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どこか遠くでフッチボル

鹿島サポだが裏の顔は日本代表サポ組織「食う軍」の司令。徒然なるままボソボソと。

旅。長き友との出会い~京都へ/4月13日

2005-01-17 | TROUBLE TRAVEL
気持ちがいい朝だ。
昨夜の居酒屋の気持ちが続いているのか、仲間と一緒に起きると言う朝は楽しい。
小学校の宿泊学習の気分・・・それに似た感じだろうか。

RZ氏は早々に宿を出て行った。
今日泊まる場所は京都だそうだ。
実は自分が今夜泊まる予定の、京都“輪嘶舎(りんせいしゃ)”を言う民宿。
ライダー専用の格安宿で、購読していた月刊誌“OUT RIDER”に出ていて気になっていた宿。
今日、明日と連泊するつもりだ。
昨夜居酒屋でその宿の話をしたら、面白そうとRZ氏が話に乗ってきたのだ。
ルートが違うようなので、また今夜と言う事で一度サヨナラをした。

ユースの前で写真を撮る。
高台にあるユースから見ると、最近CMで話題になっている倉敷市役所が見える。
“市役所に、こんな立派な建物が必要でしょうか?”
CMで名指しで批判されるのは可哀想だと思っていたが、実物を見ると・・・ラブホテルみたいだな・・・それが正直な感想だった。

<右がXT氏こと植山さん、左に見える白い建物が倉敷市役所(笑)>

倉敷の観光名所、美観地区を散策に向かう。
市内を流れる小川を囲むように、江戸時代のような街並みが続いている・・・。
この地区に入る前は、普通に都会の景色が続いていたのに、一歩入ると江戸時代。
この感覚のずれを楽しみつつ歩く。
しかしどこか作られた街を歩いている気分だ。
まるで映画のセットの中を歩いているよう。
XT・FZR両氏も同じ感想を持ったようだ。
長居は無用の感想で、3人は再びバイクのエンジンを掛け直した。



工事中の瀬戸大橋を見に行く事にする。
鷲羽山と言う場所に、橋が一望できる公園があると言うので目指してみた。
夏のような日差しの中、3台のバイクは走る。
荷物満載の俺達。
信号で止まっていると、注目されているのがわかる。
どう見えるのだろう?
旅人よと思うのか?それとも、汚い連中と思うのか?
本人達は心の中で誇らしげに思っているのだ。
俺達は馬の代わりにバイクを駆る騎馬民族だ。
気分だけは・・・。

瀬戸大橋に到着。
その大きさに本当に驚いた!
海の上に橋がかかってる・・・海上から橋までの高さも想像を絶している。
これどうやって作ったんだ!?
凄さと共に、不思議さばかりを感じてしまう。
感慨に浸りながら写真をパチリ。



岡山市内にお金を下ろしに行くと言うFZR氏とはここでお別れ。
FZR氏は明日の夜、京都の民宿“輪嘶舎”に泊まる。
今夜はRZ氏、明日の夜はFZR氏と同泊の予定となっている。
楽しい京都の夜になるかな。

XT氏・・・植山さんと2台で大阪方面に向けてバイクを走らせる。
地元で道が分かるよと言う植山さんに先導してもらい、車が多い国道を一路東へ。
大阪に入る前、神戸のスタンドで休憩を取る。
トイレから出てくると、植山さんがいない。
どこいったんだろうなと思っていると、自分を呼ぶ声が聞こえた。
声がする方に歩いていくと、植山さんは誰かと話をしている。
その隣には巨大な荷物を積む何か・・・リヤカーか?
何だこりゃ?
一緒に話を聞いて本当に驚いた。
この男性、2年前に北海道を出発、リヤカーに寝泊りしながら九州を目指す旅人だった。
旅立ってから2年!?
この荷物満載リヤカーを引っ張って歩くだって!?
桁外れな男がいたものだ。
植山さんと、“凄いのに会ったな”と呆然とバイクに戻る。

植山さんは、自宅を通り越して大阪城まで案内してくれた。
その心遣いが本当に嬉しかった。
時間は既に夕方。宿に入る時間を考えるとギリギリの観光となってしまったのが残念。
せっかく大阪に来たのだから、お好み焼きでも・・・と大阪城の公園に出ていた出店で買って食べてみるも、味はそれなり。
植山さんは、“これが大阪のお好み焼きと思わんでくれ”と何度も言っていた。



お別れの時が来た。
たった2日だったが、植山さんとは何か通じるものを感じていた。
旅へのスタンス、その行動力。
あこがれに近いものを自分は感じていたのかもしれない。
住所を交換しあい、京都までの道を再度教えてもらいお互い別の道を走り始めた。
植山さんは明石に戻る。
自分は通勤の車で混雑する京都への道へ。
軽く手を振り走り始めた。

京都までの道は大きな道だったが、本当に混雑が酷かった。
バイクですり抜けするのも気を使う程だ。
京都まで後何キロあるんだ?標識のキロ数はなかなか減ってはくれなかった。
京都に到着した時には既に夕闇に包まれていた。
中学生の修学旅行で来てはいたが、京都を実際にバイクで走るのは初めて。
地図で民宿の場所を確認して走り出すも、直ぐに道がわからなくなる。
民宿に近いのは分かってるのに・・・民宿が見つからないのだ。
一体何度同じ道を走ったのだろう。
唐突にライダー民宿“輪嘶舎”の看板が見えてきた。
本当にホッとしながら、エンジンを切る。
昔ながらの街並みの中、それに溶け込むように佇む“輪嘶舎”。
民宿と言うより普通の旧家だ。
エンジン音を聞いていたのだろう主人が、紹介も早々に家に導き入れてくれ、直ぐに風呂へ通された。
風呂で旅の汗を流し、居間に戻ると近くにあるお好み焼き屋を紹介してくれた。
この宿は食事が朝のみなので、夕飯は外で食べる必要がある。
RZ氏の姿が見えないと思っていたが、既に外食に向かってしまった後だったようだ。
近所のお好み焼き屋まで徒歩で5分程度だったろうか。
小さな店でお客は二人のみ。
紹介されてきたと言うと、お薦めの品を焼いてくれた。
表面がカリカリで中身は具沢山。
関東で食べるお好み焼きとは根本的なところが違う味。
ビール一杯で一体何枚食べた事だろうか。
幸せな気持ちで民宿に帰ると、RZ氏も帰ってきていた。

夜はコーヒーをいただきながら“輪嘶舎”主人山内さんのバイク話を聞く。
ライダー専用民宿を運営している事もあり、山内さんもライダーだった。
年齢は60を軽く越えているだろう。乗っているバイクは大型のスポーツバイクだった。
しかも山内さん、日本を飛び出しヨーロッパを舞台にツーリングをするライダー。
世界の話、京都の話。
大先輩ライダーの話す物語は、気持ちを海外へと連れて行ってくれる。
夜更けまで話を聞かせてもらい、勉強になったことも多かった。
仕事は何してるんだ?
山内さんの質問は胸に突き刺さった。
自分もRZ氏も現在無職だ。
“無職か・・・まあ、こんな世の中だ。仕事は大事だと思うけど、せっかくのチャンスだ。色々なものを見て、それでもう一度考えればいいよ。”
そう語る山内さんは建材を取り扱っている社長さんのようだ。
自宅にもカラフルなタイルが置いてあった。

まるで先輩の家に泊まりに来たようだ。
そんな感覚をもちつつ、ふかふかな羽毛布団に包まれる。
凄いオジサンだよな。
暗い天井を見上げつつ、RZ氏にそう声を掛けると、彼もクスッと笑った。
凄いや、オジサンライダー。


つづく・・・・。


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 天気:晴れ時々曇り
 時間:9:00~19:00
 距離:289km
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旅。瀬戸内放浪~倉敷へ/4月12日

2004-12-21 | TROUBLE TRAVEL
生口島、瀬戸田ユースの朝はあっけなくやってきた。
しかし昨夜も飲み過ぎてしまった。
寝る時に天井が回っていた事を思い出す。
あれ程飲んだのは初めてか。
岩カキの味は、まだ舌に残っていた。
ハッと思い自分が寝ていた布団を確認したが、頭を過ぎった最悪の事態は避ける事が出来たようだ。
鈍る頭で、今日の予定はどうしようかと考え始めた。

朝食を食べに行く。
地質調査の学生さんは、既に出掛けてしまっていた。
一人寂しく食事を押し込む。
胃がむかついていたが、食べないとこれは復調していかないのだ。

とりあえず生口島を出る為、フェリー乗り場に向かう。
瀬戸内は小さなフェリー網が発達している。
バスに乗るような感覚で、フェリーが来たらそのまま乗る。
そして、海の上で車掌さんが切符を切りに来てくれるのだ。
波は静かで視界の中にはいくつもの緑溢れる島。
海上から見る景色はまた別格に美しい光景だった。

