人生ブンダバー

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10/23 信時潔 作品の会~やまとことばを美しく~

2021-10-30 05:00:00 | 音楽

10月23日(土)、坂上先生からお誘いいただき、午後2時より
軒茶屋のサロンテッセラにて開催された、
「信時潔 作品の会~
やまとことばを美しく」を聴く


今回は、坂上先生と門下生お二人--石山真由美さん、十日谷
(とおかや)正子さんによる演奏会(以下敬称略)。

新型コロナの影響で、1年半の延期となったものだ。

客席数は45席ほどかしらん。文字どおり、サロンにふさわしい。


会場には、藝大大学史史料室のスタッフとしても参加されている
仲辻さんのお顔も(→こちらこちら)。


「信時潔 作品の会」によせて 坂上昌子  プログラムより(抜粋)
 父・木下保は美しいひびきの日本語を求め、信時潔作品の中にひとつの歌唱法
 を見出しました。「やまとことばを美しく」。受け継いだ私に与えられている
 限られた時間と制約の中、できることは今しかないと思い立ち、この演奏会を
 開催することに決めました。


<プログラム>
1.小倉百人一首より
2.沙羅
--休憩--
<お話>信時裕子
3.「小品五章」より 子供の踊
4.「鶯の卵」より 張節婦詞
5.茉莉花(まつりか)
6.女人和歌連曲

出演者:
Mez.坂上昌子
Sop.石山真由美
Sop.十日谷正子
Pf.石井里乃
お話:信時裕子


いつもながら、まことにつたない「寸評」を・・・・・・

1.小倉百人一首より 作曲(以下同じ):1920-22年
 (前半4曲:石山真由美/後半4曲:十日谷正子)
 信時潔(1887-1965)による「小倉百人一首」の世界。
 100首の中から、8首を選んでいる。
 「小倉百人一首より」(全8曲)をお二人が4曲ずつ歌う。

(1)月見れば(No.23)
 秋の到来にふさわしい第1曲。シンプルで素朴な伴奏とやまと
 ことばによる歌唱から「もの悲しさ」が伝わってくる。後奏の
 和音に「意外性」を感じる。
(2)久方の(No.33)
 一転して、日本的なタンタタタンタンの伴奏に乗って、「どう
 して桜は散るのだろう」と、明るめ曲と歌唱。「散るらむ」の
 最後はきっちり「mu」に。
(3)花の色は(No.9)
 ゆっくり。素朴な伴奏としっとりとした味わいのある歌唱に、
 小野小町の「気持ち」が表出する。
(4)淡路島(No.78)
 ポツンポツンとした琴のような伴奏。いかにも日本的な歌だ。
 (まったく余談だが、関西勤務時代に訪ねた淡路島と須磨を思
 い出した)。

 --------------------
(5)長からん(No.80)
 出だしの「長からん」にごく僅かなポルタメント--それによ
 る、女性の「気持ち」の発露にハッとした。
(6)逢ふことの(No.44)
 平安時代中期の歌。信時潔らしいシンプルでゆったりした前奏
 に始まるが、途中で大きな変化が。
 「恨みざらまし」は、意味のあるクレッシェンドが効いている。
(7)人はいさ(No.35)
 紀貫之の「気持ち」が明るく、開放的に歌われる。後奏にも惹
 きつけられた。
(8)ほととぎす(No.81)
 ゆっくりした、素朴な伴奏。伴奏と一体となった「月ぞ残れる」
 の余韻が心に沁みる。


2.沙羅 1936(出版)
 (前半4曲:石山真由美/後半4曲:坂上昌子)
(1)丹澤
 最初の、きっちり、しっかりした、やや大きめの前奏にしびれ
 る。やや速めのテンポから歌詩がすーっと心に入ってくる。
 後奏表現にも惹きつけられる。
(2)あづまやの
 お上手な、ほとんどインテンポのピアノ伴奏に乗って進む。日
 本語の母音の響きのムラがない。
(3)北秋の
 一転してAndante、ゆっくり目のテンポ。最後の「北秋の花」
 の歌唱が心に沁みる。
(4)沙羅
 間奏が2回出現する、fが現れず、気持ちのつなげ方が難しい曲。
 作詩家と作曲家による「世界」が再現された。
 --------------------
(5)鴉
 歌詩の「からす」の子音と母音に、楽譜に書けない「ひょうき
 んさ」が現れる。
(6)行々子
 前半は、しみじみとしたデュナーミクに惹きつけられる。「み
 みいたく」のfに、すべての想いが歌われた。
(7)占ふと
 この歌から2曲は、pやfを出せばいいというわけではなく、
 (普通の人には)難しい。ここでも、言葉と子音の必然性が感
 じられる。
(8)ゆめ
 2分少々の間に現れる、さまざまな想い、語感に従って変化する
 歌唱がすばらしかった。

今までに聴いた、
歌曲集「沙羅」のピアノ伴奏では、Topクラスの
すばらしさだった。石井さんのさらなるご活躍が楽しみだ。

--休憩(15分間)--

<お話(15分)>信時裕子 
今さらの話だが、信時裕子さんは信時潔の孫(潔の三男三郎のお嬢
さん)で、信時潔の研究をライフワークにしておられる(→こちら)。
信時潔と「沙羅」、木下先生、畑中先生のお話など。

