカは思う。
一体女の生き方とはなんぞや?単純にお洒落で女性であることを意識して
日々を生きることを肯定して生きてきたキリカにとって、
初めて自分から恋心を抱いた男の慶の女性観は真逆ではないだろうか。
何故なら自分の容姿に無頓着で能面のような表情をしている真世が好みなのだから。
慶と慶の友人が発足した「純文学を探求する会」同好会に入会したのも
慶の傍にいたかったからなのだ。しかし、そこに既に真世がいた。
そして、2人は相思相愛だというからダブルの驚きなのだ。
初めてキリカは人生の不条理を感じていた。

今日は夕方から国立図書館に行き太宰治について語り合うらしい。
太宰治なんて走れメロスを学生の時に読んだくらいだ。
待ち合わせた駅前の喫茶店のドアを開けると慶の姿が視界にはいった。
気がついた慶が手を挙げる。まだ誰も来ていない。
キリカは胸の高鳴りを感じながら慶の座る方へ歩いて行った。

続く・・・