対岸の三原へ向かうフェリーに乗る。
少し大型のフェリーであったが、価格は思いのほか安かった。
これも普段の足に使われる船の所以たる所であろうか。
三原に到着すると、早速今夜の宿を決めてしまう。
今日も尾道散策をするつもりなので、再度尾道ユースを使う事を考えたが、少しでも東へ移動するべく倉敷ユースを選んだ。
公衆電話から予約を入れる。
美観地区で有名な倉敷。
楽しみである。

三原から尾道へ向かう。
一昨日通過した道を再び尾道へ向けてバイクを走らせる。
なぜかもったいない気がした。
バイク乗りは不思議な生き物だ。
道なんてどこを通っても大して変わらないだろう。
しかし、同じ道を通る事を嫌うのだ。
それが旅ライダーに備わった本能なのかもしれない。
違う道へ。
そして、違う世界へ。

尾道に到着すると、ロケ地めぐりで見つかっていなかった場所探し、再び坂道を駆け上り始めた。
ロケ地マップに出ている箇所は残り一箇所。
とある学校を探す。
“さびしんぼう”でヒロインのゆり子が通っていた学校。
小高い丘の上からの撮影は、尾道の街が一望できて印象的だったシーン。
見当をつけてバイクを走らせると、その学校らしき場所がみつかった。
撮影場所を探して学校横の道を走っていると、授業中の生徒が窓から俺を見ているのが判る。
静かな山間、授業中の校舎に響き渡るバイクの排気音。
スマンと思ったが、だからと言って排気音が静かになるわけでもなかった。
校舎を半周ほど走ると、それらしき坂道を発見。
キツイ上り坂だったが、バイクで上がっていく。
排気音はひときわ大きく響いてしまった。

坂道の頂上には、道の両脇に石碑が立つ場所。
その奥には神社があるらしかった。
石碑を見て思い出した。
この場所・・・転校生で登校する生徒達が歩いて降りてくるシーンが撮られた場所だ。
本当にロケは色々な場所で撮られたようだ。


学校を見下ろす。
この場所から、校舎の中にいるゆり子をズームしていったシーンが思い出される。
“さびしんぼう”のエンディングで、ゆり子の子供らしき娘がピアノを弾くシーンがある。
この校舎で撮られたのかな?
そう想像すると、映画のシーンを思い出してキュンとなった。
校舎の右手奥には、きのう見に行った“さびしんぼう”の家が見える。
こんなに近かったんだなぁ。


昼前だったが、昨日ワッフルを食べた喫茶こもんを再び訪れる。
昨日は二人でも恥ずかしかったが、それ以上にこもんのワッフルに魅せられてしまったようだ。
一人カウンターに座っていると、異次元に紛れ込んだ気分だ。
廻りは女性客ばかり。
しかし、ワッフルを乗せた皿が運ばれてくると、恥ずかしさはあっと言う間に消えた。
甘く美味しいワッフル。
再びこの店でこれを食べる日は来るのだろうか。
味を覚えようと噛み締めてみた。

尾道を後に東へ、倉敷・岡山を目指してバイクを走らせる。
このところ天気がよかったが、今日は雲が低く垂れ込め、体を突き抜ける風は簡単にジャケットを通過してくる。
寒い。
かじかむ指でのブレーキ、クラッチ操作は思うように行かない。
心持ち安全運転を心掛けた。

倉敷に到着したが、時間が時間が早く、せっかくだから足を伸ばして岡山市の観光に向かう。
雨がパラついてきた。
雨具を着るような事にならなければいいが・・・。

日本に残る城の中でも美しい事で知られる岡山城が見たかった。
市内に近づくと、車の多さに目を白黒させられた。
城の方面に向かうも、混み具合は増すばかり。
中心街に近づくと、小高い丘の上に城の上部構造物が見える。
あそこだ・・・と思ったが、市内の混み具合は普通ではない感じ。
どうしようとバイクを止めて考えていたら、交通規制の知らせとパレードの案内が出ていた。
今日は駅付近一帯で大規模な催し物があるようだ。
眺めていると、華やかなチアリーダーが先頭に立つブラスバンドが歩いてきていた。
岡山城は直ぐそこだが・・・この通りの向こうの城にはどう行ったらいいんだ?
急激にしぼむ観光欲。
俺はバイクを倉敷に向けて走り始めた。

倉敷ユースは市内を一望する丘の上に立っていた。
ちょっと前にCMで盛んに流れた悪名高い市役所もよく見える。
“こんな市役所が本当に必要でしょうか?”
税金の無駄遣いを抑制しようとする象徴にされたのがよく判る、本当に市役所には見えない建物だった。

受付を済ませ部屋に荷物を置きに行く。
ユース内の壁には、小泉今日子の写真がそこかしこに飾ってある。
何でも去年、ザ・ベスト10の中継がこのユースからあり、その時の写真だそうだ。
うーん・・・嫌いじゃないけど、ここに飾るのは複雑だなぁ。

ユース入りした時は一人だったが、直ぐにXT、FZR氏到着。
部屋で落ち着くと直ぐ、ウィスキーを持参していたXTさんからの振舞い酒。
グラスが無いので、俺はキャンプ道具のフライパンで飲んだ。
これぞ、大は小を兼ねるだ。
フライパンで飲むストレートウィスキー。
ソーセージのコゲがこびりつくフライパン。
ウィスキーにも苦い味が移っていた。
しかし、苦いストレートウィスキーは事の外美味かった。

XTさんは日本海側から、中国の山を越えてきたそうだ。
頂上付近は雪が降っていて、大分苦労したらしい。
雪かぁ・・・どうりで今日は寒かったはずだ。

夕食前、RZ氏もユースに到着。
今夜はバイク乗り4人の夜となった。
夕食を済ませると、部屋に入って旅話で盛り上がる。

ウィスキーでエンジンが掛かっていた俺、XT・FZR両氏と共にユースを抜け出し市内へ。
3人で深夜まで居酒屋チェーン“村さ来”で痛飲となった。
俺飲んでばかりいるな・・・そんな気持ちが湧き上がってきたが、この楽しさからは抜けられない。
最高のつまみは気の合うライダーとの旅話。
この場所にいると世界は自分達だけのような気がしてくる。

俺・・・社会に戻れるのだろうか・・・。

最近ふと過ぎる不安は、無理やり心の奥に染み込ませた。
そんなの考えるのよそう。
今はただ・・・旅を感じ・・・仲間を感じ。
そしてビールの事を考えよう。

深夜ユースに戻った。
静かに静かに。
クスクス笑いながら忍び込む玄関、一生記憶に残る映像だろう。


つづく・・・・。


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 天気:曇り時々小雨
 時間:9:00~16:00
 距離:127km
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旅。ロケ地めぐり~瀬戸内の島へ/4月11日

2004-12-09 | TROUBLE TRAVEL
飲み過ぎた。
起きるのが辛かったが、それは自分だけではなかった。
XT君は状況が酷いようだった。

食堂で無理やり朝食を食べていると、尾道ロケ地マップなるものがあるのを発見。
なんだよ~。
昨日これ見つけてれば、楽に探せたのになぁ。
しかし・・・このマップ詳しく出ているわけではない。
大体の場所と、そのシーンがボヤッと書かれている。
ヒントは与えるから、後は自力で探せ・・・って事なのだろう。
よーっし、ヒントを貰えば楽勝だぁ!

朝食を食べたばかりだが、XT君と話が合ったので、茶房こもんと言う喫茶店に向かう。
ここは転校生でもロケに使われた場所で、中に入ると監督を始め、出演者の人達の写真とサインが飾られていた。
男二人でワッフルとコーヒーを頼む。
ワッフルがなんだかわからなかったが、主演の尾美としのりが食べたというので、迷わず。
カウンターに座っていたので、目の前で何かをプレートで焼き始めるのが見えた。
“あれがワッフルだな”
二人で確認しあった。
正にそれがワッフルで、目の前で焼きあがったものが皿にに乗せられて出てきた。
どうやって食べるのか不安であったが、ホットケーキを食べるように、ナイフで切って口に入れた。
「うまーーーい♪」
男二人は、激しく絶賛するのであった。
XT君の焼酎でただれた胃は、ワッフルの甘さで緩和されたようだった。

満腹状態で店を出たので、ここで記念写真をパチリ。


  ◇ワッフルを制覇。勝者の笑みをふりまく二人。元気かXT君!◇

XT君とはここでお別れ。
俺の今夜の宿を、瀬戸内海に浮かぶ島にある瀬戸田ユースに決めた為、尾道ユースに連泊するXT君とは別行動の方がいいだろうという事だ。
今夜も飲むのかXT君。
もどすのは止めとけよ。

ロケ地マップでまず目標を定めたのは、“さびしんぼう”で主人公が住む家だ。
お寺らしいので判りやすいだろう。
尾道でロケ地めぐりをするのにはバイクは適していたようだ。
狭く急な坂道を、スイスイと登っていく。
この辺りかと見当をつけて坂道を上がっていったら、いきなり見覚えのある坂道、それに寺が現れた!