3.「小品五章」より 子供の踊 1926 (坂上昌子)
 与謝野晶子の4連の詩。速めで明るい曲だ。4連のリピートだが、
 最後の連では、よりキッパリとした表情(表現)で歌い分けた。
 木下保先生は、きっと、このような歌もお上手だったかと思い、
 ジ~ンとなった。

4.「鶯の卵」より 張節婦詞 1933 
(十日谷正子)
 漢詩の土岐善麿訳(文語訳のローマ字書き)の世界。「Ko wa
 Na wo e」のfと和音が衝撃だった。
 土岐善麿(1885-1980)の名はどこかで?と思ったら、新憲法
 施行記念国民歌『われらの日本』の作詞者だった(作曲:信時
 潔、昭和22年)。

5.茉莉花(まつりか) 1919 (石山真由美)
 象徴派の詩人蒲原有明(1875-1952)の文語詩に作曲した、比
 較的長い、
しっとりした曲。「茉莉花」はジャスミン。
 歌詩を読んでいると、思わぬところに間奏が出現する。
 言葉の子音が意味を持って歌われ、抑えた感情が「わが心この
 時裂けつ」のfで爆発する。

6.女人和歌連曲 1965
(前半6曲:十日谷正子/後半4曲:坂上昌子)
 信時潔晩年の作品。信時潔らしい「音」に
(1)序歌 
 いつの世かつくられし歌をときがあらひ
 残り残りし一首を尊ぶ
 (ほとんど続けて)
(2)あかねさす
 有名な額田王の歌。真実がどうであったかは別として、openな
 気持ちを明るく歌っている。「(袖)振る」がいかにも「やま
 とことば」の語感。
(3)こしかたを
 どこで子音を多めに使うか?言葉と子音の「必然性」が感じら
 れる歌唱。
(4)大江山
 ここでは、歌詩に応じて、重い声、軽い声の使い分けがあり、
 聴く方にとっても、勉強になる。
(5)夜をこめて
 「(よに逢坂の関は)ゆるさじ」のfに、女性としての強い意
 志が表出する。
(6)わがそでは
 激しい伴奏に乗った歌唱に「切ない恋」の感情が伝わってくる。
 --------------------
(7)あらざらむ
 紫式部の情念に、虚無的な響きの伴奏。「いまひとたびの逢ふ
 こともがな」に想いが込められた。
(8)春の夜の
 「かひなく立たむ」の「k」などの子音は楽譜には書けない。
(9)めぐりあひて
 紫式部の情熱に寄せる、若々しい歌唱。
(10)有馬山
 これによらず、歌詩の中、言葉を切る歌唱に、信時歌曲、日本
 歌曲の歌い方の範が感じられる。

 人生100年時代、まだまだ10年はお歌いになられるのではない
 かしらん。


<アンコール> (ユニゾン~三重唱)
「桜花(はな)の歌」より「いにしへの」(伊勢大輔) 
 52年前の昭和44年、木下保先生/ワグネル男声でも演奏された
 曲。ピアノ伴奏は歌子先生だった。
 私は、その翌年、ワグネルに入部し、LIVE録音をLPで聴いた。
 それが突然目の前によみがえり、ジ~ンとなった。


一歩外へ出れば、総選挙活動の真っ最中だが、そうした世俗的な
喧噪を忘れさせてくれる、信時潔ならではの作品による演奏会だ
った。



左:チラシ 右:プログラム表紙


プログラム

余談だが、信時潔(1887-1965)は、小泉信三(1888-1966)と
同じ時代を生きた。


12:42 あざみ野


13:05 三軒茶屋下車


13:07 世田谷線改札口報告へ


13:07


13:08 さらに進む。


13:09


13:10 この出口から地上へ


13:12 
1階セブン-イレブンの4階が会場のサロンテッセラだ。
早めに行って、場所を確認。


13:13 向かいは世田谷線三軒茶屋駅


13:22


13:24 セブン-イレブン左側にエレベーターの入口がある。


13:26 「しばらくお待ちください」


13:28 目の前で選挙演説中 「大変に厳しい戦い」はみんな言う?


13:31 まずは1階で体温測定、手指、靴底の消毒


13:33 4階受付


13:34 ホール入口から見た受付


13:34 ホール 天井が高い。


13:34 
椅子に置かれたプログラムをピックアップして、その席に座る。


13:36 スタインウェイ


13:37 「会場内は会話を自粛願います」
歌子先生と談笑していたら、会場の方から「外でお願いします」とご注意をい
ただいた。ただでさえ、声が大きい?



13:55 開演5分前


14:15 その場で、換気のための5分間の小休憩



14:41 別室というかオープンスペースにて休憩15分間


14:41


14:42



15:23


16:00 
お開き後、歌子先生も加わり、「記念写真」を終えてのスナップ 
お疲れ様でした!


16:00


16:01


16:07 ここから地下へ


16:09 田園都市線改札


16:11 三軒茶屋より


16:33 たまプラーザ下車


16:34


16:36 キタムラで、この日の写真を焼き増し


16:58 たまプラーザ駅前 選挙活動中


17:03 たまプラーザより


17:06 あざみ野着


17:10 山内地区センターへ


17:10 期日前投票会場へ


17:15 無事に投票を終えて--当日病気になっても大丈夫。


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