どこか遠くでフッチボル

鹿島サポだが裏の顔は日本代表サポ組織「食う軍」の司令。徒然なるままボソボソと。

旅。九州よサラバ・・・本州は豪雨/4月9日

2004-12-04 | TROUBLE TRAVEL
雨音で目が覚めた。布団に入り込んでくる冷気も冷たい。
今日で九州を出るつもりだが、楽しい思いだけでは出られそうもないようだ。

クーパーと朝食を食べ、バイクが見たいという彼を連れ、愛車SRXのところへ行く。
旅が長引き、全体に薄汚れ、しかもチェーンが伸び気味になっている。
乗ってもいいよ。
俺は言ったが、彼はハンドルを握るだけで跨ろうとはしなかった。
ライダーは万国共通なのか。
人のバイクに跨るというのは、気後れするのもなのだ。
まるで自分の彼女を取られてしまう様な感情なのだろう。
オーストラリアではSRXは売られていない。
コンパクトだが、本当に綺麗なバイクだ。
クーパーは誉めるとニッコリと笑った。

クーパーは、明日の韓国行きフェリーに乗るため、今日は下関ユースに泊まるという。
たったの一泊だったが、俺に外国と言うものを垣間見せてくれたクーパー。
変な緊張感もなく。クーパーは俺と同じ旅人、そしてただのライダーだった。
ただのライダー・・・この繋がりは強い。見えないが強いのだ。

雨具を着込みエンジンに火を入れる。
セルスターターがついてないSRXは、キックペダルを全身で蹴りこむ必要がある。
寒い日には掛かりずらいが、この日も苦もなく一発で掛かってくれた。
心強い旅の同士だ。

玄関の屋根下で見送ってくれたクーパーに軽く手を上げ、雨の中に走り出す。
雨でバイザー越しの景色が見えにくい。
体温で内側から曇ってきて、視界は更に悪くなる。
雨がヘルメット内に入り込む違和感はあるが、バイザーを少しあけ空気が入るようにする。
曇りはなくなり前が見えるようになったが、冷気は顔の皮膚を凍えさせた。

豪雨と言ってもいい状況の中、バイクを東に向けて走らせる。
昨日タクシーに先導して持った道を逆に向かう。
飯塚から北九州、そして関門トンネルを目指し走り続けた。

思いは九州の旅を振り返っていた。
長いようで短い九州。
この土地で俺は何かが変われた気がするのだ。
4月1日に別府へ上陸、そして今日が4月9日。
9日間九州を走った事になる。
四国を走っていた時にはいつも一人だった。
しかしどうだ・・・九州に入ってから一人で走った事の方が少ないのだ。
声を掛けると言う行動が何の苦もなく出来るようになった。
人と関わることが楽しく感じる事が出来るようになった。
深く繋がった仲間も何人も出来た。

一人旅は、孤独ではない。
一人だから人を呼ぶ。
そして、一人だから人に優しくなれる。
そんなものなのか・・・。
一人になった事で、返って人と繋がってしまう。
堂々巡りの考えは頭の中で結ぶ事はなかったが、ボンヤリとした心地よさ感が残った。

ついに九州最後の瞬間が来た。
最後の名残を惜しむかのように、トンネル入口近くのガソリンスタンドに寄る。
満タンにしてもらう間、屋根の下で休ませてもらう。
店員さんが、紙コップに入ったコーヒーを持ってきてくれた。
ありがたい・・・。
寒さで動かない口でモゴモゴと会話を続けていたが、コーヒーの熱さで徐々に体も暖まる。
体が暖まったのは、コーヒーの熱さだけではなかったのだろう。
たかがコーヒーだが、そのコーヒーは人の暖かさも持っていたのか。

有料と言う事が面白くなかったが、関門トンネルを通過する。
海の下を走ると言うのは、一体どんな感じがするのか?
ワクワクする気持ちを抑えつつ、以外に多い車の列にしたがってトンネルに入る。
オレンジ色に明るく光るトンネル内。
気持ちではなく、本当にトンネル内の気温は高かった。
あっと言う間に曇るバイザー。急いで頭上まで上げた。
排気ガスで咽る走行だが、それよりも暖かいことが嬉しい。
叫びだしたい気持ちだったが、それを拒むように排気ガスの臭いは強烈だった。

トンネルを抜けて新鮮な空気を吸うと生き返る気がした。
しかし、次は寒さだ。
今夜の宿を直ぐに決めることにする。
ルートを日本海側か瀬戸内に取るかで悩んだが、景色が良さそうな瀬戸内方面へ向かう事にする。
ユースガイドブックを見ると岩国にユースがある。
電話を入れると、問題なく予約が出来た。

今日の寒さは半端ではない。
小休止する為に自動販売機の近くで停まろうとしたが、寒さで意識からの命令を無視した俺の左足は、バイクを支えようとしなかった。
そう、停まったはいいが、足を出さなかった為にそのまま左に転んだのだ。
幸いバイクにも自分にも怪我がなかったが・・・。

ユースに到着したのは4時を回っていた。
寒さの中走り続けたので、今日の体の疲れが異常にキツイ。
全身がこわばり、全ての間接が悲鳴を上げているようだった。

岩国ユースに入ると、寒さに凍える俺を見て、時間前だが風呂に入らせてくれた。
大きな風呂に一人。
湯舟に使って5分は掛かったろうか。
ようやく凍えた冷凍人間から、生身の人間に戻る事が出来た。
普段長湯はしない性質なのだが、この日は1時間近く入っていたのではないだろうか。
暖かさから抜けられない。とにかく湯舟から出るのが嫌だったのだ。

夕食後に地元バイク仲間のトオルに電話を掛ける。
今日の道中ずっと一人だったせいか、人恋しいという気持ちがあったのだろう。
家出中の友人から遠い土地から掛かってくる電話。
この状況でも淡々としゃべるトオルに落胆しつつ、電話は直ぐに終了。
疲れは増しただけだった。

今日のルームメイトがやってきた。
年下の男だった。
話して直ぐにわかったのだが、鉄道が全てのテッチャン野郎。
それに加えて、ちょっと話し方も変。
障害者・・・かな?
やっかいな状況になった・・・疲れきっていた俺には辛い状況。
延々と話しかけるヤツの言葉も耳に入らず。
俺は勝手に寝入ってしまった。

岩国。
錦帯橋がある街。
明日は歴史散策と行こうか。
うるさいやつの声よりも、今日は睡魔が勝ってくれることに感謝。
明日は晴れかな。


つづく・・・・。


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 天気:豪雨
 時間:9:00~16:00
 距離:224km
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