     
◇この家だっ!冨田靖子の写真がエンディングで舞っていた場所だ!◇

おお!さびしんぼよ!
俺はやってきたぞ。俺がいるからもうさびしくないぞっ!
ショパンの別れの歌を口ずさみつつ。その場を離れた。

次はどこだ?
うーん・・・・ここだな。
「転校生」で印象的なシーン、石段ゴロゴロで一夫と一美が入れ替わる場所だ。
楽勝っぽいぞ。行け行け!

ドーン。
本当に難なく分かった。

     
◇あー俺もゴロゴロしたいっす。でも実際にやったら大怪我間違い無しの角度だった◇

ゴロゴロした場所はわかった。
だったら次は・・・一夫の家だろう。
海沿いの道を行ったり来たりするが分からない。
道が違うのか・・・地図とロケ地マップを見比べていると、遠くから声が。
“おーーーーいい。これだろ、これ!”
仕事着のおばちゃんが、50mはあろうかと言う距離にいる俺に、大きなジェスチャーで指し示す場所を見ると・・・。
あった!一夫の家だ!
それにしても、聞きもしないのに教えてくれたおばちゃん。
ありがとうなっ!


    ◇一夫の家だぁ。映画撮影時にはポストはどけたらしい。◇

一夫の家を写真に撮って、そこから後ろを振り返ると、引っ越して行く一夫達のトラックが立ち去っていた場所だった。
見送る一美が、振り返って走り出すシーンが蘇る。
俺も走ろうかと思ったが、当然やめた。

「さびしんぼう」で、マドンナ役の冨田靖子演じるゆり子が、登校時に乗ってくるフェリー乗り場を発見!
おおっ!映画で見たままの光景がそこに。
興奮してしまった。


  ◇ゆり子ぉ!あの映画の冨田靖子はよかったぞっ!◇

何でもこのフェリーは対岸の向島へ行くらしい。
当然乗ってみる。
バイクで乗り込むと、そのまま跨ったまま海の上を渡っていった。
気持ちいいなぁ~海の上って。
東側を見ると、凄く高い位置に大きな橋が見える。因島大橋・・・ってやつかな?

向島に渡ってもロケ地探しだ。
「さびしんぼう」で、ゆり子のチェーンが外れたのを、主人公が直すシーンから始まる物語。
似た場所は発見したが、確信の場所は見つからず。
ロケ地探しは失敗に終わった。

向島を離れ、岩子島へ向かう。
ロケ地マップには出ていなかったが、俺は知っていたのだ。
この岩子島で「彼のオートバイ彼女の島」ロケが行われたという事を。
そう、この岩子島が“彼女の島”なのだ。

瀬戸内海でも更に入り組んだ場所にある岩子島。
波もなく静かな海。
そして綺麗な数々の島たち。
バイクの音が邪魔とさえ感じ、しばし休憩。ボケッとする。


    ◇愛車SRX。この後洗車した♪◇


    ◇瀬戸わんたん、ひぐれ天ぷら♪(瀬戸の花嫁替え歌)◇


    ◇廃校になったばかりの学校。悲しくなる。◇

のんびりしたところで、今夜の宿となる瀬戸田ユースへ向かい始める。
瀬戸田ユースは生口島にある。
フェリーを乗り継いでいく事になると思われたが、行ってみると大きな橋が架かっていた。
向島から因島に渡る橋、因島大橋だ。
しかし・・・行ってみると有料の橋。
僅かな金額だったが、なぜか払うのが嫌になった。
どうしたものか・・・どうやったらタダで・・・。
ん?見れば、車が走る橋の下に、自転車や人が歩く為の歩道があるじゃないですか。
バイクはエンジンを切ればバイクではないのだ。荷物なのだ。
よしっ!
勝手に結論に至った俺は、エンジンを切り、歩道への道を歩き始めた。

くっ・・・重っ・・・。

エンジンを切った荷物満載のバイクは、信じられないほど重かった。
それでも大汗かきながらバイクをひたすら押す。
ふと下を見れば、遥か下に海面が見える。

ゾクッ・・・。
怖っ。
助けて・・・。

見ない見ない。
そう決めて、ひたすら押し続けた。
反対側から自転車に乗った女子高生の二人組みが来た。
楽しげに話しながら自転車をこいでいる。
20mぐらいの距離に近づいた時、二人が俺に気づくと会話がやんだ。
緊張のまますれ違う・・・。
20mぐらい行き過ぎたら、爆笑の声が背中の方面から聞こえてきた。
何やってんだと思ったろうな女子高生諸君よ。
俺なぁ・・・金ねんだよ。

瀬戸田ユースは驚くほど普通の家のような感じだった。
と言うか、普通の家。
客間のような畳の部屋に通されると家に帰ったようでホッとした。
風呂に入ってのんびりしていると、夕飯を呼ぶ声が聞こえたので行ってみる。
何と外で食事だ。

何事が起こるのかとドキドキしていたら、巨大な金網を張ったバーベキュー料理。
食べるネタは岩カキだった!
さっき取って来たと言う岩カキの固まりを自分で好きなだけ焼いて食べる食事!
瀬戸内の岩カキを食べ放題食べれらるユースなんてあるのか!
しかもビールまで出してくれちゃって!
大きな固まりから、美味しそうな場所をとっては焼き、ひたすら食う。
ビールも飲む。
最高に気持ちいい~。
泊り客は俺以外には一人。
何でも、どこかの大学の学生で。地質調査に来ているのだという。
一緒に食べている家の人(ユースの人)も含めて、10人近くでの大盛り上がりバーベキューだった。
いい加減酔ってきたところで、隣に座るオジサンの一言が忘れられない。

「いや~楽しい夜だなぁ~・・・あれ?ところでお前誰だぁ?」

一同爆笑。
家族に加えて、親戚の方も一緒にバーベキューをしていたようで、そこに宿泊客がいるのは親戚の人は知らなかったようでした。
笑いながら、これまでの旅の話などを話したり、瀬戸内の素晴らしさをたくさん聞き。
ビールもたらふく飲ませてもらった。

いつ布団に帰ったのかも覚えていない。
気が付くと布団の中だった。
この夜、初めて天井が回ると言う酔いを経験した。

“あっ、天井がグルグル回るってこれなのかぁ”

酔いに身を任せるのは気持ちがいい・・・知らないうちに眠りに付いた。



つづく・・・・。


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 天気:晴れ
 時間:10:00~16:00
 距離:108km
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旅。あこがれの尾道へ/4月10日

2004-12-08 | TROUBLE TRAVEL
早く寝たのに、朝も寝坊気味に起きた。
隣のベットを見るとルームメイトのヤツはいかなった。

昨夜一方的に話し続けるヤツに嫌気がさし、早々に寝てしまった。
会話は・・・してないか。
ちょっと罪悪感を感じた。

食事前に、朝のお勤めトイレに行く。
冷たいタイルの上をカランコロンと便所下駄を鳴らしながら(大)スペースに向かう。
オー寒っ
ブツブツいいながら戸を開けると、そこにはあってはならないものがドーン!
なぜかブツがトイレの中ではなく、外にしてある・・・。
何が起こっているのか頭が回らない。
なぜブツがそこに鎮座なさっているのか・・・。

ヤツだ。

なぜかヤツがブツをトイレの外に落として、そのまま立ち去ったのだ。
くっそー(駄洒落ではない)
ユースはみんなのもの。綺麗に使わなくてはならないのだ。
俺はトイレの掃除を始めた。
何が悲しくて、人のブツを片付けなけらばならんのか。
ちょっと涙がにじんだ。

前言撤回
ヤツは許さん事に決定。

大きな食堂で、一人朝食を済ませる。
思えば、一人で朝食を食べるのはいつ以来なのか。
寂しさは倍増された。

早々にユースを出る。
歴史的な史跡も多い岩国だが、すっかり気分が盛り上がらない。
錦帯橋を見に行き、橋を往復したが
“あーそうですか”
的な感想しか出ず。
近くに白ヘビが見れると言う場所へトコトコ歩き、ここでも
“あーそうですか”
で終わってしまった。

