牧師の読書日記 

読んだ本の感想を中心に書いています。

9月1日(日) 「名もなき毒」 宮部みゆき著  文春文庫

2013-09-01 07:25:30 | 日記

 今日から9月だ。北海道はすっかり涼しい。


 本書は杉村三郎を主人公にしたシリーズの第2弾である。第一弾は「誰か」であった。個人的には物語としては第1弾の方が優れていたように感じた。

 人間が毒であるから人間がいる限り、人間から人間へ毒が流れていくということだ。「誰か」から毒が流れる。そのような意味で第1弾があった。でもその毒の名前が分からない。それが第2弾の「名もなき毒」である。その毒に主人公たちが翻弄されていくのが本書である。多くの人たちがその毒のことを考えないで生きているが、毒の名前を知ろうとすることや毒の正体をつきとめることを著者は問題提起しているのではないだろうか。

 第3弾は執筆中で、タイトルは「ペテロの葬列」だそうだ。ペテロとは聖書に出てくるイエス・キリストの一番弟子であるペテロのことであろうか。「ソロモンの偽証」ではソロモンという旧約聖書に出てくるソロモン王様がタイトルに使われたにも関わらず、物語の中で言及されることがほとんどなかった。今回はどうであろうか。著者が聖書と向き合うことができるかが楽しみだ。著者自身が名もなき毒と本当に向き合うことができるだろうか。


 聖書ではその毒のことを「罪」と呼んでいる。そしてこの毒である罪からの解決の道がはっきりと書かれている。すなわち罪の赦しを与えてくださるイエス・キリストである。三浦綾子氏の「氷点」の方が本書よりも名もなき毒について鋭く書いていると思う。