岩国はいいや。
何か全てにやる気なし。

広島に行ってみる。
長崎で原爆資料館をみていたので、ここ広島でも資料館に行ってみる。
覚悟が出来ていたので、ショックと言うより、広島での惨状を目蓋に焼き付ける。
惨劇の写真に慣れる事はない。
ショックは加算されていった。
ふと自分の格好を見る。
米軍のパイロットジャケットだ。
考えすぎなのは判っていたが、その場で恥ずかしい気持ちになった。
戦争は格好いいものではない。現実を直視するべきなのだ・・・。

途中、銀行に寄って貯金を下ろす。
カードなど持ってないので、現金が旅の命だ。
予算が尽きる時・・・それが俺の旅が終わる時だ。
残額は10万円を大きく下回っていた。

バイクを尾道に向ける。
俺にとっては、この旅でもっとも期待していた土地で、地図で“尾道”と見ただけでドキドキする。
そう、俺は大林宣彦監督の、尾道シリーズが大好きなのだ。
ロケ地はみつかるかなぁ。
見つかったら俺も映画の出演者気分で、その場所歩いちゃおうかな♪
ヘルメットの中で“ヒャッホー”と小さく喜んでもみた。

尾道に到着すると、まず荷物をユースに置きに行く。
身軽になってロケ地探しだ。
かと言って、ロケ地めぐりは情報がないので、偶然を期待してひたすらバイク流し。
見つからない・・・。


             ◇文学の小道です◇

結局夕方近くなり、ロケ地探しは中断。
ユースにバイクを置きに戻ると、近くにある文学の小道を散策に行く。
小高い山にそって、石碑に一句書いてあったりする道。
読みながら歩いていくも、その小道は結構な角度で上昇していくのだ。
俺の格好はライダーファッションで、特に下半身はレザーパンツで汗なんて発散しない。
嫌なにおいを発散しつつ、小山を歩き回った。
頂上に出て瀬戸内海を見る。

言葉に出来ない絶景・・・。
狭い瀬戸内海に浮かぶ小奇麗で小さな島。
その海を縫うように白い航跡を残して浮かぶ船達。
こんな綺麗な光景があるのだろうか・・・。
夕日でオレンジに染まる海。
飽きることのない景色。
30分近く眺めていただろうか。
名残惜しい気持ちを残しつつ、ユースへの道を下っていった。


    ◇夕闇迫る瀬戸内の絶景。絶景かな絶景かな♪◇

今夜のルームメイトは自分のほか3人。
全員ライダーで、XT君、FZ君、それにファッションから勝手に名づけたヘビメタ君だ。
全ての人の目的がロケ地めぐり。
その夜の話は大林映画の話で盛り上がった。
食堂で話していると、ペアレントの小林さんが、焼酎を持ってきてくれた。
実はユースでは飲酒は厳禁である。当然俺達も驚いた。
しかし、小林さんはそんな事はいいと言った。
そうなればこっちは願ったり叶ったり。
飲めないというヘビメタ君は部屋に帰ったが、小林さんを含む残りの4人で痛飲。
尾道の素晴らしさを話してもらい、映画の話で熱く語った。
飲みすぎた。
XT君はついにダウン。
食べたものは全てどこかに流れていった・・・。

楽しい夜。
禁止を破る共犯意識。
俺達は同罪だ。
その気持ちは、どこか心の奥で何かがピタリとはまった感じ。
旅はいいな。
酔いが回った頭で天井を見上げると、涙が少し滲んだ。


つづく・・・・。
※お気づきかもしれませんが、今回よりリアル旅写真です!
 最後まで行ったら、今まで書いた分にもアップしていきますね。

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 天気:晴れ
 時間:9:00~15:00
 距離:181km
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旅。九州よサラバ・・・本州は豪雨/4月9日

2004-12-04 | TROUBLE TRAVEL
雨音で目が覚めた。布団に入り込んでくる冷気も冷たい。
今日で九州を出るつもりだが、楽しい思いだけでは出られそうもないようだ。

クーパーと朝食を食べ、バイクが見たいという彼を連れ、愛車SRXのところへ行く。
旅が長引き、全体に薄汚れ、しかもチェーンが伸び気味になっている。
乗ってもいいよ。
俺は言ったが、彼はハンドルを握るだけで跨ろうとはしなかった。
ライダーは万国共通なのか。
人のバイクに跨るというのは、気後れするのもなのだ。
まるで自分の彼女を取られてしまう様な感情なのだろう。
オーストラリアではSRXは売られていない。
コンパクトだが、本当に綺麗なバイクだ。
クーパーは誉めるとニッコリと笑った。

クーパーは、明日の韓国行きフェリーに乗るため、今日は下関ユースに泊まるという。
たったの一泊だったが、俺に外国と言うものを垣間見せてくれたクーパー。
変な緊張感もなく。クーパーは俺と同じ旅人、そしてただのライダーだった。
ただのライダー・・・この繋がりは強い。見えないが強いのだ。

雨具を着込みエンジンに火を入れる。
セルスターターがついてないSRXは、キックペダルを全身で蹴りこむ必要がある。
寒い日には掛かりずらいが、この日も苦もなく一発で掛かってくれた。
心強い旅の同士だ。

玄関の屋根下で見送ってくれたクーパーに軽く手を上げ、雨の中に走り出す。
雨でバイザー越しの景色が見えにくい。
体温で内側から曇ってきて、視界は更に悪くなる。
雨がヘルメット内に入り込む違和感はあるが、バイザーを少しあけ空気が入るようにする。
曇りはなくなり前が見えるようになったが、冷気は顔の皮膚を凍えさせた。

豪雨と言ってもいい状況の中、バイクを東に向けて走らせる。
昨日タクシーに先導して持った道を逆に向かう。
飯塚から北九州、そして関門トンネルを目指し走り続けた。

思いは九州の旅を振り返っていた。
長いようで短い九州。
この土地で俺は何かが変われた気がするのだ。
4月1日に別府へ上陸、そして今日が4月9日。
9日間九州を走った事になる。
四国を走っていた時にはいつも一人だった。
しかしどうだ・・・九州に入ってから一人で走った事の方が少ないのだ。
声を掛けると言う行動が何の苦もなく出来るようになった。
人と関わることが楽しく感じる事が出来るようになった。
深く繋がった仲間も何人も出来た。

一人旅は、孤独ではない。
一人だから人を呼ぶ。
そして、一人だから人に優しくなれる。
そんなものなのか・・・。
一人になった事で、返って人と繋がってしまう。
堂々巡りの考えは頭の中で結ぶ事はなかったが、ボンヤリとした心地よさ感が残った。

ついに九州最後の瞬間が来た。
最後の名残を惜しむかのように、トンネル入口近くのガソリンスタンドに寄る。
満タンにしてもらう間、屋根の下で休ませてもらう。
店員さんが、紙コップに入ったコーヒーを持ってきてくれた。
ありがたい・・・。
寒さで動かない口でモゴモゴと会話を続けていたが、コーヒーの熱さで徐々に体も暖まる。
体が暖まったのは、コーヒーの熱さだけではなかったのだろう。
たかがコーヒーだが、そのコーヒーは人の暖かさも持っていたのか。

有料と言う事が面白くなかったが、関門トンネルを通過する。
海の下を走ると言うのは、一体どんな感じがするのか?
ワクワクする気持ちを抑えつつ、以外に多い車の列にしたがってトンネルに入る。
オレンジ色に明るく光るトンネル内。
気持ちではなく、本当にトンネル内の気温は高かった。
あっと言う間に曇るバイザー。急いで頭上まで上げた。
排気ガスで咽る走行だが、それよりも暖かいことが嬉しい。
叫びだしたい気持ちだったが、それを拒むように排気ガスの臭いは強烈だった。

トンネルを抜けて新鮮な空気を吸うと生き返る気がした。
しかし、次は寒さだ。
今夜の宿を直ぐに決めることにする。
ルートを日本海側か瀬戸内に取るかで悩んだが、景色が良さそうな瀬戸内方面へ向かう事にする。
ユースガイドブックを見ると岩国にユースがある。
電話を入れると、問題なく予約が出来た。

今日の寒さは半端ではない。
小休止する為に自動販売機の近くで停まろうとしたが、寒さで意識からの命令を無視した俺の左足は、バイクを支えようとしなかった。
そう、停まったはいいが、足を出さなかった為にそのまま左に転んだのだ。
幸いバイクにも自分にも怪我がなかったが・・・。

ユースに到着したのは4時を回っていた。
寒さの中走り続けたので、今日の体の疲れが異常にキツイ。
全身がこわばり、全ての間接が悲鳴を上げているようだった。

岩国ユースに入ると、寒さに凍える俺を見て、時間前だが風呂に入らせてくれた。
大きな風呂に一人。
湯舟に使って5分は掛かったろうか。
ようやく凍えた冷凍人間から、生身の人間に戻る事が出来た。
普段長湯はしない性質なのだが、この日は1時間近く入っていたのではないだろうか。
暖かさから抜けられない。とにかく湯舟から出るのが嫌だったのだ。

夕食後に地元バイク仲間のトオルに電話を掛ける。
今日の道中ずっと一人だったせいか、人恋しいという気持ちがあったのだろう。
家出中の友人から遠い土地から掛かってくる電話。
この状況でも淡々としゃべるトオルに落胆しつつ、電話は直ぐに終了。
疲れは増しただけだった。

今日のルームメイトがやってきた。
年下の男だった。
話して直ぐにわかったのだが、鉄道が全てのテッチャン野郎。
それに加えて、ちょっと話し方も変。
障害者・・・かな?
やっかいな状況になった・・・疲れきっていた俺には辛い状況。
延々と話しかけるヤツの言葉も耳に入らず。
俺は勝手に寝入ってしまった。

岩国。
錦帯橋がある街。
明日は歴史散策と行こうか。
うるさいやつの声よりも、今日は睡魔が勝ってくれることに感謝。
明日は晴れかな。


つづく・・・・。


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 天気:豪雨
 時間:9:00~16:00
 距離:224km
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旅。衝撃・・・原爆資料館/4月8日

2004-11-05 | TROUBLE TRAVEL
大きなユースは全てが機械的だ。
小さなユースで感じるアットホームな雰囲気を感じる事もなく、時間になったので朝食を食べた。
今朝のお供もSR、GPZRの両氏だ。
今日は福岡方面への旅を予定している俺。
中国地方に入りたいと言う二人とは、途中まで一緒に行動、そして夕方にはお別れだ。
今日を入れてたった3日間の出会い。
しかし寂しさがつのる。

出発の準備をする為に玄関前の愛車に向かう。
長崎ユースの門のところに桜があった。
咲き初めだが、綺麗なピンク色の花を咲かせている。
春だ・・・。
まさか長崎で春を、更には無職に加えて家出状態で迎えるとは数ヶ月前には思ってもいなかった。
桜の下、3人で写真を撮る。
今日でお別れのSR、GPZR両氏に、地図の空欄に住所を書いてもらう。
いつかどこかで会えるといいな。

なぜだろう。
今朝の出発は家に向かい始める感じがする。
今までは家から離れている気がした。しかし、今朝の出発は家に近づいていく気がするのだ。
どこか気持ちが落ち着かない。
今日も二人の後ろを走る。安心して背中を見ることが出来る。
仲間だ。

平和祈念像と、原爆資料館に行ってみる事にした。
天気がいいので気分が明るくなってくる。
平和記念像は、思っていたより大きかった。
片手を上に、もう片手を水平に。
3人で同じポーズで写真を撮ってみる。


      ◆平和祈念像です◆

その後、原爆資料館へ。
博物館を見に行く様な気分でいた俺達。入って直ぐ奈落の底に落とされた。
一瞬で消えた町。
信じられない光景。
人とは思えない墨の固まり。
数々の被爆資料は、言葉を奪ってしまった。
見つめる目には涙がにじむ。
酷い。見たくない光景。
拒絶したい光景。
しかし見なければいけない。

2時間近く見ていただろうか。
あまりの衝撃に何も話せなかった。
この資料は世界の人が見なければいけない。
それしか頭に思い浮かばなかった。

再び平和祈念像に思いを馳せる。
上に指した右手は原爆の脅威を、水平に伸ばした左手は平和。
そして、軽くとじたまぶたは原爆犠牲者の冥福を祈っているそうだ。
先程祈念像前で写真を取った俺達。
知らなかったとは言え、ふざけて写真を撮る場所ではなかった。
恥ずかしさで一杯になった。

有明海沿いの道を走る。
海のモワッとする濃密な空気が流れている。
塩の匂いが濃いという感じだ。
小さな漁港が見えてくる。
海に半分浸かったような家で、車庫の代わりに、漁船を収める艇庫が設置されている。
絵に描きたくなる光景。
写真を撮りたいと思った。
前を行く二人に止まってくれと言うべきか迷っているうち、あっと言う間に通過してしまった。
数人で走る楽しさもあるが、一人じゃない不便さも感じた。

西海橋と言う大きく綺麗な橋を渡り、虹ノ松原へ。
海岸沿いに大きな松林が連なる。
観光ホテルも数軒見える。
無料駐車場にバイクを止め、歩いて砂浜に向かってみる。
白い砂と、青い空。それに濃い色で横たわる海と小さな打ち寄せる波。
綺麗だぁ・・・・・。
あっ、俺の日本海初対面だ。
この向こうに韓国や中国があるのかぁ。

それにしても俺が持ってる日本海のイメージとは違った。
暗い海と、吹きすさぶ寒風。それにコート姿で立ちすくむ女性。
笑っちゃうぐらい目の前の現実とは違うのだった。
まあ、ここは九州だからな。
ボーっと海を見つめる3人。
それぞれに勝手な想像を巡らしているはずだった。

福岡方面へ向かってバイクを走らせていると、信号で1台のバイク、NV-CUSTOMと並んだ。
バイクとヘルメットに記憶がある。
“こんにちわぁ”と声を掛けてみる。
振り向いた顔に驚いた。
2日前に島原ユースで夜中まで語り合った一人だった。
“おーっ!偶然だなぁ!”
お互いに肩をパンパン叩く。SR、GPZR氏も島原ユースで語った仲。
“お前達一緒に行動してたんかぁ”
信号が青に変わった事に気が付かず、クラクションで我に帰った4人だった。
NV氏は、俺が今日向かっている八木山高原の先に向かっているそうだ。
旅は道連れ。同行しよう!

途中でいよいよSR、GPZR氏とお別れの時が来た。
信号が赤であってくれよ・・・。
別れの一言を言わせてくれよ。
しかし、信号は青だった。右折する俺とNV氏。
直進して行くSR、GPZRの両氏。
ホーンを鳴らしながら、俺達のほうに大きく手を振り続けていた。
俺も手を振る。
ありがとうの意味を込めて手を振る。
旅の安全を祈って手を振る。
また会おうな・・・。

今度はNV氏か。
奇遇って本当にあるんだな。この旅は俺を一人にはしないつもりらしい。
旅は道連れか。

飯塚市の近くにいるのは分かった。
しかし、自分達がどこにいるのか分からなかった。
NV氏と道路わきにバイクを止め、地図で確認する。
どこにいるのかがわからないと、どっちへ行けばいいのかもわからない。
途方にくれていると、1台のタクシーが通過していった。
数十メートル行ってからだろう。
こっちへバックでタクシーが戻ってきたのだ。
「おぅ、兄ちゃん達どうした!?」
ここに行きたいのだが、道が分からなくなっちゃって・・・。
地図を見せたら、何だそんな事かとドライバーは呟いた。
「俺の後ろを着いてきなよ。」
“えっ?”
驚く俺達。確か先導するにもタクシーは有料だと思ったが。
“お金ないんですよ”
全部を言わないうちにドライバーは言った。
「はぁ?何言ってんだよ。着いてくればいいよ。」

タクシーに先導され、俺達は走った。
こんな経験ってあるのか?
どこかキツネに騙されているような、不思議な気持ちだった。

タクシーは俺が泊まる予定の八木山ユース近くまで回ってくれた。
挨拶をしようとすると、窓から手が出てきて
“じゃ!”
って感じで走り去ろうとしている。
NV氏をこの後も先導するつもりなのだ。
既に声が届かない程距離が離れている。
声にならない言葉を喉の辺りで搾り出しながら手を振る。
“ありがとうタクシーの運ちゃん!NV氏、旅の安全を祈ってるぞっ!”
タクシーとNVが見えなくなるまで手を振っていたろう。
涙が出そうになった。
感謝の気持ちと、あのタクシーについていけばよかったのかと言う寂しさだった。


八木山高原ユースは、とても大きい施設だった。
企業、学校とかの研修にも使っているのだろう。
一見してこのユースも学校のようだった。

受付をして驚く。
今夜はこの大きな施設で、泊り客は自分を含めて二人。
凄い人口密度だ・・・。

部屋に荷物を置きに行った。
畳の部分がある部屋で2段ベットの下段に寝る。
隣のベットの下段に荷物が置いてある。今夜同居人はどんなやつだろう。
ワクワクしながら歓談場所でもある食堂に行ってみた。


   ◆八木山高原ユースの寝室◆

“ハァーイ”
軽やかに手を上げたのは、背の高いヒョロッとした外人だった。
“!?”
どうしよう・・・。
外人とこんなに近くで会うのも初めてなら、当然話した事もなかった。
しかも英語は苦手だ。

このユースのホストである小太りの主人が、間に入ってお互いを紹介してくれた。
彼はオーストラリアから来たクーパー。
俺も度胸を決めて自己紹介をした。
「マイネーム イズ kawakero・・・」
握手をした。
この時、握手の後はなんだっけ?軽く抱くんだったか・・・と言う考えが頭を過ぎる。
そんな俺の考えをよそに、クーパーはさっさと椅子に座ってテレビを見始めた。
膝がガクガクしそうなほど緊張していた俺だった。

夕食はホストを含めて3人で焼肉を食べた。
食堂のテーブルに乗せたカセットコンロで食べたのだが、家族的な雰囲気の料理に心が温まる。
ユースでこの料理は規格外だろう。
人数が少なかった事で、幸運が転がったって来たようだ。
段々、クーパーにも慣れてくる。
つたない英語でも何とか通じる事が分かれば、変な緊張もなくなる。
彼もオーストラリアではライダーだった。
この旅は、バスとヒッチハイクで動いているそうだ。
九州に来たのは、福岡からフェリーで韓国に渡る予定からだと言う意味の事を言っていたようだ。
偶然か、焼肉の付け合せにキムチが出ていた。
「クーパー・・・ユートライ ディス フーズ」
“!?”
不思議がるクーパーにジェスチャーを交えて食べろと言ってみる。
ホストも面白がって黙ってニヤニヤしていた。
クーパーが恐る恐る箸を使ってキムチを取り出す。
静かに口に近づけて行く。
食べた。

“!?”

一瞬の間隔を置いて、クーパーが大声で叫んだ。

「Hot Hot Hot!!!!!!」

ホストと俺で大笑いした。
クーパーも涙目で笑っていた。
辛いを英語で言うと“HOT”になると知った夜になった。

部屋に戻って、クーパーからオーストラリアで子供が遊ぶと言うパズルゲームを教えてもらう。
紙に書いた升目を取り合うゲームだった。
結局消灯時間まで二人で楽しむ。
ライダーは万国共通なのか?直ぐに溶け込めるのは、国籍は関係ない事を知った。
ベットに入り込む。
色々あった一日だった。
クーパーにお休みを言う。
「グッ ナイッ」
クーパーも答えた。
「おやすみなさい」

日本語知ってんじゃん!
今夜もニヤニヤしながら寝る事になった。


つづく・・・・。

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 天気:晴れ
 時間:9:00~17:30
 距離:203km
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旅。長崎漫遊/4月7日

2004-11-04 | TROUBLE TRAVEL
島原ユースの夜は本当に楽しかった。
人の暖かさも感じた夜だ。

ライダーが多いと言う事もあったが、深夜まで旅の話、そして人生観までを話してしまった。
大した人生を送っている訳ではないと言う意識もあって、人生観を話すのには抵抗があった。
しかし、お互いがそれを出し合っていると、いつのまにか心の底から他人と話せるようになってくるから不思議だ。
父親との確執、現在無職の心細さ。
色々話してしまった。
話しすぎたかと、布団に入った時にはちょっとした自己嫌悪も感じた。

寝不足で起きると、雲仙は雨に煙り寒い朝が待っていた。
みんなで食堂で朝食を食べる。
不思議と、全員仲間と感じる。
俺の旅仲間達だ。
今日ユースを発つと二度と会わないだろう。しかし仲間なのだ。

出発準備で雨具を着ていると、昨夜深夜まで語り合った中の二人が話しかけてきた。
確か、二人で旅をしているライダーで、大阪から来ている連中だ。
今日は長崎ユースに泊まる予定と聞く。
雲仙からは山を越えて長崎は直ぐそこだ。
長崎はゆっくり観光したいと思っていたので、同行することにした。
彼らは、SRさんとGPZRさん。楽しい一日になりそうだ。

昨夜語り合った仲間達と集合写真を撮る。
写真を撮る時、みんなで声にならない奇声を上げた。
最高の笑顔で、薄汚れた旅仲間達との一瞬はフィルムに焼き付けられた。

雨の中3台のバイクは走る。
俺は最後尾を走る。
前のバイクが跳ね上げる水は、土を含んで後が残る。
バイザーに付く泥水は視界を妨げる。少し距離をとって走った。

雲仙普賢岳を横目に温泉地を抜ける。
温泉の文字には心が騒いだが、一瞬で歓楽街は抜けた。
山を下り始めると、直ぐに長崎が見えてきた。
小さな湾に密集する古ぼけた町。
港に停泊する船と町のコントラストは、どこか異国を感じさせるものだった。

今日はまず長崎ユースに荷物を置きに行った。
今迄で一番大きなユースで、建物もコンクリート製。一見して学校のような雰囲気を持っていた。
部屋も大部屋で、一人一人ベットがある。一部屋は10人程度泊まれそうだった。
コインランドリーもある。
今夜は久しぶりの洗濯だな・・・洗える事が最近楽しみだ。


       ◆長崎ユースです◆

荷物を降ろしたバイクは、本当に軽く感じる。
気持ちも軽く、3台は再び長崎の町に出発。
観光のみの一日。
旅に出て初めての経験か。
バイクの走行距離があまり伸びなくなってきた。
心に余裕が出てきたのか、家に戻るのを遅くしたいのか・・・。

大浦天主堂に向かう。
バイクは土産物屋に置かせてもらい、歩いて坂を上っていく。
皮パンツに、フライトジャケットの格好の俺。
観光客の中に入ると、気恥ずかしい気分になる。
門で写真だけ撮り、グラバー邸へ向かう。
庭から見る長崎港の雰囲気に圧倒される。
商船、タンカーなどに混ざって、軍艦も見える。
夜になると、それは夜景が綺麗だろうな・・・楽しみでワクワクした。

俺の希望で、散歩がてら商店街を歩く。
行きたかった店があるのだ。
長崎カステラで有名な福砂屋さん。
カステラの下の部分に粗目の砂糖が付いていて、ボリボリ言わせながら食べる。
口の中を想像で甘くさせながら店を探した。
以外にコジンマリした店で驚くが、とても雰囲気がいい店だった。
カステラを2本購入。
いつ食べるんだ?
そう思ったが、せっかく行ったんだからと買ってしまったのだ。
試食を食べた時点で、目的は達成していたんだけどね。


     ◆老舗の福砂屋さん◆


 ◆粗目砂糖が美味しいカステラ◆

オランダ坂、眼鏡橋等を見物しながらバイクで走る。
初めて路面電車を見た。
道を走る電車に戸惑う。どこを走っていればいいのか、ドキドキする。
意外に遅いな・・・抜いていいんだよな・・・。
そして、路面電車の線路が滑る事に気が付いた。
タイヤの角度を気をつけないと、線路で転倒してしまいそうだった。

長崎ユースは夕食がなかった。
なので3人で長崎皿うどんを食べに行った。
初めて食べる皿うどん。
ワクワクしながら30分近く待つと、運ばれてきた料理は間違っていた。
うどんを頼んだのに、見るからにその面は細い・・・。
皿うどんを頼んだのに、テーブルに運ばれてきたのはカタ焼きそばだったのだ。
「すみません、頼んだのは皿うどんなんですが・・・」
心細く言うと。
「これですよ」
あっけなく言われた。
えっ!?
うどんと言うから、俺のイメージは“焼きうどん”だったのだ。
これが皿うどんって言うのかぁ。
恥ずかしさと、美味しさで、ニヤニヤしながら3人で食べた。


   ◆いまだに思う。これ固焼きそばだろ!◆

一度ユースに戻る。
やっておかなければいけない洗濯を始める。
今夜は夜景を見に行くので、早く終わらせなければ。
結局出掛ける事が出来たのは8時過ぎてしまった。
ユースには門限がある、夜景をのんびり見ていられる時間はさほど取れそうもなかった。

慣れない夜道を、長崎港の対岸にある稲佐山を目指す。
夜景が有名なスポットらしいので、せっかくならと目的地にしたのだ。
数度迷った。
道は細い山道だった。
時間は掛かったが、頂上のアンテナ施設が見つかると、そこは結構な人だかり。
景色を見たとたん絶句してしまった。
何と言う綺麗さ・・・。
宝石をちりばめたとは、こういった景色を言うのか。
この光の一つ一つは人々を照らす小さな明かりの集合帯。
中には小さく動く光もある。
人が作っている光なんだな・・・。
当たり前のことだが、その事に感動してしまった。

ユースに戻ると、昼間買ったカステラを開ける。
2本共だ。
一人で食べても美味しくない。みんなで食べた方が美味しい。
そう思い、同室になった人に声を掛けた。
「長崎カステラ買ってきたんだけど、食べたい人は取りにきて。」
俺のひとかけらを残して、みんなに食べれられてしまった。
まっ、いいか。

“遠慮して食えよぉ”

心で呟きながら、ニヤニヤ顔で俺は布団に入った・・・。


つづく・・・・。

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 天気:雨のち曇り
 時間:9:00~21:30
 距離:100km
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旅。阿蘇へ、そして天草・島原へ/4月6日

2004-10-01 | TROUBLE TRAVEL
何事もなく夜は過ぎ去って朝になった。
自転車乗りの可愛い女の子に借りた観光ガイドが手元にある。
昨夜は二人じゃないショックで開く気になれなかったが、このまま返すのではあまりにも失礼だ。
パラパラやっていたら、天草地方の紹介があった。
とにかく島と橋が綺麗。
決まった。今日は天草地方に行こう。

しばらく洗濯できない状況だったので、俺の全身は薄汚れている。
綺麗な方のトレーナーを着込んで朝食を食べに食堂に降りた。
あらためて彼女達を見ると、日焼けに加えて全身がガッチリしていて凄い。
可愛いと思っている女の子も、実はガッチリだった。
恐るべし自転車一人旅女達。

玄関で3人で写真を撮って別れる。
あっ、住所聞くの忘れた。
後で写真送るからとか言えば、住所聞けたのにな。

お世話になった村田屋ユースは阿蘇山のふもと近くだ。
あまり天気は良くないが、阿蘇への期待は膨らむ。
この山には、どんな道が待っているのだろう。
エンジンをかけ走り出す。
バイクの調整が必要なようだ。チェーンが緩み始め、走り出す時に一歩タイミングが違う感じがする。

阿蘇への道はながらかに上がっていく高原ルートだった。
雨が降り出していたが、気持ちがいい草原の中を登っていくのは何物にも代えがたい。
草原の下に大きな町が見える。
恐らく熊本だろう。
町を見下ろしながら空の上に上がっていくのは、別世界への道を上がっていくと感じる。
最高だった。

火口に到着。
凄い観光客の数だ。
しかし寒い。
高地に加えて、恐ろしいほどの風。
山を降りちゃおうかと言う気持ちが過ぎったが、せっかくだからと歩き始まる。
火口近くまでいき、中をのぞく。
大きな穴が見えた。
ここから巨大な力で爆発したのかと思うと、地球の大きさを感じる。
しかし感慨にふける場合ではないのだ。
風で本当に吹き飛ばされそう。
火口の土産物屋の陰に隠れて、風が弱まるのをちょっと待つ。
弱くなった一瞬を狙って、バイクへ駆け戻った。

熊本まで一気に走り降りる。
下界に下りると寒さはさほどでもない。
熊本城に心が揺れたが、それ以上に天草地方を走ってみたい気持ちで一杯。
結局、大都市熊本は通過してしまった。

天草は小さな小高い島が連なる地域で、本当に綺麗だった。
静かな海を見たのも初めてで、これが鏡のような海と言うやつなのかと納得する。
海に映る山の緑が凄い。
そこを走り抜ける道も期待以上だった。
島と島を繫ぐ橋を渡るときには、これ以上の幸せはないという感じがした。
天気が悪いのが悔しい。
これで晴れていたら・・・海はどんな色を映すのだろうか。

本渡市を抜け鬼池と言う場所に行く。
ここから対岸の島原は口之津へフェリーで渡るのだ。
島が点在する海上を渡るこのフェリーは格別のものがあった。
船から見える対岸の地。
大きな山が港の右手に見えてきた。
雲仙だ。
温泉で有名な土地。今夜は温泉に入れるかな。

島原に上陸すると既に3時近かった。
今夜の宿もユースを使うことにする。電話で予約を入れ、安心して観光に向かう。
天草と言えば天草四郎だろう。
それ以外に思い浮かばぬ俺は、まずは四郎のお墓に行ってみる。
特にキリスト教と言うわけではないが、過去の弾圧を考えると胸が痛む。
これでいいのかと思ったが、四郎の墓の前で手を合わせて拝んでしまった。
まあいいか。ようは気持ちだ。
その後四郎が最後まで闘った場所を見て回り。
4時過ぎにユースに到着。
雲仙普賢岳を間直にあおぐ、三角形の変わった建物だった。
バイクの駐輪場には、既に数台のバイクが止まっていた。

中に入ると、先に入っているライダー達の目が俺に集まる。
軽くうなずくと、みんないたずらっぽく笑った目で返事が返ってきた。
薄汚れたライダー達。
そこに加われるのは、同じ境遇にある者の特権か。
荷物をベットに置きにいくと、直ぐに洗濯に取り掛かる。
洗濯室であったライダーと洗濯機の中の水の汚れを笑い合う。
どっちの水の方が黒い?
俺が勝った。

今夜は賑やかな夜になりそうだ。
そんな予感を感じさせた。

つづく・・・・。

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 天気:雨
 時間:8:30~16:30
 距離:206km
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旅。可愛い自転車乗り/4月5日

2004-09-23 | TROUBLE TRAVEL
明方は寒くて寝ていられなかった。
九州とは言え、ここえびの高原は立派な高地。
ちょっとなめていたか。

冷え切った体を温泉で暖めようとテントから這い出す。
外に干しておいたタオルは、ロープにかけた形のまま凍っていた。
テントも白く凍っていた。
一体何度まで下がったのだろう。
寒かったわけだ。

カップルが仲良く朝食の準備をしていたが、極力視界に入らないようにする。
昨夜の一件で、二人を見ていられないのだ。
あらゆる動作がエロチックに映ってしまう・・・。
一人にはつらい感情だ。

テントの氷が融け、乾くまで出発を遅くした。
濡れたままたたんでしまうと、次に広げた時の臭いで参ってしまう。
結局9時過ぎまで掛かってしまった。

今日は阿蘇山へ行ってみようと思う。
火口まで道があるらしいので、お気軽登山だ。
キャンプ場の出口で、自販機でコーヒーを買って地図を眺めていると、FX、GSX両氏が声を掛けてきた。
今日の予定、コースを話していたら、阿蘇へのコースで国道445は道が狭いし走りずらいから止めたほうがいいとアドバイスを貰う。
その場では感謝の言葉を述べて別れたが、どうみてもその道が近道だ。
軽い罪悪感があったが、最短コースの445へ向かってしまった。

人吉市を抜け、いざ国道445へ。
山間を走る狭い・・・そして暗く曲がりくねったルート。
対向車がいつ飛び出てくるか判らないので、一瞬も気を緩めることが出来ない。
“しまった”
と言う気持ちが直ぐに湧き上がったが、途中で引き返すのも面倒だ。
その後、延々と続く山道は、俺を消耗させていった。
バイクで小さなカーブを連続して走っていると、自分で運転しているのに車酔いのような状況に陥る。
なってしまった。
更につらい道は、終わりがないと感じる程に続いていた。

体が慣れてきた頃、道沿いに看板があった。
“五木”
あの、五木の子守唄の場所だった。
現在では地名が残るだけで、村はダム湖の下に沈んでいると言う。
景色がいい場所だったが、沈んだ村に気持ちを馳せると、悲しい気持ちになっていく。
自分の住む家が沈むと言うのはどう言う気持ちだろうか。
想像しようとするが、現実感がなく悲しみは想像しきれなかった。

熊本から東に伸びる大きな通りに出た時には、本当に心からホッとした。
国道445は約60km前後あったと思うが、途中すれ違う車もなかった。
あそこでトラブったらと思うとゾッとした。

神話に興味があったので、高千穂峡を目指して東に向かう。
道は山間を抜けているが、広い道で気持ちがいい。
しかし高千穂に着くと、気持ちは急速にしぼんだ。
観光客でごったがえす高千穂峡は、神話を感じるには程遠い。
しばらく人が少ない場所ばかりを走っていたので、突然の観光地の喧騒に負けてしまったのだ。
結局、バイクを降りることもせず、そのまま阿蘇へと向かった。
楽しみにしていたのに・・・なぜか怒りは観光客へ。
自分勝手な怒りだと、自分でも悲しくなった。

今夜の宿泊は阿蘇山のふもと、高森町にある村田屋旅館ユースに泊まる。
旅館をユースに改装した変り種だ。
夕方4時に宿に入ったが、お客さんは他にいなかった。
夕食までやる事もなく、ロビーで新聞を読んでいると、自転車で一人旅中の女の子がやってきた。
大きな荷物を装備した自転車、真っ黒に日焼けした手足。
そして・・・ちょっと好みの可愛い顔。
泊まる手続きをしている彼女と、一言二言話す。
気持ちはワクワクしてきていた。
後で観光情報の交換をする約束を取り付ける事に成功した。

ユースの食事は集まって食べる事が多い。
今夜はもしかして二人で食事か!?
俺の頭は爆発しそうに興奮状態。
これは恋に発展するかも・・・すっかり暴走していた。

夕食の時間3分前に席に着く。
時間をちょっとすぎた辺りに彼女“達”は来た。
例の女の子に加え、やはり自転車一人旅中の女の子。
そのがっしりした体は、“男前”だった。

瞬時に静まる暴走した頭。
3人で夕食を食べたが、意気消沈の俺には味など分かるはずもない。
二人じゃなかった・・・それだけでしぼんだ俺の勇気。
観光情報を二人からもらう。
どうでもよかった。

作りは旅館のままのこのユース。
一人で寝るには大きな部屋だ。
お化け出そうだな・・・。
その夜は、電気点けたまま寝た。

つづく・・・・。

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 天気:晴れ
 時間:9:00~16:00
 距離:230km
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旅。色は何色?/4月4日

2004-09-17 | TROUBLE TRAVEL
指宿ユースでの朝は、大変気持ちがよかった。
目の前に広がる海。
空は快晴。
今日は雨の心配なしに走れそうだ。

午前8時半。
博多方面に一気に北上すると言うCBさんとお別れ。
ポツポツと話しをするCBさんだったが、気持ちがいいやつで最高の旅の友だった。
気をつけて行けよ。
言葉の代わりに、小さくピースサイン。
ヘルメットから見える目は、大きく笑っていた。

目標地点には到達した。
急ぎ過ぎて何も見ていないことに気付く。
せっかくの九州。
気の向くままに色々見て回ることにする。

指宿から鹿児島最南端にそびえる開聞岳は直ぐそこだ。
気持ちがいい景色と、裾野まで綺麗な開門岳。
人がいない道をのんびり上がっていくと、そこにも馬がいた。
九州に来て、本当によく馬を見かける。
それも、とても足が太いしっかりした馬だ。

十分に景色を堪能して、近くの池田湖を目指してみる。
池田湖の怪獣“イッシー”が生息していると言われる湖だ。
愛読書“ムー”を読んでいる俺としては、楽しみにしていた場所。

池田湖に向かう途中、左手に巨大な看板を発見。
“ムー大陸博物館”
と書いてある・・・。
九州でなぜムー大陸?
思う間もなく、バイクはムー大陸博物館に向け、小高い丘を登っていった。

着いてとにかく驚いた。
博物館と名乗っているが、一見お坊さんが出てきそうなお寺の概観。
しかし、その色彩振りが凄い。
赤と白を基調にしているのだ。
“あやしいぞ・・・”
頭を過ぎったものの、ここまで来たらと入ってみた。
入口で入館料を払い、門を入ると中は大きな敷地。聳え立つ建築物は正に異様の一言。
それに・・・こんなに大きいのに、見学者は俺一人だった。

早速博物館の中に入ってみる。
特別凄い展示物があるわけではなかったが、言いたい事はしっかりと伝わった。
この九州の沖合いに、幻の大陸“ムー”が存在したと主張する文献。
結構真面目な内容で、ホォと思いながら1時間弱の時間を楽しめた。
不思議な気持ちで施設を出たが、やはり駐車場にも俺以外の見学者いなかった。

池田湖に向かい、バイクを走らせたが、不思議感覚が残ってにやけてしまう。
何だあの施設。
真面目なのか、ただの観光施設を作りたかったのか。
騙された気がするがそれにしても面白かった。
笑っちゃうなぁ。

池田湖は意外に大きかった。
怪獣見つけちゃったらどうしようといらぬ心配しながら走っていると、“イッシーはここ”と書いてある看板を発見。
どう見ても観光ボートの貸し出し場みたいなところだが、立寄ってみる。
ここと書いてある場所は、小さないけすを示していた。
中をのぞいてみる。

“!?”

なんだこれ!?
黒くて大きくて長いものがいけすの中にうじゃうじゃいる・・・。
よく見てみる。
大きすぎて気付かなかったが、これは“うなぎ”か?
俺の腕ぐらいある太さ、長さは1m前後。
こんなうなぎ初めて見たよ。
店番の親父さんと話してみたら、これは怪獣の一種だよと笑っていた。
食べたら美味しいのだろうか。
気になったけど、聞かずに池田湖を後にした。
イッシーって、あのうなぎが更に巨大化したものに違いない。
勝手に結論がでた。

指宿スカイラインと言う、高台を走る有料道路を走る。
ここ九州の南部に来て、道の気持ちよさに本当に驚く。
適度なカーブを持った道が小高い丘を縫うように抜けて行く。
バイクを操る自分が、凄く上手くなった気がする道。
鹿児島にはあっと言う間に到着した。

暖かい日中に誘われ、今夜は久しぶりの野宿をする事にしよう。
場所は・・・やはり桜島だろう。
地図で調べると、鹿児島から桜島へはフェリーが出ている。
今回の旅で、小さなフェリーに乗る機会に触れ、それがとても楽しく感じ始めている。
手軽に船に乗り、そのまま対岸へと連れて行ってくれる。
フェリーに乗っている間は海を眺める。のんびり揺られていると、このまま降りたくなくなるものだ。

桜島は火山の島。
見渡す限り溶岩の岩だ。
そこを縫うように走る道。
道は火山灰がうっすらと積もり、気をつけて走らないと転倒しそう。
昨夜の一件で、すっかり恐怖感が芽生えていた俺は、必要以上にそろそろと走るのだった。
大きな展望台で、鹿児島の町をバックに記念写真。
快晴で夏のような日差しを受け、カメラを見る目は薄開きとなった。
ただ、ここでの野宿は難しそうだ。
砂と風に苦しめられそう。

霧島を目指して走り出す。
途中、スタンドで給油。
ほぼ毎日タンクは空になる。
財布のお金も少しずつ減っていく。
まだ残金はあるな。
このお金がなくなる時が帰るときか。
嫌な事を考えた。
旅が終わるなんて・・・。

スタンドでバイクを洗わせてもらった。
俺のバイクは土浦ナンバーだ。
“このナンバーどこ?”
九州に来てから何度も聞かれている。
このスタンドでも聞かれた。
見た事ないだろうな~。
旅人を実感する時でもある。

4時を過ぎたので今夜の寝場所を探し始めた。
幸い、霧島を登ってえびの高原に到着したら、直ぐ目の前にキャンプ場の看板が見えた。
ついている時はこんなものだ。
時間が早いが、今日はここに泊まる事にする。

えびの高原キャンプ場は、面積がとても広く、木が点在する敷地に自由にテントを張れた。
余裕を持って夜を迎える野宿は今夜が初めてか。
ニヤニヤしながらテントを張る。
中でごろんと横になっていると、もう一組利用客が来た。
そして、20m向こうにテントの設営準備。
俺と同年代のカップルだった。

風呂があると言うので、日が暮れた頃に向かってみる。
キャンプ場の外れにある掘っ立て小屋だ。
風呂に入れるだけましと思って中に入って驚いた。
なんと木の風呂桶にたっぷりの湯。
しかも湯の効能が書いてある。

“うわっ!本物の温泉じゃん!”

泳ぐように温泉を堪能し過ぎ、湯あたり気味となる・・・。
ふらふらしながらテントに帰り。焚き火を始めた。
火照った体に、焚き火の炎は更に熱く感じたが、夜気が通り始めると一気に冷え込んだ。
炎から目を移して上空を見上げたら、見た事がないくらいの濃い星空があった。
ポカンと口を開けたまま空を見続ける。
驚いた・・・夜空はこんなにも星で明るいのか・・・。

米だけの夕食を済ませ、テントにもぐりこむ。
気持ちがいい。

寝袋に包まり、眠りに落ちそうな頃。
例の20m先のテントからヒソヒソ声が聞こえてくる。
そして・・・20代前半の俺には刺激が強すぎる色々な音。

参った・・・・。
俺が寝る事が出来たのは、一体何時だったのだろうか。
彼女欲しいな。
悶々とした夜、頭の中はピンク一色となった。

つづく・・・・。

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 天気:快晴
 時間:8:30~16:00
 距離:155km
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